2008年01月12日

ジェームズ・ボンドの履歴書

 前回の続きです。

 ジェームズ・ボンド 履歴書(イアン・フレミングの原作による)

 参考文献『ジェイムズ・ボンド白書』(キングズリー・エイミス)
     武田一男による「ジェームズ・ボンド・レポート」
 ※は中山が補足。

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 1924年2月1日、スコットランド・ハイランドで生まれる。

 ※あれあれ、今年84歳? 設定当時は1955年でしたから。なお、ボンドの生誕については諸説はあるが、タイガー田中が「キミはネズミ年」と言う場面があるので、これを信用するなら24年となる。

 父・スコットランド人 アンドリュー・ボンド
 母・スイス人     モニカ・テラクロア
 ちなみにボンドの家系は1180年代のノルマン人、ル・ボンドまで遡るらしい。
 ボンド家の紋章は“銀地にサーベルと3つのペザント”
 ここから推測するに、サーレーに領地を持つベッカム准男爵サー・トーマス・ボンドの子孫かもしれない、らしい。しかしボンドはこの件に関しては関心を示してはいない。
 父がヴィッガース兵器会社の海外特派員だった関係で、幼いボンドは初等教育を海外で受ける。フランス語とドイツ語が得意なのはそのためである。

 ※映画『007は2度死ぬ』では、ミス・マギーペニーに日本語ガイドを渡され、「日本語はケンブリッジ時代の得意科目だった」とボンドは言ってガイドブックを返しているが、原作を読む限りそんな事実は出てこない。ボンドは日本語は全く不得意である。

 11歳のとき、両親がアルプスのルージュ峰にて登山事故で死亡。叔母のチャーミアン・ボンドに預けられ、ケント地方のペットボットムという山村で育つ。
 12歳、イートンに入学。ところが友人のメイドと間違いを起こし退学。父の母校・フェラックスに入学。厳しい校則の中、友情とスポーツに目覚め、ライト級のボクシング代表となる。17歳で卒業するまでに、英国のパブリック・スクールとしては初の本格的な柔道部を創設。ボンドが素手での格闘に強いのは、この頃の修行の賜物といえよう。
 18歳でオックスフォード大学入学。専攻は心理学と法律。
 19歳で父の友人の援助もあって、在学中に政府機関のある出先機関に入る。その後、英国海軍特務中尉に任ぜられ、駆逐艦に配属。大西洋で戦歴を積む。第二次世界大戦終結時には中佐へ昇進。オックスフォード大学は中退。
 1946年、英国情報部へ復帰。その後世界各国の駐在武官として1952年まで勤務。その後、国務省付国家5級公務員に任命され、本部へ復帰。その後9ヶ月の訓練を受ける。
 1953年、英国海外情報部に配属。「007」のコードネームが与えられる。初任務はジャマイカ。
 1962年、ユニオン・コルスのマルク・アンジェ・ドラコの娘、テレサと結婚。しかし数時間後、妻を失う。

 身長183センチ 体重76キロ
 体格は骨細、目は明るいブルー、右頬に縦に、さらに左肩に傷痕。右手の甲に整形手術の跡。
 浅黒い顔でヒゲは無い。まっすぐでかなり長い眉の下に、大きな鋭い目。髪は黒で左分け。ばっさりと前髪が右の眉にかかるような無造作な櫛の入れ方…。

 勤務は英国海外情報部○○課。このセクションには006と009がいる。秘書はローリア・ボンソビー、後にソアリー・グッドナイトに交替(※ミス・マギー・ペニーはMの秘書)。海外情報部は表向きには、ユニバーサル貿易となっていて、ロンドン・リーゼントパーク側にある9階建てのビル内にある。
 ○○課はビルの8階(のち7階に移転)、ボンドの上司Mこと、サー・マイケルズ・メッサヴィ海軍中佐は9階にいる。
 地下室は20ヤードの射撃場になっている。
 海外情報部員は無論公務員であり、勤務時間は普通10時から18時半。海外勤務が終わると2週間の休暇がもらえる。
 俸給は年1500ポンド。この他に税金のかからないものや、特殊手当てが1000ポンドほど。これは当時の日本円にして200万円。

 ※ただし1955年の数字なので、今に換算すると15〜20倍。かなりの高給取りである。国家公務員の高級事務官待遇と考えてよいだろう。

 これに海外任務の場合、経費は自由に使えることになっている。
 これは彼の能力に対する評価であろう。

 ※キングズリー・エイスミスは「ボンドの職業意識は身についた資質の中でも最上のもののひとつである」と、情報部員としての資質を最大評価している。


 能力


 スポーツ万能、拳銃、拳闘、ナイフ投げの名人。外国語はフランス語、ドイツ語が堪能。喫煙多量。悪癖は飲酒。ただし度は越さない。そして…女。

 ※柔道は7段である。


 住居

 
 チェルシーのアパートに、スコットランド人の家政婦メイと住んでいる。19世紀初頭に作られたシックで小さな建物だが、芝生とすずかけの木のある小さな広場がある。広間には多量の蔵書を収めた本棚、古風なデスク、皮張りの椅子など凝った家具、大きな窓。白と金の葉模様の壁紙、えんじ色のカーテン、濃紺のベッドカバーのダブルベッドのある小さな寝室。
 住所は、ウェントリン広場30番地。


 食事

 
 在宅時はメイの作る朝食。濃いコーヒーは米国ケメックス製で、大きなカップで2杯ブラックで飲む。卵は3分30秒間ゆでたものをひとつ。これはメイが田舎の友人から仕入れてくるフレンチ・ラマン鶏の茶のまだらのもの。これを金の縁取りのある濃紺のタマゴカップに入れて食べる。白卵は嫌いらしい。粗麦パンの圧切りトースト2枚、黄色の濃いジャージ・バターとティブトリーのスカーレットいちごジャム、フランククーバー製のオックスフォード・マーマレード、ノルウェーのヒース蜂蜜。
 英国人には珍しく「紅茶は泥水みたいだ」と口にしない。

 ※ただし日本のお茶には抵抗がないようだ。日本ではキャシー鈴木と白米と豆腐という朝食を食べた後、お茶を飲んでいる。

 昼食は普段は本部食堂で。
 舌平目のグリルとからしをそなえたドレッシングの大盛ミックスドサラダ、ブルーチーズにトースト、ボルドーの白い小瓶のワイン、ブラックコーヒー2杯。
 夕食は色んな場所で。

 ある日のディナーは上司Mとブレイズ・クラブで。
 鮭の薫製、ベルギーのキャビア、腎臓のからし焼きにベーコンを添えた小羊のカツレツ、オランダソースをかけたアスパラガス、新鮮なジャガイモと豆、パイナップル、酒はドム・ペリニョン46年のシャンペンとストリチナヤのウォッカ。
 もっともこの日のメニューは、ロンドンでは稀だということである。

 ※「牛肉は嫌いだ」と原作でははっきり言っている。しかし日本では神戸牛のステーキをタイガー田中に勧められ、これほどのステーキは食べたことがないと言わしめた。

 酒に関しては、激務の場合でない限り、60度から70度の酒類を半ビンほど。
 好みの酒類はウォッカやジンをベースにした強いカクテル。ゴードン3、ウォッカ1、キナ、リレのベルモットを1/2割り、氷のように冷たくなるまでシェイクして、レモンの皮を薄く切ったものを入れたドライ・マティーニ。スコッチは好まないらしいが、バーボンはよく飲む。ジャック・ダニエル、オールドグラント、IWハーバーなどをオンザロックか水で割る。
 シャンペンはドン・ペリニョン。

 ※オリエント急行でロシアの殺し屋をワインの注文の仕方で見破る。ワインの知識も豊富と思われる。
 ※『007は2度死ぬ』の原作ではボンドがサントリー・ウィスキーをソーダで割って飲む場面があるが、ボンドはサントリーをやや好んでいる節がある。また映画ではサントリー・オールドがテーブルに乗っていた。原作ではタイガー田中と熱燗の日本酒を飲んだり、ふぐ料理を食べたりしている。盃のことを「ばかげた指輪みたいに小さいもの」とめんどくさがって、コップに熱燗を注いでふた口で飲み干した。ふぐに関しては舌触りはいいが、何の味もしない、と言っている。

 
 タバコ


 マケドニア産のバルカンシガレットを1日50本。ただし1960年、健康を損ねて以来、デューク・オブ・デュアレムのキングサイズに変更。ニコチンが少ないことが理由。海外ではチェルスター・フィールド。常に黒イブシのロンソンライターを持ち歩く。シガレット・ケースは黒い研金製のものを使用。

 ※ちなみに東京では、しんせい、を吸った。


 銃


 ボンドにとって銃は身体の一部である。腕前は一流。
 勤務地では1957年まではベレッタ25口径オートマチック。クリップは骨組みだけを残して飾りを取り、早く撃てるようにテープで巻き直してあった。これをセミ皮のホルスターに入れ、脇下3センチ辺りにくるように左肩に吊ってある。しかし1957年以後は上司Mと武器係のブースロイド少佐の助言によりワルサーPPK7-65ミリ・32口径自動拳銃に替えた。

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 この他、愛用車、ゴルフの腕前、友人関係、服装、化粧品(石鹸やシャンプー)、時計(ロレックスを愛用、映画ではセイコーも)、新聞、愛読書など多岐に渡って細かく設定してありますが、もうキリがないのでこの辺で。 

 しかし、時代、情勢、役者は変わっても、ジェームズ・ボンドというキャラクターがずっと生きてスクリーン上で活躍し続けている秘訣が、この履歴書にあるように思いませんか?



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kaidanyawa at 02:49│Comments(0)

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プロフィール
中山市朗 【なかやまいちろう】


作家、怪異蒐集家

兵庫県生まれ。


主な著書に「新耳袋」など。

作家、漫画家の育成機関「作劇塾」を主宰。


作劇塾

オフィスイチロウ


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