2011年05月

2011年05月27日

5/25の小説技法・・・と『地下鉄探偵団』

 中山市朗です。

 昨日のUstream番組『地下鉄探偵団』、ご覧になられた方、ホンマにありがとうございます。
 えっ、そんなもん?
 言うほど低い数字でしたが、それでも他の番組よりは見てくれた視聴者は多かったようです。
 ディレクターを兼ねている西尾さんがどうも『捜聖記』にハマって『古代史探偵団』みたいなことをやりたがっているようで、そっちの話になってしまいました。
 でも、四天王寺が日本の古代史と天皇の謎が隠されている重要ポイントで、さまざまな四天王寺コード、つまりは暗号や隠されたものがあるのは確かなことです。

 大阪は今元気がない、また大阪人が大阪を卑下することもある昨今ですが、聖徳太子は最初にこの国(当時は倭と言っていましたが)を、国家として捉え、大陸を意識した国際都市を作ろうとしたんです。学校も病院も介護施設も、この頃作られました。港もできて、遣隋使や後の遣唐使もその港から出航しました。運河が作られ、道路が通りました。その中心にあったのが四天王寺でした。
 つまり約1400年前のこの大阪こそが、日本国のはじまりの地だったと、私は言いたいわけです。
 東京?
 その歴史は浅い、浅い!

 ところで『地下鉄探偵団』は見ての通り、信じられないような低予算な大変な番組です。ですから皆さんの協力が必要です。
 大阪、およびその大阪周辺にある怪談、都市伝説、不思議な物体、知られざる歴史などありましたら、番組宛か作劇塾までお報せください。

 作劇塾のメールアドレス…info@sakugeki.com


 さて、一日遅れの25日(水)の小説技法の報告です。

 K師匠のコメディ青春(?)小説、『勝手にトトちゃん』。
 なんでしょうね、書くにまかせているという感じで、構成がなっていない感じです。
 主人公、アパートの住人たち、アパートの家主、天井裏に住んでいる女の子、泥棒のトトちゃんと、やっと紹介が終わったわけですから、もう少しこの人物たちとの日常を書くべきところが、妙なバトルが始まってしまって、ちょっと読み手がついていけないようです。それにタイトルにあるトトちゃん、いつ姿を現すの?

 T野くんのSF小説。
 得体の知れない何かが月面基地に現れ、隊員たちに危機が訪れます。いわばハラハラドキドキのシーンの連続のはずなんですが、起こっている現象がまだそんなにインパクトがないんですね。だから劇中の人物たちが慌て、恐れることが今ひとつ、読者に伝わっていません。おそらく表現の問題もあります。異様なモノを見たとき、それを人間はどこから見て、どの瞬間、異様だ、と思うのかの描写が今少し曖昧なんです。それと、これは小説なんだから、どんなものでも登場させることができます。つまり、もっと想像力を使って、もっと凄まじいもので隊員を追いつめることができるわけです。
 想像力、です。SFですしね、これ。

 Tさんの冒険ファンタジー小説。
 今のところはまだ主人公のOLが、妙な男に言い寄られて(?)いるところまで進んでいて、まだ冒険の場面には行っていません。ただ地の文が文学調なので、どんな冒険ファンタジーになるのか予測がつきません。でまた、地の文と会話の文がちょっと合っていないんですね。どっちで行きたいのか決める必要が出てきています。
 また、本格的な文章を書き慣れていないようなところもあります。
 とにかく書きましょう。

 Yくんのアクション小説。
 描写力もあって、セリフも不自然なく、展開も面白い。ですが、
「この作品は最終的に何枚の作品にする構想なの?」
 と質問してみました。
 というのも、単行本で半分ほどの枚数を書き続けてきたこの小説、あんまり話が進んでいないんです。そう感じさせないのはYくんの腕なんでしょうが、だいたいこの作品は最終的には何枚くらいになる、という算段はもっておく必要があります。
 あんまり長い小説を書いても、新人の場合は出版されません。400字詰め原稿用紙換算で400枚で一冊の単行本となります。目安ですけど。
 Yくんの小説はとてもそれには収まりません。
 上、中、下の三巻、なんてYくんは言っていますが、それならそれで方法がある・・・。

 Dくんの時代劇小説。
 あれ? 前回まで書いていたものと内容もスタイルも違うぞ。
 実は前回まであまり進まない小説に、考えを改めるべき(Dくんはサラリーマンをしているんですが、そのせいか口で言うほどの危機感がまったくない)と説教はしたのですが、作品を変えろとは言わなかったけど・・・?
 今回は70枚程度の短編で、江戸時代を舞台にしたドタバタ喜劇を書きたいと言ってきました。だから何がやりたいの?
 地の文はべらん口調の落語の台本のようなスタイル。でもその意図とするところがわかりません。Dくん、模索しております。

 Tくんのヤンキー小説。スケールが出てきて、期待もさせて、面白くなってきています。ただ、アホなヤンキーたちのケンカに、敵側の寺の不良坊主みたいなのが集団で加わる展開になるのですが、大人がガキのケンカに入って世界観が崩れたという意見も。私はそこが他の作品と違うところでもあり、妙な面白さが出ていると思うんですけど。
 私思うに、特にマンガ家志望が顕著なのですが、同じ世代、同じような登場人物ばかり出る作品が、アマチュアの人には多いのです。おそらく、自分と同じ、あるいは経験してきた世代のことなら書ける、でも、その上の世代はわからないから書けない、という要因もあるようです。
 でも、そこにエラく年取った老婆とか、金の匂いがプンプンする政治家とか、隣の神業の職人工とか、そういう大人を1人でも入れると、作品に幅と深さが出ることがあります。試してみましょう。

 N子さんの短編怪談2編。
 1本目の「地響き」は最初聞いた話のほうが怖かったんですが?
 子供が大勢で体験した話が、この文章では2人だけになっているのはなぜ?
 それに物理的な矛盾があります。こういう矛盾は怪談の怖さを半減させます。もっと状況を細かく観察しましょう。
 2本目の「面影」も、もっと整理すれば3分の1に削れます。それに回想という形はいただけない。回想部分はその人物が皆に語る体にすれば、怪談らしくなります。

 昭和の大スター、大河内伝次郎に捧げる一編を書いているKくん。
 前回指摘された時間軸のあいまいな箇所と、団徳麿に関する記述をもう少し詳しくし、整理されています。もう大きな問題はありません。次の章へと進みましょう。
 本来彼はマンガ家志望なのですが、欠かさず書いて提出しているうちに、ちゃんと小説の体が書けるようになってきています。




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2011年05月26日

地下鉄探偵団告知

 中山市朗です。

 本日の20時から22時、ソーシャルネットワーク大阪というサイトでUstreamを使った「地下鉄探偵団」という番組を配信します。

 隔週で大阪の地下鉄駅を取り上げて、その周辺地域の怪談や都市伝説、オカルトな歴史、といったものを視聴者から送ってもらって、それについて語る、というものです。
 司会が劇団をやっていらっしゃる、加納みな子さん。
 そして語り手は当然ワタクシ、中山市朗でございます。

 ご興味がおありのかたは、是非ご覧下さい。
 
 「地下鉄探偵団」をご視聴できる
 ソーシャルネットワーク大阪はこちら


 また、怪談ネタも提供していいとおっしゃる方がおりましたら、

 info@sakugeki.com

 までお送りいただけると幸いです。



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2011年05月25日

七人の語らい

 中山市朗です。

 黒澤明監督の名作『七人の侍』が、いよいよハリウッドでリメイクされるようです。

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貴重な1954年初公開時のパンフレット。
私の家宝です。





 ただ、資金はアジア映画ファンドで調達し、アジアを舞台とした高品質なアクション映画を作るシステムのもとで製作されるそうです。
 監督はイギリス出身のスコット・マン。脚本はその監督と『ドラゴン・キングダム』のジョン・フスコ。エグゼクティブ・プロデューサーは黒澤監督の息子、久雄氏が名を連ねている、とか。
 舞台はタイ。盗賊に襲われる村の娘役、つまり志乃の役がチャン・ツィイーと決定したとか・・・。

 言わせてください。
「やめてくれ〜!」

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1975年、リバイバル上映時のパンフレット。
中学の頃に観て腰を抜かし、映画の世界に目覚めたわけです。







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同じときのチラシ。







 誰が、いかに、どう撮るにせよ、あの名作に勝てるわけがないのです。と言いつつも公開されたら観に行くんやろな。
 ネットなんかを読むと、日本の名作をハリウッドが汚すな、という書き込みがあったりするんですけど、どっちかというと日本が汚しています。

kurosawa_004
『黒澤明の世界』サントラCD。
同じ頃LPで出たセリフ入りの『七人の侍』サントラの復刻CD。
監督自らの編集。



 テレビ版の『悪い奴ほどよく眠る』と『天国と地獄』は黒澤へのリスペクトさえ感じません。森田芳光版『椿三十郎』はいつかこのブログで分析したように、全然この映画の本質を森田監督が理解していなかったし。
 やっぱり『荒野の七人』や『荒野の用心棒』は、ちゃんと黒澤明へのリスペクトがあったし、確かに面白かったですもん。

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21世紀になってやっと出た音楽のみの完全収録CD。
音楽は日本映画の音楽を国際的水準に高めた早坂文雄。



 ということで、我々も朝まで酒飲んだ勢いで、作劇塾版『七人の侍』のキャスティングをしてみました。わかる人しかわかりません。怒っていいです。
 選考委員は数人の塾生と私。若干えこひいきと、選考委員がええとこ取りしているのも怒っていいです。でも、私はなんか、ベストやと思います。ん? 言うのもありますけど。(キャストは塾生、元塾生、及び関係者のみで構成されています。クビになった人もいます)

勘兵衛… 中山市朗
菊千代… スガノ
勝四郎… すぎやま
久蔵… 高田豪
七郎次… 小島雪
五郎兵衛… フジタ
平八… 山本智

志乃… 大箱巣詰
万造(志乃の父)… 島正晴(誰?)
与平… かなた師匠
茂助… トキモト
伍作… アリムラ
村の長老… Tペンの社長
長老の孫… 木下
利吉… モコピー
利吉の妻… コキタカヨコ
蹴飛ばす浪人… クノッソス(誰?)
断る浪人… モンシ
茶店の親父… セギ
饅頭売り… ドラゴン豊田
琵琶法師… ヤス寺井
僧侶… SF東野
豪農… 大滝社長
その女房… UNI
野武士の小頭… 鳳零次
野武士… 三輪祥彦
斥候A… 坂本P
斥候B… 藤井
逃げる野武士… カマレンジャー
人足A… サバンズ(友情出演?)
人足B… サバンズ(友情出演?)

『七人の侍』は男がメインの作品なので、どうも女性の塾生の出番が少ない。
 ということで、『女性版・七人の侍』をキャスティングしてみると、
 おお、ナイス・キャスティング。
 でもここで発表したら、ホンマに怒られそうなのでカット!



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2011年05月24日

サンデーナイトフィーバー

 中山市朗です。

 日曜日、塾生6人を引き連れて、第一回聖会大阪パーティに行ってきました。
 これはなんのパーティなのかというと、
 朝日ソノラマ『宇宙船』の創刊立会人で編集人、SF、特撮研究家でもある聖咲奇氏を囲んで、まあオタク話でもして、わいわい楽しもうではないかという業界人の集うパーティなのでありまして、本来素人であるウチの塾生の入れるものではないのですが、聖さんや発起メンバーの方々のご好意に甘えました。

 あれ、似たようなパーティが過去になかったっけ、と思われた人、このブログの達人です。そう、『夢人塔パーティ』というのがちょうどこの時期にありまして、同じようなメンバーで行なわれていました。私も塾生たちを連れて毎年のように参加しておりましたが、ちょっと事情があって分裂したようです。
 詳しいことは知りませんけど。

 さて、久々に聖さんをはじめ、作家でホラー・SF研究家で編集人でもある石田一さん、ご無沙汰してしまっていた映画監督の山田誠二さん、映画の美術師の山口広喜さん、塾生が色々お世話になっている怪獣絵師・田宮教明さん、そして団鬼六賞受賞作家、花房観音さんらとお会いできました。また作家の北山しおさんから、作家でゲームデザイナーでもある友野詳さんを紹介していただき、歓談させていただきました。私あんまりゲームやらないんですが、おそらくゲームマニアの方ならご存知のクリエイター集団「グループSNE」のメンバーの方でして。色々とそのグループの話を伺ったのですが、ある意味私が目指す塾の理想型をやっていらっしゃるんです。
 もちろんプロとアマの違いはあるとは思うんですが、これは意識の問題。
 私もいずれ「作劇塾」をクリエイター養成だけでなく、クリエイター集団にしたいとずっと思っているんですけどねえ。
 私も塾に持ち出しばっかりなので、そろそろ逆にしないとヤバい!

 そういえば、山田さんが「中山さん、マンガの塾生はいるんですか?」
 それが来ていない。5人が小説家志望、1人が落語作家。
「なんで来ないんでしょう? こういう中山さんや僕のラインがあるのに、もったいない」
 そうです。山田さんは近くある大御所のマンガ家さんと仕事をされるようなんですが、この会場にもマンガ家さんや編集の人がいるわけです。そういう人と知り合いになって、相談できる関係になることが、まずデビューに有利ですし、仕事をもらえるチャンスだってそこにあるわけですしね。それに山田さんからは過去、色々塾生が仕事や現場を紹介されています。けど、山田さんからの一方通行です。残念ながら。
 どうもウチのマンガ家志望は篭っちゃう傾向がある。何度も言うようですがそれ、絶対損です。
 そういえば、映像を専攻している塾生がひとりも来ていないんです。
 映像も人の繋がりで仕事や現場が来るわけです、と何度も言っているんですが。
 やっぱり危機感が無いんですかねえ。
 ひとりでビデオカメラを持って、脚本を書いて自主映画を撮る、ということを塾生はやったり考えたりしているようですが、それもやる必要はありますよ。
 でもそれは基本的なことで、そんなことは塾生でなくともできることじゃないですか。
 今はもうハイビジョン対応のコンパクトなカメラも出ていますし、対応したパソコンがあれば好きな映像を撮って好きに編集もできます。今はもう中学生だって凄い映像を撮って繋いで、動画サイトに流している時代です。

 でもプロを目指すなら、食っていこうとするなら、プロの世界で活躍している人と交流することが肝心です。
 特に映像の世界って、やっぱり人脈で成り立っているんです。出資者、協力者、スタッフ、役者、配給、販売、宣伝、広報、ひとりでできるというのなら別ですが。

 そして、集まったプロの世界でメシを食っている人たちの生き生きとした表情と会話。
 みんな好きなことをして、それをメシの種にしているという自信の表れでしょうか。
 しかもええ年こいて、特撮だのヒーローだの宇宙人だの、なんて話をして大いに盛り上がっているのは、実にこういう世界だから許されることじゃないですか。

 夢を食って生きる。これは幸せなことです。
 だから私は塾を作ったんです。
 で、塾はただ理論を学び作品を作る、だけのところではない。それは専門学校でもやっていることです。作劇塾は、プロの人と同じ場にいて、その空気を吸う。これをやるための場所を作る場所です。そこが他とは違う。

 でもいっぺんもこういう場に来たことがない塾生、何人もいますねえ・・・。
 私は「聖会」のパーティに出ろと強制しているわけではないのです。でも、こういう場に来ている塾生は、だいたい同じメンバーなんですよ。
 ということは、まったくこういう場に来ない塾生もいるということです。

 これは後に大きな差になってきますよ。

 ま、強制はまったくしないので、好きにしたらええけど。

 聖さん、そして「聖会」のメンバーの皆さん、色々ありがとうございました。

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2011年05月21日

5/18の作劇ゼミ その2

 中山市朗です。

 今回こそ19日(水)の作劇ゼミの報告です。

 人前で自分をプレゼンする15分。
 まず最初に手を挙げたのがN子さん。

 特撮ロボットヒーローについて語ってくれました。
 「ガンバロン」「ロボット刑事」「電人ザボーガー」が彼女のベスト3だそうです。
 私、ロボコップの元になったという「ロボット刑事」は知っていましたが・・・。
 N子さんは、「ガンバロン」のチラシをホワイトボードに貼り付けていますが、コピーにあるのが(これが'77年のスター!)
 N子さん、キミ、遥かに生まれてないやん! どうもお父さんの影響だそうです。
 彼女は「キカイダー」のような正統派より、どこかダメなユル〜いカンジの作品に惹かれるといいます。
 これどうなの? と言いながら、その笑えるエピソードを楽しげに紹介し、そのツボを解説する。昭和特撮モノが好きだという彼女らしい15分でした。
 「ガンバロン」と「ザボーガー」は見てみよう。

 続いてTくん。格闘王前田日明について語ります。
 前田日明の少年時代のエピソードから始まり、前田の性格、人格がどう形成されていったのかを、ちょっと物語口調で語ります。さすが落語作家です。
 在日、不良、喧嘩、新日プロレス、猪木との確執、理想、UWF、イデオロギー、アンドレ・ザ・ジャイアントとの対戦、と、15分の間に、前田日明の人生をまとめた手法はうまい。
 質問もでます。

○猪木を食った、というのは?
○マイク・パフォーマンスは誰がどういうきっかけで始まったのか?
○ブック、つまりプロレスの台本はすべての試合にあるのか?
○高田延彦とはいつ仲違いして、今はどうなのか?
○前田と天龍、どちらが強い?
○すべての格闘技において実は最強は相撲という説があるが、どう思う?

 すべての質問にTくんはユーモアを交えながら、余裕で答えていました。

 続いて、Mピーくん。

 なんで彼はMピーなのか? マンガ家志望の彼のマンガに、そういうキャラクターが出てきますし、なぜか彼のブログもそうなっていますので。
 HIPHOPについて語ります。
 まず、HIPHOPとは何か、という基礎知識から。
 日本のラップは言葉の母音を合わせる、似た言葉をつなげる、いわばダジャレに近いものだと彼は説明します。例えばこういう場合にこう使えます、とMピーくんは、ラップを披露してくれます。

 友人に本を借りていて、つまらなかった場合、

 ♫ この本をリコメンドを認めんのムリ ♫

 は? もういっぺん言ってください、という声も。

 友達が凄いことを知っていた。これを褒めるとき、

 ♫ キミうまいな、キャプテン翼もイラつく、百点のうまさ ♫

 ツラいことにあって泣いている友人を慰めるとき、

 ♫ ながしたくやしなみだ、けっしてムダにはしない、武士のたしなみだ ♫

 まっ、楽しそうです。Mピーくん。

 しかし質問コーナーでは、総務のスガノくんから鋭く細かい質問とツッコミが。
 「えっ」と一瞬、戸惑うMピーくんを見て「あっ、知らんのや」
 ええ感じです。そういう質問がほしいわけです。

 この日は、質問や応答が次々に出て、3人の発表で終わりましたが、来月も続きます。
 全員にやってもらいます。
 私がここまで思ったこと。

 楽しそうなのはいいんですが、もっと聞いている側に対する配慮やサービス精神を持つことです。Mピーくんは、音楽について語ったわけですから、そのCDでも持ってきて聞かしてツカむ、という必要を考えよう。それから資料配布をすること。
 語っている人は好きなことですから、頭の中にありますが、聞き手側はまったく知らないことも想定されますので、これは必要です。格闘技の年表とか、ラップのミュージシャン一覧とその特色とか。会社で企画のプレゼンをするのと同じです。
 それと、参考文献を持っておくこと。

 例えば私なんて、「古代史」のライブをやるとき、山ほどの文献を机の上に置いておきます。これでまず、そうとう読み込んで研究しとるなと、聞き手は思います。
 そして語る最中に、「『日本書紀』にこれは書かれています」とただ言うより、実際そこで『日本書紀』のその部分を読んでみる。いわば引用文献なわけです。これをやると、語り手側の思い込みではなく、ちゃんとした出典、原典があることがわかり、言っていることの説得力が増すわけです。
 Mピーくんは「これは僕のなかの定義です」と言ったところがあったんですが、じゃあ他の定義ってなに、とか、そもそもその世界で誰がどういう定義を言って、それに対してこんなことを言った人がいますが、僕のはこう思います、と言ってくれなければ、その定義が正しいものなのか、正統派のものなのか、異端の考えなのか、わかりません。
 定義というのは、何か対象となるものと比較し、区別するということを言います。
 こういうときは、ラッパーについて書かれた本などを読み上げたり、参考にすると、語っている人のスタンスとかレベルがわかるわけです。

 というわけで、後になればなるほど、敷居が高くなりますよ。
 6月の第一水曜日、またやります。




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2011年05月20日

5/18の作劇ゼミ その1

 中山市朗です。

 一日遅れですが、19日(水)の作劇ゼミの報告です。
 
 クリエイターとして生きのこるには、
 こだわりを持て。
 それを語れ。
 それが作品のテーマとなり、書き続ける原動力となる。

 というわけで、前回に引き続き、そのこだわりを15分、みんなの前で語り、質問を受けたらちゃんと返答できるためのリサーチをしておく、という課題です。

 実を言いますと、9年の専門学校の講師経験と、7年の塾長経験で得たものは、この説得力のある話と、どんな質問にも答えられるリサーチ力でした。
 学生に偉そうな講釈をたれても、学生の質問に答えられなかったら、これはもう恥です。
 それと90分、3時間、という毎週のカリキュラムで、何をどう提示して、どう興味を持ってもらって、何を得させるか、ということを毎週考えて、いや専門学校の頃は12コースを受け持っていたので、毎日考えて、教壇に立つわけです。
 テーマや内容は毎回変えて、1年で完結するカリキュラムを自分で考えるわけです。
 これ文章や放送台本、映画のシナリオでやることとほぼ同じことです。
 この講師経験が、怪談語りに役立ったのは事実です。
 腹式ができるようになりましたしね。

 ということで、人前で語るということは、作品作りの基礎になるわけです。
 絶対に! と断言しましょう。
 とは言っても、人見知りして、とか、そういうこと苦手、という人がこの世界に入ってくるわけですが、それはわかります。私も若い頃、そうでした。
 でもねえ、それじゃあ仕事はもらえないし、まわらない。編集さんとの打ち合わせもできない。だからこの課題は、デビューのためというよりは、その後の課題を克服すべき重要なものだと私は認識しています。

 で、ですね。人見知りというのは別に恥ずかしいことではないのです。
 これは人間の本能だと思うのです。ムラとか同民族の限られた人たちだけの生活、というのが人類史上のほとんどだったわけです。
 そこに知らない人間がくると、警戒したり、敵だと思ったりして、心を許すという危険なことはやらなかったわけです。そういう心理が遺伝的にあるのが人間だと思うわけです。
 ということは、基本的に人間というのは人見知りなんです。でも今は時代も変わっていやでも多くの人に会わなきゃならないし、社会生活をそのなかで営まねばなりません。
 ましてや、個人で生きていくクリエイターにでもなれば、その社会に対応して、メッセージを発信しなきゃならないわけです。
 だから、人見知りで、とか苦手は、おそらく克服しなきゃならないものだと思うわけです。というか、私も含めてみんな克服しているわけですよ。
 それ無理してやると、ストレスになったり、胃が痛くなります、なんていう人もたまにいます。そういう人は、とにかく自分の興味のあることや好きなことなら語れると思うんです。
 えっ、そういうものがない?
 キミねえ、クリエイターなるの無理だから辞めたほうがええわ。

 何度も言いましょう。
 貴方が編集やプロデューサー、クライアントの立場にいるとして、
 文章や絵を描くテクニックはほぼ似通っている新人がいて、
 話が面白くて、熱い新人と、何を考えているのかわからないし、会話もない、という新人と、あなたはどっちと仕事をしますか?
 黙っとったんではわからんのです。
 何を書きたいのかわからない人には、安心して仕事振れませんしね。文章能力があるなんて言われても、そこを言うのならもっとうまいプロは他にいっぱいいますから、新人にわざわざ仕事を振る必要もありません。
 新人には、テクニックは少々荒くても、新しい切り口、テーマ、センスといったものが求められるわけですしね。それはまた、編集の人も会話の中で探っているんです。
 そして、それなりのウンチクのある人は、少なくともその世界のことを書かせれば、そうは間違いはないだろう、と見てもらうことができるわけです。また熱い人というのは、それだけ情熱や思いがあるということで、この仕事は完遂してくれるだろうという安心にも繋がりますしね。新人で恐いのは、平気で原稿を落として連絡不能になること。
 よくあるんです、これ。
 だから黙っている人には恐くて仕事を任せられないわけです。

 今までの私の教え子で、この世界でなんとか生きていっているのは、やっぱり積極的で話も面白い、そういうタイプがほとんどです。黙して語らずは、今は通用しない、というのが私が見てきたことです。
 話が面白いというのは、訓練と場の数です。克服できます。

 ダメ・サンプルをひとつ。
 皆さん、こうはならないように。
 もう2年ほど前になりますが・・・。
 私の取材に某塾生Kを同行させました。これは実践の場でもあります。
 某出版社の編集S氏とカメラマンも同行。
 その仕事を終えて食事となったとき、S氏はKに質問しました。
「キミ、何志望?」
 そら聞きますわ。
「映画監督志望です」
「そうなんだ。じゃあ映画について語ろうよ」
 そらそうなりますわ。でもKは黙っています。
「キミ、映画監督志望だろ?」
「・・・」
「じゃあどんなジャンルが好きなの?」
 これ、塾生やからチャンスくれている。普通はもう無い。それにS氏は映画業界に強いコネクションがある。ここで挽回するとしないのでは、天国と地獄。
 そしたらやっと口を開いたK。
「あのう、特撮です(小声)」
「あっ、特撮なんだ(キラリと目が光る)。じゃ、何が語れるの?」
「そうですねえ・・・(と、特撮ヒーローについて、誰でも知っているようなことをボソボソと)」
「それだけ? キミ、プロ目指してるんだろ?」
「あの・・・(沈黙)」
「・・・あのねえ、キミと話をしていると、14歳の男の子と話をしているようだよ」
 終わりです。
 プロ目指して、特撮好きだというのなら、プロの人間を唸らせないとこれはもう、ゴミです。キツい言い方ですが、「あれはゴミだね」という言葉、よく聞きます。
 そらそうです。プロの世界でお金が生み出せなかったら、そらゴミと言われてしまいます。クリエイターとして、何の値打ちもありません。
 でも、逆に「う〜ん」と唸らせたら「ちょっとこんなのあるんだけど、手伝ってみない?」と、チャンスなり、次なる実践の場が与えられたかもしれない。実はそういう意図もあって、塾生を同行させているんですが、本人はわかっていない。
 これ、気づくのと気づかないのと、その差は大きいです。
 やっぱりプロの人と現場を共有できるというのが、何よりも身につくんですよ。プロの考え方、スタンス、レベル、スピード、要領、そういうことがわかる。
 そしたら自然、自分のレベルがプロと比べてどうなのか、何が足りないのか、何をすべきかが、ちょっとでも考える頭があればわかるわけです。それ以上のクリエイターとしての勉強法は無いかもしれません。
 だから、せめて好きなもの、興味のあるものについては、いつでも語れるようになる必要があるわけです。また、面白い話というのは、構成力と表現力(それは伝えたいという動機から来るものですが)が自然と備わっているわけで、それはそのまま文章表現に活かされるはずなんです。

 ちなみに14歳と言われたKは、当時「涙が出るほど悲しかった」とブログにもコメントしていました。
 だから彼は、「くそっ!」と思って奮起したわけです!
 と思いきや、今も14歳のままです。
 映画監督志望と今も言い続けていますが、シナリオゼミにシナリオの提出がここんとこ無い。映画もやっと5分程度のものを3月に撮ったと思ったら、まったく編集があがってこない。飲みの席で映画の話をするとコソコソ逃げる。入塾したときから見とけ、と何度も何度も言っていたニューシネマとヌーヴェルバーグも知らない・・・。
 これはもう、私にはどうすることもできません。まっ、そんな塾生もいて、大変な毎日なのですが・・・。
 
 あっ、そうそう、昨日の作劇ゼミの報告でした。

 前置きが長かったですねえ。
 でも肝心なことだったので。
 明日、必ず更新します。すみません。

 


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2011年05月19日

5/19の作劇ゼミ・・・の前に

 中山市朗です。

 『古代史探偵団』
 新動画アップいたしました。

 今回は、四天王寺七宮を巡っています。
 この七宮、というのは聖徳太子が仏教最初の官寺、四天王寺建立と同時に建てた七つの神社のことなんですが・・・。
 七宮のうち、現在は、堀越、河堀稲生、久保、大江の四宮が残っています。
 で、不思議だと思いませんか?

 聖徳太子は、仏教推進派の蘇我氏の血を引く皇子で、実際、仏教の聖者として教科書に出てくるわけです。しかも、蘇我仏教と物部神道、どちらを朝廷が崇めるべき神なのかを決めるための丁末の乱が起こって、結果、蘇我仏教が勝ったわけです。
 この丁末の乱の目的は、蘇我氏側からすれば、物部氏及び物部神道を朝廷から追い出すための戦であったはずです。
 で、天皇は仏教を崇めるべきであるという象徴として建立されたのが、四天王寺。
 ところが聖徳太子は、同時に神道の神を崇めるための神社を建てて、叔父の崇峻天皇と祖父である欽明天皇を、神道として祀った・・・。
 これはなんとしたことでしょう?

 というわけで、動画「四天王寺コードを読み解け」16〜20 

 途中から見られても大丈夫です。
 興味をお持ちになったら、アーカイプで過去の動画も見ることができます。
 
 なお、動画で古代史を配信する意味は、
 そこに存在している神社、古代の祭祀場、寺院と、そこに残る由緒、歴史、祭神を見て、それをどう解釈するのかというコンセプトです。
 古代史は、確固たる文献も少なく、歴史の改ざんも行なわれています。ですから、どうとでも解釈できるわけです。しかし、古代より神社や祭祀場の場所は変わらないものです。そこに祀られている神も基本的に変わりません。
 ですから、そこに足を運び、見てみる、という民俗学のアプローチが必要であるという私の考えによるものです。そしてそこにビデオカメラも同行して、みなさんと一緒に考えてみる。
 これはおそらく、私だけがやっている古代史へのアプローチかと思います。
 実はこれ、怪談蒐集から学んだことです。

 さて、19日(水)の作劇ゼミの報告ですが、
 ちょっと長くなりそうなので、明日アップします。


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2011年05月18日

何という生き方!

 中山市朗です。

 上原美優さんが亡くなられました。
 
 私、今の若いテレビタレントはあんまりわからないんです。
 80年代アイドルは詳しいですけど。
 ただ、アイドルの子達と一緒に仕事をすることはたまにありまして、上原美優さんもその一人でした。
 種子島生まれで貧乏話を披露する、なんか健気な娘だなという印象は持っていたんですが。
 ご一緒したのは、NHK『最恐怪談夜話2010』。
 私の話を一番怖がっていたのが彼女でした。
 楽屋は別々で、お話はできなかったのですが、番組が終わって「さっきの話、怖すぎて泣きそうでした」と声をかけてくれたんですが・・・。

 しかしねえ、24歳の自殺は、これはイカン。
 24歳なんて、人生の何を知ってるんや、ですわ。
 うちの塾生も同年代くらいなのがいるんですけど、やっぱりアホです。
 もちろん24歳の私もアホでした。
 今もアホのままですけど、でも24歳の時よりはマシと思います。
 そのアホというものを克服していくのが人生やと、私思うんです。
 アホっていうても色んな意味のアホがあるわけですが。
 モノ知らん、道理を知らん、礼儀知らん、異性を知らん、美しいモノ知らん、努力すること知らん、己の潜在能力知らん、世情知らん、人情知らん、友情知らん、世界を知らん・・・知らんことづくめが人間というものですが。
 でも、そのアホを克服していくのが万物の霊長たる人間の宿命でしょう。
 いささかオーバーな表現ですかな?
 でもまあ、人間、色んなものを見ようと心がけると、色んなものが見え始めるものなんです。そこが人間面白いわけでして、アホがちょっとずつカシコなる。

 まあアホのままでええやん、いうパパゲーノ的人間も、どうやら多いようですけど。
 それはそれで幸せなのかな?

 でも、アホを克服しなきゃ、と目覚めたら、途端に人生険しくなる。でも、生きがいも同時に生まれると思うんですけどね。
 克服するっていうのは難しいし、苦しいこともあるし、絶望することもあります。克服っていうのは目標であり、試練でもありますから。
 けど、だから楽しいこともあって、希望も生まれるわけです。
 でも、そこでくじけると、自殺も一つの解決法となるみたいで。
 ここで一人になっちゃう、いうのが危険なんでしょう。

 作家の林芙美子は、この言葉を好んだといいます。
「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき」
 映画『浮雲』にもこの言葉、出てきますねえ。
 これだけ聞くと、なんか厳しい言葉ですけど。

 実はこの後にも、言葉があるんだそうです。
 この場合、苦しきことのみ多かれど、となり、

 風も吹くなり、
 雲も光るなり、

 と続きます。そうなると、言葉の意味も変わりますよね。

 苦しいことは多いけれど、風雪に耐えれば、また日も差すさ・・・。

 そう私には解釈できるんですけど。

 いや、上原美優さんの事情も知らず勝手なことを書いておりますが、要は24歳で自殺なんてホンマ、あかん、何も知らんやろキミ、と言いたかったわけです。

 上原美優さんの、ご冥福をお祈りいたします。

 あっ、それと。
 話は変わりますが、
 今年もNHKで『怪談夜話』やるんですかと、よく聞かれるんですが、私、NHKの者ではありませんので、わかりません。
 ただ心配なことが。

『最恐怪談夜話』はBS2で放送されていたのですが、この4月からこのチャンネル無くなっているんです。あちゃあ!



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2011年05月12日

5/11の小説技法

 中山市朗です。

 えー、政治、経済、文化の東京一点集中は危険であり、よろしくない、と、常々私は言い続けているわけですけど。
 で、大阪に居座って33年。
 あきませんなあ、大阪。
 いや、大阪人がいかん。
 私ねえ、今まで何度、知り合いのタレントさんや役者さんたちの、東京進出を見送ったことか。私は止めるんですけどね、一応。
 まあ、ほとんど消えました。
 この前もある女性タレントの話になって。
 何度か共演したんです。美人で花があって、雰囲気もいい。リアクションもいい。
 ドラマにも出て、これからという時。
「そういえば彼女、どうしたの?」
 とスタッフに聞いたら、
「連絡つかないです。東京に行ったのは間違いないですが・・・。消えましたね」
 やっぱり。

 さて、その大阪市が、ソーシャルネットワーク大阪というプロジェクトを立ち上げまして、今月よりUstreamにより番組を配信していくようです。
 Ustreamって、みんな見るんかいな?

 で、このなかで5月26日(木)、夜8時より生放送で、
「古代史探偵団」
 もとい、
「地下鉄探偵団」という番組が始まります。
 なんか、隔週で、大阪の地下鉄駅を取り上げて、その周辺地域の怪談や都市伝説、オカルトな歴史、といったものを視聴者から送ってもらって、それについて語る、というものなんですが・・・。
 司会が劇団をやっていらっしゃる、加納みな子さん。
 で、毎回ウザいウンチクを語るのが、中山市朗でございまして・・・。

 ソーシャルネットワーク大阪はこちら

 さて、11日(水)の小説技法の報告です。

 今回はお説教が効いたのか、いつもは5作品くらいしか提出がないのに、今回は9作品。それはそれで大変なんですけど。

 まずは久しぶりの提出、Mくん。
 ある中学校の夏休み、先生たちが生徒に挑戦する「鬼ごっこ」。
 先生から逃げたら夏休みの宿題無し、捕まれば増加・・・。

 Mくんは「ホントにあったことを書きました」と主張するんですけど、まあそんな学校無い。だからよしんばあったとしても、もっと読者目線で書くことを意識しなきゃ。それとあったことをそのまま書いた、は小説ではない。
 小説としてのひねりを仕掛けること。

 K師匠のコメディ青春(?)小説。
 とにかく読みやすさを意識しましたという通り、読みやすくはなりました。
 彼はコントや落語の台本を書いているだけあって、セリフのやりとりは面白いんですが、いきなり地の文の羅列があったり、そのバランスがよくないです。
 地の文を極力セリフにしたり、心のつぶやきにしたら、統一感が出ると思いますが。
 アパートの3人の住人(サブキャラ)のキャラがなんか被っています。
 キャラの配置に注意。

 これも久々提出、Tさんの冒険ファンタジー小説。
 とは言っても書き出しは、なんか文学調です。広告代理店にいるOLが立ち寄った喫茶店から始まるのですが・・・。でも最後のほうのセリフはぶっ飛んでいて、何を読ませようとしているのかわからない。そしたらTさんは「これから中国のある少数民族の村をモデルにした架空の国へ行く冒険ファンタジーです」となったわけで。
 でもそんな書き出しでもないし・・・。
 でも書きたいものがあるようなので、その書きたいものが出てくるまで書き進める方針としました。そこからかな、批評は。

 Dくんの時代劇小説。
 また作品の視点を変えてみました、と言って、提出されたのがまた第一章の冒頭部分。あのキミねえ、入塾して1年半、全然進んどらへんねんけど。作品も出たり、出なかったり。ちょっと彼については思うところがあるので、この後の飲み会にてみっちりと。

 Kくんの大河内伝次郎に捧げる一篇。
 ちょっと小説のなかの時間軸がわからなくなっています。もう少し丁寧に。

 内容とは直接関係ありませんが、
 Kくんの小説に初代丹下左膳を演じた団徳麿という俳優が出てくるんですが。
 この人、五味龍太郎さん(『大魔神』に杭打ち付けられる悪大名役)の義理の父となる、と彼の小説に出てくるのですが、私の中で氷解したことがあって。
 五味龍太郎の娘さん、私知っていまして、CS京都で私が製作していた『京都魔界案内』のプロデューサー。彼女から、
「私のおじいさんにあたる人が、初代鞍馬天狗をやってた人で、もともと兵庫県の赤穂市の出身やったの。そこに大避神社という秦河勝を祀る神社があって、これはきっとユダヤやと思って、京都の太秦に移り住んで。ユダヤと日本人の関係の研究を続けながら、映画に出るようになって。鞍馬天狗の初代。でも終生日ユ同祖論の研究は続けて、広隆寺の寺男になったんよ」
 そういえば、司馬遼太郎さんが、京都太秦の広隆寺に行ったとき、庭掃除をしていた寺男に話しかけたら、えらい詳しい人がいた、と何かのエッセイに書かれていたんです。
 でも、初代鞍馬天狗で、そういう人が見つからない。
 もしかして、この団徳麿さんがその人かと思って、Sくんに聞いたんです。
「団徳麿さんって、晩年何してはった?」
「なんか広隆寺の寺男になったみたいです」
「その人や!」

 失礼しました。私はこれがわかって、ちょっと嬉しかったもので。

 Yくんのアクション小説。
 彼の書く作品は、テンポもあって、キャラもよくできていて、続きが読みたい。ただ話の進行が遅いので、最終的に何枚の作品になるのか。一度完成させてみて、その感覚から構成力を学ぶというのが、彼には必要なのかな、と。
 だからこの続きをどんどん書き続けよう。

 T野くんのSFホラー。
 前回指摘された、ちょっと複雑な説明は修正されていましたが、なんせページがなかなか増えない。サラリーマン生活、引越しと大変でしょうが、でもそれを言ってはおしまい。書きましょう。

 T田くんのヤンキー小説。
 なんや『男塾』みたいになってきました。いや、アホのヤンキーどもがなぜか愛らしく思えて、そこは彼の腕というか、作品に対する愛情なのでしょう。ただし、小説なのでもっと暴れることはできるはず。ヤンキー同士の出入りみたいなケンカがあるんですが、引っ張った割りには、ちょっと肩すかし、でした。

 以上。えっ、8作品しかない?
 短編怪談を提出していたN子さんは、大学のゼミのため、お休みでした。 

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2011年05月11日

禁じられた食事の森

 中山市朗です。

 人間、味覚とか好みが変わる、言うのがあるんですね。

 最近、あれだけ好きだったインスタント・ラーメンを食べなくなったんですわ。
 以前は中毒みたいで、3日食べなかったら無性に食べたくなっていたんですが、ここんとこ食べないし、食べたいとも思わない。
 それでキッチンにあったラーメン5袋を総務のスガノくんにあげたら、ヤツはいっぺんに5袋ペロリと平らげた、そうで。
 ブースカかお前。
 そういえば、ある真夏のこと、スガノくんはカレーを作ったものの、ちょっと家に帰れない状態にあったんです。冷蔵庫にも入れず、鍋のままコンロの上に放置。
 炎天下。しかも彼の部屋の中はきっと40度は超えている。
 それも1週間。
「カレー、腐ってえらいことになってんで」
 私、そう言うたんですが、スガノくんは帰ってカレーを全部食べたというんです。
 で、腹痛とかなるわけでもなく、ケロッとしている。
 いや、チクッとはしたそうですが。
「腐ってたやろ」
「いいえ、ちょっと変色していただけです。あと、水とカレーが分かれて大陸みたいになっていました」
 ははーん。
「お前、具材入れてないやろ」
「はい。カレーって何か入れるもんなんですか?」
 彼の作るカレーは、以後、パンゲア・カレーと名づけられました。
 しかも有機体のまだ無い、何もない大陸。

 ヤツは近く死ぬな。

 ところで、テレビなんか見ていますと、
「1日に野菜の摂取は、これだけ必要なんです」
「えー。これは大変ですねえ」
 なんて言うてますね。1日300gとか350gとか。
 ザルに一杯盛ってあって。
 こんなん嘘や思いません?
 だからこの野菜ジュースで、とか、青汁飲みましょうとか。

 あんなんメーカーと、雇われた御用学者の陰謀やと私、思います。
 その5分の1もおそらく摂取しない、元気一杯な私が言ってるんですから。

 この350gという数字がホンマやったとしても、それだけのものが食べられる時代なんて、かつて世界の人類史上であったでしょうか?
 おそらく無いです。
 昔の人間は、常に腹が減っていたもんです。
 野菜どころか全てが不足していた。
 だから人間の体は数字じゃない。
 それに日本人は野菜不足と言われながら、長寿国ですしね。
 今長生きしている人は食ってたんか。
 でも日本人ていうのは、長い歴史、米で生きながらえた民族なんです。野菜いうても漬物くらいで。昔、私の子供の頃は日の丸弁当、ありましたもん。
 ご飯の上に、梅干し一個。
 今、長寿を支えている人たちは、若い頃、そういう食事をしていた人たちです。
 それが日本人の食生活。それがいいとは言いませんけど、野菜をこれだけ食え、なんて贅沢になったからの発想ですわ。

 ただ、テレビなんかで言う野菜不足というのは、アメリカと比べて、というのが多いんですが、あの国はサプリメントで補っているようですし、山盛りの油ゴッテリのポテトフライもカウントしています。すべてがビッグサイズですしね。
 日本人とはスケールの違うメタボもいっぱいいらっしゃいますし。
 この前亡くなったエリザベス・テーラーなんて、えらいことになってた。
 日本の女優さんで、あんまりそんなのいないですよねえ。
 そんなんと比べて、ええのかな。

 で、私は、さっき言ったように野菜、食わない。鍋とかに入ってたら食べますけど。
 サラダ? いらん! あれは毛虫の食うもの!
 サプリメントも健康ナントカも、薬も一切口にしたこと無いです。
 飲み会の前なんぞ、若い奴らが栄養ドリンクなんざ飲んでやがる。
 そやのに朝見ると、ゆうゆう飲んでいる私の隣で寝てますねん。
 あーいうもの、飲んだ時点で負けですわ。

 まあかく言う私も、骨折して入院したときだけは、薬飲みましたけど。あれ悔しい。

 中山市朗は、肉しか食わん!
 和製ヒッチコック!
 あそこまでデブッてませんけど。
 あの人は、日本にきても刺身や寿司には目もくれず、ひたすら牛肉を食っていたらしいですね。男や!

 ということで、結論は人それぞれ。

 まあ好きなことをして、ストレスを溜めんことです。
 私、健康にいいからと野菜ばっかりの食事を強制されると、きっとストレスで1週間以内に死ぬと思うので。



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2011年05月09日

受怨

 中山市朗です。

 『古代史探偵団』に続き、今度は皆様お待ちかねの怪談をお届けするための、新企画を進行させる準備にとりかかります。
 怪談は『新・耳・袋』を扶桑社から出した21年前と違って、大いに市民権を得て、また様々な形で、怪談マニアやファンの元に届くようになりました。
 そんななかで、私中山市朗しかできない怪談の表現ができないものかと模索しておりましたが、考えるより実行ということで。
 早ければ6月には。

 ところで本日、私の書斎に映画監督の村上賢司さん、名物映画ライターのギンティ小林さん、清水崇監督や豊島圭介監督が所属する「シャイカー」の後藤社長が、わざわざ東京から来られました。
 イヤ〜な話をしてあげたので、イヤ〜な気持ちでお帰りになりました。
 
 なにやらまた、怪しげなことが動いているようです・・・。



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2011年05月06日

5/4の作劇ゼミ その2

 中山市朗です。

 今度こそ、4日(水)の報告です。

 こだわりを持て。
 それを語れ。
 それが作品のテーマになり、書き続ける原動力となる!

 というわけで、今回から何週かにわたって、そのこだわりを15分、みんなの前で語り、質問を受けたら、ちゃんと返答するだけのリサーチをしておく、ということを課題にしました。返答できなかったら、リベンジのため、再びみんなの前に立ってまた語ってもらいます。

 まず手を挙げたのは、マンガ家志望で、大河内伝次郎に捧げる小説も書いているKくん。もちろん時代劇、それもそれを支えている大部屋俳優の悲哀を語ります。
 大部屋俳優とはつまり、斬られ役ですね。
 『ラストサムライ』に出演した福本清三さんも大部屋俳優でした。

 昭和30年代の頃、石原裕次郎を見て「わあ、こんなカッコいい人、日本にいるんだ」と映画スターに憧れたある若者。知り合いのツテで映画の撮影所を紹介されます。無理して買った一張羅のスーツを着て、裕次郎になるぞとイキってみたものの、連れてこられたのが東京ではなく、京都、太秦の撮影所。
「お前が新人か。これを着てさっそく出ろ」
 それがマゲと着物。
 その日のうちに斬られ役デビュー。そして始まるメシが食えない大部屋役者人生。
 ならば目立たねば、と斬られたときにカメラを見る。なかなか倒れない、見栄を切る・・・。
「あのうっとうしいヤツ、誰や!」
 と監督に怒鳴られる。
 でも怒鳴られて、存在感をアピールできればこっちのもの。
 で、監督に使ってもらうための飲み会でアピール、それで気に入られてスターになった人もいる。けど、やっぱりスターは、入ってきたときから違う・・・。

 なんて話を15分。いや、楽しかったです。
 Kくんは実際太秦に取材に行っていて、監督や殺陣師、大部屋の人たちから生の声を聞いているんです。だから本で読んだ知識とは違って、説得力があります。なんか話ている態度も余裕というか、自信が垣間見えます。

 質問が来ます。
 
 海外にも大ってあるの?
 スタントマンとはどう違う?
 月収いくら?

 さて、次はSFのT野くん。

 おもむろに雑誌『ムー』を取り出します。
「これは2009年2月号です。ここに“金星に巨大人工物を発見! 異星人の基地か、それとも都市遺跡か?”という記事とその写真が載っています。これは本当に人工物なのかを検証します」と、手元に配布資料が。
 雑誌に載っている金星の写真はちょっと着色してあったりするので、T野くんがまったく同じ写真をNASAのホームページから探してきて、コピーしたものです。

 『ムー』によれば、金星地表面に道路と思われる白い線が何本も・・・。
 T野くんはまず、この写真は、いつ、どういう状態で撮られたものなのか、そして金星の地表面はどういう特色があって、それは何が原因なのかを、丁寧に解説していき、つまりこの白い線はしたの地殻変動のしわ、ひび割れであり、それがどういう過程を経て、こういう地表になったのかを分析します。ではなぜそれが白く見えるのか?
 そこもちゃんと説明し、実は目視ではこうならないと結論。
 ただし、これは一枚の写真しかないので、ホントのところは行ってみないとわからないという一言もありました。また、では人工物とは何を指すのかの考察も。

 さすがSFのT野くん。面白い題材を面白く切ってくれました。

 では質問。
 火星の人面岩はなに?
 金星の写真はレンズで撮られているの?
 他の金星写真と比較はされているの?
 なんのために惑星探査船は飛ばされているの?

 ちゃんとT野くんは答えてくれました。

 続いて落語作家のK師匠。

 ちょっと授業の意図を取り違えまして、おもしろい人間について語ります、と言います。おもしろ人間エピソードに興味をもったキッカケは、ラジオで聞いた元阪神タイガース、マイク仲田投手の話だったと言います。

 ランナー二塁でキャッチャーから牽制のサイン。すると仲田、振り向きざまに投げたボールがそのままバックスクリーンへ。センターを守っていた北村「おおーっ」と声を出したと言います。イチローでもそれは無理。
 あるとき、試合中、甲子園球場のラッキーゾーン(昔ありましたなあ)のブルペンでキャッチボールを始めた。別に出番というわけではなく、暇だったので。そしたら近くの外野席から心無いヤジが。怒った仲田投手、グラブを客に投げつけて、殴りかかった。そしたら連絡が来て「リリーフや」。死ぬほど謝って、グラブを返してもらった、とか。

 で、これはラジオの話なので、それからK師匠は周りのおもしろエピソードを観察して収集するようになったといいます。
 色々出たので紹介しきれませんが、例えばこんな話。

 ある集団面接。
 Tくんが最初に色々質問されて、答えた。すると後のメンバー全員がTくんとまったく同じ答えをした。それが模範解答だと思ったらしい。
 そしたら、落ちたのはTくんだけだった。

「オレ、2年前からゲリやねん」
「オレもや」

 Aくん。バイト先のE子さんが好きになった。ところがE子さんはTくんと六甲山にドライブに行っちゃった。さて、TくんとE子さん、夜景を見た帰りの道、検問が。なんだろと思っていると警官が来て「Tだね」「はい、そうですが?」「E子さんが誘拐されたという連絡があった」

 まあ落語やコントを書いているK師匠だけあって、その語り口がいい。

 ということで、今回は3人で時間が切れましたが、全員に語ってもらいます。
 みんな質問、イジワルな質問でもいいですから、用意しといてね。



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2011年05月05日

5/4の作劇ゼミ その1

 中山市朗です。
 
 CM動画を配信したからでしょうか、私の新作の電子書籍『モーツァルトの血痕』の問い合わせが、ちょくちょく来るようになりました。
 動画にあるように5月中には、発売する予定です。
 ただ、アップル社の審査を経て配信するわけですが、その発売日を教えてくれませんので、何日発売、とは言えないわけです。
 そして、とりあえずiPad、iPhoneでの配信となります。
 私としては、iPadで読んで、見て、聴いてもらえるのが、理想、という企画になっております。実験的作品です。

 さて、4日(水)の作劇ゼミの報告です。
 
 作家になりたいけど、なれない、という若者をずっと見てきたわけですが、なれない原因は大まかに2つあるように思うんです。

 ひとつは書かない。これ、どうしようもないです。作家という肩書きに憧れているだけ。これは論外。

 ひとつは書いているんだけど、世に出ない。
 これは書いている内容に問題がある。でもまあ、書いていればアドバイスも受けられるし、チャンスもありますけど。

 で、書かないことの原因と、内容の問題、というのはおそらく、テーマと切り口の問題かなあ、と思うわけです。
 テーマ、これはもう世の中にこれを訴えたいとか、共感してもらいたいとか、使命感とか、これってステキやん、というような心の衝動からくるわけです。それがない状態で書くと、その作品はどこかで見たような、新鮮味のない、ありきたりのもの、になってしまいます。つまり好きな作家のコピーをやってしまっていたり、今まで読んできたものの物まねをしてしまったりしているわけですね。またそれしか方法がない。

 テーマのない作品は、力がない、新鮮味もない、というわけです。

 ではテーマがあります。「愛と友情です」と言う人がいたとします。
 そんな作品、山ほどありますわ。
 でも「愛と友情」なんて普遍的なもので、要はそれをどう料理し、味付けするのか、これを考えねばなりません。
 これを、切り口、というわけです。

 言わば、テーマは思い、伝えたい衝動、切り口は技術、ということになります。
 と、テーマという材料がなければ、料理の仕様がない、ということです。
 食材がなかったら、いかに名シェフでも何も作れませんわな。
 で、作家になりたいという若者は、どうもこの、料理をするための技術、テクニックばかりを一生懸命学ぼうとしているわけなんですが、じゃあそのキミの作りたい料理は、中華なのか、イタリア料理なのか、フランス料理なのか、和食なのか、あるいは魚料理なのか肉料理なのか、どうしたいの、となると「さあ?」ということになるわけです。
 食材がないところで、料理の腕を磨くったって、磨きようもないし、面白くなくなりますよね。つまり書いても先が見えない、そのうち磨くのをやめる、というパターンがここにあります。

 ところがテーマがあれば、そのテーマにふさわしい、合った料理の仕方がわかってきます。うまそうな肉の塊や新鮮な野菜が目の前にあると、自然「よおし」と腕まくりして、楽しく料理ができますよねえ、この食材がテーマなわけです。
 そしたらその料理法を学んで、磨けばいいわけです。
 すると、何かが見えてきます。
 書くのが面白くなる、というわけですね。

 ではそのテーマをどう探すか。
 ちょつとこれは難しいですね。
 これは、よく読んで、観て、遊んで、ということなのでしょうか?
 ゲームはダメです。人と会うことです。篭っていてはあきません。精神が病んできます。いっぱいそんなの見てきました。
 以前このブログで書いた、アグレッシブに、というのはそういうことでもあります。
 だいたい人に興味がないとか、会うのが面倒くさいなんていう人が、他人をアッと言わせるものや、感動作が書けるハズがない。
 小説もマンガも映画もドラマも舞台も、要は人を描くわけですから。

 テーマがない、けど何かを制作してみたいという焦燥感、わかります。
 私も20代の映像作家を目指していた頃、そうでした。
 でも、結局、映画が好きでやたら観てた。落語が好きでテープやレコードでコレクションしてた、というこだわりが、ある人物と会うことによって、「怪談」創作に非常に役立ったというのが私の原点でした。つまり、映像が想像しやすく語る(少なくともそう意識はしていましたが?)という現代怪談の要素は、まさに映画と落語にあった、というわけです。
 それとサントラ盤のコレクターでもあったので、ネットの無い時代、神戸や京都、果ては東京の中古レコード店、輸入レコード店を、一枚の珍品、稀盤を探し当てるために歩いたあの執念。これが、この一話という怪談を蒐集する取材力に役立ちました。

 つまり、
 好きなことにこだわりを持て。
 そのことについて、一晩でも二晩でも語れるようになれ。
 二晩語れる精通さと、熱さと、弁があれば、
 それ、作品になります。それもかなり熱い作品に。
 それが読者に伝わって、商品になる。そういうものだと思います。

 常々私が「夢を語れ」と言っているのは、そこにも繋がるわけなんですよ。
 でもそんな熱いヤツ、あんまりいないんですよね。ウチの塾にも。

 ということで、昨日の作劇ゼミでは・・・。
 あれれ、前口上が長すぎた。

 報告はまた明日。



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2011年05月04日

赤1000地帯

 中山市朗です。

 先日、『幽』の取材で、落語家の笑福亭純瓶さんとご一緒し、西宮市近辺を散策しました。もちろん怪談を追って、です。
 純瓶さんからは、どんどん奇妙な話、特に大阪の芸人たちの体験談や、あの噺家、実は霊感ありますよ、なんて話が出ます。
 ということで、6月25日(日)の「Dark Night Vol.4」のゲストに、純瓶さんに来ていただくよう要請し、快諾をいただきました。
 オールナイトで怪談やります。
 もうあと一人、ゲストをと考えていますが未定です。

 さて、話は変わります。
 私の子供の頃って、もう大阪万博で湧きかえって、21世紀ってなんだか平和で、科学が人類に進歩をもたらせて、便利な世の中になってんのやろうな、とか思っていましたが・・・。
 なんやろね、これ。
 ビンラディンが米特別捜査隊によって発見され、狙撃されたらしいですが、きっとビンラディンの信望者たちによって、神になっちゃったと思います。
 テロは終わらない。
 イスラムもキリストも、もとは一つ。アブラハムから出ているんですけどねえ。

 でも私が危惧するのは、やっぱり原発事故。
 「安全」とか「反対するなら電気を使わないのか」ということで、なし崩しになっていたのですが、なんか、政府が言っているから、学者が言っているから、で、信用しちゃあ、あかん、てことですな。
 あんなん、一番信用できん、と思うことです。
 その代わり、自分で情報収集して、見極めるリテラシー能力が必要です。
 何度も言います。
 学校教育、変えんとあかん。
「あんな政治家を選んだ国民も悪い」
 なんて言う人もいますが、だってあんなんばっかりですやん。
 それに官僚は、国民が選べませんし。

 マイケル・クライトンの『ジュラシック・パーク』にこんな一文があります。

「以来、誰も彼もが金持ちになりたがりだしたように見える(略)。その昔、純粋な科学者はビジネスを見下す傾向にあった。金儲けなど知的な興味をかきたてるものではなく、商売人にまかせておけばいいと考えていた。産業のための研究など、たとえベル研究所やIBMのような有名どころの仕事であっても、所詮は大学で研究の認められない者のすることだと見なしていた。したがって、研究肌の科学者というものは、企業の御用学者の研究はもとより、産業全般に対し、基本的に批判的であったといえる。そして、この伝統的な反感があったからこそ、技術的問題にかかわる問題が持ち上がったとき、営利にとらわれない大学の科学者は、高次の次元で問題を議論することができたのである。
 だが、もはやそんな美風はない。ヒモつきでない分子生物学者、ヒモつきでない研究機関などは皆無に等しい。時代は変わった。遺伝子の研究は、以前にも増して猛烈な勢いで進められている。それも、秘密裏に、性急に、ひたすら営利のために」

 この後、遺伝子操作で作られた恐竜たちが、想定外の動きをもってして、人間を恐怖のどん底に陥れます。映画も恐がったですねえ。
 今から20年前に書かれたものです、これ。
 日本の学者はそんなことない、と思っていたんですけど。

 福井県に郷里のある塾生の寺井くんが、地元の原発、大丈夫かと調べたら、高速増殖炉(もんじゅ)がえらいことになっていて、
「もし50年以内に福井県に直下型地震がきたら、日本は吹っ飛びます」
 なんて言うので、ほんまかいなと調べたら、もう、もんじゅと検索しただけで出てきます。
 重さ3.3トンの炉心用装置が、原子炉容器内に落下して、引き抜けない、ことになっているようで。詳しいことは調べてみてください。
 で、もし今回のような地震が福井県にあったら、爆発して、それは長崎原爆の1000倍の・・・。日本列島が崩壊して、おそらく朝鮮半島もなくなる・・・。
 しかも「もんじゅ」は活断層の真上に建てられている、とか。
 これが起こったのは去年の秋らしいのですが、福井新聞は報道したと言いますが、そんなん知らんかった。

 というか、原発を一旦作ってしまったら、もう半永久的に元に戻れないわけですから、絶対に数十年経たないうちに、次なる大きな問題が出るはずです。
 なんでこんなことになってしまったんやろうねえ。
 子供、孫の代、日本なくなったら、ほんまどうすんねん。

 で、冷静になって考えましょうよ。
 日本は世界唯一の原爆被爆国ですよ。それが今、自ら被爆しとる。
 人間で言うたら、学習能力が足らん、いう状況ですかな。
 
 私は今、日本の古代史を調べているわけですが、昔の人たちは賢かったように思います。都はあまり地震のないところに造られ、断層の存在も知っていました。
 神と話したんですね、昔の人は。
 その神とは、森羅万象の源となるエネルギーとか、法則とかだったんです。そこから法則が崩れれば、どうなるかも知っていた。
 自然を、神を、畏怖するとはこのことです。
 そんなところが面白いんです。古代史は。
 人間と自然の協調が、ちゃんと営まれていたんです。
 それは神道という形で、今もちゃんと伝わっています。
 日本は古代よりよく考えられた計画と方策と戦略でもって、国家を造り、維持し、運営し、独自の文化を伝えてきました。だって日本は、火山が多く、地震もあり、津波もくる、そういう国ですもん。
 ホントにそう思います。
 しかしながら、おそらくその脈は明治で終わっています。
 神に変わって、人間が勝手に作り出した科学とか、人間のための合理主義みたいなものが優先したとき、日本という国は危機を迎えた、というふうに思います。
 
 と、ハイビジョンで溝口健二監督『新・平家物語』の美しい映像を見ながら、そんなことを書いています。うーん。
 私は、どないしたらええんやろ。
 あっ、地震速報の字幕が入った!

 あれ、なんとかならん?


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kaidanyawa at 19:34|PermalinkComments(5)
プロフィール
中山市朗(なかやまいちろう)

作家、怪異蒐集家、オカルト研究家。
兵庫県生まれ、大阪市在住。


著書に、
<怪 談>




<オカルト・古代史>




などがある。
古代史、聖徳太子の調査から、オカルト研究家としても活動している。






作家の育成機関「中山市朗・作劇塾」を主宰。



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