2008年09月

2008年09月25日

9/24の小説技法

 中山市朗です。

 24日(水)の報告です。
 さて、今日はシナリオについて考えましょう。
 えっ、なんでって?
 まあ、なんとなく・・・というより、最近我が塾の最年長(年齢ではなく、塾にいる年数が)のMくんのマンガ用のシナリオを、授業が終わるたびに見ているんです。
 で、これはMくんだけの問題ではない。よくこんなシナリオ見るよ、ということでちょっと考えてみます。マンガを描いているキミ、他人事じゃないよ。きっと、やっちゃってる項目あるよ!

 まず圧倒的に多いのは、シナリオにしてもネームにしても、一体何が起こっているのかサッパリわからないもの。
 本人の頭の中ではお話になっているんでしょうが、流れや構成、シーンの繋がりがまったくダメなんです。一度読んでもよくわからない。
 えっ、これはなんでこうなってんの?
 あれっ、この台詞はどういうこと?
 おやいつの間にこんな状況になってんの?
 と、何度も読み返したり、前のページを確認したり・・・これじゃプロではアウト!
 Mくんのシナリオもそうだったわけです。彼は戦国もののちょっとファンタジーな味付けのしてある劇画調のものを書いてきているんですが。
 わからん。前のページに戻ったり、もう一回読み返してみたり・・・。
 うーん。
 要因がわかりました。凝りすぎているんです。すとれーとにストーリーが進行しない。独白(彼はナレーションと言っていました)がいきなり始まったり、回想が入ったり、突然別のシーンが入ったり。これ、実はストーリーに自信がありません、と告白しているようなもんです。直球に自信がないから不必要に飾り立てたり、体裁にこだわったり。つまり小手先に頼ろうとしているわけです。これ多い! 絵はうまくても、なかなかデビューできない人は、おそらくこれが最大の問題になっているはずです。

 だからMくんに注文したわけです。

 ストーリーはちゃんとオーソドックスに順番に語ろう。
 そしてそれが描けるスキルを習得しよう。
 回想なんて最低です。まだ話にノッていないのにいきなり回想を見せられても。
 たかだか30ページ前後のマンガで、回想している余裕はない!
 それに回想は話しのリズムを崩すから。よほどの勝算がない限り厳禁。
 オーソドックスができないのに凝ろうなんて百年早い。

 次にマンガで一番重要なキャラクターについて。
 これがなかなか立っていない。つまり引き立っていないということ。
 最初で印象づけて、最後まで引っ張る。これ基本。
 で、Mくんのキャラは全然立っていない。
「どーしたら立つんでしょうねえ」とMくん。
 このキャラ、喋りすぎや!
 もう境遇から目的から思っていること全部ぺらぺらと喋っているから、全然ミステリアスじゃない。興味も湧かない。しかも相手のヒロインとも初対面なのに、なんだこの警戒心のないおしゃべりは! 武者修行者と謎の女、という設定やのに、これじゃまるでチャラ男と尻軽女。安っぽい学園コミックの読みすぎやん。この場合、どっちかは寡黙なキャラにしなきゃ。それに武者修業をしている若者が女の子相手に自分の素性や修業の目的を簡単に言うか?
 『七人の侍』を観てみ、勘兵衛や五郎兵衛は必要なことしか喋らんし、久蔵にいたつてはほとんど台詞がない。べらべら喋ってるのは百姓あがりの菊千代やん。その菊千代でも登場シーンは全然台詞なしに勘兵衛を見ている・・・。

 そうキャラを立てるには、台詞ではなく画で見せること。
 そしてサブキャラを作って対比させること。

 台詞!
 よくあるのが説明のための台詞。だから台詞になっていないし普通そんなこと言わんやろ、みたいな台詞を堂々と言わせている。説明は画とアクションで見せられる!
 どうしても説明がいるんですよと言うのなら、そのプロットは捨てちゃいましょう。きっとそのサイズの作品じゃない。
 それと台詞は極端に言えば、ボケとツッコミ。それで基本は成り立ちます。
 
 いつかこのブログで書きましたが、マンガの読みきり30ページは、映画の冒頭シーンくらいの情報しか詰め込めません。だから直球で勝負しなきゃ。
「なんか参考になるものはありますか? こんな映画観とけとか」
 お前が観るべきはこれじゃ!

「この印籠が目に入らぬかあ」
「ははーっ」

 テレビドラマ『水戸黄門』のDVD-BOXが教室にある。これ観とけ!
「ええーっ、水戸黄門すか?」

 そんなん言ってるから、わけのわからんもの描いてまうんじゃ。
 マンネリって実はすごいこと。ほぼ同じストーリー、同じキャラの配置、同じ解決。でも、これはしっかりとした作劇法とキャラクターと世界観があるからできること。映画のシリーズ最多作のギネスとなった『寅さん』も同じ。マンネリ、オーソドックスって若い人は馬鹿にするけど、これ基本中の基本。案外難しい。実は凝ったものはそこそこ腕があればできるんです。わからなきゃ、そいつがアホや、で済ませたらいい。えも本当に難しいのは、ちゃんとしたストーリーをちゃんと描けること。プロに必要なスキルはそれなんです。キミ達は今はデビューすることしか頭にないやろうから、捻ろうとしているんやろうけど、連載となるともう通用しません。ずーっと連載を続ける秘訣は、このオーソドックス、マンネリをこなすテクニックにあるのです。

 さっそく先週『水戸黄門』のDVDを持って帰ったMくん。昨日のシナリオは見事それが生かされて、ちゃんとストーリーになっていました。そうそう、それだけでマンガのシナリオの体になった。でも問題は山積み。主人公は男か女か、どちらかわからないし、どちらもよく喋るし、台詞もやっぱり説明を言ってて不自然やし・・・。

 プロを目指してマンガを描いている人、『水戸黄門』『寅さん』『ウルトラQ』は絶対観ておいたほうがいいから!


中山市朗作劇塾は新規塾生を募集中です。
興味がおありの方は、作劇塾ホームページをご参照ください。


kaidanyawa at 21:11|PermalinkComments(0)

2008年09月18日

9/17の作劇ゼミ

 中山市朗です。

 うちの塾生にも、絵だけのスキルを見るとプロ級の人はいます。でも残念ながら絵で食べていくことができません。まあ、だから塾生なんですけど。文筆家を目指す塾生も同じことが言えます。

 じゃあプロとそうでない人との違いはなんだと思いますか?
 どうも技術だけの問題ではなさそうですね。

「(絵を描くのに)技術は必要ない。食べたいものがあったら箸を使って食べればいいんで、箸を持つ練習からする必要はないでしょ。絵を勉強している学生は、練習から始めちゃうからね」

 この言葉は、イラストレーター空山基氏が同じイラストレーター韮沢靖氏との対談(韮沢靖作品集『カメレオン』誌上)で語った言葉です。

 食べたいもの、つまり描きたいものがあるのなら、それを描けばいいじゃん。で、箸っていうのが技術。中華や和食なら箸だろうし、洋食ならフォークとナイフ。寿司は手で食べるのがうまい。つまり描きたいものによって必要な技術は違うわけ。
 どうも学びにきている子たち、あるいはプロになりたいとひとりで書いている人たちには、その書きたいものが明確でないんですね。だから箸を持ってみたり、ナイフとフォークを使うことも覚えんといかんとか、手でつまんだら、とか全部マスターせんとあかんという脅迫観念ができるのでしょうか?
 専門学校やカルチャーセンターの講師の方々も、それが基本なんだから、と全部やらせようとしちゃう。クロッキーだ、デッサンだ、背景効果だ、ストーリー作りだ、構成だ・・・。そら、いつまで経ってもおいしいと思わないし、腹もふくれない。そしたら書くことが苦痛になってくる。書いたとしてもオリジナリティがない。
 そんなことを学生の大半の人は繰り返しているように思うんです。

 何が書きたいの? エロでもギャグでも素敵な恋愛でも、まず書きたいものを明確にするべきです。エロだったらいかにエロい女を描くか、ギャグだったらキャラクターを作ることがまず優先。背景を描くのが苦手だったら、やらなくてもいいじゃん。時代劇を描くんだったら、綿密な情緒ある絵を描く練習とか、箸を使うかフォークを使うか決まってくる。なーんか遠回りしているような気がするんです。これを書きたい、表現したい、というんじゃなくて、「マンガ家になりたい」「小説家になりたい」というスタンスにいるからダメなんでしょうな。
 猛烈に書きたいものがあるなら、自然と技術はついてくる。そしたらやっぱり背景を描けるようになりたい、もっとわかりやすいコマ割りってなんだろう、構成が甘いな、と気づいてそこからだと身につくのも早いんです。食べたいものがそこにあるから、もうガッツリといっちゃう。

 だから塾生には口をすっぱくして言うんです。おもしろいもの探しをやろう、もっと遊ぼうと。

 今回の授業では、プロはどんな思考でいるのか、というお手本として、空山氏と韮沢氏の対談の内容を読んで、その意図を解釈していきました。韮沢さんとは一度お会いしてお話もいろいろと伺っていたので、そのときのことも参考にしながら。

 プロとアマチュアの最大の違いは、仕上げの早さにもあります。

 対談でこうあります。

韮沢「空山さんて仕事早いですよね。あんな綿密なタッチなのに」
空山「無駄をしないだけだよ。時間かけるヤツは無駄が多いのよ。要するに下手なんだ」
韮沢「そう、いかに手を抜いて、必要なところだけまとめるか。ポイントがわかっていないですよね」
空山「見せたいポイントがあるなら、他の部分を描いちゃいけないのに懲りすぎなんだよな。もっとシンプルに一箇所を攻めればカッコよくなるんだから」

 そう、無駄をやってるんですよね。で、「時間がない」なんて言ってる。本来30ページ前後のマンガなんて最低でも一ヶ月で仕上げないと、月刊誌の連載もできない。それ、わかってんのかなーと思うわけです。ちんたらやっているのは、口ではプロになりたい、と言いながらどこかでハングリー精神がないんですね。バイトしていたら適当に食べていけるから。
 早くデビューして、マンガで食べていくんだ、という気構えと覚悟がない。
 それに社会を見ようとしない。これもダメです。プロの人間は特定の人にではなく、社会に向けて作品は掲載されるわけですから。私にはこれは必要ありません、あれもやる気ありません、これもいらないです、というヤツ、さすがにウチの塾生にはいなくなりましたが専門学校時代にはゴロゴロおった。例外なく、全員消えましたけど。

空山「何を描いてもいいんだろうけども、発表sるときはオブラートに包むとかしなきゃいけない。筒井康隆が言っていたよね。ものを書くときには社会性はいらないけど、発表するときはいるんだって。素人が描くのはトイレの落書きでさ(略)、それを世の中に受け入れられるように発表するのがプロ。アートって、びっくりさせることだから」

 この「びっくり」というのがプロにはものすごく重要。
 来月のこの授業では、この「びっくり発想」について考えます。

 ところで今週のねとらじで、塾生のBOMさん(塾生ホームページを見よう)の話題が出たとき「しっつれいしました」という若井ぼん・はやとのギャグを披露して「ボン(BOM)といえば若井ぼん・はやとを思い出す」と言ったところ、塾生たちは「知らない」という反応・・・。私が中学、高校のとき「お笑いネットワーク」なんかでよく見てて、おもろい漫才師やってんけどな〜。
 もうコンビ解散して、どないしてはるんやろ? と思っていたら、昨日の授業が終わって塾の会議室に戻ったら、そこに、ぼん師匠がほんまにいてはった!
 今、師匠はレゲエ歌手、ジェームズ・ボンとしても活躍してはります。




中山市朗作劇塾は新規塾生を募集中です。
興味がおありの方は、作劇塾ホームページをご参照ください。


kaidanyawa at 22:14|PermalinkComments(1)

2008年09月11日

9/11の小説技法【小説家志望が陥る落とし穴】

 中山市朗です。

 10日の小説技法の報告です。

 今回はマンガ家志望の3人が合評に参加。うち2人は今月入った新人です。
 マンガ家志望なので小説を書けとは言いません。でもせっかく塾に入ったんだから合評に参加して損はないよ、と言ったらちゃんと参加してきました。続くといいんですけど。

 さて今回は、作家を目指す人がよくやらかすダメパターンをやっちゃった塾生が発生しました! 塾以外の小説家志望の人は必見!

 今回の合評には6作品が提出されましたが、うち2作品が同じような書き出しでした。
 その2人は、それぞれ4月、5月に入ってきた新人。
 小説家志望者がよくやっちゃうパターンをやってしまいました。
 それは夢のシーンから始まること。
 たーくさんありました。専門学校で教えていた頃から。まだ登場人物の紹介も、ドラマも始まらないまま、いきなり主人公の見た夢を延々と読まされる・・・。
 もちろん2人はそれぞれの夢が事件の伏線になると考えてのことなのですが、正直、最初から夢のシーンを読まされるのはしんどい。
 なんで夢のシーンから書いちゃうのか、私なりに考えると、まず事件が起こせない。別に私は殺人事件を起こせとか、宇宙人を出せとか、街を爆破してしまえと言うわけではないのです。
 日常の中のささいな変化、誰かとの出会い、別れ、何か起こる予感、壮大な風景・・・そんな世界観が書けない。ストーリーがきっと頭の中で練られていないのでしょう。あるいは書きたいものが正直いってない。「ないけど小説を書かなきゃ」で、カルチャースクールや専門学校に行っていると課題が出される。書きたいものが明確じゃないから、無理に書く。そしたらどうしても夢の描写を書いちゃう。

 彼は暗闇の中に立っていた、とか、助けてくれ、助けてくれ(このフレーズは2人とも使っていた)とか、急に光が見えてきた、とか、ここはどこだろう、とか。

 これ、下手すリャ自己陶酔に陥りやすい。だって日常じゃない、ありえないことを書いても夢で済まされるわけだから。実は書きやすいし、名文のように思っちゃう。
 でもそんな作品、もうウンザリ・・・。

 もうひとつやりがちなパターンは、朝起きるところから始まること。
 これも最悪です。
 日記か!
 と、ツッコミを入れたくなります。
 その話を塾生に話したら、ある塾生がこんなことを言いました。
「私、マンガの持ち込みで同じことを言われました。目覚まし時計から始まるマンガはもういいからって」

 これはさすがにウチの塾生にはいませんが、やたら文章をこねくりまわして難解な文章にしたうえ、こんな漢字どこから持ってきた? という作品。正直、専門学校で教えていた頃は、そんなノイローゼ告白文みたいな(本人は文士を気取っている)作品が、もうほとんどでした。
 そんなもん誰も読まんわ。書いている本人だって読まんでしょう。これもストーリーやテーマが明確じゃないから、文体でごまかしているんですな。
 そんなん下手な作文レベル。いや、作文にもなっとらん。
 もう鳥肌もんですよ、そんな文章。
 その割りにライトノベル書きたいって言っている。は?
 ライトノベルって、そんなんじゃないでしょう?
 
 小説家志望の人で、このブログを読んだ人は、「夢」「朝起きた」「意味無く難解な文体」「普段使わない漢字」という小説を書いていたらすぐ破棄しましょう。あかんよ、それは。
 
 それからテーマ。
 今コレが流行っているから私も、というのもやめましょう。自分のこだわりを見つけることです。

 ウチの総務の菅野くんが、以前小学校だか中学だかの、ある作文コンクールの審査員をやったことがあるんです。彼はまず最初に振るいにかける下読みだった。
 全国から何万という作文がくるんです。これを数日で読むわけです。
 読めるわけがない。
 計算すると、一作品に1分とかけられない。するとどうするか。
 パラッと見て、この子は何をテーマにしているかを見た、と言います。
 というのも、ほとんどの子が「エコロジー」などの似通ったテーマ。
 これは学校の先生が書かせているな、と思ったそうです。
 で、それらはよっぽどの切り口でない限り真っ先にはねる。そしたらたちまち9割が淘汰されたといいます。中には素晴らしい作文もあったかもしれないですけど、やっぱり審査を通るというのも大切なこと。えてして、こういうコンクールは文体よりも目のつけ所、切り口、オリジナリティ、そういうところを見ます。学校の先生方はそこがわかっていないようです。子供は同じ価値観を持つことがいいと思っている節がある。そんな先生の余計な口出しは、子供の個性を奪っているのかもしれないと考えさせられる話です。

 テーマは人から借りたらあかん!

 さて、今回夢から始まる作品を書いちゃった2人。お互いの作品を見て「わちゃー」と思ったことでしょう。次回はどんなものを書いてくるのか。
 そうやって成長するんです。


中山市朗作劇塾は新規塾生を募集中です。
興味がおありの方は、作劇塾ホームページをご参照ください。


kaidanyawa at 20:40|PermalinkComments(0)

2008年09月05日

9/3の作劇ゼミ(その2)

 中山市朗です。

 昨日の続きです。
 Fくんが『ファミ通』のコラムの連載を決めたとき、塾生に似顔絵を描くチャンスをくれた。飛びついた塾生もいれば、とうとう連絡がこなかった塾生もいたらしい。
 これが私にはわからん。
 『ファミ通』はエンターブレインという出版社が出しています。他にも雑誌はあるし、ファミ通文庫というライトノベルも出しています。ここの出版物にイラストが載ったということは、実績になるわけです。オリジナルの似顔絵をファイルに入れておいて、どこかへ売り込んだとき学校の課題で描きました、趣味で描きました、というのばかりがファイルにあると、「これ『ファミ通』に掲載したものです」というのがあるのと、売り込み先にどれだけ印象が違ったものになるのか。Fくんはサラリーマンだから、そのことがわかるんです。売り込むには信用性と実績が絶対必要。だからあえて塾生の枠を作ってくれた。実績をひとつでも作ろうよ、と。でもここをスルーしてしまった塾生は、おそらくこれがチャンスであるという発想さえもなかったんでしょう。現に高校生の塾生Kくんは、こんな大事な話をしとるのに寝とる…。
 仕事ということが、まだわからんのですな。
 塾生Oくんは「いや、恐れ多かったので…」と言います。
 アホか!
 じゃあ、いつになったら恐れ多くなくなるのや、と。2年先か、5年先か?
 5年先、今ならエンターブレインさんの依頼を受けられますと言ったところで、そのラインがあるという保障はない。つまりFくんが無理矢理にも作ってくれたチャンスを逃したわけです。こんなん、もうないで。
 今回は何もエンターブレインの編集さんに見てもらうとか、そんな必要はない。描いてFくんに渡すだけで掲載される可能性がかなりある。それだけで、とりあえずひとつの実績ができるわけです。そこをスルーしてしまうとは…動いていない証拠。あまりに世間を知らない。業界を知らない。人の心理を知らない。お金にする術を知らない…

 ちょっと前、Mさんというプロのイラストレーターの方と飲んだんです。
 そしたらMさん、持っていたポートフォリオを広げて私に見せるんです。「これは大阪ガスから頼まれた器具使用のパンフレット、イラストは僕です。これは某玩具メーカーからの依頼で描いたプラモデルの箱絵、こっちは某情報誌に掲載されたコラムの挿絵です。あっ、こっちは文庫本のカバーでしてデザインをやりました…」とまあ、要は私に売り込んでいるわけです。そうやって少しでも実績をアピールして、ともかく仕事を取る。ちょっとしたチャンスでも転がっていないかと常にキョロキョロしている。もうプロの売り込みはすごいです。バイトしながらなんとかやっていけばいいじゃん、というスタンスの学生とは、そら目つきが違う。こんな人たちと、これから仕事の取り合いをしていくわけですよ、プロになるということは。だから何度も何度も言いますが、画力や文章力があるというだけではプロにはなれんわけです。それは最低条件ではありますが。
 ちゃんと仕事にする。
 それで食う。
 その気構えと方策をぜひとも塾生に知ってほしかったわけです。

 Fくん、言ってました。今回の執筆や打ち合わせ…「人生でこんな楽しいことは初めてでした。いやあ、おもしろい。こんなんでお金をもらえるのって。ネットでは『いつもは立ち読みしてたけど買った』なんて書き込みがあったり。もう楽しくて楽しくて」

 そう。
 その幸せを知ってほしくて、私は塾を作ったんだよ!
 


中山市朗作劇塾は新規塾生を募集中です。
興味がおありの方は、作劇塾ホームページをご参照ください。


kaidanyawa at 01:00|PermalinkComments(1)

2008年09月04日

9/3の作劇ゼミ(その1)

 中山市朗です。

 3日の作劇ゼミの報告です。
 前回のブログに書きましたように、Fくんがライターデビューしましたので、せっかくなのでそのFくんと同じく、小説も出してライター兼用で総務をやっている菅野くんも交えて「書くことを仕事にするためには」という三者面談会という形で授業を行ないました。

 投稿、営業、持ち込み、売り込み。
 ものすごく大事なことです。どれだけ作品を書き溜めても投稿も営業もしなかったら、その作品は永遠に日の目をみません。とういことはプロの作家になれない、ということです。そら当然や、とみな思うんです。ところが現実の話となると、そうやって常に動いている学生は専門学校でもほとんどいなかった。書いてはいるんですけど、それをどう仕事に転嫁させるのかという積極性、知恵に完全完璧に呆れるほど欠けていました。
 一方で動いていた一部の学生たちは、ちゃんと生き残って今も活躍しています。
 もちろん動くという背景には、売り込める作品があるという裏づけですから、正直動いていない人は書いているつもりでも作品に仕上げていないのでしょう。また、営業しなくても簡単にホームページを開設して、そこに載せることで満足しちゃう人もいるんでしょう。
 作家やマンガ家になりたくて、ただ書いているという人は、全国何十万、ひょっとして何百万人といることでしょう。で、おそらくこの中で持ち込み、営業して、人脈を作って仕事として原稿を受けて、という人は1%に満たないと思います。ということは動くだけで大部分のライバルは蹴落とせるわけです。だから動け、売り込め、持ち込め、知り合いの編集さんを作れ、と言うんですけど、動かんヤツはやっぱり動かん。うちの塾生でも、もう何年も塾にいるのに未だに一度も営業をしたことがない、投稿もしたことがない、というヤツもいます。そら、デビューできるわけがない。スキルは確実にあるんですけど…

 そしたら去年の秋に入ってきたFくんが、一年もたたずにメジャー誌でライターデビュー。色々聞いたらやっぱり編集部から破格の扱いを受け、完全に信頼されています。言っておきますけど、Fくんは作家やライター志望者ではなかったんです。ただ彼はサラリーマンをやっていてこの塾を見つけて、人生の糧がほしいと思ってウチの門を叩いた。だからスキルだけいうと、Fくんより上の者がウチにもたくさんいます。しかし彼はちゃんと動いた。その結果が今回のようになった。やっぱり動かなあかん、動けばなんとかなるということが実証されたわけです。
 小説とライターは違う。小説の営業はないじゃん、と思っているキミ。
 こんな話を菅野くんがしてくれました。

「5年ほど前、専門学校を卒業した21歳のとき、同じ卒業生にライターの仕事やっていこうよ。中山先生がチャンスくれているよと誘ったんです。そしたら完全に馬鹿にされました。『そんなことする間に小説書こうよ。俺バイトしながら小説書くから。バイトしてたら昇進もするやん』と。それから5年、僕はライターとして仕事をこなしてきました。結果テンションも持続して書くことが維持できたんです(小説も出版したし、近く4人の共著ではありますが某出版社から本が出ます←この話は彼はしませんでしたので、私が付け加えておきます)。そしたら去年mixiを通じて久しぶりに彼とやりとりをしたんです。そしたら聞いてくるわけです『ライターの仕事ってあるの?』『お前、断ったやん』『やっぱり仕事ないし文章書くことに携わりたいやん』と言うんです。26歳にしてようやく気づいたかと。僕は5年間、書くことでギャラをもらったり色んな蓄積もできました。何人か編集さんとも知り合いになれたし。一方彼は何もない。小説はひとつも書き上げていないようだし、バイトもクビになったようやし。出版界の人脈はまったくないみたいだし。同じときに専門学校を卒業して、同じ5年の月日を過ごしたんですよ」

 私が思うに、なにも菅野くんに特別な才能があるわけでもなし、むちゃくちゃ努力をしているわけでもない。ひょっとしたら、塾で一番ゲームで遊んでいるのは彼だと思うし、結構飲み歩いているみたいだし…。そんな彼でも書くことでお金をもらっているんです。教えていた側から言うと、菅野くんもその彼も大して変わらない普通の学生でした。ただ菅野くんはちょっと柔軟性があって、もう一方の彼にはプライドがあった。その違い。でもここが大きかったんです。私はよく教え子に言うんです。
「プライドで飯は食えん」

 小説家になって印税生活なんて、まあ夢。たいていはエッセイを書いたり、評論を書いたり、コラムを書いたりするライター兼用の小説家がほとんどです。またそれが書けない小説家もいない。なぜバイトするんやったら書くことでお金を稼ごうという気にならんかったのかな、と。そういう発想、想像力に欠けていたんでしょうな。

 Fくんからはこんな話も出ました。
「実はコラムに僕のプロフィールが載っているんですけど、プロフィールには必ず似顔絵がつくんです。載っても小さいイラストですよ。でもどうせならそれを塾生仲間に描いてもらおうと思って編集さんに提案したら、絵が変わるのは困る、その主旨がわからない、と言われたんです。でも『ファミ通』の編集さんの紹介が似顔絵であるんですが印象に残ったものがない。特徴もないし、面白くもない。フツーの似顔絵。これはサービスがない。どうせだったら、ちょっとデフォルメして、秋だったら栗持っているとか、ブロック崩しのイメージ画が背景にあったりとか…そういう読者へのサービスというか、遊びがあっていいじゃないですか、と。そしたらその提案も通った。だから今回はAJさん、次回はAMさん(ふたりは塾OB)その次はSくんと決まったんです。みんなで『ファミ通』デビューしようぜって」
 この順番は、携帯メールで何人かの塾生に知らせたら、真っ先に食いついたのがAJ、数分後にAM、次の日の朝にSくんから「描きます」という連絡があったそうです。これはFくんの塾生への友情です。わざわざ編集さんを説き伏せた。
 ところがこのチャンスに飛びつかなかった塾生がいたんです!
 ええっ?
 あんな小さな扱いのイラストを描くことのどこがチャンスかわからんって?
 はあ?

 なら、この続きは明日にくり返しや。



中山市朗作劇塾は新規塾生を募集中です。
興味がおありの方は、作劇塾ホームページをご参照ください。


kaidanyawa at 20:33|PermalinkComments(0)

2008年09月01日

ライター志望者へメッセージ

 中山市朗です。

 塾生Fくんが武層新木朗というペンネームで、メジャー誌にライターデビューしました。今週号から掲載されています。
 『ファミ通』にカラー、6ページにわたるゲーム機の歴史についての考察。
 連載第一弾は世界初のテレビゲーム機についてのコラムになっています。
 この雑誌には珍しい読み物企画で、ファミコン生誕25周年記念企画扱いとなっております。今後隔週で12月まで連載が続くそうです。

 以前、東京の某編集者さんとゲーム会社の重役の方と食事をしたことがありました。このとき編集の方は「映画ライターやゲームライターになりたいという人は、おそらく全国に何千、何万といます。ホームページを開設してアピールしたり編集部に書かせてくださいと売り込みにもきます。でも、ほとんどはゴミです」
 ゴミ…あの、私が言うたんと違いますよ。編集の人が言いはったんですよ。
 では、どこがゴミなのでしょう。
 彼は言います。
「ゲームライターは自分がプレイをしたり、したいゲームの感想や攻略を書こうとします。そんなもん、学生でも書けます。また文章テクニックもそんなレベル。映画ライターは何か書かせると、まずこの映画と私、みたいな回想録になってしまう。映画を映像理論の読み解きとして書けない。現場の取材もやらない、できない…。それは商業誌の編集からすればゴミ、いやゴミ以下です」

 そんな中でFくんは破格の扱いでデビューしました。ペンネーム記載で6ページものコラムが掲載されているのは今月号では彼だけです。しかも長期連載。
 なぜそんなデビューができたのでしょう?
 ライターを目指している人たちに、ちょっとだけヒントを差し上げます。

 もともと彼は古いゲーム機などをコレクションしていて、それをホームページに掲載して、たまにゲーム雑誌などから資料として使わせてくれないか、という問い合わせはあったようです。これは彼のこだわりです。こだわりを形にしていたわけですな。私はなんでも書きますというのでは、却って編集は使い方に困るわけですな。
 こだわりは絶対必要です。ただし意固地はイカン。

 だからといって「私には、こんなこだわりがあります。書かせてください」というだけの売り込みもダメ。そういう人は世の中掃いて捨てるほどいます。毎日、各出版社の編集に大勢の売り込みがあるそうです。編集の人がゴミといった比喩はここにもかかります。
 その中から一歩抜きん出るには、この人になら任せられると編集側から信頼をもらうことです。安心してもらうことです。その方法が企画書です。
 私には何が書けるのか、その狙いはどこか、それをどう展開するのか、そのターゲットは誰なのか、そのためには何が必要か、意図は? 背景は? といったことを明確にした企画書を書くこと。ゲームや映像のプロジェクトものの企画書には製作見積もりを付随するべきかもしれません。
 私がFくんに指示したのはこれです。
「ライターとして売り込むんなら、企画書を持っていけ。これがあるだけで絶対編集長まで話がいくから」
 大抵、売込みをしても対応に出た人のところで止まっているのが現状です。「これ今まで私が書いた原稿です」と渡したところで、素人の原稿なんてまず読まない。
 でも企画書は違う。
 原稿は忙しい中、読まないといけませんが、企画書はパラパラッと目を通すだけで、どんなものかわかるんです。そして、企画書が書けるということは、ビジネスとしての提案をするということを示します。つまり私は仕事ができます、というアピールになるんです。プロの編集が素人や学生上がりにいきなり仕事をくれるわけがない。だからこの見せ方は大きいんです。また、企画となればその判断は上にあがる、つまり対応した人もリアクションを起こして上司に報告せずにはいられないというわけです。だから編集長まで話がいくよと言った。
 とはいえ、当然Fくんは企画書の書き方はわからない。
 もちろんプロ用の企画書の書き方、見せ方、書式があります。

「先生がお書きになった企画書、参考になるものがあればお借りできますか」
「持ってけー!」

 とファイルをまるまる一冊貸しました。テレビ番組や出版企画、ビデオ作品や映画などの、私が20代、プロになってからの30代に膨大に書き溜めた企画書のごく一部です。実際に成った企画もあれば、ボツ企画も山ほどあります。
 Fくんはそれらを見事に応用し、改変し、企画書を作成しました。

「ゲーム雑誌はきっと読み物がないから、ちゃんとした読み物としての企画にしろ。雑誌に読み物がないというのは問題やと編集はきっと思ってる。当然、ゲームマニアがなんだこれは、と読みたくなる企画やで」と言いました。どうも編集さんのゴミ発言の裏には「読み物が書けないんですよ、アイツらは」というニュアンスも含まれていたので。
 そして「せっかく東京まで売り込みに行くんやから単発ではもったいない、連載の企画にすること!」とも言いました。連載にならないとお金になりませんから。プロだったらお金にするための発想が必要。それに一回だけ掲載されたのと長期連載とでは、周りの扱いが違ってきます。それにしてもいきなり読み物の連載…?
 難しそうですが大丈夫。テクニック的なことは小説技法で鍛えてあるから、これくらいの読み物なら、という確信がありました。

 で、実際に彼は持ち込みをして、二転三転しながらも『ファミ通』の編集長と食事をすることになって…連載決定。読みは当たりました。というより、これは計算です。
 企画書持参で売り込みをするゲームライター志望者は、絶対にいないだろうと。そしたらFくんは「それがその通りでした。これまで何千人と『ファミ通』にライターの売り込みがあったそうですが、企画書持参というのは僕が初めてだったみたいです。それに新参者の僕がプロのような扱いを受けて、編集長さんと直にやりとりして…ええんかな、と」
 ええねん。ちゃんとした書式の企画書を持参した人間が、素人やとは思わん。
 それにゲーム誌に、読み物の掲載、やっぱり欲しがっていたみたい。

 実はこの「企画書」作戦。私が専門学校の講師時代から特に「ライター、ゲームデザイナー、シナリオ、放送作家志望者に関しては、仕事をもらうのは営業しかない。その武器は企画書。絶対に書けるようにしておくこと、いつもかばんの中に何通か入れておくこと」と口をすっぱく言い続けていたんですが、今まで実践した教え子は、なんと2人だけ。みんな言うこと聞かんと勝手に挫折していく…。
 企画書実践者のひとりめは、現在は我が塾の総務菅野くんで、昔企画書を持って行ったら、某ゲーム会社の就職が一発で決まったと言います。
 ふたりめがFくん。しかも私の書いた企画書を貸してくれと言ってきたのはFくんが初めて。これも専門学校時代からいつでも貸してあげるよと、ずっと言ってたんですけどねえ。
 …言っておきますが、企画書などというものは本来シークレット。その考え、切り口、ノウハウ、リサーチ能力、全部わかっちゃう。それを惜しげもなく教え子に開示してコピーまでさせるのは、ワシくらいなもんでっせ。ホンマ。

 もちろん私はアドバイスをしただけ。
 営業して、仕事をとってきて、実際に取材し、執筆するのはFくんです。ところでFくん。キミのコラムを読んでちょっと次の展開を思いついたわ。連載が終わるまでにそのことを頭に入れておいたら、こんな可能性も…



中山市朗作劇塾は新規塾生を募集中です。
興味がおありの方は、作劇塾ホームページをご参照ください。


kaidanyawa at 14:27|PermalinkComments(0)
プロフィール
中山市朗 【なかやまいちろう】


作家、怪異蒐集家

兵庫県生まれ。


主な著書に「新耳袋」など。

作家、漫画家の育成機関「作劇塾」を主宰。


作劇塾

オフィスイチロウ


Archives
ギャラリー
  • 本日怪チャンネル、上方芸能と怪談!
  • 東京で千日前怪談の詳細を語る!パート2
  • 東京で千日前怪談の詳細を語る!パート2
  • 東京で千日前怪談の詳細を語る!パート2
  • 東京で千日前怪談の詳細を語る!パート2
  • 東京で千日前怪談の詳細を語る!パート2