2012年08月

2012年08月30日

8/23の小説技法

 中山市朗です。

 先日『Dark Night Vol.7』の告知をいたしましたが、予約受付を開始しました。
 オフィス・イチロウの告知事項をクリックしますと、中山市朗 Dark Nightのバナーがあります。このバナーをクリックしてください。
 ご予約方法など詳細が記されています。
 150名で予約は終了となります。
 楽し怖い不思議なオールナイトをどうぞ。

 さて、ちょいと遅れてしまいましたが、先週の塾の小説技法の報告です。
 見学者が一人。
 でも受講生はあいかわらず少ない。
 まあそれだけ、濃い合評ができるので、提出している塾生は得するわけですが。

 E子さんの『役小角』という小説。
 前回、導入部で読者をどう作品の中へ誘うかを指摘しましたが、そこを彼女なりにいろいろ考えて書いてきました。だいぶよくなりましたが、まだまだ描写が必要です。
 難波宮造営のシーンから始まっているのですが、それがどのような規模のものなのか、そこで働く男たちは、どんな格好をして、具体的にどのような作業をしているのか。そういう描写がまだまだ曖昧です。そしてそれを語っているのも誰なのかという視点も必要です。
 それと、難波宮とは何なのか、その歴史や背景にあるものの説明がほしいという意見も出ました。
 古代の日本。ほとんどの人がイメージしたことのない難波宮。
 そのイメージを湧かせる要素がまだまだ必要だということです。
 難しい?
 でもそこを克服していくのが歴史小説です。

 T野くんは、あるSF小説をよく出している出版社に送るために、新作に取りかかりました。
 彼は今まで宇宙モノのSFを書いていたのですが、今回はその世界観も作風もがらりと変わっています。彼は言います。
「なぜ宇宙モノではないのかというと、宇宙モノの傑作は今もいっぱいあります。だからあえて違う方法でいくべきだと思ったことと、昨今の出版業界の売上を見ると、小説分野ではミステリーが圧倒的に読まれています。で、ミステリー要素を入れたSFを、と考えたのですが、それはすでにアシモフという巨匠がやっています。だから同じことはできない。なので日本的な世界観で勝負しようと。そしてミステリーといえば横溝正史。なのでSFに『八つ墓村』のような日本独特のおどろおどろしさを入れてみようと、今回の作品に着手しました」

 こういうことはプロの作家になるにはいい心がけです。どうしても作家になりたいという人は単純に書きたいものを書いてしまうわけですが、それも憧れの作家の世界観なり作風で書いちゃうので、そんな既にあるような作品など出版社もいらんわけです。
 同じ書きたいものでもいろいろ調査して、その隙間を狙う。それだけでもまず読んでくれる編集さんの印象はずいぶん違うと思います。

 さて、T野くんの作品を読んでみますと、狙いは成功しています。ユニークな世界観です。のっけに人が謎の死を遂げるシーンが設定されていますが、その方法はミステリー小説です。そして山間部の片田舎の道を行く軽自動車と大型トレーラー。やがて溝に脱輪したタクシーを見つけ、よし、と軽自動車に乗っていた若い男が作業服を引っ掛けて、トレーラーを見やる。「あれの実験をしてみよう・・・」。
「規則違反では?」と制止する周囲の意見を納得させ、彼が作動させ、大型トレーラーから出ていたものは?
 いいですねえ、こういう流れ。失われつつある日本の原風景にSFかアニメでしか見られないあるキャラクターが出現する。その後もいろいろな現実味あふれる人物たちを登場させながら、T野くんの狙っている世界観が、まるで映画を見ているようにイメージされます。
 私の好きな作品になりそうです。
 次回、この続きを読むのが楽しみになってきました。

 いつもは陰惨なストーカーの話を書いてくるK田さんの今回の作品は、ちょっと変わっています。これはミステリー? でも内容のほとんどはOLたちのガールズトーク。それがギャグを言っているようだけど笑いを誘わない。で、最後に幽霊が出てくる。とすると、これは怪談かホラー?
 どうやら本人はいろいろ実験を試みているようですが、読み手としたら、何を期待して読めばいいのかわかりません。ギャグと幽霊という相反するものを作品の中で表現してみたい、ということもあるようですが、三谷幸喜がやってるしなあ。
 いろいろ作品上で実験してみることは悪いことではありませんし、彼女は文章能力は高いので、むしろ習作としてはいろいろ挑戦してみるべきだとは思いますが、もう少し読み手のことも考えるべきでしょうね。



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2012年08月23日

ZA牧場の決斗

 中山市朗です。

 中山のマンション前。
 報道陣が中山を取り囲んでいる。

中山「なんですか、皆さん」
記者「中山さん、今年で30周年です。もう封印していることがあったら、語ってもいいでしょう」
中山「なんのことですか?」
記者「とぼける気ですか。菊池秀行さんがあれほど恐ろしい話を聞いたことがない、と言った、あのミステリーですよ」
中山「ああ、あのことですか。そういえば、30年前のちょうど今頃でした。大学最後の夏休みを、卒業制作の映画ロケで過ごしていたんですよ。ロケ地は私の故郷、兵庫県A郡、今はA市になっていますが・・・。しかし、ああ、あんな奇妙なものが故郷近くにあったなんて」
記者「それが、あの、牧場・・・?」
中山「そう、山の上に牧場があったんです。廃墟の牧場です。がらーんと無機質な、なんて言うんでしょう。それがね、割りと新しい建物、牛舎の鉄柵もサビひとつなくて。でもね、操業した痕跡がまったくない。でも、ところどころ、妙な建物の破損があるんです。あれは、通常の壊れ方ではない。しかも、2階建ての宿舎らしき建物があるんですが、この建物には階段というものがない。つまり通常の方法では2階はあるんですが、2階へ上がれない。上がりましたよ、僕たちは。無理やり、建物の背後にある崖を使って裏窓から侵入したんです。中? それは、おぞましいものでした。人形が・・・、お札が・・・、たすけての文字が・・・。今思い出しても・・・うっ、吐き気が。すみません、もうこれくらいにしてくれませんか」
 駆け出す中山。
記者「あっ、逃げるんですか。待ってください」
 追う記者たち。中山は右足にプレートが入ったままなので極めて鈍足。すぐ追いつかれる。
記者「さあ、言ってください。正直に」
中山「それについては・・・。仕方ありません。10月6日、道頓堀ZAZAで語りましょう」
記者「宣伝かよ!」

 というわけで、あれについて詳しく語ります。

 山の牧場(みち)との遭遇30周年記念!

 北野誠さんをゲストに迎えての「Dark Night Vol.7」。
 日取りが決定しました。

 10月6日(土)
 深夜0時・開始 早朝5時頃・終演

 場所は、大阪市中央区道頓堀 中座くいだおれビルB1階。
 道頓堀ZAZA House
 ※いつものZAZAの隣、少し大きめのホールです。

 入場料 予約3500円 当日4000円

 山の牧場のみならず、幽霊マンション、『幽』の「やじきた」の恐怖エピソード、四国のなまなりさん、などなど。

 時間の限り、語りつくします。
 誠氏とこんなに語りつくすのは、今回が初であります!
 そして、最後かも??


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2012年08月17日

8/16の作劇ゼミ

 中山市朗です。

 先日のブログで大滝エージェンシーとの二重行政云々と書きましたが、大滝エージェンシーとの関係は良好のまま継続しており、作劇塾などの運営は大滝エージェンシーとなっております。決して別れたとか大滝から脱退したわけではありません。
 両者はビジネスパートナーとしての関係を構築しております。
 誤解があったようなら、訂正いたします。
 今まで通り、大滝エージェンシーとオフィスイチロウをよろしくお願い申し上げます。

 さて、16日の作劇ゼミの報告です。

 クリエイターになりたい、と作劇塾を選んで通ってくれている塾生たち。
 ぜひ、夢を達成してもらいたいと心から思っています。
 でも私が思っても、塾生たちが確かな目的と意識と行動を伴わなければ、これはなんともなりません。
 ただ、この世界にはしがらみがない。
 たとえば、学歴なんて関係ありません。高い学歴だの偏差値だの試験がどうだの、そんなことは関係ない世界です。
 だいたい偏差値とか大学の合否によるレベルがどうだとかは、世間がつけたランク。
 そういうランクとか、ブランドに振り回されているようでは、この世界はダメなんですね。つまり、履歴書が必要のない世界。原稿の持ち込みに履歴書は必要ありません。
 新人賞の投稿などには履歴書同封ということもあるかもしれませんが、要は作品が面白いか面白くないかが重要なわけで、「この子、早稲田の文学部出てるから採用」なんてことはありません。年齢も男女も出身地も関係ありません。
 ま、そこが面白いわけですね。

 となると、求められるのは個性ということになります。その人なりの生き方、考え方、価値観がいわばクリエイターとしての履歴書です。
 
 1993年に映画監督の中村幻児さんが、映像クリエイターの育成組織として「映像塾」を創設され、その育成理念のようなものが、『映像クリエイターの仕事』という本となってシネマハウスより発売されています。この中にクリエイターが作り出す価値観は、どう生み出すのか、ということについてこう書かれています。

「常識は0。

 常識というのは一般の人たちの価値観ですね。学歴とかブランドとかランク付けとか、そういうところに価値観を見出しています。でもこの価値観をもっている限り、クリエイターとしての価値観は0。つまり無きに等しい、というわけです。
 では、何がクリエイターの価値観として必要なのか。

 超常識は+。

 つまり常識を超えたところにクリエイターとしての価値があるということなのです。
 常識とは、いわば平均的な価値とでもいうのでしょうか。我々の読者、観客、視聴者はこの常識をもった普通の人たちです。でも、この人たちは貪欲です。いろんな刺激や感動を求めています。こういう人たちを満足させるには、相応なテクニックや仕掛けが必要で、作り手側が普通のレベルでは、観客や読者の感情を揺さぶることはできない・・・」

 これはスポーツや職人、芸術などの世界でも言えることでしょう。
 
 ちなみに「想像力の乏しい人は非常識であり、ただの無能の人」だとも書かれています。実をいうと、この想像力の乏しい人、ものすごく多いように思います。
 第一、アイデアというものが出ない。
「これ、やっといて」というと、そこはやるんですけど、「ここはこうしてみました」とか「こういう風に仕掛けたら面白いと思います」なんて言葉が出ない。
 言っちゃなんですけど、クリエイターは自分で仕掛けて、自分で作品づくりをしなきゃならない。指示待ちなんてありません。

 仕掛け、これがこの先、特に重要な要素になるような気がします。
 作品づくりは、まあクリエイターを目指しているわけですから、いつかはできるでしょう。でも今は本も売れない、映像作品も低予算、ネットの中のものはタダ、みたいなことになっています。そういう中から、これからのクリエイターはビジネスの芽を見つけて、実を実らすことをやらなきゃならない。戦略的な仕掛けができるのかできないのか、これはこの世界で今後、生きていけるのか挫折するのかを決めかねない、大きな要素であると思います。
 作品は売れなきゃ食ってはいけないし、次の依頼もきません。
 もちろんそんなとき、指示を待っていてもきません。自分で考えて自分で仕掛けて、自分で動くしかない。そんなとき、その思考や仕掛けが常識の範囲内であるならば、誰もときめかないし、注目もしてくれません。

 もうぶっ飛んだ仕掛けとか、地道だけど何か起こりそうなモノだとか、意外な組み合わせとか、切り口とか、そういうものに読者や視聴者は価値を見出して、「面白そうだ」とお金を払って、読んだり見たりしてくれるのです。
 そういう世界で、我々クリエイターは生きていくわけです。

 では、その新しい価値観は、どのようにして作り、どのような心がけから生まれるのでしょうか?
 それは9月からの作劇ゼミで、みっちりやってみたいと思います。





 



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2012年08月16日

北野国から2012 行くな

 中山市朗です。

 北野誠さんの『おまえら行くな。2012特別編』にゲスト出演してきました。
 場所は、尼崎市のニューアルカイック・ホテルの大広間。
 ホテルで怪談というのは、ちょっと珍しいのではないでしょうか?
 こういうことをやると、後でお客さんにトラブルがあったりケガをしたりすると「怪談やってたからや」と忌み嫌われるので、あんまりホテルのようなところはこういう催しをしないと聞いています。

 面白いなあ、と思うのは、「怪談とか、オカルトとか、くだらん。あんなもん信用するのはバカだ」なんて言ってるのは、私より年上のおじさんたち。
 そんな人たちが、いざとなると、そういうことをなぜか怖がるんですね。

 今の若い世代はどうなんでしょう。
 そういうことを気にするかなあ。
 イギリスのロンドンなんて、幽霊が居る屋敷とかホテルは歴史があるということで、かえってステイタスになって、心霊ツアーなんてあるんですけどもね。
 日本もそろそろ怪談をエンターテイメントとして認めて、霊や妖怪の出る旅館やホテル、歴史的遺物なんて堂々と公開したり、泊まったりできるようになってもいいのではないかと思うのです。隠してますもんね。
 我々が霊スポットに潜入しようとすると大抵、不法侵入に近いか、取材目的を隠しての取材をせざるを得ないんです。なんかやましいことしているみたいで・・・?
 一方、大阪城なんて最近は、幽霊や化け物がいた、ということをウリにして、イベントなんかも成功しているようですしね。
 だからといって、大阪城が恐れられるとか、価値が下がったなんてないですもん。

 それはさておき、北野さんとの掛け合いはいつも非常に楽しく、やりやすいです。
 ほとんど打ち合わせなんてしていないのですが、そのほうがお互い舞台の上で新鮮なんです。
 この日も楽しくステージを努めさせていただきました。
 オフィス・イチロウのスタッフによると、ちょっとした怪異が起こっていたようですが(オフィス・イチロウ・魔怪見聞録参照)、この声を聞いたというお客さんも確かにいました。
 隣?
 おそらくそこも大広間で、もちろん空き部屋だったはずですけど。

 さて、秋には私が北野誠さんを招いて『Dark Night Vol.7』を企画中です。詳しいことは20日前後にお知らせできるかと思います。
 また次回からの『Dark Night』は、オフィス・イチロウの主催となります。
 諸事情により私のマネージメントが大滝エージェンシーとの二重行政状態となっており、いろいろご迷惑をおかけしていましたが、今後はオフィス・イチロウへお問い合わせください。
 怪しげなもの全般に関する調査、語り、執筆、企画・製作を承ります。

 オフィス・イチロウのHPはこちら




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2012年08月11日

8/9の小説技法

 中山市朗です。

 8月9日(木)の小説技法の報告です。

 出席者が非常に少ないです。
 まず今まで欠席の無かったYくんが東京へ自身の営業のため欠席。
 N子嬢は大学の行事とかで欠席。
 その他、課題作品は出ているのに欠席している人もいたので、夏風邪、お盆休み、レジャーなどいろいろあるのでしょう。
 まあ、遊ぶときは遊ぶ、ということを奨励しておりますので、体の管理にはじゅうぶん気をつけながら楽しんでください。
 おみやげはなんだろな〜。

 で、合評の出席者は5人。
 課題作品は2作品。

 E子さんの『役小角』を主人公とした小説。
 導入部をどうするかで悩んでいます。最初の頃は主人公の誕生から始まった作品でしたが、役小角の人生のどこを切り取るのか、この小説の世界観を導入部から引き出す、最初から読者を惹きつける、という要素から、今回は難波宮造営のシーンから始まったのはいいのですが、それが単なる描写で終わってしまい、その後の展開も淡白すぎます。
「何故、父が死なねばならなかったのだ」
 という主人公のセリフがあるのですが、その前に読者に、この時代の残酷性、非人間性、階級制度の矛盾などを考えさせ、この人が死ぬのはなんだか理不尽でかわいそうだなあ、と思わせるだけのドラマがないと、セリフの押し売りになってしまいます。
 それでは読者はついてこない。
 E子さんは歴史、史劇を題材にした過去の映画を見ることをオススメします。

 Iさんは『山田隆盛探偵事務所』という短編を書いてきました。
 この題名を見ると、探偵を主人公にした推理ものか、少なくともそのパロディだと思いますよね。でも読むとまったく違う。で、コメディのようで、そうでもない。
 主人公のある心情を描きたかったとIさんは言いますが、心情をストレートに書いたのでは作品になりません。その心情を描写するために事件を起こし、キャラクターを登場させ、話を展開させ、見せ場に持っていきます。それが、まずは小説です。
 それにこの題名は代えたほうがいい。

 読者は題名や作家の名前でだいたいの期待度をもちます。そしてその期待度、つまり読みたいものと違うと思ったら、容赦ない酷評が浴びせられます。作者の意図がなんであれ、読者とはそういうものです。
 だから常に、読者が何を求めているのかを常に分析しておくのも、プロの作家になるための大事なことです。媚びる必要はありませんが、少なくとも編集でそこを指摘され、修正が求められましょう。そのとき、どれだけのロジックでまずは編集を説き伏せることができるのか。そのロジックを身につけるためにも分析は必要です。
 プロとアマの最大の違いは、ここだと私は思います。

 ということで、合評作はこの2本。
 30分で終わってもた。
 しゃあない、飲み行こ!




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2012年08月09日

火の牛

 中山市朗です。

 昨日の大阪芸術学舎での講義のテーマは「くだんの正体」について。
 
 扶桑社より出版した『新・耳・袋』に「くだん」という牛頭人身の化け物について書きましたが、あれは兵庫県の西宮市周辺のみに伝わる独自の怪談なんです。
「くだん」が出現したという話やうわさは西日本各地にあるようですが、連なった怪談としてあるのは、この西宮市周辺だけ。
 『新・耳・袋』で語られるくだんも西宮市が舞台、小松左京さんの小説「くだんのはは」は、その近く太平洋戦争末期の芦屋市が舞台でした。

 西宮市で語られる「くだん」は、西宮市の北部にある甲山という神体山とその麓にある神呪寺、鷲林寺という古寺の存在とどうも重なってきます。そこになんと、西宮市最恐の霊スポット、県道のど真ん中に鎮座する夫婦岩にも関連してきます!

 それにくだんは女の子の体、赤い着物、予言をするという巫女的な要素をもち、牛は草食のはずなのに、くだんは血とか関係してくる。
 おそらくこれは、神呪寺、鷲林寺で原初に行なわれた神事と関係するのではないか。
 つまり、牛を生贄にするスサノオ(牛頭天王)の神事ではないのか。
 その記憶が、地元の人たちによってくだんという半人半牛の化け物となって、言い伝えられた・・・。

 あくまで私の憶測です。
 でも、根拠のないことではない。
 神呪寺も鷲林寺も、その創建には真井御前(まないごぜん)と空海が関わっていて、空海の母方は物部氏、真井御前の出身は京都府北部の丹後半島にある籠神社。その奥の院は真名井神社と言い、伊勢外宮の神、豊受大神が天下だった古社の名からその名をとったと言います。つまり、甲山神呪寺の創建者、真井御前とは籠神社の神官・海部直(あまべのあたい)の祝部(はふりべ)の巫女であったわけです。
 ちなみに海部氏系図(国宝!)によれば、物部は海部から出るのです。
 その海部氏は現在82代目の祝部が籠神社におられますが、その祖神は、彦火明命という神で、太陽神を崇める海洋民族なのです。

 この彦火明命には、本式の名前がありまして、天照国照彦火明櫛玉饒早日命。
 この長たらしい名前の神様は、実は京都太秦の蚕ノ社、そうあの不思議な三本鳥居のある神社の祭神なのです。今は隠されて別の神様の名前になっていますけど。

 この蚕ノ社と近くにあります広隆寺との合同祭で、牛祭りという、これは京都三大奇祭に数えられる妙な祭りが近年まで行なわれていました。
 夜の祭りで、東門からやってきた牛に乗った摩多羅神を火が燃え盛る前に組まれた祭壇に上がって、摩多羅神を勧請する祭文を読む。
 私、これはもともと牛を火の中に追いやって生贄にしたのではないかと『捜聖記』に書きましたが、そうなると、甲山の祭事も牛を生贄にした可能性も出てきます。

 また、広隆寺は聖徳太子七寺のひとつとされていますが、聖徳太子が建てた四天王寺境内の鬼門の方向にある牛王尊の祠も、どうやら牛と関係してくる。

 そして畜産の歴史、牛市の歴史を紐解くと、どうやら畜産も牛市も、その最初は四天王寺にあったことが示唆されるんです。その文献もこの日公開!
 あ、これも重要。祝部(はふりべ)の語源は、ほふりべ、つまり屠る、のことです。

 まあ、そのような話を2時間。
 ちょっと難しいし、いろいろな歴史上の人物や神様の名前が出てきましたので、理解してもらえたのかちょっと不安でしたが、講義が終わる頃には的確な質問もあり、終わっても何人かの受講者から感想を言ってもらい、妖怪から民俗学、そして聖徳太子へと行くこの内容には非常に興味をもってもらえたようでした。

 ちなみに、彦火明命(おそらく日子火明=平安期まではその名も無かった)という太陽神を崇めた海洋民族の正体を見極めると、天皇がどこから来たのかの謎も氷解するように思います。住吉三神はこの海部が信仰したオリオン座の三ツ星のことであります。

 でもオリオン座の三ツ星を崇めたということは、航海に必要だったということですから、相当遠くからやってきた海洋民族であることが推察できます。

 遠く?
 それはどこ?



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2012年08月08日

怪談ものの記録

 中山市朗です。

「新耳袋/第十夜」の第八十一話に「へそくり」という話を書きました。
 亡くなったおじいさんが十万円のへそくりがあることを、おばあさんに伝えに出てくる話ですが、なんと前夜に間違ってお向かいの家に出てしまったという、うっかり幽霊の話です。あれは塾生で今は放送作家をやっているかなた師匠のおじいさんの話。本名表記ではOくんですが。
 そのうっかり幽霊さんのお墓の写真が、かなた師匠のブログ(8月6日付)に載っています。
 うっかり幽霊、いるんですよぉ。

 さて、怪談イベントの報告です。
 4日の午後は、八尾市の志紀図書館での怪談会。ここの館長さんが以前私が出演したラジオ番組を聴いていて「こんな怪談あったんか」と興味をおもちになって、それで企画されたそうです。
 定員50人はすぐに埋まり、「やっぱり怪談は人気がありますねえ」とのことでした。
 集まったお客さんは中学生から70代のおばあさんまで、まさに老若男女。
 常連の方もおられましたが、ほとんどの人は怪談ライブは初めてのようです。
 こういうのが難しいんですよね。
 常連や怪談マニアの方なら私が何者かだいたいおわかりなのですが、おそらく、この日のお客さんは私が何者であるかもおそらくご存じない。だから、私の自己紹介とスタンス(霊は見えないしお祓いもできません。怪談は話芸です。霊感は関係ありません。怪異はあまねくみなさんに平等です・・・みたいな)を話しながら、私の怪談の世界に誘導します。司会もいないのでお客さんの空気を見ながらの進行。呪いや祟り系のすさまじい話もしない、ちょっとした日常の崩壊、裂け目に覗く怪談を語ります、と。
 でもまあ、最後は興味ももっていただいて、子供たちは怖がっていました。
 館長さんからは「これは当図書館の年間行事にしたい」と言っていただきました。
 ちなみに私の怪談の前に、市長さんが挨拶されたのは初めてのことでした。

 5日は、大阪城でのラジオ番組の生放送の出演。実はこの番組のディレクターが6月30日の我が書斎で行なった怪談会に参加くださった人なのです。大阪城の歴史をクイズやバラエティで紹介する番組で、怪談コーナーはそのひとつ。最初は怪談コーナーはもっと番組全体にあったそうですが、今回は20分に縮小?
 もっともこの後のライブに配慮があってのことだったのでしょうか?
 3分で大阪城怪談を紹介し、その後12分は松村邦洋さん(お仕事は初めて。腰のえらい低い人でした)、堀口茉純さんと大阪城怪談を歴史にからめてちょっとした講釈。
 16時30分ちょうどに終了。
 若い人たちや子供たちに歴史に興味をもってもらうためのキッカケが怪談であっていいと思います。なぜ大阪城に幽霊、お化けがしばしば現れたのかは、これは歴史とリンクしているわけです。それに大阪市内最恐の霊スポットとされる千日前怪談も、その大阪城と関係してきます。
 ラジオとは別に大阪城怪談の詳細を聞きたい方は、オフィスイチロウHPより、告知事項をクリック。右側にコンテンツのバナー「魔界探偵団」をクリック。6月23日配信「我ら地下鉄探偵団」森之宮駅編をご覧ください。千日怪談は8月25日配信・難波駅編でどうぞ。
 
 楽屋では講談師の旭堂南海さんと怪談についてのお話を。 
「怪談は難しい。昔の話ではお客さんはなかなか怖がってくれません」と南海師匠。
 これは東京の落語家の小朝師匠もおっしゃっていました。
 話芸だけで客をビビらせるのは至難の技。私の怪談は身近な話というところがミソです。
 コラボができればいいですね。
 で、楽屋でいろいろ名刺交換や質問にあったりして、50分にスタッフが待つ駐車場へ。そのまま約30分で守口市のプラネタリウムドーム・ムーブ21へ。
 もう15分前に「中山市朗・怪談ナイト」は開演しております。このままでは「雲谷斎・怪談ナイト」になってしまう。いや、ナイトではない。「怪談トワイライト」、あるいは「黄昏怪談」にしたほうがいいかもしれない?

 そのまま迎えに出ていた大滝社長にお茶も飲ませてもらえず、トイレにも行かせてもらえず、バッグを引っ張られてステージへ。雲谷斎さんしゃべってる最中やから、すぐにも出られん。
 ああ、トイレ行きたい!
 そしていよいよ私も加わり、毎年恒例のプラネタリウム怪談。

 少しでもネタがかぶると、そこを指摘されるお客さんもいるので、今回は全部が初公開怪談としましたが、これも難しいんですよね。そのお客さんにとって、2度、3度目の怪談でも初めてのお客さんもいるし、あえてあの怪談を、とリクエストしてくるお客さんもいらっしゃいます。
 お客さんの層でも変わります。志紀図書館のお客さんの前では、やはりオーソドックスな『新耳袋』に書いたような話を。『Dark Night』ではなるべく濃いマニアックな怪談を。それでもあの人形ネタも「もういいよ」という人もいれば、「もっと聞きたい」という人もいらっしゃいます。

 この悩みは、雲谷斎さんも、ファンキー中村さんもおっしゃっていました。
 しかし各ライブでは必ず初公開怪談は披露していますので、いろいろなお客さんがいらっしゃると思って楽しんでいただきたいと思います。
 最近、塾生がほとんど客席にいないのが気になります。

 さて、今日は大阪芸術学舎での講座。
「くだん」の正体について語ります。


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2012年08月02日

租税じかけのりんご

 中山市朗です。

 8月1日より新潮文庫より『怪談〜黄泉からの招待状』が出ました。
 去年の『小説新潮〜Kwaidan』に掲載された7人の作家による7本の怪談オムニバスが文庫化されたものです。
 私が書いた『屍女』を今回、加筆、修正いたしまして『怪異蒐集談・屍女』として掲載してあります。珍しく(?)私の体験談です。
 私のように霊を見ない人も、霊気を感じ、恐ろしいことは体験できるのです。

 こちらからもご購入できます。

 ところで「まぐまぐ!メルマガ」で配信しております、私が怪談を語る動画「幽怪案内」も100話を超えました。そこで近く、iPhone、iPad、iPod、Podcastで配信されることになりました。
 価格も安価となり、2話で1ドル換算となりました。
 えっ、1ドル?
 そう、apple社使用のインフラは、ドルでしか換算できず、1ドル以下では売れないのだそうです。で、そのなかからappleに使用料、米国に課税、向こうに合わせた規制といやほんま、こういうのを見ると、日本のメーカーは何やってたんやとボヤきたくなります。googleなどもそうですが、日本は大きなビジネスチャンスを米国に譲ってしまっています。GREE、モバゲーは日本発。がんばってもらいたいですな。

 それはさておき、現在も怪談動画を次々と収録しています。
 原則的に『新耳袋』の話は封印し(「山の牧場」などの例外はあります)、未発表怪談も多数収録しております。今月中には河童が出たという川へロケに行き、そこでまさにその河童の話をしようと思っております。
 怪談好きの皆々様方、「幽怪案内」でたっぷり怪談をお楽しみくださいませ〜。

 なお、「幽怪案内」にはファンキー中村さんとの怪談対談、特典映像には北野誠さんも登場の予定です。無料動画もあります。心霊スポット案内もあります。

 配信はもう数日お待ちください。
 配信後は、オフィスイチロウのツイッター、魔怪見聞録、このブログ、の順でお知らせいたします。



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プロフィール
中山市朗 【なかやまいちろう】


作家、怪異蒐集家

兵庫県生まれ。


主な著書に「新耳袋」など。

作家、漫画家の育成機関「作劇塾」を主宰。


作劇塾

オフィスイチロウ


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