第4回となります。

第2回では3つのタイプについて、第3回では3つの世代について書きましたので、若手女優界の現状を大まかに捉える事ができました。

今回は、若手女優界において、静かに、そして確実に進行している世代交代について、私なりの展望を書きます。

@この記事では、最新情報を入れた方が良いと判断して、2008年に入ってからの出来事も書き加えてあります。


【現状】
さて、前回の若手女優ピラミッドを作成した頃から、1年ほどの間で、若手女優界(?)では大きな動きがありました。

ざっと挙げるだけでも、

1.宮崎あおいの入籍報道
2.雑誌モデル出身のU-20女優たちが、映画デビュー&初主演映画(榮倉奈々・新垣結衣)
3.実力派U-20女優が、映画・ドラマの主役で活躍(堀北真希・戸田恵梨香)
4.実力派U-17女優の初主演映画が、続々と公開(成海璃子・大後寿々花・北乃きい)


これらの動きから分かる事は、若手女優界において世代交代の波が大きく押し寄せてきている、という事です。しかも、この動きは、かなり急速に進行していきそうです。

では、この4つの出来事について振り返りながら、展望を書いていきます。

【展望】

1.第1世代の若手女優カテゴリー卒業
1は、まさに象徴的な出来事でしょう。宮崎あおいは、映画「ただ、君を愛してる」「初雪の恋」において、同年代のライバルを圧倒するレベルの演技・魅力を披露した直後なだけに、一つの節目を作った感があります。
同じ第1世代の蒼井優と上野樹里も、もう22〜23歳を迎え、(女子中高生から見て)等身大の演技ができる若手女優としては、旬を過ぎたと思います。若手女優のカテゴリーは、もう卒業です。若手女優ピラミッドに留めておくのも、この2008年が最後です。次の世代に、主役の座を譲る時が来ました。
これからの3人は、20代女優として、より大人っぽい役柄(OL、主婦など)での出演が増える事でしょう。
実際、宮崎あおいは、大河ドラマ「篤姫」において、篤姫が少女から30〜40歳の大人になるまでを演じる予定です。武家社会に生まれたファーストレディとしての役柄は、もう若手女優のカテゴリーからは逸脱しています。
蒼井優は、ドラマ「おせん」において、朝から酒を呑む破天荒な若女将を演じています。これまた、若手女優カテゴリーでは収まりきらない大人びた役柄です。今夏公開予定の映画「百万円と苦虫女」では、短大を卒業したフリーター役を演じます。
上野樹里は、映画「奈緒子」では、かろうじて女子高生(笑)の役柄でした。これからは、もう学生の役柄ではなく、何かの職業に就いた女性の役柄が回ってくると思います。とりあえず、ドラマ「ラスト・フレンズ」、9月公開の映画「グーグーだって猫である」で、どのようにイメージチェンジしていくのか、でしょう。

2.ティーン雑誌モデルが、映画界へ進出

2007年は、榮倉奈々(「SEVENTEEN」専属モデル)と新垣結衣(元「ニコラ」モデル)というティーン雑誌のカリスマモデルが、映画に登場した記念すべき年となりました。演技面での経験がほとんど無かった2人が、いきなり映画デビュー&初主演という抜擢劇は、最近の若手女優ブームの流れを象徴すると同時に、世代交代という意味でも、非常に目を引く出来事でした。
そもそも、この抜擢劇が、この若手女優概論を書くきっかけでもありました。
概論1では、主演映画が多すぎる為に新垣結衣が潰されるのではないか、といった趣旨の事を書きました。しかし、昨年に出演した3つの映画(「恋するマドリ」「ワルボロ」「恋空」)では、思ったよりも演技の質が良かったし、体調不良を隠して「恋空」の舞台挨拶に出た事が好感度のアップにつながるなど、女優業において概ね成功したと言えるでしょう。舞台挨拶での不始末で女優業の謹慎を強いられた沢尻エリカとは好対照の結果に終わりました。さらに、CDデビュー&武道館ライブなど、マルチに活動するタレントとして、人気がうなぎ上りとなっていきました。
まあ、沢尻エリカも、元雑誌モデル(「ニコラ」)だった訳ですが(笑)


3.第2世代の活躍
第2世代において、2で取り上げた榮倉・新垣の2人とは少し違う特徴を持つのが、堀北真希・戸田恵梨香です。堀北・戸田ともに、モデルとしての活動はほとんど無いですが、演技面での経験は結構積んでおり、世代交代を論じる上での本命的存在と言って良いでしょう。
戸田恵梨香は、主演ドラマ「ライアーゲーム」が大好評に終わった事で、これからも活躍の舞台が増えていくと思われます。堀北真希に関しては、すでに映画において十分なキャリアを積んでいるので、ようやく彼女の時代が来たという感じです。

いよいよ、若手女優界が第2世代を中心にして回っていく時代が来ました。

と、ここまで書けば、若手女優界における世代交代は、第1世代から第2世代へと順調に行われつつある、と見るのが妥当なはずです。
しかし、もう一つ下の世代が、無視できないほどに大きな存在となってきており、余談を許さない状況になっています。

4.第3世代の台頭

去年は、成海璃子が、主演映画(「神童」「あしたの私のつくりかた」「きみにしか聞こえない」)に3本も出演しました。
成海璃子は、天才子役としての名を欲しいままにしてキャリアを積んできた、いわば「神童」と言える大器です。その成海璃子が、映画界での活動を本格的にした事で、若手女優界の世代交代は一気に進むかと思います。
また、ドラマ「ハチミツとクローバー」では、苦手と思っていた不思議ちゃんタイプのヒロインである花本はぐみを、極めて自然体で演じ切り、新たな境地を切り拓きました。映画「ハチミツとクローバー」では蒼井優が花本はぐみを演じていましたが、演技・魅力において、どちらも甲乙つけがたい内容でした。

そんな成海璃子に対して、どんなタイプの役柄もそつなくこなせるマルチタイプ女優の誕生を、目の当たりにした思いです。
とはいえ、成海にとっての主な活動の場は、あくまでヒロインタイプとしての役柄でしょう。持ち前の大人びたルックス・スタイルを生かさない手はありません。

今後の成海璃子は、「ヒロイン系(ピュア)」タイプの筆頭である宮崎あおいの後継者を目指しつつも、幅広い役柄での出演を重ねて、未来の大女優への道を歩んでいく事でしょう。堀北真希との頂上決戦は、近いうちに訪れる事でしょう。

大後寿々花は、昨年は、映画「遠くの空に消えた」・ドラマ「セクシーボイス アンド ロボ」」への出演をして、順調にキャリアを積んでいると思います。主演映画での実績が、成海に遅れを取ってはいますが、ここから挽回していくのは十分に可能な年齢なので、今後に期待です。
大後は、「3つのタイプ」という記事において、あえてどのタイプにも入れませんでした。第3世代の中では、一番捉えどころが無い若手女優だと思います。
あえていえば、
大後寿々花は、「天然系(不思議ちゃん)」
タイプの代表である蒼井優の後継者を目指していくのが妥当ではないかと思います。
現状では、榮倉奈々・多部未華子あたりが当面の目標でしょう。

北乃きいは、バイタリティー溢れる演技ができるので、「バイタリティ系(イマドキ)」タイプの第一人者である上野樹里の後継者になるのではと予想します。
現状では、新垣結衣・仲里依紗あたりが当面の目標でしょう。

このタイプは、一番生存競争が激しいので、楽観を許しません・・・。

夏帆は、モデル然としたルックス・スタイルを除けば、演技力・キャリアなど、あらゆる総合面において、成海・大後の後塵を拝してきました。
ですが、今年2月に公開された「東京少女」で大変身を遂げました。もはや、映画館のスクリーンを通しての魅力は、あのWあおい(宮崎あおい・蒼井優)にすら匹敵すると言える大きな存在になりました。4月から公開の「砂時計」において、映画女優としてのキャリアを大幅に積み上げていくと思われます。

@私は、「東京少女」の舞台挨拶を観に行きましたが、何となく女優としてのオーラが漂ってきたという印象がありました。スラッとした手足、モデル然とした整った小顔、それらとは対照的な少女っぽいあどけなさ、があるとんでもない美少女でした。

夏帆は、第3世代においては、トリックスター的な存在だと思っています。成海璃子とは違う意味で、マルチロールな活躍を見せていきそうなのです。
映画「天然コケッコー」「うた魂♪」においてはコミカルな不思議ちゃんタイプ、映画「東京少女」においてはヒロイン系タイプ、を演じていましたが、役柄への高い適応能力があるので、バイタリティー系タイプもそつなくこなすでしょう。
彼女の動向次第で、若手女優界の流れが大きく変わっていきそうです。なので、夏帆個人としての見通しを立てるのは、非常に難しいです。
ただ一つ言える事は、
これから来るべき「成海・大後」時代を迎えるに当たっての数年間、夏帆が若手女優界を引っかき回していくのだろう、という事です。


【見通し】
第1世代は、開拓者というだけでなく、3つのタイプを代表するプロトタイプ(試作)的な存在でもあります。

現在、その第1世代をひな形にして、下の世代からは、たくさんの若手女優が映画界への進出を果たしているのですが、その事は逆に、若手女優界における激しい生存競争の幕開けをも意味します。

第2世代にしろ、第3世代にしろ、後進の若手女優は、少なからず第1世代の若手女優の影響を受けてきたと言えます。
しかし、同じ影響を受けているとは言っても、幼少の頃から主役級の配役を任されて場数を踏んでいる第3世代の方が、将来的な成長の度合いは大きいと思います。なので、世代交代は、第2世代を飛び越えていくと思われます。
すなわち、これから1〜2年は、第2世代が耳目を集めていくけれど、若手女優界を牛耳るまでにはならないでしょう。そして、水面下において、第1世代から第3世代へと着実に世代交代が進行していく事でしょう。

世代交代の一つの目安は、映画・ドラマの主演本数の多さにおいて、第3世代が第2世代のそれを上回った時だと思います。今年に入っての現時点では、ほぼ互角だったような・・・。

したがって、2008年においては、第2世代と第3世代における後継者争いが本格的になり、2009年にもなれば大勢が決し、2010年頃には完全に決着が着いているかと思われます。

【まとめ】
「才能は隔世遺伝する」という説があるらしいですが、現在の若手女優界においても、同様の事が言えそうです。
今まで、若手女優界のトップには、宮崎あおいと蒼井優(いわゆるWあおい)が君臨してきた訳ですが、あと数年のうちに、成海璃子・大後寿々花の両名にトップの座が引き継がれるのではないか、というのが私の見立てです。


【おわりに】
個人的な事情から、ここまで書くだけで、約一年もかかりました・・・。しかも、長々とした文章になりました。
もっと、業界全体を見渡した世代論については、

「シネマガールズ vol.2(双葉社)」2008年

http://www.futabasha.co.jp/?isbn=978-4-575-47994-2

というムック本において、高倉文紀氏が、「08年日本映画をリードする3世代の若手女優たち」という興味深い評論を展開しておられます。
3世代の年齢層の区切り方が、微妙に私と違うのですが、それぞれの世代を代表する若手女優のラインアップに関しては、奇妙に一致しています(笑)
プロのライターならではの突っ込んだ分析が素晴らしいですね。

当ブログにおいて、若手女優論を書くのは、これで最後としますm(_ _)m
今後は、新ブログ(タイトル未定)の方で、続きを展開していければと思います。そちらでは、第4世代・第5世代も見据えた、さらに大きなスケールでの世代論に挑戦していきたいです。

では、長々と、ありがとうございました。