川の流れのように

神楽坂次元とは、新鋭小説家達のコラボレーションにより生まれた恋愛および推理小説を得意とする小説家。ストーリーは革命的、それはリレー形式で展開されるため必然物語は斬新且つ新鮮な切り口により進めらます。 歴史および科学的見地に基づく記述が得意なもの、際立ったインスピレーションにより情景を文言に映し出すすことが得意なもの、老若男女問わず楽しめるリレー小説を神楽坂次元は皆様にお届けします。

第010話 過ぎ去った時間5

神楽坂下でタクシーを降りた私は、先ほどケータイぐるなびから予約を入れた鳥料理の店に行こうと考えていた。

彼女を待つ間、煙草を吹かしながらボンヤリと周りを眺める。交叉点は飯田橋駅へ急いで向かう人が目立つ時間帯となっていた。

彼女からの着信を待ちながら、二本目の煙草に火を着けようとしたその時、聞き覚えのある声が聴こえる方を振り向いた。

第009話 Call Time

少し歩き疲れて気がついて見ると、もうベルコモンズまで来てしまっていた。

情報に飢えたひとり娘は携帯電話を手に取り、時間を確認しつつ着信履歴を回転させる。

「あっ!」

携帯を覗くと着信履歴が2件ある。急いで確認してみると、一件は堀君からでもう一件が「あのひと」からだった。

なぜ気が付かなかったのかしらん?
急いで掛け直す。

「もしもし、私です。お電話頂いたようですが・・・」
「久しぶりですね。まだお時間あるようでしたら一杯いかがかと思いましてね。」

「私、大丈夫ですよ。いまどちらですか?」
「実はさっき電話して繋がらなかったもので、もうタクシーに乗っているのです。ちょうど飯田橋駅あたりだから、神楽坂下の交差点で待ち合わせはどうかな?」

「私は今外苑前なので、10分くらいで到着できると思います。タバコでも吸って待っててください。」
「はい、りょーかい。」


いやー、想いは通じるものね。
強く想えば叶うもの、悠美だけいい思いするなんて不公平よね。

タクシーに飛び乗り、ストッキングの伝線をチェックし、グロスを塗り替え、お化粧直し、あの人に会いに行く。


もうひと月も会っていないんだもの。


会いたいわ。
素直に会いたい。


いつも別れたあと、後悔する気持ちを思い出しながら、キラー通りを新宿方面へタクシーを飛ばす。

今日は最後までいきたいわ。ルージュ

第008話 期待

e004c034.jpg「もしもし?」

「夜分遅くにすいません、来週月曜日C社訪問の件なんですが、、、」

「もしかして堀君?堀君なの?先に名乗りなさいよ!」


・・・


こんな時に仕事の話なんて!ヒステリックなほうではないけれど、こうもタイミングが悪いと、女のサガがどうしても出てしまう。良くないことと判っていながらも、何時ものように堀君に説教してしまう。

「あーあ、嫌な女上司でしょうね。」

大きなため息と共に、私の期待は残念ながら裏切られた。週末のお楽しみはどうも無いご様子。あの人から着信あるわけないか。。。

今晩は女の友情を優先、お愛想してからぐてんぐてんの悠美に声を掛ける。


「悠美!今日は家に帰るわよ!」


声を掛けると悠美はしっかりとした口調で、ゆっくりと私にこう告げた。


「ごめん、たった今さっき話してた人から電話あったの。これから新宿行くわ。」


というと、悠美はクリスチャン・ディオールのジャケットをさっとはおり、あんなに酔っ払っていたにも関わらず、歩き辛いだろうピンヒールのかかとをカツンッ!と決め、颯爽とお店を出てゆく。


「ちょっ、ちょっと待ってよ!」


自分だけ取り残された寂しさと、予定の入った悠美に対する嫉妬で私はどうして良いか判らず、とりあえず悠美の後を追った。


「ごめん、ひとりで行かせて!こんな事、滅多にないの。」


悠美の口調は懇願する様だった。



私はタクシーに乗り込む悠美を見ながら、未だ携帯の着信に期待を寄せた。


ピンヒールが奏でる寂しい足音。私のトレードマークが泣いている。


「私にだってこれから連絡くれる人、いるもの!」


気が付くと、私は青山通りを外苑方面へ歩き出していた。

<つづく>

第007話 女同士の夜5

fd63f482.jpg「女だけの飲み会も悪くないわ。」


いつもという訳じゃないけど、ここ最近回数が増えているような気がする。

表参道交番前で待ち合わせして、アニベルセル前を通り過ぎ、マクドナルドの角を右に折れると、なかなかお洒落なダイニングが数多く続いている。熊野神社まで行こうとなると大変だけど、この歳になると20代の頃に通ったお店にはやっぱり入りづらい。

そんな時は、同年代の女友達を誘って大通りから少し離れたダイニングを選ぶようにしている。


「いー男いないの?」


こんな言葉が口癖になった悠美は、大学時代からの友人。日系商社の管理職として、会社では凛として年下女子社員からはキャリアウーマンとしておそれられ、年下男性社員からはおねいさまキャラとしてもおそれられているみたい。とはいえこんな悠美でも結婚願望は人一倍強く、あと数年とリミット迫っていることに焦りを感じているみたい。

私も人のことは言えないけど、悠美の口癖に同感している。結婚もしたいし子供もほしい。だけど、私たちの目に叶う男子がいないことが残念で仕方がない。。。


「ねぇねぇ悠美!この前の人とはどうなったの?」


悠美はもともとオープンな性格なだけに、お酒の力を借りずともこれまでの男性遍歴について私たち逐一話してくれる。


「えー、あの人のこと?あれは駄目よ、たぶん女がいるわよ。」


ふ〜ん。選び放題というわけではないけれど、悠美にしろ私にしろ、昔はもてたし、第三者的にみても綺麗なほうだと思うから、男が寄ってこないこともないわ。だけれども、条件の良い男かどうかは別問題。


悠美は過去にさまざまな経験をしているし、私も悠美には負けないくらいの経験があったりする。


私は自覚として少し恥ずかしがりやなところがあるし、仲の良い友人にも知られたく事もあるし、何より「自分だけいい思いして!」なんて言われたくないから、なかなか悠美のように自分の恋愛話を披露することはない。聞き役になることが多いんだけど、その話を聞きながら自分に当てはめてみたりする。


「30代半ばでバリバリ働いている男の人って、本当に忙しいとおもうわ。」


私の意見を聞き入れるような状態じゃないけど、悠美には私の意見をいつもぶつけてみる。

女同士の会話なんて、女同士の友情なんていい加減なものよ。
悠美の天晴れな酔っ払いっぷりを横目に、「あの人からメールでも電話でも掛かってこないかしらん。」なんて乙女チックな想いを抱いた入りして。

終電まであと1時間。酔っ払いは放ったらかしでも良いかしら?と思った矢先に、携帯の着信音が鳴る。

<つづく>

第006話 クラウン

明日の事を考える時、楽しみでどうしようもなく「早く明日にならなかしら」と思うときがあれば、憂鬱でどうしようもなく「明日にならなければいいのに」と思うときがある。

一生を通じて、この相反する思いはどちらが多いのだろう。一般的には、おそらく、どちらでもなく「なんとも普通」に思う日が一番多いのではないだろうか?

なんとも普通な日々を送るということ自体が悪い訳ではないのだろうが、好かれ悪しかれ「何かある」事を期待して私たちは生活していると私は思う。

bg15なんとも普通な日々を送り、期待が呼び込む幸運と悪運に左右され、とはいえ良く生きたいが為に自らの道を一生懸命予測し、結果的には網の目を掻い潜るかのごとくプラスを求め生きる、これが人の性ではないだろうか。

毎日を楽しく過ごす事は難しい。また、毎日を辛く過ごす事も難しい。

3ヶ月前の長い夜の出来事は、まさしく期待が生んだ幻想であり、偶然がもたらした幸運といった運命に導かれたサイキックバトルだったように思う。


・・・・

御茶ノ水駅と共に聖橋が見えてきた。
携帯電話が誕生し、人の生活も大きく変わった。ビジネスチャンスや人との出会い、更には幸運も不運も運び込むようになった。既に習慣と成りつつある何事もないときに携帯電話を覗き込む行為は、人の期待が情報によって満たされる行為そのものをあらわすようだ。

「なんの連絡も、誰からもなしか」


期待を裏切られた時に感じる思い。主観的な感傷に浸ることもまた一興。しかしながら、私の思いはたぶんに一般的であろうから、私と同様に誰かからの連絡を待つ人がいるということも、間違ってはいないだろう。


・・・・

腕時計を見つめ、最後の一本となったタバコに火をつける。
終電まで後1時間ほどあるようだ。

<つづく>
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