2chオカルト板・怖い話・洒落怖怪談の厳選まとめ

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2012年12月

古い小学校

その日は残業で、終電で最寄り駅に着いた 。
駅からの帰り道には地元で一番古い小学校がある、そこでそれは起きた。

その小学校の脇を通った時に校庭で子供達がはしゃいでるような声が聞こえてきた。
何を言ってるのかは聞き取れなかったけど数十人くらいの子供がワーワー騒いでるようだった。

空耳かな?と思ったけど妙にハッキリ聞こえたので自転車を止めて様子を伺った。
それでも子供達の騒ぐ声が10秒くらい続いたので空耳とは思えない。
なんで深夜1時に子供達が集団で騒いでるんだろう?
不思議に思って、小学校の裏口から校庭を覗いた 。

校庭は真っ暗でこの暗闇の中で子供達が騒いでるのは不自然というかありえない
校庭じゃなくて校舎か体育館に居るのか?と思い、薄っすらと街灯で照らされた校舎と体育館を見たが、真っ暗で人が居る気配は無い。
その時は恐怖心は全く無く、何故かこの声の方へ行きたくなり裏口の門をよじ登って校庭内に入いった。
(今にして思えば何故校庭内に入ったのか不思議でならない)

校庭内に入りさらに声の方へ近づくとその声はさらに大きく鮮明になっていった。
さらに歩いていくと声は前後左右から聞こえてきた、子供達の集団の真ん中くらいに居るのだろうか?
その時、それが子供達がはしゃいでいる声ではない事に気付いた。
「助けてえぇ、苦しい・・・」
それはもがき苦しんでいる人達(女性と子供のようだった)の絶叫と悲鳴だった。

その途端体中が火傷しそうなくらい熱くなり、焦げるような異臭とともに煙で目に激痛が走り呼吸困難になった。
同時に何人もの人達?が俺の体にしがみ付いてきたが人の姿は見えない(正確には真っ暗闇なので見えなかった)。

俺は必死でその人達?を振り払いながら外の街灯を頼りに裏口を目指した。
なんとか裏口までたどり着くと必死で門をよじ登り外へ脱出したがその途端悲鳴が止み、熱と煙も消えていた。

翌日爺ちゃんにこの話をしたら、爺ちゃんからその小学校は戦時中には防空壕があったのだけど大空襲でその防空壕が爆破されて中に居た数百人がほぼ全員犠牲になった事を教えられた。

俺はタイムスリップしたのだろうか・・・
もしあの時しがみ付いてきた手を振り払う事が出来なくて校庭から出られなかったらどうなっていたんだろう。

少女のお礼

この話は、僕が中学生だった頃、友人の家にとまりに言った時、聞いた話。

友人と僕が、怪談をしていると、友人の親父さんが入ってきて、

「お前たち幽霊の存在を信じてるのかい?俺も若い頃一度だけ不思議な体験をした事はあるよ」

と、話してくれました。

この話は以前、少し大げさに編集されてしまいましたが心霊関係の雑誌に投稿した事もある話そうだ。

親父さんはゆっくりとした口調で話をはじめた。

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あれは、22才の頃のことだよ。

俺は高校生の頃陸上部に所属していて、
その頃の同級生と久し振りに集まってキャンプに行く事になった。

場所は、静岡県のあるキャンプ場。そこには電車とバスを使い、更にそのバスを降りてから1時間位掛けて歩く。

俺たちは3人で出発した。

バスを降りて、歩いてキャンプ場へ向かう途中、道の脇にまだ真新しい「花束」が供えられているのを見つけた。

多分、俺を含めたみんなが、その花束の置かれている意味を理解していたとは思うけど、はじめはみんな何も言わなかった。

そして、そこを通り過ぎようとした時、仲間の一人が、
「なあ、みんな、この花束・・・きっと最近、ここで、事故か何かで、亡くなったんだよな」
と言った。

みんな気にはなってたのか、キャンプのために持ってきたお菓子や果物をそこに供えて、合掌してから、キャンプ場へ向かったんだ。

キャンプ場に着くと、天候もあまりよくないせいか、自分達を含めて、3組だけだった。

河原にテントを張り、キャンプファイアーなどやりながら、昔話をしてるうちに、夜もふけてきた。

そしてそろそろ寝ようかとテントに入ると、雨が急に強く降って来たんだ。

しばらくすると、他の二組のテントも川が増水するのを懸念して、山すその方へテントを組み直していた。

俺たちも「こりゃ、増水してやばいな」といいながら、ほかの二組同様に山すそまでテントを移動したんだ。

テントを移動してから、再び寝ようとすると、雨が更に強くなり、雷もなってきた。

「ひどい雨だ」と思いながらもムリヤリ寝ようとした時、テントに何か、ぶつかる音が聞こえてくる、

「ボン、ボン」と・・・

それは、雨の音ではなく、石か何かを投げられてるような音だった。

「きっと、隣のテントのいたずらだな」と思い、
「いい加減にしろ!」と外に出ると、誰もいない・・・

一応隣のテントの中を覗いたものの、みんな熟睡していて、とても、いたずらをした気配もない。

もう一組も同様だった。

気を取り直しテントに戻り、寝ようとすると、

「ボンッ!ボンッ!」
と先程よりも更に、力強く、テントに何かをぶつけられている。

仲間の一人が、そっと、外を覗いた・・

「あっ!女だ!白いワンピースを着た女がこっちに向かって、何か投げてるぞ!」

と言ったから、捕まえてやろうと、とりあえず全員で外に出て、女を追いかけた。

女は、キャンプ場を飛び出して、行きに通ってきた道をバス停の方へ向かって逃げた。

俺達は、正直な話、相手が女だし、自分達は元陸上部という事もあって、すぐに捕まえる事が出来ると思っていた。
しかし、初め20メートル程しか離れていなかった距離が、ぐんぐん離されてしまう。

しかもこちらは、全速力で走ってるのに、女は時折、こちらを振り返る余裕すらある。

体力も限界に来て、俺達はみんな立ち止まった。

「一体なんなんだ、あの女は!」
「なんかあの女変だよ、いくらなんでも足が速すぎるし。この辺り、バス停まで降りないと民家もない・・・かといってキャンプ場の他の二組にいた女じゃないし」

そうだよな、とみんな不思議な気持ちでいると、雨がさらに強くなり雷もひどい。

テントに引き返そうとしてふと道脇を見ると「花束」が置いてあった・・・

そうキャンプ場に来る途中に合掌した場所だ。

「オイ、さっきの女、まさかこの花束の幽霊じゃないのか?行きに余計な事したからかな・・・黙って通り過ぎた方がよかったのかな」

「でも、俺達ただ、合掌して、お供えしただけだぜ」

モヤモヤした気持ちのまま、雨の中をキャンプ場へ戻った。

そしてキャンプ場へ着き、俺達が見たものは・・・

なんと、土砂崩れで跡形もなく潰れていたテントだった。

俺たちは急いでキャンプ場の公衆電話から警察に連絡をした。

警察が来るまでの間、俺たちの隣のテント2組も土砂に生き埋めになっていたので、
必死に助けようとしたが、土砂が積もっている高さは5メートルを超えていて、中々作業が進まない。

やがて警察が駆けつけ、地元の報道局も駆けつけてきた。

俺たちは、女の存在も含めて俺たちだけなぜ、助かったのかを話した。

しかし、後から報道されたのは、
「危機一髪、土砂が落ちてくる音に気がつき助かった」
と報じられていた。

地元の自衛隊の人達が来て、土砂の中から、隣のテントで寝ていた人の遺体を運び出す作業が行われている。

俺達は、ただボーっと見ていた。

「もし、あの時、このまま寝ていたら・・・」と思うと、とても怖くなった。

すると、自衛隊の人が
「おい、君たち。持ってきた備品とか、私物、この土砂だし、全部台無しだと思うけど、一応今から、土砂を除けるから、持って帰れる物は持って帰ってよ」と言われた。

正直、亡くなった人の事を考えたら、私物なんてどうでもよかった。

案の定、私物が次々出てきたが、どれもこれも、使い物にはならなかった。

そして、俺達のテントを張っていた場所から、奇妙なものが出てきた。

それは、数種類の果物だった。

そしてその果物を見て誰もが思った。

「これはあの時、お供えした果物だ!」

そして俺たちはキャンプ場を後にした。

バス停まで警察の人に車で乗せていってもらう事になった。
途中、花束の所で停めてもらった。

お菓子は残っていたが、やはり果物は一つも残ってなかった。

「きっと、この幽霊が、危険を知らせてくれたんだ。果物をテントに向かって投げてくれたんだ」

と、みんなでもう一度、合掌した。

車に戻り、警察官が話をしてくれた。

「確かにあの場所で、一週間ほど前、キャンプ帰りの女の子3人組が、事故で1人だけ亡くなってるよ。」

その女の子は、事故に遭った時、白いワンピースを着ていたという事だった。

死体のフリをして

ある田舎でのお話。

マサオはいつだってニコニコしていた。すこし頭が弱いところもあった。その為、いつもいじめられていた。
中でも特にガキ大将のタロウは、おもちゃのようにマサオをいたぶって弄んだ。
時々、見かねてかばってくれる人もいたが、
マサオは殴られて赤黒くに腫上がった顔で、ニコニコしながら「えへへ」と笑うだけだった。

ある夏の夜。村中の悪ガキを集めてタロウが言った。
「先週死んだ山田のジィさんを掘り起こして、死体を背負ってここまで持ってこい。
 それできたら、お前ぇの事、もういじめねえよ」
「勘弁してくれ。オラ、怖いの苦手だ」
「うるせぇ!今夜夕飯食ったら、山の入り口に集まれ。マサオ、逃げんじゃねぇぞ・・・」
タロウには考えがあった。
先回りして自分が山田のジィさんの墓に入り死体に成り済ます。何も知らないマサオが自分を背負う。
その時にお化けのふりをして脅かしてやろう。
そんで、山から出たら皆で大笑いしてやろう。

日が落ちて山の入り口。
悪ガキどもが集まった。マサオもいた。いつもの様にニコニコして、でも明らかに怯えきっていた。
そして、皆にせかされマサオが一人山に見えなくなると、タロウも急いで山の中へ消えていった。

真っ暗な山の中。明かりは手に持ったろうそくの炎だけ。
マサオは山々の出す音に肩をふるわせながら半刻ばかり歩き、
つい最近掘り起こされたような真新しい土盛りの前に辿り着いた。山田のジィさんの墓だ。
「ホントにすまねえが、今夜ばっかりは、俺におぶられてくれぇ」
独り言を言いながらマサオが墓を掘り始めると、先回りして墓の中にいたタロウは笑いが止まらなかった。
『マサオのやつ、びびっておっ死んじまうんじゃねぇか』

ようやく墓を掘り起こす頃には、ろうそくの炎はとうに燃え尽き、墨汁で染めたような暗闇。
「ジィさん、オラ、こわくてたまらんけぇ、これから村まで走っていくからよ。
 ジィさんを落とすような事があったら、それこそ申し訳ないからな、くくらせてもらうよぅ」
そう言いながら背中にタロウを背負い、真っ赤な帯でしっかり自分と結びつけたマサオは、
山の入り口に向かって一気に走り出した。
タロウは笑いをかみ殺すのが精一杯だった。
こいつは本当に間抜けの大バカもんだ。
どんな顔をしてるんだろう。きっとこれまで見た事もない間抜けな顔をしているぞ。小便も漏らしるんじゃねぇのか。
マサオの背中の上でほくそ笑んだ。

帰り道も半分にさしかかった頃。ようし、そろそろ脅かしてやれ。タロウはマサオの耳元で囁いた。
「おろせ~」
一瞬、マサオの方がビクッと固まったが、足が止まる事はなかった。
「おろさんと、祟るぞ~」
「じぃさん、勘弁してくれぇ、勘弁してくれぇ」
マサオの足はそう言いながらも山の入り口へ向かう。
タロウは思った。これはまずい。
このまま村まで帰られると、マサオを笑い者にしようと墓荒らしをしたことが、村の大人達にもバレてしまう。
「おろさんと耳を食いちぎるぞ~」
タロウも必死だった。村はもうすぐそこだ。このままマサオを返すわけにはいかない。
タロウが耳に齧りついてもマサオは走り続けた。顔を涙と鼻水でグチャグチャにしながら。
「じぃさん、勘弁してくれぇ、勘弁してくれぇぇぇぇぇ」と叫び続けながら。
そして、ついにマサオの耳は、根元からブチッと鈍い音を立ててとれた。
その時、マサオの足が止まり呟いた。その声は妙に冷ややかだった。
「ようぅ・・・オラが、こんなにお願いしてもだめか・・・?」
・・・?
「オラが、ずっと虐められればいいと思ってるんだな」
・・・こいつは何を言っているんだ。
「だったらもうお願いしねぇ・・・。無理矢理黙らせてやる」
そう言ってマサオは、懐から大きな出刃包丁を取り出した。
タロウは度肝を抜かれた。
慌ててマサオの背中から飛び降りようとしたが、帯で縛り付けられた体はビクともしない。
マサオが自分の背中に向けて、出刃包丁を振りかざした。
タロウは叫んだ。
「ま、待て、マサオ!俺だよ、タロウだ、タロウだ!」
こいつはやっぱりアホだ。死人を刺し殺そうとしている。あやうく間違って殺されるところだ・・・。
しかしマサオは言った。冷たく小さな声で。
「そんな事、最初から分かっているわい」

夜泣き峠

その峠は『夜泣き峠』と呼ばれていた。
僕の住んでいる地域では有名な心霊スポットで、
この峠の正式な名称は知らなくても、『夜泣き峠』と言えば地元の人間なら誰でも知っているようだ。

その日の夜、十一時ごろ。僕は友人のKとSと三人で、その問題の峠に向かって車を走らせていた。
「県道って言うから覚悟してのにさー、中々いい道じゃねーか」
そう言ったのはKだ。
確かに、元々は地元民でない僕はこの道を使ったことが無かったのだが、
アスファルトも比較的新しく、ずっと二車線の道路は、心霊スポットに続く山道としては拍子抜けするものだった。
「ユウレイ出るって聞いたから、どんだけ寂れた道なのか!ってドキドキワクワクしちゃってたのにさコッチはよ~。
 あー残念だ。ザンネン。ザ・ン・ネ・ンだあ!」
「うわっ、馬鹿。やめろ」
横を見れば、Kが後部座席から運転席のシートを掴んで揺らしている。
運転しているのはSだった。助手席には僕が座っている。
Sの父親の車だという軽自動車が、フラフラ対向車線にはみ出す。対向車は無い。あったら死んでたかもしれない。
「ここで事故ったら、僕らも幽霊になって化けて出ような。そしたらここ、全国的な心霊スポットになるかもしれんし」
と僕が言うと、「そらいいな」とKが笑う。
騒ぐ僕らの横でSは大きく溜息をついていた。
ちなみにその時のKは酔っていた。僕も酔っていた。
そもそも、宅飲みで酔っぱらった僕とKが、酒の勢いで『何処か怖いとこ行こうぜ!』となり、
運転役として急遽呼ばれたのがSだったのだ。
「……っていうか、道路整備は当たり前だ。そんだけ需要があるんだよ、この道には。
 うちの街から○○(街の地名)に行くのにも、この道使えば早いしな」
この車内で一人だけ酔ってないSは冷静だ。というかぶすっとしてる。
その表情からは、早くこの馬鹿二人から解放されたいと言う気持ちがにじみ出ていた。ごめんなS。
それでも、嫌々ながらも付き合ってくれるのが、こいつの良いところなのだが。
「おれの携帯さ、録音できっから。これで赤ん坊の声取れねーかな?」
「携帯の音質じゃ無理だって。よほど近くで泣いてもらわんと。ってかそんな声録音して何に使うんだよ」
僕がそう言うと、Kはニヤリと笑い、
「んなもん……」
「うん?」
「んなもん、女の子驚かすために使うに決まってんじゃねえかお前ぇ!」
Kのシャウトが車内に響く。
「……お前が子供泣かしたと思われて終いだボケ」
隣でSがぽつりと呟いた。Kはガハハと笑って聞いてなかった。

ところで、Kが言う『赤ん坊の声』とは、僕らがこれから行く予定の廃車峠にまつわる話だ。
『深夜、夜泣き峠を通ると、赤ん坊の泣き声が聞こえる』とは結構有名な話。
周りにも聞いたという人間はちらほらいる。嘘かまことか、聞き違いか幻聴かは置いといて。

峠まではすぐそこだった。僕らの会話は自然と、昔峠で起こったとされる事件が話題の焦点になっていた。
僕が聞いた話によると、ある日、家族が乗った一台の車がこの峠を越えようとした。
そして峠に差し掛かった時、エンジンの故障かなにかで車が炎上した。
男と女は車から逃げたのだが、一人だけ赤ん坊が車内に残された。
その事故以降この峠を通ると、赤ん坊の声を聞こえるようになったという。
しかも、その声が聞こえた者は、絶対に車関連の事故に遭うという。

「おいおいおい!だってよS、帰りは気をつけろよ」
Kの言葉にSが大きなあくびで返した。
そう言えば、電話でSを呼び出した時、彼の声は幾分寝ボケていたのだが、眠たいのだろうか。
「怪談ってのは……、尾ひれしか残ってないもんだ」
あくびの後でSが言う。Sの方を見て「何だソレ?」とKと僕。
「ここで事故が起きれば、ユウレイのせい。あれもユウレイのせい。これもユウレイのせい」
そこで切って、Sはもう一度あくびをする。
「尾ひれだけ……。つまり、身のない話ってことだ。覚えとけ。てかさっきからうるさいよお前ら」
僕とKは顔を見合わせた。二人とも酔いの残った頭ではイマイチ理解できなかったようだ。

「ほら、着いたぞ」
そうこうしているうちに、僕らの車は目的の峠に着いた。
道路脇に車を停めて、三人で外に出る。
外灯が遠く、思いのほか暗い。Sが一度車内に戻って、懐中電灯を持って出てきた。
豆電球の白い光が『夜泣き峠』の周囲を照らす。
何と言うか、心霊スポットと言うだけあって、独特の雰囲気は感じ取れた。
道の両脇はどちらも木が茂っていて、ザワザワと風に揺れる音がする。
いつの間にか、おしゃべりのKも静かになっていた。
「どうする?」とSが言った。
その口はおそらく『早く帰ろうぜ、てか帰らせろ』と言いたいのだ。
僕としても、夜風とこの峠の雰囲気に当たった瞬間、酔いが醒めてしまった様で、実際怖くて帰りたくなっていた。
「うーん。そうだな。何もなさそうだし」
帰るか、とチキンな僕が言おうとした時、
「やべ……」
Kが言った。
「俺、聞こえた」
何が?と言いかけた僕の耳にも、それは入って来た。
掠れた猫の様な、でも猫じゃない。猫は『おぎゃあ、おぎゃあ』とは鳴かない。
これは人間の声だ。赤ん坊の泣き声だ。
「おいおい、嘘だろ」
Kがうろたえていた。僕はもっとうろたえていた。
Sにも聞こえたようだった。
「ん……、あっちからだな」
Sはそう言って、懐中電灯の光をその方向に向けた。
僕らが車を停めた道路脇の反対側に、車一台が通れるくらいの横道があった。
Sが照らしているのは、その細い道だった。
「よし、行くか」と一言。
Sがその横道に向かって行くので、僕とKは顔を見合わせた。Sは果たして正気なのかと思った。
しかし、車のキーも懐中電灯もSが持っているので、僕らは慌ててSの後を追った。

横道の先には、小さな広場があった。
Sが持つ懐中電灯の光が、広場をくるりと照らした。
草がぼうぼうに生えていて、広場を囲むように廃車が数台あった。
古びて赤錆びにまみれたトラックもあれば、比較的新しい車もある。
赤ん坊の泣き声が大きくなっていた。
Sの後ろで僕も泣きそうだった。Kは「やっべー、やっべーよ」をさっきから繰り返している。
Sが一台の車を照らした。その車は黒ずんでいた。外も、中も。ガラスは残っていない。
Sが懐中電灯の光を、車から僅かに下に向ける。
チャイルドシート。
その車の横には、地面に直接チャイルドシートが置いてあった。
隣の車とは不吊り合いな程綺麗で、新品同様と言っても良かった。
泣き声はそのチャイルドシートから聞こえてきた。誰も座っていないはずなのに。
Sがそのチャイルドシートに一歩近づいた。
「おいSやべー。やべーって!」
Kが止めるのも聞かず、Sはチャイルドシートの前まで行くと、その後ろの草むらに向かって手を伸ばした。
僕はその時、泣き声の主にSが喰われるんじゃないかと本気で思った。
「……あった」
僕らの方に向き直ったSが手にしていたのは、一台の機械だった。
ただ立ち尽くす僕らの前で、Sは手にした機械の上にあるスイッチを押した。
その瞬間、赤ん坊の泣き声はピタリとやんだ。
「CDラジカセだ」
Sが言った。
「最初は俺も驚いたけど、泣き声に規則性があったからな。こんなことだろうと思った。
 まあ、イタズラだな。電池が切れるまでは、赤ん坊の声がリピートするようにな」
僕は茫然としていた。Kはぽかんとしていた。
Sよ。お前は何処まで冷静なのだ……。
「……うおおマジかよバカらしー!」
Kが両手で自分の頭を抱え、身体全体でぐねぐねと意味不明な動きをした。彼なりに恥ずかしがっているのだ。
「俺バカじゃん。やべーやべーとか俺バカじゃん!」
それからKはチャイルドーシートに近づくと、一発蹴りを入れた。
そうしてから何を思ったか、倒れたチャイルドシートをまた元通りに立たせると、
「お前ら、写メれ!」
その上にどかりと腰を下ろした。
チャイルドシートに大の男が座っている。真夜中のこんな場所で。
その滑稽な光景に、先程までの恐怖の感情も消えうせ、僕は声に出して笑った。
「アホらし」と言いながらも、Sが自分の携帯を取りだして、カメラで撮った。
フラッシュ。Kはふんぞり返っていた。僕も笑いながら、その姿を携帯で撮った。
「……おぎゃあ、おぎゃあ!」とKが叫びだした。さらに座った状態で手足をバタつかせる。
僕はまた笑った。Sも笑っていたと思う。
「おぎゃあ、んぎゃああ、んぎゃああ」
僕が、おや、と思い始めたのはそのあたりからだった。
「んぎゃあ、ん、んぎゃああ、おぎゃああああ!」
「おーい、K、もういいよ。十分撮ったから」
しかし僕がそう言っても、Kは泣きやまない。それどころか、Kの泣き声はいっそう激しくなった。
「……お、おぎゃあ、おぎゃあ……ぐ、おぎゃああ、おぎゃああああ!んぎゃああ」
「おいK?」
「ぎゃああああ、おおぎゃあああ!んっく、っく、ぎゅっ……、おぎゃああああああ!んっく、ん」
いつの間にかKの泣き声は尋常ではなくなっていた。Kは本当に涙を流して泣いていたのだ。
顔が歪んでいた。手足をバタつかせ大声で泣く。
その声も、Kの声から、まるで本物の赤ん坊の声に変わっていた。
「おぎゃああおぎゃああおぎゃああおぎゃああああおぎぎゃああああああ」
「お、おい、……け、K」
僕がKに向かって手を伸ばそうとしたその瞬間、
Sが横からチャイルドシートごとKの身体を蹴飛ばした。
「……おい!Kを持て。逃げるぞ!」
Sが叫ぶ。地面に倒れたKは気を失っていた。
僕はSと一緒にKを担ぎあげると、車に向かって一直線に走った。
「S、S!どういうこと?」
「俺に聞くな!」
後部座席にKを押し込んで、Sが車のキーを差し込む。
「お、おい、S。ちょっと待て!」
車のエンジンが掛かる。しかし僕は思いだしていた。夜泣き峠に関する話。
赤ん坊の声を聞いたものは必ず……。
Sもそこに気がついた様だった。サイドブレーキを下ろそうとしていた手が止まる。しかし、躊躇は一瞬だけだった。
「……そりゃ、尾ひれだ」
Sは車を発進させた。
Sの額に浮かぶ大粒の汗とは裏腹に、車は非常にゆっくりとした安全運転で山を降りた。

Kは山を降りる際に意識を取り戻した。
また泣き声をあげられたらどうしようと心配だったのだが、幸い起きたKはちゃんとKだった。
「え……?何コレ。ってか、わき腹ちょーいてえんだけど……」
それはSが蹴り飛ばしたからだ。でもその事実は無かったことになり、全ては赤ん坊の霊の仕業ということで落ち着いた。
Kのわき腹にユウレイが噛みついていたのだと。

そうして、少なくともその日は、僕らは事故に遭うこともなく、山を降りることが出来た。

後日三人で集まり、知り合いの知り合いの知り合いという風に、か細いつてを頼って、遠くの街の神社でお祓いをしてもらった。
その際、神主らしき人に「一応三人とも大丈夫だが、もうあの峠には行かない方が良い」と言われた。

お祓いが効いたのか、そもそも何も憑いてなかったのか。
あの夜の体験から数年たったが、今のところ三人とも何の事故もなく過ごしている。

『夜泣き峠』を通ってて、赤ん坊を見た、声を聞いたという話は、今でもたまに聞くことがある。
この前も、職場の後輩が彼女と行って、泣き声を聞いたそうだ。
後輩はその時の話を詳しく語ってくれた。
「事故とかは大丈夫だったんすけどね?……やっぱり、ほら。わき腹、噛まれたんすよ、ほら」
確かに、真剣に語る彼のわき腹には、噛まれた様な跡があった。
そりゃ、尾ひれだ。笑って流していいものかどうか、少し迷った。

ヤマノシリ

小学校の頃、僕の通っていた学校の裏には小さな山があって、みんなからは普通に裏山と呼ばれていた。
小学校は三階建てだったのだけれど、裏山はその小学校の二倍程度の高さしか無かった。
学校側から裏山を上って反対側に降りると、細い県道に出る。
学校の規則で、裏山には休み時間は上っちゃいけなかった。
それでも僕は、友達と一緒によく裏山に上った。大体昼休みに。
まばらに木が生えてるだけの何も無い山だったけど、子どもにとっては十分な遊び場だった。それで良く先生に叱られた。
「ごめんなさい。もう裏山には行きません」って100回は言った気がする。
今からするのは、そんな裏山の話だ。

さっきはまばらに生えた木以外は何も無い山だって言ったけど、実はあった。一つ。子供心をくすぐる様なモノが。
僕と友達数人がみつけたのだ。僕らはそれを『ウサギ穴』と名付けた。
三階の廊下の窓から見える裏山の斜面に穴はあった。

勢いを付けて斜面を駆け降りる、と言う遊びをやっていた時のことだ。
友達の一人が何かに躓いて転がった。だいぶ転がった。
膝から血が出てたけど、田舎だったから、そんくらい唾付けときゃ直るということで、僕らは別のことに興味をひかれていた。
友達は穴に躓いたのだった。
斜面の一部が草ごとえぐれていて、おそらく友達が踏み抜いたのだろう、その部分から穴が露出していた。
縦穴じゃなくて横穴。今までは草と土に隠れて見えなかったらしい。
穴は小さくて、人は絶対入れない。
でもウサギなら入れそうだと言うことで、決まった名前が『ウサギ穴』。
屈みこんで覗いてみると、中は真っ暗だった。
まっすぐ伸びている様に見えたけど、いかんせん暗過ぎて良く分からなかった。

その穴はそれからしばらくの間、好奇心旺盛な子供たちの心をとらえて離さなかった。
まず、「何がこの中にいるのか」という話になった。
モグラという意見と、ヘビだという意見と、やっぱりウサギだという意見に分かれた。
僕はウサギ派だった。山に住むじじいから、ウサギはこんな巣を掘ると聞かされていたから。
「ウサギの巣なら、出口は一つじゃない。もっとあるはずだ」と僕が言ったことがきっかけで、
僕らは裏山を、他の穴は無いかと探し始めた。
その日は、探している内に昼休みが終わってしまい、結局見つけることは出来なかった。

別の穴が見つかったのは、それから三日くらい後のことだった。
丁度学校とは反対の県道側の斜面に穴はあった。同じような穴だった。
見つけたのは僕だった。かくれんぼをしていて偶然見つけたのだ。
「穴ー。あなー!」と叫ぶと、みんなが集まって来た。
「ほら見ろやっぱりウサギだった」「いや、へびだ。違うモグラだ」
そんな不毛な言い争いのあとだった。
誰が言ったのかは忘れた。僕だったのかもしれない。まあ、とにかく誰かが言った。
「じゃあさ。この穴によ、ウサギ入れてみん?」
よし、やってみようぜ。面白いかは二の次だぜ。何てたって僕ら小学生だぜ。でも今は少し後悔している。

僕の通っていた学校では、ウサギを飼育していた。
そして学年には一人ずつ(※クラスは無いよ。全校生徒八十人くらいだったから)飼育委員というのがいて、
昼休みになるとウサギに餌をやったりするのだ。
そして何と、その時の五年生の飼育委員が、僕だったのだ。

決行されたのは次の日だった。
昼休み、僕は『チャーボー』と名札の貼られた檻を開けて、茶色い毛がボーボーの可愛い兎を一匹抱えて、
『ウサギ穴』へと向かった。
到着すると、もう友達の一人は穴で待機していて、反対の県道側の穴の方にも数人スタンバっているらしい。
友達が運動場の倉庫から持ってきた五十メートルの巻き尺の紐を、チャーボーの身体に結んだ。命綱のつもりだ。
「チャーボー。ほれ、いけ」
穴の中にチャーボーの頭を突っ込む。チャーボーは嫌がって足をパタパタさせた。無理やり押し込む。
それほどきつくはなさそうだけど、無理しないと方向転換は出来ないだろうな。
「はよういけ。帰ってきたら餌やるから」
棒で尻をつつくと、チャーボーは嫌々そうに穴の奥へと進んで行った。
途中で途切れているだなんて考えはなかった。二つの穴は、当然つながっているものだと思っていたのだ。
「よんメートル」
隣で友達が、チャーボーが進む動きに合わせて巻き尺を引っ張り出しながら、一メートルごとにいちいち報告する。
「はちメートル」
当時は、小さな山だったので、学校側の穴から県道側の穴まで五十メートルも無いだろうと思っていた。
今考えると、もう少し距離はあっただろうけど。

僕がふと疑問を覚えたのは、十メートルを過ぎてからだった。
友達が数えるメーター表示の速度がおかしい。
「じゅうさん、……じゅうよん。じゅう……、ああもう早いよちょっと待って!」
ものすごい速さで巻き尺を回す取っ手が回転して、しゅごおおお、と音がしていた。僕は友達と顔を見合わせた。
「うわ」と友達が叫んだ。
その手から巻き尺が離れて、穴の縁にぶつかった。
巻き尺は穴より大きかったので、持っていかれることは無かったけど、
一度二度びくんびくんとのたうってから、巻き尺は力尽きた様にその場に崩れ落ちた。
呆気にとられるという言葉があるけれど、僕はそれまでの人生でたぶん初めてだった。本当に呆気にとられたのは。
友達は無言のうちに、再び手にした巻き尺を巻き戻していた。

そのうち「うがにゃああ!」と猫の様な情けない悲鳴が聞こえた。
そうして、しばらくもしないうちに県道側の穴でスタンバってた友達数人が走って来て、
一人は足が絡まってこけて転んで転がっていった。僕の横を。
もう一人降りてきた奴の服の袖を掴んで僕は訊いた。
「チャーボーは!?」
「知らん!放せ!」
「話せば放す」
「だあもう!穴がものすごい勢いで骨吹いた!」
それだけ言うと、そいつは校舎に向かって駆け降りて行った。
何が何だか分からなかった僕は、とりあえず巻き尺の友達と一緒に県道側の穴まで行ってみた。

確かにそこには、何らかの動物の骨が穴を起点に放射状に散らばっていた。
小動物の骨だろうか。何もこびりついていない。白くて綺麗な、百点満点文句なしの骨だった。
チャーボーのかなと僕は思った。それなら悪いことをしたなあとも思った。

その日は当然、先生に怒られたけれど、僕はいつもと違って幾分本気で謝った。
「ごめんなさい。もうしません」
もちろん、チャーボーに対して。

後日、僕は山に住んでいるじじいを訪ねて、その話をした。
もちろん孫へのこづかいが目当てだったのだけれど、じじいなら何か知っているかもと思ったのだ。
「そりゃ、ヤマノクチやの」とじじいは言った。
「やまのくち、って何や?」
「おまんの口と一緒や。山の、口」
じじいはそう言って、僕の下唇を掴んでびろんと伸ばす。
口と聞いて、想像力豊かな僕はすぐにピンと来た。
「じゃあ、もう一つの穴は、ケツなん?」
「ケツやな。ヤマノシリ」
僕は気付いた。だとしたら、チャーボーは山に食われたのだ。
「なあなあ、じじい」
「なん?」
「ウサギってよ、美味いん?」
「うまい。くいたいんか?」
僕は首を振る。
それにしても、山だとしても、『いただきます』くらいは言うべきだろうと、その時の僕が思ったのかどうかは定かではない。

黙っていると、じじいは僕の肩をバシバシと何度も叩いた。
「まあ、気にせんでええ。おまんは山にお供えもんをしただけや。そのうちええことがあるかもしれん」
「じじい……」
「おう、なんぞ?」
「じゃあこづかいくれ」

その日はじじいの家の軒先に干してあった干し芋を勝手に取って、齧りながら家まで帰った。
じじいは結局こづかいをくれなかった。けれど、その内良いことがあると言うじじいの話は、当たってなくもなかった。

僕は飼育委員をクビになった。理由は、皆で飼っていたウサギをうっかり『逃がしてしまった』からだと言う。
世話は面倒くさいし、ウサギ小屋は臭いから、僕は普通にラッキーと思った。

ちなみに『ウサギ穴』は、あの出来事以来、子供たちの間で『ウサギ喰いの穴』にグレードアップした。
そうして、あの日県道側から走って逃げて転んで転がった奴がえらい怪我を負ったので、
それから裏山禁止の規制が厳しくなった。

だから一度だけだ。下校時間になって、僕はそっと県道側の穴に向かった。
途中で落ちていた手頃な木の枝を拾う。
穴に着く。
「くらえ!」
僕は手にした棒を穴に突っ込んだ。そして逃げた。
男の子なら誰しもやったことのあるあのワザだ。ささやかな仕返しのつもりだった。
その後、山に仕返しされたとかそんな体験はない。

今現在、僕の通っていた小学校は廃校になっている。
じじいの家に行く際にはあの県道を通るので、その時はついでに穴はあるかと確認したりする。
少なくともヤマノシリは未だにあって。周りには何の骨か分からない小さな骨が散らばっていたりもする。
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