2009年10月31日

つげ的少年

※お知らせ
11月3日(火・文化の日)は、定休日にあたりますが、祭日ですので営業いたします。
営業時間は午前10時〜午後6時となります。
皆様のご来店をお持ち申し上げております。

店の外に人の気配がしたので、出てみると小学高学年くらいの男の子がひとりで立っている。当店は辺境の街道筋にあって、どこからか歩いてくるということはまず無理だから、あとから大人が遅れて現れるもの、と思っていた。しかし、少年はなかなか入ってこない。そんなできごとも忘れてしまった頃、店の扉が開いて、誰かと思ったら、さきほどの少年だった。今まで何をしていたのだろう。入りづらかったのか。私とて、少年の立場になってみれば、こんな重厚で暗くて、湿った匂いがして、訳のわからない活字本が並んでいる店は、威圧感があって、とても入りづらい。しかし、少年には少年なりの、当店を訪れた理由というものがあるのだろう。もっと子どもだったら、私もどこから来たの、くらいの声は掛けるかもしれぬが、相手の勇気に敬意を表して、黙っていた。当店は漫画本などはほとんどないし、彼がどの程度まで本のことを理解しているのかもわからぬが、それでも狭くもない店内をひととおり歩き回り、何冊かの本を手にとって眺めていた。そして、お願いします、と言ってレジのところに持ってきたのは、クッキーふたつだった。当店では、珈琲をご注文いただいた方に、駒ヶ根の「三澤焼菓子店」という店で焼いてもらったクッキーを一緒にお付けしているのだが、もっとクッキーを欲しい、という方のために、小売りもしているのである。少年はそのクッキーをレジに持参したのであった。本はちょっと敷居が高かったら、クッキーにしようと思ったのか、家にいる母と妹にあげようと思って、クッキーを買ったのか、それは私も知らないので、想像におまかせする。しかし、小遣いのなかから、帰り際にクッキーをふたつ買ってくれたことは、とても嬉しかった。思わず、「これオマケ」と言って、もうふたつみっつ袋に入れたくなったが、そこはグッと思い止まった。それは少年を大人として認めていない行為であるし、だいいち作り手にも失礼である。差し上げることと、安易に大盤振る舞いすることとは違うのだ。

この初期のつげ漫画のようなできごとに出会い、珍しく閉店後も気持ちがほっこりしていた。

kaguradon at 20:41コメント(12)トラックバック(0) 

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コメント一覧

1. Posted by ガウチョ   2009年11月01日 08:34
少年が帰ったあとで、お金が木の葉になってませんでしたか?
2. Posted by ブラッド・ピッど   2009年11月01日 10:56
その少年は、もしかしてO脚ではなかったでしょうか?
3. Posted by 管理人(書肆月影)   2009年11月01日 12:33
ガウチョさま、鍋たのしみですねえ〜。いちおうレジの勘定は合っていましたが、翌日起きてみたら!庭一面の落ち葉が金貨に!やはり、正直者は報われるのです
4. Posted by 管理人(書肆月影)   2009年11月01日 12:41
長靴下をはいたガニ股のピッピさま、もういいかげん五十を少しだけ越えた青年をつかまえて「爺い」と呼んだり、世の中の九割の人はガニ股ではないのに、ガニ股だと言い張ったりするのはやめにしませんか。みっともないですよ。この世は、きちんと線引されているのです。そちらの領域はそちらの領域、わたしは当分線をまたぐことはないでしょう
5. Posted by ブラ汁   2009年11月02日 20:18
そういえば伊那市内ですらキツネとかタヌキは見かけることがあります。

あの街道沿いで外国の国旗を掲げた不思議なお店は他に無いですから、好奇心旺盛な少年だったら入って見たくなると思いますよ。
東京の話を聞かせてあげると食いつくかも。
6. Posted by 東京の少年   2009年11月03日 06:55
伊那市内と高遠長藤の違いが判りません。どちらにも狐狸がでて何の不思議も感じないのですが、ボクは。
7. Posted by 管理人(書肆月影)   2009年11月03日 22:13
ブラ汁さん、どうもです。例の少年はその後、また店を訪れ、クッキーを買ってくれました。妹らしき娘もいたなあ
8. Posted by 管理人(書肆月影)   2009年11月03日 22:20
東京の少年さま、高遠の狐狸は伊那の狐狸とはえらい違いですぞ。人をだますことなど考えたこともなく、腹のなかはまっさらさら。
9. Posted by ブラ汁   2009年11月03日 23:26
それは伊那市内の狐狸に失礼ですよ(w

高遠も行政上は「伊那市内」ですからね。
10. Posted by 信濃屋中米   2009年11月04日 07:10
伊那市内の(尾逆とか言う)偉いキツネは、またまた市民を騙そうと尾っぽを立てるそうではないかいな。
11. Posted by みらい塾女将   2009年11月04日 19:52
長藤文庫の大塚さま
こんばんは   昨日はお邪魔しました。美味しいコーヒーにケーキまでいただきご馳走さまでした。それから今日は来て頂いたのにまたまた留守をしてしまい会えなくて残念でした。伊那文化会館で食品衛生管理者を対象にした講習会があり友人と出掛けていたものですから・・・・。それからプレゼントしてくださった平野さんによろしくお伝えください。蔵の本棚がとても賑やかになって嬉しいです。また行きます。皆さん狐と狸で盛り上がっていますね〜。そういえばわたし今日講習会場の大変広い文化会館で狐に化かされそうになりましたよ・・・・・・・。アそうではないか・・・・ただの方向音痴でした。
12. Posted by 管理人(書肆月影)   2009年11月04日 23:57
女将さま、どうもです。たくさんいただいたアルストロメリアの花が、店内の武骨で爺臭い雰囲気をだいぶ和らげていると思います。いつもありがとうございます。今日は帰りに、「桑田薬師堂」に初めて寄ってみました。ここの枝垂れ桜はさぞきれいなのでしょうね

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