2006年09月27日

文字についての考察・その2

 中山市朗です。

 日本の文字についての考察の続きです。
 さてさて、ハーンは、こんなことも随筆に書いています。

 おそらく諸君は、この奇妙な文字を、これを英字に置きかえてみたら、さてどんなものになるだろうと、ちょっと想像が湧くだろう。しかし、諸君に多少でも美的情操の持ち合わせがあったら、そんなことが頭に浮かんだということだけでも、ぞっと身ぶるいを感じられるだろう。そのあげく諸君は、わたくしがげんに今それになっているように、きっと、「日本ローマ字会」の強硬な反対論者になること、請け合いである。「日本ローマ字会」というのは、日本語を書くのに、英字を用いることを普及させようという、醜陋憎むべき実利的目的のために創設された会である。

 ― 「日本ローマ字会」!?
 何だ、これは!

 実は、幕末になって世界への扉が開かれた途端、日本語の見直しを本気で考えようとした日本の学者たちがたくさん輩出したんです。ところがこれは、ハーンの指摘するように、醜陋憎むべきありさまだったんです。

 前島密(まえじま・ひそか)という人が、まずそうでした。この人、1円切手の肖像になっている人で、近代郵便制度の創始者です。なんとこの人は、明治5年に漢字廃止論をとなえた「まいにちひらかなしんぶんし」なるものを発行していたんです。
 学生たちに漢字を覚えさす時間あったら、西洋の文化を学ばせろ、いうわけです。だから日本語は、かなだけにすべきやと主張したんですわ。日本の学問より西洋の学問をせえやと? はあ?
 しかも、こんな人が後に早稲田大学の前身、東京専門学校の校長になっとる!

 そして今度は、森有礼(もり・ありのり)という文化外交間が、なんと、日本語はやめて国語を英語にすべきだと、とんでもない提言をして、アメリカの言語学者に意見を打診しよったんです。
 そしたらこの言語学者、国語を他国語にするのはさすがによくないとその提言を却下したものの、日本語をアルファベット表記にしたらいい、という助言をしたという・・・。
 この森有礼、後に初代文部大臣になった!

 そしたら西周(にし・あまね)という学者が『洋字ヲ以ッテ国語ヲ書スルノ論』とかいう論文を発表した。英字は二十六しかないから、日本語を英字表記にしたら便利やでと、言いよったわけです。
 どうもこのあたりに「日本ローマ字会」の根がありそうですな。


 ところで(よう話が変わる)、森、西の二人にはおもしろい逸話があります。

 森は、伊勢の内宮に参拝した時、神官の制止も聞かず、ずかずかと宮の中に入っていき、奥のカーテンを持っていたステッキでサッと持ち上げ、あの天皇も見ることができない八咫鏡を見たんだそうです。そしたら鏡にヘブライ語で「我ハ有ッテ無キモノ成リ」とあった。
 これ、ほんまやったらえらいことや。天皇のルーツはユダヤ人、ということになる。それでその秘密の漏洩を恐れた、伊勢の神官に暗殺されたという噂があるんです。まあ、ほんまかどうかは、ちょっとねえ。しかし森は、伊勢神宮に関係した国粋主義者に暗殺された、じれは事実なんです。
 西は、日本のフリーメンソリー第1号となった人です。ははあ、それで、と私はちょっと納得。

 え? フリーメンソリーって何って?
 今すぐ「フリーメーソン」と、検索してみて下さい。

kaidanyawa at 18:47│Comments(0)

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プロフィール
中山市朗 【なかやまいちろう】


作家、怪異蒐集家

兵庫県生まれ。


主な著書に「新耳袋」など。

作家、漫画家の育成機関「作劇塾」を主宰。


作劇塾

オフィスイチロウ


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