2008年07月30日

本田透さんとの対談

 中山市朗です。

 昨日、作家の本田透さんと対談をしてきました。
 場所は東京都文京区にあります講談社の26階応接室。ここを指定したのは私で、以前『ヤングマガジン』の企画でここで怪談を語ったことがあったのですが、最中に天井から「むおーッ」という女の声がはっきり聞こえてスタッフがビビッて緊急にお開きになったことがある、いわくつきの場所です。

 本田透さんは『電波男』というエッセイ本でサブカルチャーのカリスマになった人。”人間が人間たらしめているものは想像力(妄想)が生み出す二次元世界であり、二次元なくして人間性というものはない”として、二次元、つまり脳内で妄想して作られる物語の構造について、色々ユニークというか、型破りなアプローチを論じている人なのです。
 といえば、ちょっと堅そうですが、要は「もてない男」「もてたくない男」を喪男(本田氏は「モダン」とルビをつける)とし、喪男こそがもてないが上に哲学をし、文学を書くのだ、もちろん喪男はその際、萌えの魂をもっており、ゆえに永遠にもてない。と論じられています。
 そーいや、以前浅尾良典さんと対談してて「そんなんやっててもてました?」という問いに「もてるわけありません」と言われたこととダブっています。私も怪談を語ったら怖いもの好きの女の子のファンが増えるかな、と思ったら、なぜか大部分のファンはオッサンたちなのでした…

 本田さんの近著『電波男は世界中にいた』は、梶原一騎も手塚治虫も荒俣宏もスーパーマンのクラーク・ケントも『ドラえもん』ののび太も、みーんな喪男。いやヒーロー資格こそが喪男であるとし、喪男『フランケンシュタイン』とイケメン『ドラキュラ』の構図も、果ては『神曲』のダンテも『罪と罰』のドストエフスキーもセルバンテスの『ドン・キホーテ』も、みんな萌え話だ、という文学論でありました。『本当は萌えるグリム童話』という男の子のためのグリム童話を出版されたのも、この本田先生。もちろん萌えのラノベ作家さんでもあります。
 で、そんな本田さんと私の対談て、どーいう組み合わせ?
 実は講談社の運営するWEBマガジン:講談社Mouraの「神秘の国日本・本田探検隊」の中の企画だというのです。「神秘の国日本」というと、昭和初期、シベリア出兵に従軍した大本営付武官が、なぜか日ユ同祖論に傾倒し、パレスチナを調査して茨城県の皇祖皇大宮に伝えられていたという謎の古文書『竹内文書』を公開し、その文献をもとに東北にピラミッド群を発見、またモーゼの十戒石やキリストの墓などの存在を日本に認めて、それを『神秘之日本』という雑誌に延々と掲載した日本のオカルティズム運動の先駆者、坂井勝軍先生を思い出してしまうのですが…わっ、サイトを見ると、本田さんは本当に青森のキリストの墓に行っているではないか! 私も行きたかった!
 で、私はそういうユダヤの話でもすればよいのかなと思っていたのですが、本田さんはそういう物語ができるメカニズムというか、なぜ物語(二次元)が作られるのか、に興味を持たれていて。
 やっぱりそのメカニズムを解くには「実話系怪談」の分析でしょう、ということで、まあ私にお呼びがかかったようなんですわ。
 延々3時間30分繰り広げられた対談は、近く講談社Mouraに掲載(塾のHPからも見られるようにしておきます)されます。だからここでは詳しい報告はしません。が、まあこんな話をしました。
 私は確かに物語は本田さんの言うように「二次元の産物です」ということには異論はありません。小説も映画もテレビドラマもアニメもゲームもネットの世界も二次元のものですわな。でも、実話系怪談はちょっと違うんです。
 こう考えてみましょう。

 ホラーと怪談の違いって? 

 この問題、よお聞かれるんですが私はフィクションがホラー、ノンフィクションの体裁を繕うのが怪談だと思うのです。怪談には体験者が不可欠です。それで実際の話として語られます。怪談を語るとき、「これ、今作った話なんだけど」という奴はいない。また話したあと、「これは嘘話でした」なんて言おうものなら袋叩きにあっちゃうかもしれません。実話と思うから恐怖が身近なヤバいモードになる。で、怪談で盛り上がったら霊スポットへ行ってみよう…なんて。SFスポットやファンタジースポットなんて、おまへんでしょ?
 だからSFやファンタジー好きの人たちは、ますます二次元の世界へ没頭していくわけです。霊スポットは行くだけで向こうから幽霊さんが現れてくれる。三次元の女の子は口説かなわかってくれへんし、ふられたら死ぬほどショックやし、そもそも口説かれへんから二次元の女の子に憧れるんやと。これも萌えを求めてどんどん二次元にいくしかない。
 でも霊スポットに行けば、幽霊はめったに出ないけどひょっとしたら勝手に現れて…頼みもせんのに祟るかもしれん、と、随分受動的態度でも楽しめる。
 『東海道四谷怪談』なんて鶴屋南北が1825年に初演した古典怪談。でもあれが未だに怪談たりえているのは「元は実話なんでしょ」というゾワゾワ感。「お岩さん」を「お岩」と呼び捨てにするのさえ憚れるこの恐怖。『四谷怪談』を舞台化なり映画化するときは必ず誰かが死んだり、怪我をするというジンクス。だから「於岩稲荷」にはそう、お岩さんがお祀りしてあります…やっぱりお岩さんおったんや、ということで、実話の痕跡を残しているところが不気味で、だから本気で怖いわけですな。
 『皿屋敷』にだって、実際にお菊さんの墓はあるし、お菊井戸もあったりする…。
 東京人がやたら怯える「将門の首塚」も…
 ひゃあ!
 『新耳袋』も場所は隠しているのに、熱心な読者は「山の牧場」だの「幽霊マンション」だの「天狗神社」だのと探し出して実際に行って写真を撮ってネットに貼付けて…ああ、ほんまや、とゾゾッとする。俺、そこ行ってきたでということが二次元の『新耳袋』と三次元にいる自分がリンクする。
 つまり怪談そのものは二次元なんですが、これを三次元的な再生に試みて、肌で恐怖を味わってみたい、という要求がかなえられそうな物語が実話系怪談なんです。
 実話の体【てい】、これが怪談の命、みたいな話を本田さんとしたんですけど。

 ところで、実話系SFというトンでもないものがあるって知ってます?
 日本人が書きました。
 冒頭で紹介した『竹内文書』というのがソレです。これすごいんです。
 一応皇祖皇大宮という一見、古代の天皇家と関係があるかと思われる茨城県にある神社は、実は天皇とは全然関係のない天津教の本部。ここから古来より伝承されていた古文書が発見された、という体で発表されたんですな『竹内文書』は。昭和11
年のことです。これがまた、なんと武烈天皇の頃、5世紀に書かれたものらしくて、アヒル文字、あるいは豊国文字などという神代文字で書かれているんです。漢字が中国からくる前、という演出? またその内容がすごい!

 ビッグバンの宇宙創世(ビッグバン現象が科学で提唱される遥か前ですぞ!)から始まって神話では神武を初代天皇とするところ、それ以前の上古代の天皇の歴史が書かれているわけです。それが地球を飛騨王国の王が治めていて、王は天の浮き舟(『未知との遭遇』のUFOみたいな)に乗って世界を巡回していたらしい。で、まあ天地異変(『日本沈没』どころじゃない)とか、人類の覚醒(『地球幼年期の終わり』ばりの)みたいなことがあって、人類史ができあがっていく過程が書かれているわけです。で、そういう中でシャカやモーゼ、キリスト、マホメッドが登場してモーゼは能登半島から日本に上陸してキリストは青森の戸来(へらい)村で死んだ、とあるわけです。んなアホな! と否定するのは簡単。しかし昭和13年昭和45年に皇祖皇大神宮の神宝が公開され、それが『竹内文書』の史実性を裏書きするものだった、というんですな。このとき、伝説の「ヒヒイロカネ(オリハルコン?)」で作られた「神の本魂剣」とか(錆びてたらしいけど)、モーゼの十戒石みたいなものもあったらしい。で、実話の体はここで終わらない。日本の超古代文明の存在の証として坂井勝軍は『竹内文書』の解読から日本各地にエジプトより古いピラミッド(広島県の葦獄山や十和田湖周辺に)を発見。さらに神学校を卒業して福祉の仕事をやっていた山根キクによる青森県戸来村でのキリストの墓発見! とまあ、二次元の『竹内文書』が次々と三次元化していくわけですな。
 でもこれ、すべては竹内巨麿という宇多天皇の後釜と名乗る皇祖皇大宮を祀った天津教の教祖が作った物語。当時はSFなんて言葉はなかったし、概念もないから物語を三次元化していったんですな。今で言うクロスメディア。それで読者ならぬ信者を募った。
 これ、戦後にはGHQによって神宝のほとんどは接収されてしまったという結末つき。

 でその戸来村(今は新郷村になっています)のキリストの墓を見たという本田さんに聞くと、どうやら地元はこれが村おこしになると本気らしいし、観光客も来ているらしい。何より、イスラエル政府がここに興味をもって後押ししているそうです。
 どうです、竹内巨麿の書いたフィクションを、イスラエル政府が本気(かどうかは知りませんが)になって三次元化しようとしているこの現実。
 涙、出まんな。



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kaidanyawa at 21:33│Comments(0)この記事をクリップ!

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