2010年07月

2010年07月29日

7/28の小説技法・・・ではなくて

 中山市朗です。

 塾のホームページをよくご覧いただいている一部のマニア(?)の方はお気づきでしょうが、ここ一週間ほどでブログを始めた、あるいは貼り付けた塾生が俄かに増えました。
 もちろん物事にはその原因というものがあります。

 はよ言うたら、一週間前のデジタルコンテンツ会社のY社長が帰られ、その後のお説教ムードになった折り、「そもそもなんでブログをやらん!」と、総務のスガノくんから一喝があったわけです。で、凹んでいたこともあって、塾生たちもようやく・・・。
 実はこのことは、随分と前から私が塾生たちに言い続けてきたことなんですが。

 本音を言うと、ホームページを作ってほしいわけです。

 ホームページは不特定多数に向けたポートフォリオです。
 特に大阪在住のクリエイター志望者は、東京に持ち込みに行かない限り、編集の人たちに自分の作品を見てもらう機会は滅多にありません。で、見てもらわない限り、100パーセント仕事の発注はきません。
 一方、編集の方々はわりとクリエイター志望者のホームページをこまめにチェックしているようなんです。「どこかに金の卵はいないものか」と。するとここから仕事が発注される可能性がわずかながらでもある、ということになりますね。
 だったらクリエイターとして生きていくために、ホームページを開設するべきです。
 デッサン、クロッキー、イラスト、マンガ、随筆、小説、批評、シナリオ、映像作品など、書き溜めた作品、作った作品をどんどんアップして、自分のプロフィールを作るわけです。
 もし、少しでもギャラが発生した作品があるなら、それもアピールしておく。
 そこにブログも張りつけて、近況を報告しながら自己紹介するわけです。

 現にこのやり方で、編集部に見出されて作品執筆の依頼がくることはあるんです。先日塾生たちがお会いして、お話いただいた安曇潤平さん。ホームページから山岳怪談が見出されて『幽』から執筆依頼がきて、それが『赤いヤッケの男』として単行本になったと、塾生たちにその誕生秘話を語っていただきました。
 マンガやイラストは、その画力や表現力、世界観が一目でわかるので、仕事に結びつきやすいようです。現にホームページを見た人や業者から仕事を依頼されたという塾生もいます。武層新木朗くんもデビューのきっかけは自身のホームページからでした。
 ただし、ヘタなもの、勘違いしたままのものは、かえってマイナスのアピールをしちゃうことになります。ある編集の方に伺うと、どっちかというとマイナスに作用しちゃっているモノの方が全国に圧倒的に多い、とおっしゃっていましたが。
 でも、そこは塾ですから、ホームページのデザインやプランナーをしているプロの方も出入りしていることだし相談すればいい。意見を言ってくれる仲間もいるわけですし、それらの意見、アドバイスを参考にしていいアピールができるように改良、改善していけばいいわけです。塾のホームページは、プロのクリエイターや編集の方もわりと見ていただいているんです。ちょっと怖いくらいです。
 となれば、何もしないは損!
 塾費を払って来ているんだから、そこも最大に利用したらいい。
 と、ずっと言い続けてきたですけどねえ、やらない人はやらない。
 じゃあ、せめてブログくらいはやろうと。

 ブログは不特定多数に向けた、個人の日記です。まさか恥さらしな日記を大衆の前にさらすなんて、と、今も私は不思議に思いますが、だからこそ読み手を意識して書かなきゃならんわけです。
 読み手を意識する・・・。小説の合評でよく聞かれる言葉ですな。
 ここ、油断すると辛らつなコメントがついたりします。わっちゃあ、と思います。
 でも、クリエイターってそんなもん。
 自分の意見や世界観を100パーセント賛同、賞賛してもらえることなんてまずない。でも、言いたいことや意見はある。そこは媚びる必要はないわけです。少々過激なこと書くのが面白がられるかもしれませんな。だからこそ、説得する方法、表現の方法、その言い回しなんかを意識せにゃならんわけです。 
 それに、わりとこまめに更新しないと、読んでくれる人も増えない。こまめに更新するためには、ネタ探しに意識がいきます。これが大事。物事をどういう角度から見ようか、どう表現しようかと考えるようになります。喫茶店やファミレスにいても、ちょっと隣の席の会話が気になって耳をそば立てたりします。こういうことが作品作りに役立つわけです。取材力。
 そして今や、名刺とブログは対である、と考えたほうがいい。
 名刺を渡したらきっと先方さんはネットでその名前を模索します。「あっ、出てきた、こういうことやっている人か」というのと、「出てこないじゃん、誰だよコイツ」と思われるのとでは、えらい違い。「出てこない」というのは今や不安材料になっちゃうんです。

 それとブログは塾長の私としても、ほぼ一週間に一度ないしニ度しか会わない塾生の近況や精神状態がわかるわけで、いざとなったとき、相談にも乗りやすいわけですしね。

 とまあ、これだけ言ってやっと理解して、ブログ始めた塾生が増えたのはいいけど。
 わかってないなあ。

 塾のホームページから飛ぶから塾生、つまりクリエイター志望なんだなとは思うが、いきなりブログを見た人からすれば、こら何者かわからない。アピールしてないんです。
 ここも読み手の立場になって考えてみることです。
 最初はやっぱり、もっとこまめに更新しないとダメやしね。

 えっ、28日の小説技法の報告ですか?

 なんだか提出作品が少なめで、がっくりですわ・・・。 
 おかげでいつもは3、40分は確実に押す合評が、珍しく予定の30分前に終了。
 まっ、私は楽だからいいけどね・・・。



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2010年07月26日

7/21の作劇ゼミ その4

 中山市朗です。

 さっきテレビを見ていたら、「ひきこもり」が全国で70万人いるという政府の調査結果が報道されていました。35歳から39歳までの間が一番多い、らしい。
 これを受けた北野たけしさんのコメント。
「これで食えているのが原因だね」

 確かに30代後半で、仕事もしないでずっと部屋に篭っていられることは、誰かがメシを食わせているってことですわ。
「○○ちゃん、ご飯ここに置いときますからね」
 こら、親が悪い。そら、何もせんで、煩わしいこともなくて、メシ食う心配なくって、ゲーム三昧、エロサイト見放題なら、「ひきこもり」は本人にとっては天国です。蛆虫にうんこ。
 いしいひさいちのマンガで、こんなのがありました。

 年貢の取り立てがあまりに厳しく、
「このままじゃ、オラたち飢え死にだ」
「一揆すべ!」
 百姓たちは立ち上がり、お庄屋さんが「これ食べて、がんばれや」と炊き出し。
 それ食って腹いっぱいになった百姓たち。
「まっ、一揆は今度にすべや」

 でも、人間には好奇心がある。野望がある。夢がある。可能性がある。
 少なくとも、塾生たちはそれを実現するために、うちに通っているはずです。

 そらね、不景気で汲々している大人も悪いでっせ。
 華やかなもの、贅沢なもの、本物の世界を、若い人たちに見せていない。贅沢しろというわけではありませんが、やっぱりこんなすごい世界があるんだ、生活があるんだ、と見せなきゃ。でも、知らないわけですから、こんなもんか、と思う。視野が狭い。
 大人も今、シュンとしてますからねえ・・・。

 そう、授業後の恒例の飲み会でした。
 電子図書を扱う会社の社長Yさんと、ゲームデザイナーのNくんが参加。Nくんは以前、このブログで紹介した専門学校時代、ゲーム科にいた元教え子です。
 今、東京でもそうでしょうが、特に関西では大勢のライターが仕事を失っています。情報誌、雑誌、フリーペーパーの発行部数の激減、廃刊、広告減が原因です。紙媒体のニーズが激減しているんです。仕事があってもギャラ値切られて、そりゃもう大変。
 しかし、世の中から情報や読み物がなくなったわけではない。ネットやデジタルという新たな媒体から発せられているんです。もちろんそこには書き手やデザイナー、編集がいるわけです。つまり、ここに仕事がある。

 Yさんに伺うと、今、こんなことになっているようです。

 デジタルコンテンツの発信ができる会社は、その環境とノウハウがあるけど、コンテンツを作れる作家、クリエイターがいない。一方、クリエイターは今まで取引していた編プロや出版社からは仕事がもらえなくなって路頭に迷っている。
 じゃあ、需要と供給、この二つが合わさればいいんですが。
 ところがコンピュータ会社と、紙媒体で書いていたクリエイターとの出会いの場がなかなか無いと言うんです。どこに行けば作家さんがいるのかわからない、と。
 今までは理系と文系、違う分野だったわけですな。でも、ここにきて本格的な人材交流が必要とされだしたのです。デジタルコンテンツから発信されるものは、これからは本格的なプロの作家を必要としだしたわけです。今は文系側に少々警戒心があるようですが、それだけに今がチャンス。

 その貴重な出会いの場を塾で作ろうと思ったんです。もちろん、マンガやイラストも求められています。YさんもNくんも、そういった若い才能が欲しいといいます。利害は一致しているはずなんですが。

 正直、塾生たちを見ていると、これはチャンス、とばかり食いついていた者は、ニ、三人。あとはYさんを目の前にして、質問もできず、アピールもできず・・・。
 キミたち、いつもお金ない言うてるやん。だったら、仕事ゲットしたいと思わんか?
 ポートフォリオ(我々の世界では描きためたモノをファイルした作品集のことを言います)を持ってきた塾生は何人いたのか?
 これ、別にイラストやデザイン、マンガだけじゃない。ゲームや映像作品の企画書や提案書、小説のプロットでもいいんです。とにかく渡して話してみる。探ってみる。
 コレ、別にお金のいることじゃないじゃん。
 ほらほら、お金がないから動けないんです、なんていうのもウソってわかった。
 ともかく黙ってたんじゃ、Yさんもキミが何者かわからない。ここで何か提案すれば必ず顔を覚えてもらえる。その気でYさん、来てくださっているんだから!
 伊藤三巳華さんの言葉、思い出してみよう。
「私はある編集さんにまとわりついた。だって顔覚えてもらいたいから」
 しかも!
 Yさん、社長でっせ。決済権、おもちなんですよ。
 これ、大きな味方。
 作品を出せる媒体がある。
 媒体があるっていうことは、クリエイターにはすごいチャンスです。
 と、いうことを一週間前には告知していたはずでしょ?
 何をぼおっとしとった!

 しかもYさん、なにやらドクターストップかかってお酒とめられて、この日夜10時近くまでの打ち合わせの後、駆けつけて来てくれて、聞けばもう午前早々には会議。なのに早朝まで塾生の相手をしていただいて。
 でもYさん、「忙しい」という顔、してた?
 涼しい顔して飲んではったやん。
 そこも見習おう。

 以前、ある塾生が自身のブログで、それはわかっているけど、ゲストが来られてもアピールする武器がない、だから尻込みしちゃう、みたいなことを書いていました。それ、違う。
 その根拠を言いましょう。

 Yさんが帰られてからは、塾生たちへの説教タイム!
 朝っぱらから説教なんてしたくないよ。楽しく飲みたい、ほんま。
 でも、同じこと繰り返されたら、こういう人たちとセッティング、もうできない。恥かくのは私。あるいは塾。
 アピールできないのは、武器がないから?
 だったら尋く。
 
「電子図書について、デジタルコンテンツについて、どれだけ調べてきた?」
「ネットとiPad、具体的に何がどう違う?」
「会社のホームページ見た?」

 ・・・。
 調べてない。ホームページ見てない。
 武器どころの話やない。
 そら、質問もできんわ。
 仕事をしよう、したい、というスタンスじゃない。
 塾生ですから教えてください、のスタンス。
 ここ、専門学校と違う。
 実践主義の、プロ養成塾。
 入塾時にそう説明しているはず。

 実のところ、この会社は電子図書の会社というより、デジタルコンテンツ会社。
 ゲームや映像コンテンツを含めた何か新しい企画、アイデアを実現化できるわけです。小説も、今までの書籍というより、別な可能性が求められる。そこにまだルールなんてない。考えたら、むちゃくちゃ面白い企みができるわけです。しかも、世界配信が視野に入る! 楽観ばかりもしてられないけど、今、この時期がチャンスだと思うんです。
 時給850円なんて脱出して、ユニークな企画さえ持ち込んだら、もしかしたら何千万、いや、億なんていうお金が動く可能性のある分野だと、私は思う。
 だから私は、この会社に次々にアイデア出して、もう動き出しています。
 
 おそらく、プロのライターや作家、イラストレーター、プランナーの人がここにいたら、目の色変えてたでしょうね・・・。

 でも本来、こういう人脈は、自分の足で探すのが本当。
 営業なき仕事はない。
 てこと、サラリーマンならわかってるはずだけど。



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2010年07月24日

7/21の作劇ゼミ その3

 中山市朗です。

 21日の作劇ゼミ、パート3です。

「3連休ですから」
 安曇さんの言葉。
 私、ははあ、と思ったわけです。
 いつも仕事が忙しい忙しい・・・それ、言い訳やなと。
 忙しい、と思い込んでいるんです。
 3連休。会社員、休みじゃん。
 で、東京で編集さんやプロの作家さんと接しているのは、主にいつもの飲み会メンバー。
 来ない人は、やっぱり来ない。
 人間みんな同じ1日24時間。忙しい、と思えば忙しくなります。
 でもね、会社辞めてクリエイターになりたいと言うのなら、同僚と同じ過ごし方をしとったんでは、あかんやろ、と。
 
 あの、勘違いされても困るんですけど、飲み会に参加しろ、とか、徹夜しろ、とかそういうことを言っているわけではありません。
 考え方の問題だと言っているわけです。

 こう考えてみましょう。
 やっと編集さんやプロデューサーの方と繋がった、としましょう。
 そういうチャンスすら、「忙しい人」は逃がすんですけど。
 とにかく仕事をもらえるチャンス、フリーで生きていくための、まずは1歩。でも、「私忙しくて」「朝から仕事があるので」そんな態度が出ちゃったら、発注する側、不安になりません?
「この人は何が優先なんだ?」
「なんか信用できんな」
「原稿、ちゃんと期日に上げてくれるのか?」
「こら、仕事振れんな」
 そう思いますわな。
 で、チャンスはなくなります。
 あ、フリーで生きていくというのは嘘なんやな、と思う。

 実際、一流の人たちは、きっと我々の想像を超えたハードスケジュールをこなしながら、常に一級の作品を世に送り出しているはずなんです。私もそんな人たち、何人も知っています。でも、そんな人たちから「忙しい」なんて言葉、聞いたことないですもん。
 安曇さんの言う通り、どちらに重心を置くか、です。

 ただし、私の経験上、サラリーマン経験者という人は、やっぱり仕事とは何たるかを知っているので、ここに一旦気がついたら、案外素早く対応して、サラリーマン兼用でクリエイティブな仕事も確実にこなし、やがてフリーになる。
 そういう人は多いんです。
 できるはずです。
 なってください。

 厄介なのは、何もしていない人。
 いるんです。
 ずっと実家にこもって、親に食わしてもらって、何もせずにずっと小説、またはマンガ描いている人。小説家やマンガ家はアーティストだと思っているタイプはこういう人に多い。
 こういう人たちは、もう頑固。30歳過ぎた頃には、もう凝り固まっています。
 そうなると周りにアドバイスしてくれる人もいないし、たとえアドバイスしても頭から受け付けない。おまけに作品を仕事にする術を知らないから、ずっと勘違いしたまま中年になる。そのときはもう、就職もできない。
 そしたら自分を恨み、異姓を憎み、人を憎み、世の中を呪いだす。
 で、そのうち親が死んだら、税金払えず、家は差し押さえ・・・知〜らんで。
 そういう人、あるいは予備軍、大勢知ってます。
 これは、ある意味ホラーです。

 作品を仕事にする。
 つまり、お金にするという発想。
 それがないと、フリーで生きていけません。
 プロって、それでメシを食っている人のことですからね。
 ところがこういう感覚がまた、うちの塾生なんかもなかなかもてないでいるんです。
 なんででしょう?
 
「お金がない」
 まあ、わかります。
 私も若い頃、お金がなかった。ひどく貧乏してました。
 だから何としてでもそこから脱出したくて、頭の中にある妄想をいかに具現化して、お金になる作品に仕上げるかを考えて、何度も東京へ営業をかけに行ったものです。

 ところが塾生たちの発想は、お金がないからバイトを探す、となるんです。
 で、バイトを始めると、途端に、忙しい、時間がない、明日はちょっと・・・
 挙げ句、チャンスの待つ東京へのバス代、ケチって、それが何を意味するのか、言われないと気づかない。

 愚鈍です。
 貧してます。
 人として小さい。

 だから21日の授業に、最近来ていない塾生たちにも呼びかけて集まってもらったわけなんです。
「キミたち、プロのクリエイターになりたいと言って塾生になってんのだから、そろそろ自覚もてよ。本腰入れろよ。現状に甘えてんじゃねーよ! 一人前のクリエイターになって、さっさと塾卒業せい!」
 そう私は叫んだわけです。
「塾は教室内での授業だけじゃない。現場を生む場所なんだ!」

 そんな塾生たちに授業後、懲りもせずに、またあるチャンスを与えてみました。
 7月15日のこのブログで告知したように、授業後の飲み会に、電子出版を手がける会社の社長さんをお呼びしたんです。

 続く。


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2010年07月23日

7/21の作劇ゼミ その2

 中山市朗です。
 昨日の続きです。

 「貧すりゃ鈍する」という言葉があります。
 貧乏すると、その苦しさのために精神の働きまで愚鈍になる、という言葉です。

 塾生に限らず、なんか今の若い人はそうなっているように思えます。
 このブログは塾の広報も兼ねているわけですので、フツーなら塾生みんながんばってます、とか、こんなに熱い奴います、なんて書くのでしょうが、正直者ですのでそんなこと書きません。

 塾生にTくんというシナリオ作家志望者がいます。
 もうずいぶん古くから塾にいますが、2度ほど起こした勘違いから、塾を離れていた時期もありました。来たり来なかったり。今月も来ていません。経済的な理由のようです。
 でも総務のスガノくんの報告によれば、アイドルオタクの彼はアイドルのDVDなどを買いまくっているそうです。もしそうなら、彼は愚鈍になっています。
 彼の大好きなアイドリング!!!。
 私、彼女たちに怪談を聞かせるというDVDに出演するために東京へ行っているわけです。つまり「付き人という名目でもいいですから、現場に連れていってください」と頭を下げれば彼女らに直に会えたわけです。で、フジテレビの現場も見られる。スタッフとも話せる。もしかしたらアイドルの女の子たちとも・・・
 でも塾に来ていないから、その情報がいってないわけですな。だから私がアイドルの女の子たちに怪談を聞かせているとき、おそらく彼は家でDVDを見ていた・・・
 アホですやん。
 塾生の特権を全然活かしていない。
 私、言いました。
「アイドルのDVDなんて、この世界入ったらなんぼでも買って経費で落とせるわ!」
 でもシナリオの授業も来ていないので、この世界へ入る機会もそれだけ遠のいた。

 「貧すりゃ鈍する」とはよく言ったものです。
 でも彼に限らず、総体的に我が塾生は愚鈍になっていないかなあ、と。

 なんかね、仕事やアルバイトで汲々している印象があります。
 時給800円だか、月15万円だか、これを稼ぐのが大事。優先事項。
 ある塾生と、こんな話をしたんです。彼、Gくん。放送作家になりたいと塾に入って半年。ただし、ここ4ヵ月は塾に来ていない。
「お前、本気で放送作家になりたいの?」
「本気です」
「じゃ、なんで塾来てないの?」
「月謝、払えないんです」
「毎日何してんの?」
「(バイトの)面接受けまくってます」
「で?」
「で、とは?」
「放送作家なりたいんやろ! そのために何してるんや!」
「そうですね・・・何もやってないですね」
 お話になりませんわ。私、彼に言ったんです。
「お前・・・人生ってなんやと思う?」
 Gくん、元ミュージシャン。26歳。

 塾生のみんながTくんやGくん、言うわけやないですよ。ちゃんと文章やマンガ、イラストで生計を立てているのもいます。でも、TくんやGくんのような若者、うち以外にもたくさんいるような気がするんです。
 不景気、派遣切り、就職先がない、ボーナスでない、どんどん潰れる会社。特に大阪は大変なことになっています。とにかく今の生活を維持することが優先。でもねえ、これから先のこと考えたことあるの? 30歳、40歳、50歳・・・今の仕事場、きっとその頃にはない。また40過ぎて仕事場なくなったら、潰し利かんで。あと半分の人生、どうする?
 言うてもどうもピンとこないようで。
 
 貧して鈍してますわ、これは。

「16日の東京になぜ来なかったのか」と塾生たちに尋ねてみたんですが、どうも「しもた」という顔をしてはいますが、明確な理由が返ってこない。つまり、「新幹線代がもったいなかった」としか理由が見当たらないんですよ。別に夜行バスでいいじゃん。半額以下。
 しんどい?
 もう、この世界目指すの止めよう。
 求人誌、買うたろか?
 でもそんな考えしかない奴、きっと欲しがる会社なんてない。

 一方、
 昼間はサラリーマン、夜に塾通って、という塾生もだいぶ増えてきました。
 私はサラリーマンやったことがないんで、その大変さは想像するしかありません。想像したらとても夢は追いかけられないと思ったから、就職はしなかったわけですけど。
 現に、授業後は必ず参加自由の飲み会があるのですが、ここは仲間と夢を語ったり、ゲストの方の話を聞いたり質問したりという場なのですが、サラリーマンの人の参加率はすごく低いんです。
 仕方ないのかな、と思う反面、違うやろ、という思いもあります。
 彼らは言うわけです。
「今の仕事辞めて、フリーで生きていきたいんです。だから塾に来ました」
 の割には、覚悟が見られない。
 だって会社優先、フリーで生きるスキルは次。
 それ、いつまで経ってもサラリーマン!

 実は16日(正確には17日か)の東京での飲み会。
 私、安曇さんに「改めてお聞きしたいんですが」と質問したんです。サラリーマン塾生を代弁して。
「彼らは次の日は会社があるからと、飲み会は参加しない。塾の行事にも来ない。この場にもいません。それを安曇さんはどうお思いですか?」
 安曇さんはサラリーマン兼作家。お昼はシステム・エンジニアとしてお仕事をこなされています。そして休日は山岳へと出向き、山岳怪談を執筆されています。サラリーマンしながら作家になりたいという塾生のいいお手本です。
 安曇さんはこう言ったんです。
「それはどちらに重心があるかです。サラリーマンに重心があるなら飲み会には来ない。これは作家になれない。飲み会は人と会って刺激をもらって人脈を作る場です。もし作家になることに重心があるなら次の日仕事があっても飲み会を選択するはずです。こっちが作家になれるタイプでしょう。私は会社員ですから、そのお仕事はきっちりやっています。お給料もそれでもらっています。でも私は、モノ書きが好きですから、それを今後やっていきたいですから、今、ここにいるわけです」
 それに世間では17日から三連休。安曇さんはこの日、朝一番の電車で南アルプスへ登山する予定なのでした。なのにこの日、会社勤めの後、テレビの収録に出て、その後は徹夜で塾生の相手をしてくださっている。一方、サラリーマン塾生は家で、きっと寝ている・・・。この差はやっぱり大きい。人としての器も。
 三連休でっせ。
 こんな機会を逃しながら、いつかサラリーマン辞めて好きな道で・・・やなんて、笑わしよんな。

 続きます。


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2010年07月22日

7/21の作劇ゼミ

 中山市朗です。

 21日(水)の作劇ゼミの報告です。

 見学者が一人。
 この日予定していた怪談講座を拝聴したいという怪談ライターの女性。もうデビューはされているようです。
 でも申し訳ありません、授業の予定変更です。
 実は作劇メール(何かあれば塾生全員に一斉配信される携帯メールです)で、最近来ていない塾生にも「本気な人」は、今回は月謝を取らないから参加するようにと呼びかけました。
 よって、通常よりも10人ばかり多い参加での講義。
 見学者の方も、それでも拝聴したいと参加です。
「忙しいから、あるいは金がないから、と言って来ていない者も、とにかくいいから来い」
 と、塾生全員に呼びかけたのは「キミたち、塾へ何しに来てるの?」と、問いかけたかったわけです。
 もう、私が彼らの心理を知りたいわけです。

 当塾は、デビューさせるための塾ではありません。
 フリーのプロのクリエイターとして生きていくためのスキルと考え方を養う塾です。
 そう、塾生には伝えてあります。

 もちろん、フリーのクリエイターとなるためには、デビューしなければなりません。
 作家やマンガ家志望の若者は、デビューするためのスキルを身につけたいと、専門学校やウチのような養成塾に入ってきます。でも、デビューして終わるという人が全体の8割ほどもいるのが現状です。つまりデビューできてもプロになれるわけではない。だからデビューするためのスキルというよりは(それも大事ですけど)、もっと大事なもの、プロとしてやっていく考え方を養うことを重視しているわけです。私は。
 デビューしても、2年以内に次作が出ない場合は、もう出版社からも読者からも忘れ去られます。デビュー作は、今まで自分の経験を生かして好きなものを思いきり作品にぶつければいい、と思うのですが、実のところここで全力を出しきってもう何も出ない、という人が多いのです。あるいは発注されたモノを仕事としてこなせないとか。
 デビューは新人賞がありますが、一旦忘れられたら、カムバック賞なんていうものはありません。かといって、もう新人ではないのだから、新人賞への再応募はできない。編集さんもデビュー後次作がなかなか出ない人より、より可能性のある次の新人に魅力を感じます。もう声をかけてくれません。ドン詰まりです。で、消える。

 当塾は、そこの体力を養うところにあります。デビューは過程にすぎません。
 フリーのプロのクリエイターとして、何十年と生きていくための体力です。
 もちろんデビューするチャンスも用意しています。正攻法(新人賞への応募)以外にもそういう方法はあるのです。私も賞などというものとは、とんと無縁な男ですが、シコシコとこの業界で20年。そういうことは心得ているつもりです。

 ただし、それを理解し、クリエイターになるのは塾生自身。
 塾としては道案内し、せいぜい後押しするしかありません。
 そこ、わかってんのかなあと。
 いや、わかっていない。だからダラダラと塾に来て、課題をやってを繰り返すだけ。
 ここはそういうところじゃない!

 実はご存知のとおり。
 先日、『最恐! 怪談夜話』の番組収録が東京のNHKスタジオで行なわれました。
 東阪企画の山本さんのご厚意で、番組見学と2次会への参加が塾生に限って許されています。
 これはチャンスだから来い、と、何度も促しました。
 それは先週の授業でも呼びかけたし、このブログにも書いた。
 で、結局見学に来たのは、去年の半数、6人。
 小説家志望のDくん、Tさん。マンガ家志望のKくん。映画監督志望のKくん。映像作家志望のAくん。そして私のマネージャーとして同伴が許された放送作家志望のGくん。
 小説家志望、十数人いるんだけど、この日何してたんやろ。
 翌日から三連休。忙しいとかいうはずがないんだけど。
 つまり、この場をチャンスだという私の言葉を信用していなかったわけです。または東京までの交通費をケチった。

 チャンス、あったんです!
 もちろんNHKのスタジオ見学、番組にギャラリーとして参加、リハーサルへの立会いも大きな経験、勉強ですが。
 2次会。
 山本さん、『怪談夜話』の構成担当の放送作家・村田さんに加えて、伊藤三巳華さん、安曇潤平さん、それにメディアファクトリーの編集RくんとIさんも参加してくださり、朝まで塾生の相手をしてくださったわけです。
 ええですか?
 DくんもTさんも入塾してまだ1年経ってない。まだ投稿用の小説の1本も書き上げていない。そんなド素人が編集さんや現役のマンガ家、作家と朝まで飲んでアドバイスをもらって、冗談言い合うなんて、そんなこと、ありえない!

 それが、塾にはしばしばそういうことが起こるんです。
 でも、その場にいなかったら、どうにもならん。

 伊藤三巳華さんは、塾生にこうアドバイスしてました。
「本気でマンガ家になりたいんなら、正攻法だけじゃダメ! 投稿より持ち込み。私はある編集さんにまとわりついた。だって顔を覚えてもらいたいから」
 編集さんに顔覚えてもらえるのって、そら大変。みんなデビューするために手八丁、口八丁。私も20代の頃、そのために何度東京に足を運んだか。
 その絶好の機会が、16日から17日の早朝にかけてあった。
 現にもう、今日(21日)までの間に、Dくんには編集のIさんから何度かメールがあって、マンガ家志望のKくんは、もう三巳華さんとメル友になっているらしい。
 これ、デビューへの大きな足がかり。
 作品を書き上げたら、見てくれる編集者、アドバイスをくれる先輩がいる。
 これは勇気百倍、デビューへの近道も歩めます。ここから人脈も広がる。
 ええですか?
 仕事は、この人脈からくるんです。
 みんなデビューしか頭にないから、この人脈に気づかないわけです。
 よって、デビュー後が続かないわけです。
 人脈は、会社やお店で言う、取引先です。
 取引先のない会社は潰れますよね。
 作家やマンガ家は、個人会社です。アーティストと違う。
 
 さて、私が全塾生に呼びかけたのはそこです。
「お前ら、なんでそこをスルーする!」

 続きます。 


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2010年07月19日

最恐! 怪談夜話2010収録

 中山市朗です。

 お待たせしました。
 NHK-BS『最恐! 怪談夜話』の報告です。
 
 収録してきました。
 16日土曜日の18時頃本番が始まり、休憩一回をはさんで約3時間半!
 それが出演している側が、そんなに時間を感じていない。
 えっ、もう終わったの? という感じで。
 つまりそれほど濃かったということ。
 これがオンエアでは2時間になるわけです。
 編集するのはYさん。去年名前出したか。東阪企画の山本さん。
 塾生は、山本さんはNHKの人と思っていたようですが、たいていテレビ局は制作会社に制作を発注しています。そういう仕組みも勉強しよう。
 それにしても大変だろうな。
 去年は「自分が気に入って何度も出向いて出演交渉して、やっと話してもらったものを編集でカットする。これは辛いです。だから一話も落とさないように編集で苦労したんです」と言っていました。

 さて、この番組。2時間になると書きましたが、CMがないからまるまる2時間怪談を語るという、もう画期的番組となります。民放だったら2時間40分の枠になるところです。もちろんこれは、昨年の第一回『怪談夜話』の評判が内外ともに好評だったことにあります。これは皆様のおかげです。
 これは昨年のオンエア直後に聞いたのですが、BSは視聴率がほとんど出ないそうなんですが、『怪談夜話』だけは出たそうなんです。それもかなりいい。
 そしてNHKが恐れていた「国営放送ともあろうものが、オカルトまがいな番組をやりやがって」という苦情も、一件もこなかったそうです。
 今もNHKの番組がネット上で有料で観られるんですが、『怪談夜話』はダントツトップなんだそうです。そらNHK内部も「イケる!」と思いますわ。だから時間枠が30分増えた。しかもこの夏は、他にもNHKは怪談番組を2本、制作するんですって!
 一本はこれも昨年、地上波でもオンエアされ、好評だった『日本怪談百物語』の、その弐。これは古典怪談の朗読。
 そして新番組『妖しき文豪怪談』は、文豪が書き下ろした怪談をドラマとドキュメンタリーで紹介するというシリーズ。『怪談夜話』も含めて3本とも東雅夫氏が関わっているそうです。

 あっ、当日のレポートですね。

 まず出演者から紹介します。
 山本ディレクターの狙いは、時間枠は30分増えたけど、出演者は増やさない。
 それでも番組は成り立つ、いや、かえって盛り上がる、という目論見です。他のディレクターなら、増えた時間分出演者を増やすところですが、山本さんはもう怪談オタクの類ですから、絶対それが正解。ほんとはプロデューサーや局から、人数を増やせと責められたはずです。これがテレビ屋の発想ですから。でも去年の成功は、怪談オタクの考えを優先して成功した。だって観るのは怪談オタクでしょうから。

 司会は、去年と同じメンバー。

 荒俣宏さん、
 佐野史郎さん、
 中川緑アナウンサー。

 荒俣さんは、昨年の収録後は上機嫌で関係者一同ホッとしたそうですが、今年も出演依頼したとき、即受けられたそうです。

 さて、語り部のメンバーは次の通り。

 渡辺徹(俳優)
 上原美優(タレント)
 伊藤三巳華(マンガ家)
 安曇潤平(作家)
 中山市朗(わたし)

 解説に、東雅夫(文芸評論家、『幽』編集長)

 このバランスは実にいいと思いませんか。
 去年はつまみ枝豆さんだった枠に、渡辺徹さん。
 去年は第一回目。怪談番組とはコレだ! というサンプルを見せなきゃならない。枝豆さんは怪談については真摯な人なので、この人が切り込み隊長をやることで真面目な怪談番組ができて、そこが成功したのだと思います。
 渡辺徹さんは、明るくてユーモアある人。だから二回目の今回は、怖いにプラスして楽しい怪談が提示できたのかな、と。怖い、だけでは2時間はもたない。
 上原さんは、去年の中澤裕子さんの位置。やっぱりテレビ番組なので、渡辺さん同様、一般の人が見て知っている顔が必要なわけです。それと女の子が語る怪談は、こういう会には不可欠。意外でしたが彼女、幼少の頃から色んな体験があったんです。
 この番組の肝は、作家が怪談を語るということ。
 私が何度も大阪の放送局に持ち込んでいた怪談番組の企画にも、作家が語る、というのが面白いのだと説いて回ったのですが、大阪の局のプロデューサーたちには理解してもらえなかった・・・。作家は、体験談(自分の、もあれば聞いたり取材したものも)を書き起こすために少なくとも一度は、分析しているものです。そして咀嚼します。このとき、面白くてリアルな怪談が作られます。でないと書けない。実話怪談、といっても構成や表現の仕方で、まったく違うものになります。山本さんの意図はそれを語ってもらうことにあるわけです。作家の出演については、メディアファクトリー全面協力です。
 昨年は加門七海さんが出演された女流作家の枠。今年はマンガ家の伊藤三巳華さん。加門さんも三巳華さんも、自身見える、という体質のようですが、三巳華さんも一歩引いて、冷静に怪異を見て、怖がるというよりは楽しんでいるという人です。こういう視点が貴重なわけです。
 安曇さんは去年に続いての出場。淡々とした語りが怖いですな。それに山岳怪談ということですが、その山岳の描写が非常にうまい。山岳という自然が怪異の場に変貌するあたりが、いいんですよね。
 そして私。なんと去年に引き続き、番組のトリです。もう山本さんの趣味です。
 ここにウンチク担当の東さん。この人の解説で、出演者の語った怪談がグッとリアルになったり、何かとつながったり・・・。

 このメンバーの語りだけで2時間!

 どんな話が出て、どんな展開になったのかは、番組を観てもらうしかありません。カットされちゃうかも知れませんので、そこの裏話はオンエアされたあとに。

 それにしても渡辺徹さん、まあ怪談好き。本番中カメラを止めることがあるんですが、その間もずっと出演者相手に怪談を語ってるんです。渡辺さんはもう10数年前に大阪の朝日放送で取材させてもらっていて、第二夜の「苺の歯形」は彼の体験談なんですが、当時も延々怪談を楽しそうに語っていたので、山本さんに推薦していたんです。ただ、当日お会いしたら、どうも私のこと忘れてる。
 休憩時間に「私、一度取材させてもらっているんですよ」と声かけたら「新耳袋! 持ってますがな」と満面の笑み。「わあ、名刺渡しますわ」って、ほんまに怪談好きみたいで。
 渡辺さんもそうですが、たいていタレントが怪異体験を披露するのは、夏のバラエティの1コーナー。これは話した後、必ずお笑い芸人なんかにツッコまれるか、バカにされるか。「怪談話してください」と言ってくるのは番組のディレクターなんですけどね。でも、この番組では、バカにする人などいない。話は相乗し、「あるんだ!」という方向になる。
 これが怪談なんですよ。そら渡辺さんも上機嫌になりますわ。
 実はこの流れで、三巳華さんからエロ怪談が披露されて、えらい盛り上がったのですが、まあNHKですから、おそらく全面カット。

 休憩は、本番中に一度だけあったんですが、荒俣さんも佐野さんも、もう「あれはなんだったんだろう?」「きっとこういうことですよ」なんて、これも本番中に披露された怪談の解釈でメチャメチャ盛り上がってます。つまりスタジオに入ってから、ずっとこの私も含めたオヤジたち、怪談を休みなくやっているわけです。メイキングのカメラ入れていたら、これ、おもろいと思いますな。
 その、怪談をみんなで楽しむという雰囲気が、今回の番組には伝わったと思います。怖くて楽しい怪談、というのが。

 これは後に三巳華さんから聞いたのですが、本番前にスタッフ、出演者全員が並んで神道式のお祓いを受けたんですよ。で、出演者全員とメインスタッフが一人一人出て、神棚に榊を置く儀式があるんですが、神様が降りてきていたらしいのです。そして、榊を置いて二礼二拍手一礼するわけですが、神様は渡辺さんと私にだけ、頭を下げた、と。
 私、神様に祝福されたのでしょうか?

 番組収録終わって、廊下で荒俣さんとすれ違ったとき、「いやあ、来年もよろしくお願いします」と上機嫌で握手を求められました。荒俣さんはずっと憧れの人でしたから、これは嬉しい! そしてこの握手で、番組の成功を確信しました。

 『最恐! 怪談夜話2010』は、8月7日(土)23時から25時までBS-2にて放送予定です。そしてその前に、昨年の『最恐! 怪談夜話』を再放送する予定だとか!
 NHKが怪談に本腰を入れてきた!

kaidanyawa2010

収録後、出演者の皆さんと




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2010年07月15日

7/14の小説技法・・・の前に

 中山市朗です。

 14日(水)は小説の合評です。
 その報告、の前に。

 告知しましたとおり、明日16日は東京のNHKで大型怪談番組の収録です。
 番組推進に奮闘されているディレクターのYさんから「塾生さん、何人来られますか? 席とってありますから」という連絡が前もってあったんです。
 スタジオにはギャラリーを入れるんですが、十数席を塾生のために確保してくださっています。去年は10人ほどがお邪魔して、その後、Yさんや作家のMさんたちが参加してくれて朝まで塾生たちと飲み会。気を遣ってくださっています。
 ところが今年は参加人数がどうも少ない。

 じつは10日の夜に、Yさんが来阪されて打ち合わせをしたのですが、このとき「参加は残念ながら去年の半数もないです」と報告したら「えっ、なんでですか?」と驚かれた。
 私も同じ気持ち。で、先週の授業のときに塾生たちに言ったわけです。
「お前たち、この世界でやっていく気、あるの?」

 Yさんも私も、この世界は、もちろん作品を作るスキルがあることが大前提ですが、人との出会い、積極的な動きで仕事が回るということを身にしみてわかっているんです。
 NHKの『怪談夜話』も同じです。
 こんなことバラすのもなんですが。
 Yさんと私の出会いからこの企画が動き出した。それも大阪での私の怪談会を見に来てくれたYさんと、お酒を飲みながら夢を語り合った夜があったから。そしてYさんは私が東京で『しょこリータ!』なんかに出演している楽屋に必ず訪問して、そこで編集の人たちと繋がって、東雅夫さんや怪談作家たちとの出演交渉ができる窓口を得た。
 積極的に人と会う行動が、仕事を生むんです。
 だからそういう場に、塾生を呼んでくださっているわけです。
 それに、塾生たちの大半は作家になりたいという夢をもっているわけですよね!
 作家になる最短距離は、書いた作品を読んでくれる、あるいは相談できる編集さんがいること。ところが大阪ではそういう編集さんに滅多に巡り合えない。出版社が東京に比べて極端に少ないですから。
 でも、NHKのスタジオには来るわけです。『幽』や『ダ・ヴィンチ』の編集者が。
 それに文芸評論家で『幽』の編集長、東雅夫さんも。
 もちろん行ったから話せるとも思えないし、相手にされないかもしれない。
 でもチャンスです。そこは本人次第。
 それにそういう人たちが何人もいる場の空気を知るだけでも、テンションはあがる。名前くらいは覚えてもらえるかもしれない。結構この人たち、塾や塾生のブログを読んでくださっているんです。
「やっぱり作品の持ち込みを、全然知らない編集さんにするのと、あらかじめ名刺交換しておいて名前を覚えてもらっているのとは、全然その気持ちも違うし、相手の反応も違うもんなんですけど。だから塾生さん呼んだんですけどねえ・・・」
 Yさんの、ちょっとしたボヤキが聞かれました。

 私は塾生たちに言ったわけです。
「東京のスタジオ見学ができて、業界の人たちとも一晩過ごせる。こんなことウチだからできる(去年は企画の立ち上がりから話が聞けた)。で、俺が塾生なら翌日は出版社やメーカーに作品の売り込みをかける。そのために16日を自分のXデーとして、作品を書き上げておくけどなあ」と。
 やっぱりデビューするための作品なんて、締め切りがあるわけでもないから、どうしてもダラダラと。いつ終わるのかわからない。書かなくても誰にも叱られないし。でも、それでいいの? いずれいずれって、いつ書き終わるの?
 もちろん投稿や新人賞の応募はすればいい。正攻法。
 でも、それをやっている作家志望者は全国に山ほどいる。それ以外の方法がウチにはあるんだから、なんでそれを利用しようとしないのか。
 ほんま、わからんわけです。
 本気でこの世界で生きていこうと思っているのか、と。

 東京までの交通費がもったいない?
 だったら一生部屋に篭っとけ!
 こういうことは、自分への投資。
 投資をするから、その分損したくないとか、活用しなきゃという気持ちが生まれる。よって自分が大きくなる。あとに返ってくる対価も大きいわけです。
 でも投資しないヤツは、いつまでも何も生まれない。損も得もしていないから、そして準備をしていないから、頭も動かしてないから、今の自分を守ること、現状維持に汲々するわけです。いつまで経ってもコンビニや外食店舗のバイトや、派遣の警備員から抜け出せないのはソレ(今もなんともなっていない専門学校時代の教え子たち。キミたちにも言っているんだよ!)。30歳になったら、ソレ、きつい。
 だからYさんもそこを知っているから、わざわざチャンスの場を作ってくださっているわけです。わかってんのかなあ。

 ちなみに。
 来週の水曜日の授業後は、電子出版を手がける会社の社長さんが飲み会に参加してくださいます。これも動機はYさんと同じ。
 塾生たちもいずれ文章やマンガ、イラストを書いて、それを職業とするつもりだったら電子出版社との取引はこれから必需。いや、プロのライターが次々と廃業しているこのご時世に、これはチャンス。
 それにデジタルコンテンツは、映像やゲーム的な指向性、要素も求められる。
 そこもチャンス。
 この社長さんから何を引き出すか、自分をアピールするか。
 重ねて言いますが、
 素人相手にプロがこんなことをしてくれる場は、ここだけ。
 だいたいプロの人が、素人相手に酒飲んで、得るモノなんてほとんどない。
 なのに・・・。

 だから塾生よ。
 ちょっとは気合いを入れよ!

 字数制限のため、今回は合評の報告はなし。


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2010年07月14日

キネマの現地

 中山市朗です。

 昨日、憧れのモノを初めてこの目で見てきました!
 東京で!
 いやもう、感動!

 『アイドリング!!! お台場合衆国』DVD出演のため、新幹線の品川駅で降りてタクシーに。あらかじめ聞いていたスタジオの住所を運転手に告げて、タクシーで走り出した。
 10分くらいして、どのあたりを走っているのかわからないわけですよ。
 で、聞くわけです。
「運転手さん、あと何分くらいですかねえ」
「そこ、右曲がったら勝どき橋ですから、それ渡って5分くらいですかねえ」
 勝どき橋!
 この名前にキュンときたわけですよ。
 えっ、そう橋ですよ、橋。隅田川にかかる橋。
 橋マニア?
 違う。

 映画マニアの方ならわかっていただけるかなあ。
 昭和31年、川島雄三監督の最高傑作『洲崎パラダイス・赤信号』の最初のシーン。
 いかにも都落ちしたみたいな若い男女。橋の上から隅田川見ながらボヤいているんですよ。タバコ買って60円しか残ってなくて、「どうするの? あんたアテあるの?」「そんなの、アテがあったらこんなところでウロウロしちゃいないよ」「あんた男でしょ! あーあ、いやんなっちゃう」なんて。
 そのロケ地の橋が、勝どき橋なんですよ。
 ダメ男に惚れて身をやつしていく女に新珠三千代、イライラするほどだらしのない「どうせ俺なんか」が口癖の男に三橋達也。2人は勝どき橋からアテもなく都バスに乗って遊郭街「洲崎パラダイス」というアーケードの見える場所に降り立って、小さな飲み屋のおかみさんに世話になりながらも、腐れ縁の2人がやるせない日々を送るという映画なんですが、そのモノクロでの画づくりが非常にドライで、特に夜の陰影の表現がいいんですよ。まるでトリフォーやルイ・マルを彷彿させて。いや、彼らが川島を真似たのかもしれない。
 とにかく私の好きな映画。で、ラストで2人はまた勝どき橋に戻って「どうする」なんて。
 その勝どき橋なんですよ。
 
 いや、それだけじゃない。
 昭和29年、芝浦埠頭より東京上陸したゴジラは、銀座から晴海通り、数寄屋橋、そして国会議事堂をぶち壊し、平川町のテレビ塔を倒して上野、浅草へ。そして隅田川を下って、最後にこの、行く手を阻む勝どき橋を破壊して、東京湾へと戻っていくんです。この勝どき橋をゴジラが壊すシーンで「チクショウ、チクショウ」と泣く少年が印象的です。

 この勝どき橋、昔は勝鬨橋と表記していました。この橋は日本では珍しい跳開橋で、日露戦争の旅順陥落祝勝記念として計画された。だから「勝どき」なわけですな。ロシアを破った戦勝記念なんだから、これは西洋人の手は一切借りないと、設計から工事までのすべてを日本人だけでやった。でも完成したのは太平世戦争の前年
。当時は東洋一の可動橋だったんです。
 しかし、昭和45年頃から可動されなくなって、今はもう電力供給もストップされているようです。でも、橋そのものは当時の姿のまま。だからこの橋の可動するのを見たい、というマニアックな人もいて、『こち亀』でよくこの橋に関するエピソードが出てきたり「勝鬨橋ひらけの巻」なんてのがあるのは、まさにそれなわけですな。両さんは何事につけマニアックなキャラクター。これおそらく作者の生き写しなのでしょう。ちなみに、私見てないんですけど『こちら葛飾区亀有公園前派出所THE・MOVE』では、そのクライマックスで勝鬨橋が東京の危機を救う重要な役割を果たしたとか。 『機動警察パトレイバー2 the Move』で、戦闘ヘリによる東京爆撃の真っ先に攻撃されたのが、実は勝鬨橋の中央可動部。どかーん! これは爆撃ヘリが東京湾から隅田川沿いに都内へ侵入したことを表すわけです。
 『日本沈没(旧作)』でも、ぐにゃりとねじれて崩壊するシーンがあります。で、「『パトレイバー』の影響を受けた」と本広克行監督が言う『踊る大捜査線』にも、湾岸署と勝どき署の縄張り争いがたまに出てきたりします。

 まあそんなんで「勝鬨橋」と、運転手さんの口から発せられたのを聞いただけで、三橋達也と横縞の和服姿の新珠三千代のだらしないカップル、燃える東京とゴジラ、戦闘ヘリから発射されるロケットミサイル、日本沈没のミニチュアセット、嬉しそうな両さんの顔、「すみませーん、すぐ帰ります」と、拡声器を持ったスリーアミーゴスと「何しにきた!」と怒鳴る桜金蔵なんかが走馬灯のように現れて。ちなみに『踊る〜』には勝鬨橋は出てきませんけどね。勝どきは、町名でもありますので。

 まあ、タクシーで走り抜けただけですけど、感動した!


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2010年07月12日

クリエイター・ウォーズ エピソード5/中山の逆襲

 中山市朗です。

 今日12日から、ある出版プロジェクトが始動。
 明日13日は、フジテレビ『アイドリング・お台場合衆国』DVD収録で東京へ。
 14日の授業後は、ゲスガノくんが脱ゲス宣言。ゲスな飲み会は今後ありません!
 16日の金曜日は、いよいよNHK-BS『最恐! 怪談夜話』の収録で東京へ!
 2時間枠(その間、CMなし!)の大型番組となります。
 17日は、いろいろ取材してきます!

 『最恐! 怪談夜話』の詳細は、来週頭のこのブログで。


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2010年07月08日

7/7の作劇ゼミ

 中山市朗です。

 7日(水)の作劇ゼミの報告です。
 本日から怪談講座です。

 塾を立ち上げた当初は、どうも怪談を教える塾だと誤解されていまして、それを払拭するのに2、3年かかりました。ただ怪談は私のライフワークでもあるので、たまに取り上げることもあります。
 実は「怪談に関する記事を書ける塾生さんはいませんか?」と、たまに編プロや雑誌社から依頼がくることもあるんです。また怪談に関する携帯電話のコンテンツや、テレビ番組の製作をまるまる塾で受けたこともあります。だから恐ろしい怪談が書ける、というのは塾生たちにとっては世に羽ばたくチャンスではあります。
 ところが不思議と塾には怪談が書きたい、と入ってくる人は少ないのです。
 怖いのが苦手、という塾生さえいます。

 しかし、作家やマンガ家になりたいというのなら、そうは言っていられない。
 人間の喜怒哀楽怖を描き、読み手に伝えるのが仕事。怖いの苦手は、読者のスタンスから言えば、苦手なものは読まない、本を閉じる、でいいのですが、書き手側は、じゃあ今後一切恐怖の心理は書かないの? ということになる。何も怪談的な恐怖でなくとも、日常には様々な恐怖があるわけです。死の恐怖、何か大事なものを失う恐怖、互いに理解しあえない恐怖、脅迫される恐怖、異形のものに対する恐怖、敗北、失敗する恐怖・・・。
 そういう恐怖に陥る過程やその心理、反応、解決法などは、やっぱりドラマを展開させるのには不可欠な要素です。
 怪談は、それらを表現するのに実にいい勉強法なのです。
 でも怪談は難しい。
 毎週第一、第三金曜日はシナリオ講座をやっていて、自分でこれを書きたいというテーマがない場合は、『新耳袋』の中から一話を選んで、キングレコード=BS-TBSの『怪談新耳袋』のフォーマットにあわせたシナリオを書くことになっているんですが、これがなかなかいいのがあがらない。
 5分という制限時間の中で、どういうキャラクターを出して、何をどう起こさせ、恐怖の肝をどこで出して、どう終わらせるのか。
 塾生がやりがちなのは、最初から、これは怖いゾ、という振りにしちゃうこと。日常が壊れるから怖い、と何度言っても非日常から始まっちゃう。非日常に非日常が起こっても怖くもなんともない。そう言ってダメだししているうちに「日常ってなんですか?」と頭を抱えちゃった塾生もいた。そして怪異をどのタイミングで出して、どう表現するのか。
 シナリオなので画として何かを見せないとマズいのですが、たいていのことはプロたちが試行錯誤しながらやっていますから、その試行錯誤のロジックを踏まえた上で、模倣するなり、改良するなり、新しい試みをするなり、あるいはオーソドックスなもので勝負したり。そこは過去の作品を観て勉強するしかない。
 でも要はそこに至るプロセスが大事なのであって、決して幽霊の見かけが怖いわけではないのです。
 そして怪異に直面した登場人物たちの反応、心理、行動。この描写を失敗すると、何もかもぶち壊しになります。
 幽霊が出たとして、誰もそれを怖がっていなかったら、それは怖い話にならない。恐怖を視聴者に伝えるのは、この登場人物なわけです。
 恐怖に直面した場合、人はどうなるのでしょう。これは人間心理学、行動学の勉強をしなければ、ということになるのでしょうか?
 先日のシナリオ講座の合評のとき、こんなやりとりがありました。
 クライマックス。主人公の女性が泊まり先の旅館で怪異にあうシーン。
 座っている主人公の膝元に、いきなり女郎の顔がヌッ!
 主人公、動けない。

「これはおかしいでしょう。膝元に幽霊がでたら、驚いて飛び跳ねるでしょう」
 という意見が出た。
 みなさん、どうでしょう。
 幽霊がいきなり出てきたとき、わっと驚いて逃げるか、それともフリーズしちゃうか。
 意見を言った塾生は体験に基づくと言います。「例は違うかもしれませんが、下を見てゴキブリがいたら、瞬間飛び上がって逃げますよね。じっとゴキブリを見てる奴なんていないでしょう」
 正直、ほとんどの人は幽霊なんてみたこともないので、似た体験の記憶を引っ張り出します。彼の場合、幽霊に匹敵する恐怖はゴキブリが膝の上を這うこと。そら、私も飛び跳ねますわ。しかし、
「そらゴキブリは見た瞬間ゴキブリと認識するからやん。女郎の顔。そんなものが膝元に急に現れたら、まず、これはナニ? と思考が一瞬停止すると思う」
 と書いた本人の弁。
 私も数々の怪異体験談を聞き集めましたが、幽霊を見た瞬間「キャー!」と叫びを上げたという話はあまり聞きません。それはホラー映画かマンガの世界。実際は「なんだろ、アレ」と疑いをもってフリーズすることが多いんです。たいていの人は、幽霊なんてホントは信じてないし、信じていたとしても、まさか自分が遭うとは思ってもいません。だから、ソレが幽霊だと認識するのに時間がかかる。何か原因らしきものに覚えがあれば、数秒で悲鳴になりますが、覚えがなければ延々気づかないこともあるようです。で、後日、指摘されてゾッとする、なんてことも。
 でも5分のドラマで後日、なんて言っていられない。主人公が怪異を見て、一瞬フリーズしている間に、視聴者には恐怖を感じてもらわないとダメなんです。そのためには、主人公が怪異に遭遇するまでのプロセスをちゃんと構築しておかないといけない。これが成功すると、怪異が現れた瞬間、観客はゾッと鳥肌を立てるんです。そのプロセスは、日常が徐々に崩れる状況、あるいは予兆、なわけです。そこがドラマなのです。
 もうひとつ大事なことは、登場人物たちをどういうキャラクターにするか。
 ありがちなのは、カップルとか学生という設定。それは別に悪くない。でもおそらくそれって、自分も経験したシチュエーション。だから考えずに書ける。そこが落とし穴なんです。考えずに書くから、どうしても物語が安直になりがちなんです。
 それがマスコミ関係者なら? 学生とは違うリアクション、解釈がきっと生まれるでしょうね。警官なら? 警備員なら? 学校の先生なら? 新聞配達員なら?
 それぞれがある責任をもつ立場であるとなると、恐怖に遭っても逃げるわけにはいかないですよね。でも怖い。どうするか? 調べると思うんですよ。取材が始まるわけですよ。そこで初めて、自分の頭だけで書いていたのが、世界に広がりが出てくるんです。
 じゃあ今度は、カップルを夫婦にしてみたら? その夫婦に子供がいたら?
 学生同士のカップルと、子供がいる夫婦。なんか重みが違います。カップルだと逃げればいいところを、子供がいる夫婦となると、子供を守るという行動がプラスされるかもしれない。あるいは子供だから見える独自の怪異が表現できるかもしれない。それに単なるカップルでは、二人の関係がどこまでのものか説明する必要がある。でも子供がいる夫婦なら、最初の1カットで視聴者に説明なしで伝わる。そういうことも考えるわけです。
 そして同じ男女の前に現れる怪異でも、キャラクターの設定によって、そのドラマの恐怖の肝も、その対処の仕方も違ってくるはずです。
 そしたらこれ、怪談だけでなく、自分の書きたい小説やマンガにも応用できます。
 そういう考えがないから、みんな同じような学園モノや、恋愛モノを書いちゃうんだな。
 怪談は短くまとめるのがコツですから、そういうキャラクターの配置や動き、事件に対する対応について、いろいろ学べるわけです。そしてやっぱり、恐怖の描写は難しい。それだけに、その描写がマスターできると、喜怒哀楽の感情もその応用で表現できるようになる、と。私の考えです。

 さて、そういうことで今回の怪談講座・その1は、塾生の前で総務のスガノくんに怪談を語ってもらいました。彼は携帯コンテンツで怪談を書いていたこともありますから、取材を受ける一般の人の語りであえて話すように、と私が指令しています。
 怪異とは何の関係もないエピソード、整理されていない順番、説明されないが大事な描写、不明瞭な人物たちの距離感、創作であろうエピソード、つながらない場面、明らかに記憶違いと思われるもの・・・まあ、人の話って普通はそんなもんです。
 スガノくんが語った怪談。
 これを塾生たちが怪談として仕上げる、というのが今回の狙い。
 もちろん質問はありです。
「それ、季節はいつで、何時頃の話ですか?」
「そのOさんとは、どういう関係なんですか?」
「あの場面、もうちょっと詳しく説明してください」
 私も取材していてよくする質問です。不明瞭なことは取材している時点で明確にしておかないと、いざ書くときにどうにも書けないということが出てきます。そして質問しながら怪談の肝を探るわけです。どこに注目して、どんな質問をするのかも、作家としてのセンスが問われます。
 
 で、質問タイムが終わり、一斉に書き始めます。

 スガノくんが話した一本の怪談。これを塾生たちがそれぞれどんな話に仕立て上げるのか? 色んな怪談が出てくるんでしょうな。

 発表は次回。  
 


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2010年07月07日

大阪城物語

 中山市朗です。

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 ダ・ヴィンチ増刊号『幽』13号が発売されております。
 特集は『雨月物語』の上田秋成。
 秋成は、江戸時代後期の人。
 大阪は曽根崎に生まれ、幼少の頃は堂島で育ち、四十七歳まで今の淀川区加島に住み、後、今の阪急淡路駅周辺にあたる淡路庄村で、国文学者として過ごしたと言いますから、生粋の大阪が生んだ怪談作家なのですが、その割りに大阪に怪談が根付かなかったのはなぜでしょう?
 実は『雨月物語』が秋成の作であることがわかったのは、彼の死後のことであったことや、弟子がいなかった、ということも考えられるんでしょうか?
 『幽』11号で、有栖川有栖さんと「上方怪談」について対談したとき、
「グーグルで、大阪の怪談、と打ち込んだら150、江戸の怪談は1万9990件もあった」
 と有栖川さんが言っていたように、大阪にはあまり怪談が伝わっていないんです。
 私思うに、『四谷怪談』も『番町皿屋敷』も、あるいは『将門の首塚』の因縁話も、元は忠義に生きた武士たちの無念とか、武家社会の犠牲になった女性たちの怨念といったものが、怪談を生み出す下地になったと思われるんですが、江戸時代の大阪には、ほとんど武士はいなくて町人の街やったんですね。上方落語にも、あんまり武士の出てくる噺はありませんわな。
 で、今回の『幽』からは、「上方怪談・街あるき」ということで、なんとか無い中でも上方怪談を掘り起こそうというテーマで連載することになったんです。
 で、最初に私が目をつけたのが大阪城。
 ここには当然、諸藩からやってきた武士たちが詰めた場所。武士とその家族がいたわけです。
 大坂(阪は明治以後の表記です)城には、殿様はいなかったんです。
 殿様のいないお城って、大坂城だけです。
 実は大坂城主は徳川家やったんですな。でも、ほとんど将軍が大坂城に来ることはなかったらしく、だから城内は割りと荒れていて、誰も入ったことのない部屋なんかもあったらしい。その上に忠義に生きる武士たちの生活があったんですから、大坂城に怪談がないわけがない、と思ったわけです。
 それで今回は、大坂城天守閣研究副主幹・北川央(ひろし)氏に、大坂城にまつわる怪談についてインタビュー、およびその場所を案内してもらいました。
 そしたら、やっぱりありました。大坂城の怪談! 出るわ、出るわ。
 その内容は『幽』を読んでもらうこととして。
 
 今まで北野誠氏との「やじきた」を連載していたので、おそらく読者も編集部も、ちょっと軽い調子のものを期待されたと思うのですが、なんせお相手は研究副主幹、の方ですから、あんまり茶化せない。ちょっとアカデミック(?)な内容です。
 だから、でしょうか、ブックデザイナーの革命児・祖父江慎さんが、ひろタン、なかヤンというキャラクターを付けてくれました。ひろタンとなかヤンが仲良く手をつないでいる図もあります。実際はおっさん2人。

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大阪城の天守閣に勤めながら、こんな格好をするのは初めてだと言う北川央氏(左)



 さてさて、大阪城。
 ここを調査すると、ほんま大阪の街と文化というのが見えてくる。これは意外でした。
 大阪人は大阪城を誇りとしていたんです。徳川の城なのに、そんなことはまるで忘れられて、大坂の町人たちの心の中には、あくまで太閤秀吉の城としてあったのです。家康は秀吉の城を土中に埋めて、新しく徳川の城を築城して、秀吉の遺体を墓から引きずり出した(これは真実ではないんですが)憎き権力者。というわけで、大阪人特有のアンチ魂が燃えたぎったんでしょうな。
 大阪城はあくまで「太閤様のお城や」と。徳川が読売ジャイアンツなら、太閤様は阪神タイガース・・・みたいなことやったんでしょうか? ちなみに、なぜタイガースなのかのカギも、大坂城にあるんです。
 そして日本屈指の経営家、いや、経営の神様とうたわれた松下幸之助氏も、大阪城なしには語れないエピソードがたくさんあるのです。大阪城が松下電器の繁栄をもたらせた・・・と。このことはいずれ明かしましょう。
 そして大阪ビジネスパーク。高層ビルが立ち並ぶわりには、わりと閑散とした雰囲気のこの再開発地域と、江戸時代は墓所であり、処刑台や焼き場が集合していた、今や大阪市内唯一の心霊スポット、千日前も、大阪城から見た、鬼門・裏鬼門にあたるわけです。もちろんそこにはある意図が隠されています。そしてパナソニック本社の秘密・・・。
 あ、でもこれは怪談より、オカルトに近いか。
 
 しかし困ったなあ。
 「上方怪談・街あるき」て。
 次、どこ行こう・・・。





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2010年07月01日

クリエイター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望

 中山市朗です。

 本日は水曜日なれど、第五週にあたるため塾はありません。
 水曜の夜に何もなしというのは、本当に久しぶりであります。

 久しぶり、というと専門学校を退職して8年になるのですが、未だに当時の教え子たちからいろいろと連絡があり、その成長ぶりに喜んだり、挫折したという話を聞いて「やっぱり・・・」と落胆したり。
 8年前、ということは彼らはもう来年あたり、30歳になるわけですな。専門学校には9年いましたから、初期メンバーは40歳になろうかという教え子もいるはず。
 わあ、なんか、年月とは恐ろしい。

 先週は、マンガ科OBのDくん、ゲーム科OBのNくん、Tくんが我が書斎に訪ねてきてくれて。
 ゲーム科! ゲームなんてまったくやらない私が、ゲーム業界に入りたいというゲーム馬鹿ばかりいるクラスで教鞭をとってたんです。笑えるでしょ?
 もっともそれは教務課の方針で、基本的にマンガ科の学生はマンガしか読んでないし、ゲーム科の学生はゲームしかやっていないので、それ以外の世界を教えてやってほしい、という要請だったわけです。しごくもっとも。
 ところが。
 そら当時の学生にはなめられてました。
「ゲームをやらない先生に、何がわかるんですか」って。
 で、言うてやった。
「ゲームばっかりやってるバカに何が作れるんや」
 まあそう返すと、また反感を買うわけですが、学生と戦わんとお互い本気になれないんです。基本的に若い子たちは大人をなめてますから。その鼻っ柱を折ってやらんと。
 その気持ちは伝わっていたのか、なぜかそんな私の授業の出席率は高かったんです。

 私がゲーム科の学生に教えたのは、まず映画の基本的な文法。
 そして企画力。
 この2つは抑えとけ、と。

 学生たちはゲームはプログラマーが作っていると思っているんですが、それは違う。
 確かにゲーム業界の98パーセントはプログラマーの人たち。
 みんなゲーム会社に入るためにプログラマーになろうとするわけですが、目的意識があって手段としてのプログラマーならいいけど、そこが終着点だと思うと、これはもうつらいだけ。
 2、3年ともたない。
 あれは過酷なサラリーマン。思い浮かべているクリエイター像とは違う。
 そう言うてもわからんのですな。
 
 実はそういうゲーム業界の実態を知らせてくれていたのは、当時カプコンと取引していた制作会社の社長さんや、コナミのプランナー、ソニー・コンピュータ・エンターテイメントのプロデューサーたち。彼らは純粋なクリエイターをほしがっていたんです。「プログラマーなんて掃いて捨てるほどいる。そんなのに興味はありません。けど、おもろい発想をしたり、企画力のある人材なら、たった今からでもほしい」と。
 で、企画力にはリサーチ能力や分析力がいる。それは広告業界のことを勉強するのがいい。それで電通に知り合いがいたので、随時情報をもらっていたのです。
 映画の技法は映画を観せて分析しました。『2001年宇宙の旅』『七人の侍』。ヒッチコックの『裏窓』か『レベッカ』。それに『眼下の敵』『太平洋奇跡の作戦キスカ』とか。『ベン・ハー』や『フレンチコネクション』、あるいは平成『ガメラ』などのあるシーンを、こと細かくカットごとに解説して。
 こういうことって、学生たちがやりたがっていたRPGやシミュレーション、アドベンチャーゲームなんかに大いに応用できるわけです。ストーリーの構成、シナリオ作成、キャラクター造形、キャスティング、背景、美術、衣装、小道具、演出、カメラワーク、アクション構成、音楽、効果・・・映画ですがな。
 そのゲーム会社の社長が言うてました。
「未だ具現化していない映像や世界観のイメージを伝えるには、あの映画のあのシーンだってそういう話になるんですが、見ていないプログラマーにはそれが伝わらない。それに演出の意味も知らないんじゃあ・・・それはクビにするしかおまへんわ」
 また当時『鬼武者』に関わったというカプコンに入社した教え子が言っていた。
「あれは元々『七人の侍』をやろうという企画で、キャラクターは『隠し砦の三悪人』から一部引っ張ってきて、演出や鎧兜のデザインは『蜘蛛巣城』ですわ」
 つまり、ゲームをやっているからゲームクリエイターになれるということではない。
 映画や芝居のことを知っておく必要はあるし、いろいろな音楽や美術にも接しておくこと、ということを口すっぱくして言っていた記憶があります。

 こんな教え子がいました。
 ゲーム音楽の作曲家になりたい、というゲームが好きでゲームのサントラCDばっかり聴いている男子。「だったらバロックからロマン派、印象派といったクラシック音楽を聴いて、その知識がないとなられへんで」と言ったんですが、「ゲーム音楽とクラシックは全然関係ありません」とホザくわけです。
 で、あるゲーム会社の作曲家の募集試験を受けたらしい。
 そしたら出題されたのが、「バロック音楽から現代音楽までの流れを書け」
 
 さて、先日会った教え子たちは、「クリエイターとしての人生をまっとうするためにいろいろ考えて、今こんなことやってます」と近況を知らせにきてくれたんです。
 Dくんは同期でマンガ家になった友人のアシスタントをやっていると言いますが、「それ悔しくないんか!」と言ってやった。アシスタントをやってる奴って、なかなかそこから抜けきれない。そうして30歳・・・。塾にもいるなあ。
 Tくんは一時塾にもいたんだけど、今は映像で食ってるらしい。ただ、彼のやっている映像は、映画とは完全に別の世界。映画やりたかったんじゃないの?
 おっ、コイツは成長してるなと思ったのは、5年ぶりのNくん。専門学校卒業後、プログラマーとして大手ゲーム会社に入社したものの、「これはクリエイターじゃない」とやっぱり思って、知り合いを通じて今は小さなゲーム会社にいるらしい。小さな会社だから、いろいろなことをやれるチャンスができて、今は真のクリエイターとしてのスタンスをもてたといいます。今は楽しい、と。そして、
「うちの会社はゲーム会社なんですが、ゲーム会社と言われたくない。デジタルコンテンツ会社として大きくしたいし、そんな仕事をしてみたい」
 そういうことを言うので、「だったらこんなのできない?」と、ある提案をしたら、さっそく会社の社長さんと会うことになって・・・。

「いつか教え子と大きな仕事をしたい」
 そうなることをずっと思い描いていたのですが、ひょっとしたらいつか近いうちにそれが実現するかも、という予感がしてきました。これは教えた側からすれば、こんな嬉しいことはないんです。
 一緒に仕事ができるかな、と思った原因は、Nくんの動きの早いこと。
 飲みながら私が出すアイデアを、その場で携帯メールで会社に送信しているんです。
 そして翌日「あの件、会社で検討してみました・・・」
 で、もう数日後には社長さんと会って、同じ会社に勤めているHくんという、これも8年ぶりの教え子とも会えた。彼も「おかげさまでゲームバカにならず、多角的な視野をもてたからこそ、この世界で生き延びていられます」と言うわけです。
 そして私の提案した企画。もうさっそく「これ、秋とか言うてたら遅いです。この夏、突貫でやらないと意味がない」とHくん。
 なんや熱いです。
 その企画が本当に動き出せるのかは資金だの、技術的なことだの問題もあるので、なんとも私には言えませんが、やる方向ですぐ対策を練るという対応力に感心したんです。
 少しでも躊躇したり、油断していると、デジタルコンテンツの世界はあっという間に取り残され、チャンスを失う。それを身にしみて知っているようです。だから彼らとは仕事をしても安心だと思ったわけです。早い、というのはモノ作りの大切な要素のひとつです。早いのはプロのワザでもあります。
 Nくん、Hくん、プロの面構えになってるやん、と。
 
 ところで彼らは塾に興味をもってくれていて、いろいろ協力したいと言ってくれたんです。
「うちは映像を撮るという仕事が発生することが多くなると思うんですけど、塾生さんで、これ! って人がいたらぜひ紹介してほしいんです。やっぱり先生の言われるとおり、現場実践はやるべきです。お手伝いしますよ」と。
 うーん、気持ちは嬉しいけど。

 映像を専攻してる塾生はいるんだけども・・・
 Aくんは、塾のプロモーションビデオを作ると言って、もう何ヶ月?
 Tくんは、あるイベントの企画書をあげるように依頼して、何週間?
 Kくんは、そういう話が出る場にことごとくいないし・・・

 紹介できるレベルじゃない。
 彼らからは「やる気はあります!」という言葉は聞くんだけども、やる気を見せてもらったことがない。技術や経験は圧倒的にプロに負けてるんやから、勝負は“やる気、熱意”でしか挑めないハズなんですが。

 本当はAくん、Tくん、Kくん、アルバイト禁止令を出して一人住まいをさせて、なんとしてでも映像で食っていくために工夫して働け、言いたいところだけど・・・。

 そんなこと言うと、「塾費が払えません」てな軟弱なことを言うんやろうな。



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興味がおありの方は、作劇塾ホームページをご参照ください。



kaidanyawa at 19:44|PermalinkComments(1)
プロフィール
中山市朗 【なかやまいちろう】


作家、怪異蒐集家

兵庫県生まれ。


主な著書に「新耳袋」など。

作家、漫画家の育成機関「作劇塾」を主宰。


作劇塾

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