先日(19日)、映画「キングダム・オブ・ヘブン」を観て来ました。
舞台は、12世紀のエルサレム。十字軍(キリスト教側)対サラセン軍(イスラム教)の死闘が熱いです。また、主人公イブリンの成長物語としても見れます。
壮大な叙事詩にして叙情詩、という訳ですね。
 
監督は、リドリー・スコット。主演は、オーランド・ブルーム。この組み合わせは、「ブラックホーク・ダウン」(2001)以来です。この時のオーランド・ブルームは、武装ヘリから落ちて意識不明となる新米兵を演じていました。いわゆる単なるチョイ役でした(笑)
しかし、ようやく主役に抜擢です。
 
「ブラックホーク・ダウン」は、私の一番お気に入りの映画です。英語字幕も含めて、もう5・6回は観ました。
この映画では、リドリー監督はリアリズムに徹底し、単なる戦争映画ではなく、ひとつのドキュメンタリー映画として完成させました。
「これは観客に問いかける作品であって、答えを提供する作品ではない。」(@リドリー・スコット監督)
アメリカ兵もソマリア武装兵も、同じ兵士として扱ったのが印象的でした。事実の描写に努められており、戦争とは何かについて考えさせられる映画でした。
米国防省が協力し、実在の兵器や兵士を登場させた事でも有名です。武装ヘリであるブラックホークとそのパイロットは、全て本物でした。
もちろん、戦争映画なので、戦闘シーンの迫力も見応えがありました。
またリドリー監督は、美術の勉強をしていたので、自分で絵コンテを書く程です。その映像美は、素晴らしいの一言です。
 
オーランド・ブルームは、「ロード・オブ・ザ・リング」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「トロイ」といった映画で確実に力量をつけてきました。
この映画では主役に抜擢されましたが、堂々とした演技で見事にその大役をこなしています。
 
 
評価:★★★★★★☆
難を言えば、主人公をクローズアップする余り、脇役の人物描写が足りなかったかな。聖職者ホスピタラーは、2回程出てきましたが、その度に「この人、誰?」と思いました。
字幕の説明もほとんど無い為、1回観ただけでは作品の世界を理解できないでしょう。ある程度の予備知識が無いと、訳が分からぬ間にクライマックスまで進んでしまいます。

ハイライトとなるエルサレム攻防戦は、圧巻の一言。その迫力に、ただ息を呑むばかりです。リドリー監督の映像へのこだわりも、随所で感じました。
この映画でもリアリズムは徹底しており、巨大なセットにこだわりの衣装と武器で、当時のエルサレムの雰囲気を忠実に再現しています。純粋に史料映像としても価値があり、大変勉強になりました。
高校の時は、世界史を勉強しましたが、いまいち十字軍の時代のイメージが沸きませんでした。単なる年表の羅列でしかなかった訳です。しかし、この映画を観て、少なくとも12世紀後半のイメージは沸きました。それだけでも、観た価値はあったと思います。

登場人物は個性的ですが、ほとんどが実在の人物だというから驚きです。まさに、事実は小説よりも奇なり、です。
敵将のサラディンが、敵との対話を好んだ、というのが面白かったです。その為、敵味方に関係無く、登場人物に感情移入できました。
和平に努めたボードワン4世は、真のリーダーでしょう。後を継いだギーは、やたら好戦的でどうしようも無い暴君です。この対比も興味深かったです。
そして、何といっても主人公イブリンは大変魅力的な人物です。エルサレム攻防戦では、いかんなくリーダーシップを発揮します。騎士道精神に則り、少数の軍勢で20万の大軍に立ち向かいます。そして、エルサレムの市民を見事に守りきります。
あっ、ネタバレですね。でも、これは史実ですから、まあ大丈夫でしょう(^^;

キリスト教側とイスラム教側の両方を対等に扱った、という意味でも印象的でした。主人公がキリスト教側なのに、イスラム=悪として捉えていないのですね。これには、「ブラックホーク・ダウン」との共通性を感じました。もう一つ共通性を挙げると、主人公の戦いが終わったのに、まだ戦いに赴こうとする人物がいる、という事です。「ブラックホーク・ダウン」では、カリスマ的なデルタ隊員(エリック・バナ)が、戦場となったソマリアの市街地に、また潜入しに行きます。そして、この映画のラストでも、英国の獅子心王リチャードが、再び鍛冶屋に戻った主人公のそばを通り過ぎるシーンが出てきます。リチャードは、十字軍として戦いに赴く訳です。


単なる壮大なスペクタル映画ではなく、一人の男の成長物語としても観れますし、歴史の勉強にもなりました。その意味で、3回くらいは繰り返して観れる面白さです。
2005年前半のベスト映画でしょう。