2chオカルト板・怖い話・洒落怖怪談の厳選まとめ

2chのオカルト板・怖い話・洒落怖の怪談などをまとめたブログです。怖い話を厳選して掲載。閲覧注意。

2013年04月

山の少年

562 :本当にあった怖い名無し:2005/03/27(日) 00:10:27 ID:Hn7qsygZ0
中学時代、夏休みを利用して、友達と川釣りに行こうって話になりました。

夜中の午前3時頃に集合、市街地からひたすら自転車をこいで約3時間、目的の川に到着しました。
早速皆で思い思いの場所に散って釣り糸を垂れましたが、サッパリ釣れません。
ポイントを変えてみるも、やはり駄目。
なので、私は徐々に皆から離れて、上流へと移動していきました。

そして、自分が釣れそうだと思うポイントを見つけて、釣り糸を垂れていると…
背後から、川原の石を踏む音がしました。
最初は、仲間の誰かがやっぱり釣れなくて移動してきたのかな?程度に考えて無視してたのですが、
足音は私の背後で止まったまま動こうとしません。
「なんだ、釣らないのか?」と言いながら振り返ったのですが…。


563 :562:2005/03/27(日) 00:11:10 ID:Hn7qsygZ0
そこには誰も居ませんでした。更に周囲を見渡すも、居るのは自分1人です。
「あれ?気のせいかな…」
そんな事を1人で呟きながらも釣りを続行しましたが、やがて再び場所を移動しようと考え、
更に上流へと歩き始めました。

ここいら辺じゃ駄目だ。今度はずっと奥の方まで移動してやろう。
そう考えながら、川沿いを若干早足で移動します。
すると今度は、私の背後を付いてくる足音がします。
「なんだ、お前も移動すんの?」と言いながら、また後ろを振り返りました。
すると、今度は確かに人が居ました。ですが、それは友人ではありません。
年の頃は15~16でしょうか。少年が1人、私のすぐ後を歩いてきます。
私が思わず歩くのを止めると、向こうも止まって、私の顔を無言で見つめ返してきました。
なんだか変わった服を着てるなぁ。というのが私の第一印象でした。
下半身はズボンに近いものを履いているのですが、上半身は裾の短い着物を着ています。
腰には地味ではあるが、立派なナイフ…と言うより、短刀(短剣?)のようなものをぶら下げています。
私は彼を見ても全然驚きませんでした。近くで映画の撮影でもやってるのかと思ったのです。
今から考えると、あんな田舎の山奥で映画の撮影なんてやってる筈がありません。
それでも、当時の私はそう考えました。
何故そう考えたかと言いますと、まず彼の衣装が、確実に現代のものではない事。
また、背中にまでかかるぐらいの黒い長髪をしていました。
更に、これは私の主観が入ってしまうのですが、その少年がかなりの美形で、俳優と思ったからです。
美形とはいっても、ジャニーズ系のような顔とは違うタイプです。
意志の強そうな顔、と言えばいいでしょうか。そんな感じの顔でした。


564 :562:2005/03/27(日) 00:11:50 ID:Hn7qsygZ0
「映画の撮影?どっから来たの?俺が釣りしてると邪魔?」
私は彼に聞きましたが、何も答えません。
少々困ったものの、こっちだって朝早くに起きて釣りしてるんだ、一匹でも釣らないと割に合わない、
と思い直し、さっさと上流へ歩を進めました。

やがて、かなり上流まで到達した私は、喉が渇き腹も減ってきたので、携行してきた食料を食べる事にしました。
適当に腰を下ろし、自分で作った握り飯を食べていると、下流から人が歩いてきます。さっきの少年でした。
私はどう声を掛けて良いか分からず、黙々と握り飯を食べていました。
少年は私のすぐ近くに腰掛けると、こちらを興味有りげに見ています。
なんなんだよ、気味悪りぃな。言いたいことがあるならさっさと言えよ…
内心ではそう思いつつも、当たり障りの無い事を話し掛けました。
「もしかして、釣りに来たの?」「その服、どこで売ってるの?」「他に一緒に来てる人は居るの?」
…全て無言で返されました。

やがて、彼の視線が、私の持っているペットボトルに注がれているのに気付きました。
事態の打開を図りたいと思っていた私は、「喉渇いてる?あげるよ?」と言って手渡しました。
彼はペットボトルを手に取ると、それを太陽に向けて光の反射を楽しんでるようでした。
変わった奴だなぁ…と思っていると、今度は向こうが私に茶色の塊を差し出してきました。
どうやら食べ物らしいというのは分かったので、一口齧ってみました。
少々粉っぽいが、僅かな甘みがある。決して不味いものではありませんでした。
「美味しいねぇ、これ。自分で作ったの?」と言うと、初めて「うん、そう」と答えてくれました。


565 :562:2005/03/27(日) 00:15:58 ID:Hn7qsygZ0
それからは、彼も徐々に話してくれるようになりました。
腰のナイフを褒めると、とても喜んで見せてくれました。
両刃のもので、やはりナイフというよりは短剣でした。
若干青く光っていて、よく手入れされてる感じがしました。
どこで買ったのか聞くと、「譲って頂いたもの」と誇らしげに言いました。
彼の話はまだ続きます。その殆どは山の話でした。
そして、この山がいかに豊かな山であるかを私に聞かせました。
他にも、怪我で動けなくなった人に手当てをしてあげたとか、
山に迷い込んで泣いてる子供を助けてあげたとか、
この山に逃げてきた男女を匿ってあげたとか。
今考えれば、きっと古い時代の話なんだと思います。
「草履も脱げて…」という一節があったので。
ただ、その時は珍しい話に聞き入るあまり、突っ込みを入れるのを忘れていました。

どれぐらい話していたか…突然「そろそろ行かないといけないから」と言って彼は立ち上がりました。
別れ際に彼は、
「今日はすまない。だが、明日もここへ来てみてくれ」
と言い残し、上流へと歩いて行ってしまいました。

結局、その日は一匹も釣れませんでした。他の友人は、小ぶりながらも何匹か釣っていたというのに。
そして、友人達にこの話をしたものの、誰もその少年は見ていませんでした。

家に帰った私は、両親にこの話をしました。
母親は「それって変な人なんじゃないの?」といった感じでしたが、
父親は黙って聞いてくれて、「じゃあ、明日そこに行ってみようか」と言ってくれました。
元々山好きな父親(私が山好きになったのも父親の影響)なので、まともに相手してくれたのかも。


566 :562:2005/03/27(日) 00:16:30 ID:Hn7qsygZ0
次の日の朝早く、父親の車でその川まで向かいました。
自転車だと3時間掛かる道程も、車だとあっと言う間です。
川に着くと、早速上流へと登り始めました。

やがて、昨日少年と話した辺りに辿り着きました。
私と父親は早速釣り糸を垂れました。が、やはり釣れません。
なんだ、やっぱり駄目じゃないか…と思った時、竿に強力な当たりがきました。
川魚でこんな強力な引きなんて、おかしいぞ?
と思いながらも何とか引き上げてみると、何と1尺超えの岩魚でした。

それからは面白いように岩魚が釣れました。しかも、その殆どが1尺前後のものばかりです。
最終的には、8匹もの岩魚を釣り上げました。
自分で釣り上げたとはいえ、信じられない出来事に唖然としてると、
父親が「頂いたからにはお礼をしないと」と、
帰り際に、山の麓にある小さな祠のような場所へ、一升瓶のお酒を置いていました。

この出来事から何年も経ちましたが、未だに彼が何者だったのか分かりません。
聞く所によれば、山の神様は通常、女性なんですよね?
それが男性、しかも少年というのは聞いたことがないので…。

東北某県某山の神様は、少年ってことなんでしょうか。


571 :本当にあった怖い名無し:2005/03/27(日) 01:04:33 ID:b1zitQqc0
>>562
感動した。その後はそこに行ってないの?


574 :本当にあった怖い名無し:2005/03/27(日) 05:33:45 ID:+MeQS+lU0
きっと>>562さんの対応が良かったんだね。
岩魚の塩焼き食べたいw


575 :本当にあった怖い名無し:2005/03/27(日) 05:53:26 ID:Rvt6wmrP0
単にタイムスリップした人かと思った自分って夢が無い?


577 :562:2005/03/27(日) 06:38:18 ID:Hn7qsygZ0
>571さん
この出来事の後、何度か行きました。けれど、少年に会ったのは一度きりです。
それでも、行く度にお供え(日本酒とペットボトル入りの清涼飲料)はしています。
特に、ペットボトルはお気に入りだったみたいなので(笑

ちょっと追記ですが、少年は山の話と短剣の話の時は、とても生き生きとしていました。
「短刀を譲ってくれたのは誰?」と聞くと、
「あちらに居られる」と、その地域では代表的な山を指し示しました。
意味が分からず、「立派そうな短刀だし俺も欲しいんだけど…まだあるのかな?」という質問には、
笑うばかりで答えてくれませんでした。

こんな遣り取りの間も、少年は短刀を空にかざしたり、太陽の光を反射させたりしていました。
誉められたのが余程嬉しかったんだと思います。
兎に角、綺麗な短刀でした。一流の刀鍛冶が打った刀は神聖な感じがしますけど、丁度そんな感じを受けました。
淡い青色の光を放つ刀身は、未だに忘れられません。
その時、私も登山用としてナイフは携行していたのですが、近所のホームセンターで買った安物でした。
なので、とても見せる気にはなれませんでした。

それにしても、昔話に聞く山の神様(女性の場合)は美人が多いみたいですけど、
男性の場合でもやはり眉目秀麗なんですね。
男の私でも、思わず見とれる位でしたから。(俺はゲイじゃないですよ)

できればもう一度会ってみたいですが、
神様はそうそう簡単に現れるものではないし、多分無理だと思っています。
しかし、生涯忘れない良い思い出です。


578 :562:2005/03/27(日) 06:47:23 ID:Hn7qsygZ0
>574さん
どうでしょうか…神様相手に「短刀が欲しい」だの、「その服どこで売ってるの?」だのと、
変な要求や質問してたので…。
きっと、心の広い神様だったのではないかと思います(笑。
ちなみに、岩魚は脂が乗ってて美味しかったです。

>575さん
相手の少年も普通に現代語(多少、かしこまった言い方ではあったけれども)を話していたので、
それは多分無いと思います。
でも、そういう考え方も面白いですよね。

鉄塔の中の異変

588 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 16:10:35 ID:B3rw8V4l0
私はドコモ関連の設備管理の仕事をしている者ですが、昨年の年末にちょっと信じられない体験をしました。
これまで幽霊とか妖怪とか、そういうものは信じていませんでしたし、
そういった現象に出くわしたこともなかったのですが、
今回の出来事は、自分のそういう認識をひっくり返してしまうようなものでした。
未だに、あれが現実の出来事だったのか、自分の幻覚だったのか、確信は持てないのですが・・・

去年の12月27日、私と上司2人は、山頂にあるアンテナ鉄塔の点検に出かけました。
山道を車で登っていったのですが、途中で雪が深くなってきて、
その時はスタッドレスタイヤを履いていなかったので、それ以上進めなくなり、
しかたなく神社の前に車を置いて、1キロくらい歩く事になりました。
雪は表面が凍っていて、踏むとザクザクと音がします。
不思議と木には雪が積もっていなかったので、上司(Kさん)に聞くと、
「木の枝に積もった雪は、すぐに下へ落ちるからな」と答えました。
そうやって周りの景色を見たり雪に足を取られたりしたので、
鉄塔に近づくまでに30分以上も掛かってしまいました。

鉄塔が間近に見えて、車道から林の中の道に入ったあたりで、Kさんが上を見上げながら言いました。
「木の枝に何か引っかかっているぞ」
私ともう一人の上司(Tさん)が上を見ると、木の枝に地面から5メートルくらいの枝に、
細くて白い布みたいなものが絡んで、風になびいていました。
更に行くと、鉄塔の回りに張ってあるフェンスやゲートの鉄格子にも、
同じものが絡みついているのが見えてきました。
近づいてよく見てみると、それは布ではなくて紙でした。
黒で何か書かれた紙を細く裂いたような感じで、まだらになっています。
「山仕事に入っている人のイタズラかな?」「気持ち悪いなぁ」
などと言い合いながら、ゲートの鍵を開けて中に入りました。
続いて、鉄塔のドアに鍵を突っ込んで回して開けようとしたのですが、開きません。
おかしいな~と思って反対に鍵を回したら、今度はすんなりと開きました。
「ここ鍵が開いてたみたいですよ」と私が言うと、
Kさんに「そんなはずはない。前に来た時にちゃんと鍵を閉めたはずだ」と言い返されました。


589 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 16:26:57 ID:pbIDbQSV0
中へ入ると、ちょっと変な臭いがしました。
それは他の2人も気が付いたみたいで、「なんだか臭いな」とか言っています。
電源や通信のパネルを点検していると、奥の方でTさんが「んんん?!」と声を上げました。
近づいてみると、階段の下あたりに動物の毛がバサッと落ちていました。
「これ鹿じゃないかな?」
それを見たKさんが言いました。
毛を足でどけてみると、その下に血痕がいくつかありました。
「ここで食われたのかな?」とTさん。
それにしては骨も残っていないし、血も少ない気がしました。
それに入口のドアは閉まっていたので、鍵が開いていたとしても動物が入れたとは思えません。
おかしいなぁとは思いながらも、原因が分からないので、とりあえず毛を集めて外に捨てました。
血痕は、外から雪を持ってきてこすったら少し薄くなったので、そのまま放っておくことにしました。

寒いし気味が悪いしで、早く点検を終わらせて帰りたい一心で、私はチェックリストを埋めていきました。
「ホゥゥゥゥ」
遠くの方でそんな感じの声が聞こえました。
アンテナの方に行っていたKさんの声かと思って、「Kさーん!」と叫ぶと、
「何だー!」と、別の方向から声が返ってきました。
あれ?と思ったのですが、その時はTさんが外で仕事していて声を出したのだろうと思って、
気にしませんでした。

ようやく点検を終えてドアの外に出ると、自分一人でした。
Tさんを捜して周りをグルリと回ったのですが、見当たりません。
何となく中に入るのが嫌で外で待っていると、すぐにKさんとTさんが一緒に出てきました。
「Tさん、さっき外で呼んでませんでしたか?」
「いやぁ呼んでないよ。俺とKさんで上のボルトの点検してたから」
「おかしいなー。さっき『ホゥ』って誰かが叫んだのが聞こえたんですけどねえ」
「それ俺らも聞いて、てっきりお前だと思ったんだけど…」
「違いますよ」
「いや、お前が俺を呼んだ声が意外に近かったから、おかしいなぁとは思ったんだけどな」
そんな事を言い合いながら、今度はドアに鍵を掛けたのを3人で確認して、フェンスの外に出ました。
細長い紙切れは気持ちが悪かったので、あまり触らずに放っておきました。


590 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 16:56:04 ID:fSZ3xEvd0
日が暮れて暗くなりかけていたので、急いで車の所へ戻ろうと歩き始めました。
KさんとTさんの後ろを、私が少し離れてついて行く形で、
下り坂は滑るので、足元を見ながらうつむいて歩きました。
辺りの林はとても静かで、ザクザクと雪を踏みしめる音だけが聞こえてきます。
灰色っぽい雲の隙間から、遠くの夕焼けが見えていました。

私はさっきの事を考えながらボンヤリと足元を見つめるうちに、ちょっと奇妙な事に気が付きました。
私達は上りも下りも道の左側を歩いていて、つまり上りと下りとは反対の側に足跡が付いていました。
私の目の前には、TさんとKさんの長靴の跡が並んでいたのですが、
その間にもう一つ、小さめの足跡がありました。
最初は自分が上った時の足跡かな?と思いましたが、それは道の反対側にあるはずです。
上りの時には真っ新な雪面だったのが強い印象として残っているので、
私達が上る以前に誰かが歩いた跡とは思えません。
となると、これは自分達が上った後に付いた足跡だという事になります。
良く見てみると、その足跡は下を向いていました。
だから、これは誰かが自分達よりも先に下った時の足跡なのだと、その時はそう思いました。
でも、その誰かは、いつ、どこから山に上ったのでしょう?
それよりももっと気になる事がありました。その足跡はどう見ても裸足だったのです。
雪の上を裸足で歩く人間は、多分まともではありません。
私は前の二人に声を掛けるために、視線を上げようとしました。


594 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 17:12:02 ID:paNCIx9G0
その時、視界の上の方、つまり、自分の足元のすぐ前の方に裸足の足が見えました。
うわッ!と思って思わず足を止めました。
すると視界から足が消えたので、恐る恐る視線を上げて前を見ました。
少し離れた所にKさんとTさんが並んで歩いている他に、人影は見えません。
周囲を見渡しても、動くものなど何もありませんでした。
不思議に思いましたが、どうしようもないので、再び足元を見ながら歩き始めました。

しばらくすると、また前の方に足が見えました。
驚いて足を止めると、スッと視界から消えます。が、歩き出すとすぐに見え始めるのです。
小さくて白い裸足が1.5mくらい前を、自分と同じ速さで歩いているようです。
ちょうどかかとの辺りに、白っぽい布が掛かっているのが見えました。
もう怖くなって前を見ることができませんでした。ひたすら足元を見ながら道を下って行きます。
耳を澄ますと、前の方からKさんとTさんが低い声で話すのが聞こえてきました。
それにザクザクという足音が被さっているのですが、それが3人なのか4人なのかは分かりません。
何となく、目の前の足は音を立てていないように思えました。

やがて、先を行く2人の足音が途絶えました。と同時に、視界から裸足の足がスッと消えました。
怯えながら目を上げると、いつの間にか車の所まで来ていました。
私は心底ホッとして、すぐに車の方に駆け寄りました。
するとKさんとTさんが、「これから神社に詣ろう」と言い出したのです。
もう暗くなりかけているし、こんな所で時間を潰していたら、路面が凍結して帰れなくなってしまいます。
そんな事は分かっているはずなのに、
2人は「ここまで来て神社へ行っておかないとダメだ」「すぐに済むからお前も行こう」などと言うのです。
入口から見ると、鳥居の奥は木が鬱蒼と茂っていて、どこに何があるのか全然分かりません。
こんな所へ入って行くのは絶対に嫌だったのですが、
だからと言ってここに一人で置いていかれるのも怖かったので、
必死の思いで2人を説得して、どうにか車に乗せることができました。


596 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 17:25:09 ID:GIevCmNz0
急いで車をスタートさせたのですが、雪道なのでスピードを出すと滑ります。
なんどか危ない場面があったのですが、2人共声を上げるでもなく黙ってシートに座っていました。
バックミラーで見ると首がグラグラ揺れていて、まるで寝ているようでしたが、
目は開いていてジッと前を見ていました。

と、ここで来て変な事に気が付きました。2人とも後部座席に座っているのです。
いつもは必ずTさんが助手席に座るはずなのに・・・
そう思い始めると、もう助手席の方を見ることが出来なくなりました。

極力前だけを見て運転するうちに、ようやく麓まで下ってきました。
すると、今度はKさんとTさんが、2人揃って「ここで下ろしてくれ」と言い出しました。
「近くに知り合いがいるから会いに行く」と言ってききません。
「じゃあ、その家まで送りますよ」と私が言うと、「お前はここで帰れ」と言い張ります。
「ここから先は道がややこしいし、帰りにお前が迷ってしまうかもしれない」
「早く会社に戻って、先に帰ったと言っておいてくれ」と。

正直自分も早く帰りたかったので、最寄りの店の前で2人を降ろしました。
車から降りる際に、Tさんが何気ない様子で助手席のドアを開けてすぐに閉めたのを見た時、
全身にゾワッと寒気がきて、すぐに車を飛ばして会社に戻りました。

翌日、KさんとTさんは2人とも休みでした。
年末年始の交代勤務があるので、この時期に休むのはおかしくないのですが、
私は昨日の事があったので凄く気になりました。
携帯に電話すると、Tさんには繋がりませんでしたが、
Kさんは「休みの日にまで電話するなよ」と笑っていたので、その時は少しホッとしました。

しかし結局2人とも、正月の交代勤務には出てきませんでした。
その後、年明け早々にTさんは会社を辞めました。
理由は聞いていませんが、辞表が郵送されてきたそうです。
Kさんには誰も連絡が取れないそうで、あれ以来、携帯に電話しても通じません。
山を下りた時に、無理にでも連れて帰れば良かったと後悔しています。


604 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 18:43:01 ID:C8Vt4Y5D0
いぶかしがるかもしれませんが、一度、御祓いに行かれた方がよろしいと思います。
お寺が良いでしょう。


605 :ドコモ:05/01/25 18:52:24 ID:7omzgsel0
お払いはお寺に頼めばやってもらえるのですか?
その際に、事情を話さないとダメなんでしょうか?


606 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 18:59:12 ID:C8Vt4Y5D0
>>605
事情は話したほうが良いと思いますよ


613 :ドコモ:05/01/25 19:20:14 ID:7omzgsel0
>>606
ありがとうございます。
2月までKさんに連絡がつかなかったら、お寺に相談してみます。


647 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 21:02:16 ID:Su7G2rc20
いつかまた、その同じ鉄塔を点検する業務がまわってくるでしょう。
そのときに、あなたはどうするのか? いっしょにいく仲間に対しては?
それもすごく気になるところですね。


656 :本当にあった怖い名無し:05/01/25 23:11:58 ID:DDhcy6h50
>>647
点検業務は交代できるので、あそこの鉄塔はもう行かないようにしようと思ってます。
次の異動で庶務の仕事に配置替えしてもらおうか、とも考えています。
もともと、女性でこういう仕事は社内でも少ないですし、あそこであった事は報告書の備考欄に書きましたから、
多分要望は通ると思います。
代わりに行く人の事は心配ですが・・・もしかしたら私の考え過ぎかもしれません。


678 :本当にあった怖い名無し:05/01/26 08:26:13 ID:CA4jcXyw0
ドコモさんが女性と聞いて、なるほどと思ってしまったのは俺だけ?
みんな忘れてるのでは?山の神は女性。で、嫉妬深い。
女性の入山が禁忌の山もかつては多くあったし、女性を人柱にしたり人身御供にした例もある。
鉄塔の中の異変は、神域に鉄塔建てちゃったんじゃないの?
もともと、そういう儀式を地元では人知れずやってたわけで、
鉄塔が建とうが、儀式の場所は変えなかったってわけ。
昔と違うのは、生け贄が人間の女性でなく、獲物か家畜か犬かなんかで代用していたんじゃないかと思う。
そういう、いわば山の神の食事場所に、三人が入っていってしまった。
入るだけでも禁忌なのに、勝手に掃除したりするし、女性連れとあっては黙っておれなくなったのだろう。

下山の時点で同僚二人は山の神に操られており、
禁忌を犯した代償として、ドコモさんを置いていくよう神社に呼ばれていたわけだ。
そんで、それが出来なかったので、二人のうちどちらかを自分のお相手として残すため、自分の住みかに誘った。
と考えると、つじつまが合う。

行方不明の一人は、山の神様と暮らしているんではないかな。生死は分からないが。
いなくなったのって、どっちかっつーと男前の方なんじゃない?
もう一人の人に、どこへ行って何があったか聞けば、だいたい分かりそうな気もする。

何にしても、神社には行かなくて正解。
でもしつこい神だと、仕事にかこつけて同じ場所に呼び出そうとするから、
そうなる前に早めにお祓いした方がいいな。

山の名前に、神っぽい名前とか女性名とか、動物名ついてないか?
例えば八幡とか、犬神とか権現とか。
あれば、もし神社に行くのなら、同じ系列の本社に行った方がいいな。
要するに、チンピラに因縁つけられたら、親分のところに話をつけてもらいに行くようなもの。
寺の方はわからんわ。


679 :本当にあった怖い名無し:05/01/26 10:16:29 ID:GbQWv9QE0
ドコモさんの話怖ええええ
ウチの会社もドコモの鉄塔の仕事してるから、同僚に怖い話がないか聞いてみよっと。
仕事上、施錠管理は一番気を使うから(NTTに相当叱られる)、鍵の閉め忘れはありえないですね。


722 :ドコモ:05/01/26 19:24:45 ID:I5N8gPWV0
皆さんレスをありがとうございます。
山の神とか霊感とか良く知らないものですから、いろいろと参考になります。
KさんもTさんも未だに連絡が取れませんが、もう少し待ってみようと思います。

Tさんは、Kさんと比べて男前かどうかは分かりませんが、ずっと若いですね。
山の名前は大山です。
施錠に関しては、チェックリストに項目があるので、私も鍵のかけ忘れは考えにくいと思います。
それと、こういう鉄塔には、セコムみたいな警報装置がないんです。
山だと誤動作が多すぎるからだそうです。
それも少し怖い話ですね。

もどり雪

241 :もどり雪1/4 ◆tjIwFprWic :04/09/29 19:32:26 ID:w+rkiq6d
1月の終わり、山守りのハルさんは、山の見回りを終えて山を下っていた。
左側の谷から、強烈な北風に舞い上がった粉雪が吹き付けてくる。
ちょっとした吹雪のような、『もどり雪』だった。

と――雪煙の向こうに人影が見えた。
道端にある山土場に佇んで、谷の方を向いている。
ヒュゥゥゥ―と唸る風の音をついて、何事か話す声が聞こえてきた。
その人影が誰かと話をしているようだが、相手の姿が見えない。

近付くにつれ、影の正体が判明した。同じ在所の源さんだ。
「おぉい!そんな所で何やってるんだ?」
ハルさんが声を掛けると、源さんはゆっくりとこちらに向き直った。
ゴツゴツとした厳つい顔が、今は少し強ばっているように見える。
「……何だ、ハルさんか」
「何だとは何だ。それよりお前、誰かと喋っていたようだが」
「ああ、ちょっとな。翔太と話をしていたんだ…」
「何だって?」

ハルさんは、しばし呆気にとられた。
翔太と云うのは源さんの一人息子だが、先年の春、7才になる前に小児ガンでこの世を去っているのだ。


242 :もどり雪2/4 ◆tjIwFprWic :04/09/29 19:33:55 ID:w+rkiq6d
翔太が死んでからの源さんの様子には、一見何の変化もなかった。
元来、黙して語らずといった雰囲気の持ち主だったし、
寄り合いの席などでむっつりと押し黙っているのも、以前と変わりない。
悲嘆に暮れているような姿も、ついぞ見せたことがなかった。
翔太の葬式の時など、俯き加減で泣き続ける細君を尻目に、
居並ぶ参列者を、仇でも見るような目つきで睨みつけていた。

そんな源さんの立ち振る舞いを見て、ハルさんの心中に去来したのは、
意地を張ってるんだろうなぁ…という思いだった。
たぶんそうすることで、悲しみを無理矢理押さえ込んでいたのだろう。
あれから9ヶ月余り。今日までずっと、源さんは意地を張り続けている…


243 :もどり雪3/4 ◆tjIwFprWic :04/09/29 19:35:49 ID:w+rkiq6d
「…歩いてたらさ、土場に差し掛かったあたりで、誰かに呼ばれたような気がして。
 で、そっちを向くと、すぐそこに翔太が立っていたんだ」

ハルさんは、無言で源さんの独白に耳を傾けた。
いつの間にか風は止んでいて、周囲の山は時が止まったかのように静まり返っている。

「翔太のヤツ、『お母さんをいじめちゃだめだよ』なぁんて言うんだ。
 そりゃあ俺も、翔太のことではアレを随分叱ったからな。
 『いつまで泣いているんだ、泣いてどうなるものでもないだろう』なんてな」

そのことは、妻を通じてハルさんの耳にも届いていた。
田舎の井戸端ネットワークは全く侮れない。

「悪いとは思ったけど止められなかったんだ。そうやって気力を奮い立たせてたんだな。
 いや、逃げていたのかもしれない。
 で、気が付いたら会話が無くなってた」

源さんは顔を空に向けて語り続けた。いつになく口数が多い。 

「あいつはそれが心配だったんだとさ。久しぶりに会った我が子に説教されるとはなぁ。
 まったく、腹が立つやら情けないやら……なんだかなぁ………けどよ…」

そこで一旦口籠もり、そのまま空を振り仰いだまま立つ尽くす。

「…けどよハルさん。何でかなぁ…涙が止まらねえんだよ」

上を向いた目からジュワッと涙が溢れ出し、頬を伝ってこぼれ落ちたかと思うと、
源さんはそのまま、「オォォォォォ…!」と声を張り上げて泣き出した。
我慢に我慢を重ね、意地を張り通してきた源さんの号泣は容易には止まらず、
後から後からこぼれ落ちる大粒の涙が、雪面にポタタタタ…と穴を穿つ。
そのすぐ向こう、真っ新な雪の上にポツリと一組だけ、小さな子供の足跡があった。


244 :もどり雪4/4 ◆tjIwFprWic :04/09/29 19:36:44 ID:w+rkiq6d
やがて、再び勢いを増した風が激しく雪を舞い散らすと、足跡はあっという間にかき消されてしまった。
しかし、それは源さんの心の内に消えることなく焼き付いたのだろう。
山を下りた源さんの厳つい顔は、近頃になく晴れやかだった。

もどり雪が、ほんの少しだけ時を戻してくれたのかもしれない。

相方

934 :林人13号 ◆tjIwFprWic :04/09/22 00:19:32 ID:BU7fbjBy
Nさんは、鋼材関係の専門の現場作業員だ。
会社勤めではないが、いろいろと資格を持っているせいで、大手企業の下請けや手伝いをやっている。
人集めを任されることもあるが、そんな時、親しい仲間を誘うのは極力避けるようにしている。
ある時、Nさんにその訳を聞いた。
すると、少し間をおいて、こんな話を聞かせてくれた。


935 :Nさんの話1/8 ◆tjIwFprWic :04/09/22 00:21:23 ID:BU7fbjBy
昔、山あいの村で、橋の架け替え工事の手伝いをした事がある。
親しい相方と二人、民宿に泊まり込みで現場に通っていた。
俺達の担当は、橋桁の上に掛かるアーチ部分の工事だった。
谷の両岸から、緩いカーブを描く角筒状のパーツを繋げてゆき、最後はアーチの頂点で接合する。

その日は、相方と二人で最後のパーツ内部で作業をしていた。
俺は右岸側で接合部分のボルト締めを、相方は左岸側で溶接作業。
すでに結合されたパーツの内部は暗く、背後から固定式のライトで手元を照らす。
その明かりが一瞬点滅した。
一旦手を休め、ライトの具合を確かめる。
ゴンッ!ガンッ!!
背後から大きな音と振動。
反射的に振り返って唖然とした。接合部から先、左岸側のパーツが無い。
一瞬前までそこにあった暗闇は消え、
目と鼻の先にある四角い開口部からは、青い空と対岸の尾根がクッキリと見えた。


936 :Nさんの話2/8 ◆tjIwFprWic :04/09/22 00:22:43 ID:BU7fbjBy
ドーン!ズズズズン!!
下の方から、腹の底に響くような物凄い音と揺れが伝わってきた。
思わず立ち上がりかけたが、腰が抜けて動けない。
が、何が起こったのかは半ば本能的に理解していた。
左岸側のアーチが落ちたのだ。
何が原因かは分からないが、こっち側は辛うじて残っているようだ。
俺はその縁ギリギリに居て助かった。しかし、反対側に居た相方は…
突然、涙がジュワっと溢れてきた。俯いたまま子供のように泣きじゃくる。

と――足先に見慣れないものがあるのに気付いた。
曲がったボルトか、小エビの様にも見えるもの。
体を前倒しにして顔を寄せてみる。
根元から切断された指が3本転がっていた。


938 :Nさんの話3/8 ◆tjIwFprWic :04/09/22 00:24:31 ID:BU7fbjBy
その後、警察の聞き取りや労監への報告などでがあり、
ようやく身柄を解放された頃には、夜の9時を回っていた。

事故の原因は、左岸側で橋を支えていたアンカーが抜けてしまった事。
そのため、橋の半分が谷底へ崩れ落ちてしまった。
相方の他にも作業員が数名、巻き添えになって死んだ。
瓦礫から亡骸を回収した作業員によると、相方の遺体は一見綺麗なものだったそうだ。
「まぁ中身はミンチだろうな…」
騒然としている現場事務所で、JVの監督がそう呟くのを聞いた。

宿へ戻ってから、遅い夕食を食べた。
食欲は無かったが、明日以降のことを考えて黙々と食った。
いつもより酒の量を増やした。そうでもしなければ眠れそうになかった。
銚子を3本持って二階の部屋に上がり、布団に潜り込んでチビチビ飲る。
四角く切り取られた青空、腹に響く轟音、足元に転がる指…
思い出すたびに全身に震えが走り、それを忘れようと杯を空ける。
そんな事を繰り返す内に、ようやく眠りに就くことができた。


939 :Nさんの話4/8 ◆tjIwFprWic :04/09/22 00:25:27 ID:BU7fbjBy
ペタリ――
唐突に目が醒めた。
辺りは真っ暗。どうやら誰かが明かりを消してくれたようだ。
ペタリ・・ペタリ・・
部屋の外からスリッパの足音が聞こえる。廊下を誰かが歩いているのだろう。
・・ペタリ・・ペタリ・・ペタリ・・ペタリ・・ペタリ・・ペタリ・・
足音は、部屋の周囲をグルリと回ってなお続いている。宿の人間だろうか?
ペタリ・・ペタリ・・ペタリ・・ペタリ・・ペタリ・・ペタリ・・ペタリ

もう何周したのだろう。
さすがに不審に思い始めた頃、ようやくおかしな事が起こっているのに気付いた。
この部屋を取り囲む廊下はコの字型だった。
一方の突き当たりは便所で、もう一方は布団部屋。
どちらも、俺が枕を向けている壁の延長線上にある。
壁の向こうは外で、地面までは数メートの高さ。当然廊下などない。
なのに、足音は部屋の周囲をグルグルと回り続けている。
ペタリ・・ペタリ・・と、スリッパを引きずるような足音――
違う。スリッパではない。もっと粘り気を感じさせる音。
滑り止めにアメゴムを底張りした地下足袋で歩くとこんな音がする。
相方が愛用していたので、嫌と言うほど聞き慣れた音だった。


940 :Nさんの話5/8 ◆tjIwFprWic :04/09/22 00:26:10 ID:BU7fbjBy
・・ペタリ・・ペタリ・・・ペタリ・・・ペタリ・・・・ペタ
足取りは次第に緩やかになり、部屋の入口あたりで止まった。
恐る恐る頭をもたげ、その方向を見る。
廊下と部屋とを隔てる障子に、人影のようなものが映っていた。
この頃には、それが死んだ相方であることを確信していた。
相方は、生き残った俺に会いに来たのだ。
いや、死んだ事に気付かずに宿に戻ってきたのかもしれない。
嬉しくなどなかった。只ひたすらに怖かった。
目の前の光景から目を背けたいのに、それが出来ない。
視線を外した途端、『それ』が障子を開けて入ってくるような気がしたからだった。

しかし、影は戸口に突っ立ったまま動こうとしない。
月明かりに照らされた『それ』は、よく見るとふるふると震えていた。
まるで液体が詰まった革袋にように、形を保つのが困難であるかのように見える。


941 :Nさんの話6/8 ◆tjIwFprWic :04/09/22 00:27:02 ID:BU7fbjBy
不意に、現場監督の呟きを思い出した。
「中身はミンチだろうな…」
そうだ。
中身がミンチだから、戸を開けることが出来ないのだ。
中身がミンチだから、ふるふると震えてしまうのだ。

「…Nさ~ん…Nさ~ん」
障子の向こうから、そう呼ばわる声が微かに聞こえてきた。
「Nさ~ん…Nさ~ん」
それだけしか言わない。声までもが震えている。
「Nさ~ん…Nさ~ん…Nさ~ん…Nさ~ん…」

もう限界だった。
頭から布団を被り、目を瞑り耳を押さえた。
「成仏しろ!成仏してくれ!」
それだけを願って、震えながら南無阿弥陀仏と唱え続けた。


942 :Nさんの話7/8 ◆tjIwFprWic :04/09/22 00:27:49 ID:BU7fbjBy
「お客さん、大丈夫かね?」
気が付くと、布団がめくり上げられ、宿の婆さんが覗き込んでいた。
部屋の明かりが点けられ、婆さんの背後には数人の男が立っている。
彼等は少し青ざめた顔で、ボンヤリとこちらを見ていた。
窓の外は真っ暗で、時計を見るとまだ真夜中だった。
障子は開け放たれていたが、もちろんそこには誰も居ない。
「随分うなされとったようだが、早う寝とかんと明日がキツイよぉ」
婆さんはそう言うと、持ってきた水をテーブルに置いて電気を消した。
障子を閉めると、婆さん達の影は階段の方へ。

と――降り口の所で立ち止まり、布団部屋の方に向かって声を掛ける。
「あんたも…指の3本くらいさっさと諦めて、早う来なされ」
やがて、婆さんは幾つもの影を引き連れて階下へ降りていった。


943 :Nさんの話8/8 ◆tjIwFprWic :04/09/22 00:29:13 ID:BU7fbjBy
翌朝、宿の主人に尋ねてみた。
やはりと云うか、この民宿に男の従業員は居ないらしい。
ただ、婆さんは本当に民宿の婆さんだった。
しかも、その婆さん、地元では有名な祈祷師らしい。
他県から依頼が舞い込むこともあるそうだ。
「オババがそう言ったのなら、その相方さんはココに居たんでしょう」
宿の主人は真剣な顔でそう言った。
「でも、オババが連れて行ったのなら安心ですよ。何の心配もいりません」
やけに自信たっぷりの主人の言葉だったが、何とも云えず救われた心地がした。

後日聞いたところによると、橋の工事再開にあたっては、オババが祈祷を捧げたらしい。
その甲斐あってか工事は無事に終了し、今のところ怪異な現象も起きていないようだ。

ヤケドの治療

753 :本当にあった怖い名無し :04/08/19 14:57 ID:QwBfLdAC
昭和の初め頃、夕張のボタ山でのお話。

開拓民として本州から渡って来ていた炭鉱夫Aさんは、爆発事故に見舞われた。
一命はとりとめたものの、全身ヤケドの重体だった。
昔の事とて、ろくな治療も施されず、全身包帯に包まれて、女房の待つ飯場の一部屋に担ぎこまれた。
付き添ってきた医者は、「大怪我だが、今夜を乗切れば命は助かるだろう。何かあれば呼びに来なさい」。
自宅の場所を教えて引き上げていってしまった。

その真夜中。ロウソク一本の薄明かりの下、枕元でひとり看病していた女房がふと気が付くと、
玄関に誰かの気配がする。
女房が出てみると、大勢の人間が立っている。
彼等の云うには、
「自分達はAさんと一緒に働いている仲間である。今日は大変な災難に会われて、お気の毒です。
 すぐにでも見舞いに来たかったのだが、生憎我々も作業を中断するわけにいかず、
 こんな非常識な時間になってしまった。
 どうか我々にも、Aさんの看病の手伝いをさせて欲しい」
との事。


754 :本当にあった怖い名無し :04/08/19 14:58 ID:QwBfLdAC
女房はひとりで心細かった処への、この温かい申し出に感動し、部屋に入りきれないほどの仲間達を迎え入れた。
それぞれ一人ずつAさんに話し掛け、励ましては部屋の中に座って、女房にも優しい言葉を掛けてくれる。
女房はすっかり安心してしまった。

その中の一人が、「自分は医術の心得がある、診察してやろう」と申し出た。
見れば、ボタ山で働いているとは思えない立派な紳士だった。誰かの知人なのだろうか。
彼は、
「これは酷いヤケドだが、私は幸いヤケドの治療法に長じている。今夜のうちに術を施せばAさんはすぐ治る」
と言った。
女房に否応が言えるはずもない。

やがて紳士による治療が、薄暗がりの中で始まった。
治療は荒っぽいものだった。
紳士は、「ヤケドには、焼けこげた皮膚を取り除いてやるのが一番の治療法だ」と説明し、
Aさんの身体を包んでいる包帯を取り除けると、やがてAさんの皮膚を無造作に剥ぎ取り始めた。


755 :本当にあった怖い名無し :04/08/19 14:59 ID:QwBfLdAC
炭鉱夫仲間でも屈強な身体付きで知られたAさんも、これは堪らない。
Aさんはあまりの苦痛に絶叫し、「いっそ殺してくれ」と泣き叫んだ。
女房はおろおろする以外なにも出来ない。
あまりの凄まじさに、自分も耳を塞いで泣き叫び始めた。
紳士は「ここが辛抱じゃ。すぐ楽にしてやる」と声を掛けながら、眉ひとつ動かさず作業を続ける。

どれぐらい時間がたったか。
いつしかAさんの絶叫は治まっており、静寂が戻っている。
紳士は女房に、「心配かけたがもう大丈夫。すぐに元気になるよ」と声を掛け、席を立った。
女房は何度も何度も頭をさげながら、表まで紳士を見送った。
遠い空がうっすら明るくなっている。もうすぐ夜明けだ。

部屋に戻ると、さっきまで狭い部屋から溢れ出る程大勢いた見舞客が、ひとりも居なくなっている。
女房は不思議に思うより、不快に感じた。
帰るのだったら、一言くらい挨拶してくれても良いじゃ無いか。
疲れきった女房は、Aさんの枕元に腰を下ろし少し休もうと思ったが、Aさんの顔色をみて驚愕した。
夜明けの日差しの中で見るAさんの顔色。それはまるでロウのようだった。
女房はAさんに取りすがって、再び号泣するしかなかった。


756 :本当にあった怖い名無し :04/08/19 15:00 ID:QwBfLdAC
騒ぎを聞きつけた隣人に連れてこられた医者は、Aさんを見るなり女房を怒鳴りつけた。
「誰が患者をいじった!」
Aさんを包む包帯の巻き方は、明らかに素人のものだった。
包帯を取り除けた医者は、Aさんの身体から目を背けた。
無惨に生皮を剥ぎ取られた遺体がそこにあった。

あまりの奇怪な事件に警察が呼ばれ、半狂乱の女房から何とか事情を聞き出した。
だが、その夜現れた男達も、例の紳士も、ボタ山はおろか近隣の町村にも、該当者はいなかったと云う。

話を聞いたある人が、「それはキツネの仕業だろう」と言ったそうだ。
キツネにとって、人間の瘡蓋や火傷瘡は霊薬になるとされ、
ある地方では、『火傷や瘡蓋のある者が山にはいるとキツネにだまされる』という言い伝えがあると云う。
女房は目の悪い女で、日頃から泣き腫らしたような瞼の持ち主だったという。
キツネはそれに付け込んだのだろうか。

残念ながら、女房がその後どうなったかまでは、この伝奇の採集者は伝えていない。
スポンサードリンク
最新コメント
スポンサードリンク
livedoor プロフィール
メッセージ

名前
メール
本文
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: