2010年01月23日

ワッハ上方は燃えているか

 中山市朗です。

 上方演芸資料館『ワッハ上方』の現地存続が、とりあえずは決まったようです。
 しかし平成23、24年度の年間入館数が40万人に達しないと、有無もなく廃館だそうです。今の約8倍だとか?
 今のままでは、無理です。

 私はこのブログに何度か書いたように、上方演芸資料館は継続すべきだと思っています。ただ、ワッハ・ホール、レッスンルーム、小演芸場の3つのライブスペースと資料館が両立しているから価値があると思っています。アーカイプ資料の保存、閲覧だけじゃあかん。同時に芸人の養成、育成、プロとアマの交流があっての価値ですわ。
 これはなくしたらあかん。
 未来へ繋がんとね。

 さて、資料館ですが、私のようなお笑いオタクでも、有料で入ったのは2度ほど。感想は「ツマラン」の一言でした。
 会場はそう広くないのですが、それにしても展示物が少なく、また行ってみないと何が展示してあるのかわからんわけです。エンターテイメントになっていないんです。
 
 『ワッハ上方』のホームページを開いても、お役所仕事のようなデザインと構成。あれでは、まず若い人は見ない。
 資料館でありながら、資料的価値が皆無のホームページ。なんやこれ?
 私、思うのですが、『ワッハ上方』にはどんな資料があるのか、ネットで公開すべきです。6万点もの貴重な資料があると言いますが、いったいどんなものがあるのかわからん。お笑いや芸能、あるいは大阪の文化や歴史を調べたりするときに、学生や作家、研究家、マニア、コレクターたちが、まず「ワッハ上方」と検索することを常識化せんとあきません。今、「ワッハ上方」で検索しても、館の案内やライブの告知、移転問題についてばっかりヒットします。言うたら身内向けの情報しかない。
 これでは「ワッハ上方」に寄贈された貴重な資料が、有効利用できてませんわ。
 まず、ただちにリストを作ってネットで公表すべきです。そしたら、えっ、そんなもんがあるんや、とか、それ見てみたいなあ、と、お笑いファンならきっとそれだけでも楽しくなる。リストをクリックすると、ものによっては全ページが閲覧できたり、コピーもできたり。それは有料にすればいい。
 映像と音声も貴重なものがあるようで、そのハイライトを聞ける居酒屋風の「懐かしの映像館」(意味分からん)とか、SPやラジオの音源が聞けるミルクホール(やっぱり意味分からん)などあるんですけど、正直腰を落ち着けて視聴する雰囲気でもないし、そんな人もおらんでしょう。友達や家族連れで来ても、それはほっといて一人じっとそこに1時間も居続け・・・二度と友人や家族なんて来ませんわ。
 共に遊ぶ、共に体験するものがない。

 演芸ライブラリーには、各放送局から寄付されたテレビやラジオ音声が視聴できるそうですけど、これはよっぽど好きな人でないと利用しません。
 こういう映像や音声も有料でネット配信すべきです。全国の人たちに上方の演芸を見てもらわないと、寄贈された意味がない。
 私だったら、いろいろ企業や関係団体にかけあって、演芸専門のCSチャンネルを作りますわ。百数十チャンネルあるCSに、未だ演芸や落語の専門チャンネルがないというのはどうも理解できん。演芸、お笑いのファン、マニアはいっぱい全国にいてるはずですから、そこをターゲットにしてビジネスにすればいいんです。
 資料館に寄贈されている映像だけでなく、若手芸人のライブや落語会、勉強会なども収録して放送するんです。とにかく早朝から夜遅くまで、落語漬け、漫才漬け、懐かしの新喜劇の日もあったりして・・・
 『道頓堀アワー』『和朗亭』『お笑いネットワーク』『あっちこっち丁稚』『花の駐在さん』『藤山寛美劇場』『NHKお好み演芸会』『演芸指定席』『枝雀寄席』『平成紅梅亭』『桂米朝・上方落語大全集』『特選!落語全集』『米朝ばなし』・・・といったアーカイブ番組。サンテレビの『上方落語大全集』はさすがに残ってないか。それに澤田隆治さんのところにある『名人劇場』『てなもんや三度笠』、未公開の『上方落語らいぶ100選』・・・そんな映像がどんどん放送されるなら、私は月3000円でも契約します。
 「ワッハ上方チャンネル」でいいじゃないですか。そしたら知名度も高くなるし、利用客も増えます。今はメディアミックスの時代。「ワッハ上方」はそこにまったく対応していない、と断言します。
 だから、移転問題が起こったとき、市民からこんな声が多く寄せられたんです。
「えっ、ワッハ上方? そんなん聞いたことないわ」
「あっ、あれは税金の無駄遣いや」

 さて、私は上方落語と漫才のビデオ、レコード、CD、DVD・・・とにかくコレクションしています。昔、本格的な落語のテレビ番組がなかったころ、25年ほど前のことですか。上方落語を家のビデオでじっくり見たいという欲求から、「ビデオ板・上方落語大全集」なる企画書をもって、上方落語協会や松竹芸能、あるいは市の教育委員会、文化保存協会、はては東京のメーカーさんに営業をかけたことがあったくらい好きなんです。しかし、当時はビデオが貴重なアーカイブ記録になって、しかもビジネスになるという感覚が特に大阪の人にはまったくなく、「あんた、何がしたいんや?」と言われて、結局頓挫してしまったわけですが(あのとき実現していれば、あまり残っていない六代目松鶴の映像がもっと残せた!)、そんな私がコレクションのためにまず行くのは日本橋のCDショップ「大十」です。ここの中古なんか、たまに「えっ」というものが出る。私の知り合いにも、お笑いの映像、音源を蒐集している者が何人かいますが、やっぱり大十へ行く、と言います。
「ワッハは?」と聞くと、「あそこないやん」と大抵返事がかえってきます。
 同意見です。
 あかんでしょ。

 「ワッハ上方」にも上方演芸笑店ありまんねん。でも、ここは品揃えが悪い。
 やっぱりマニアの心をくすぐるのは、そこにしかないものを、そこでしか売っていないものを手に入れること。これです。それだけでも集客させる方策があります。
 中古のレコードやCD、ビデオなどを豊富に揃えて、またプライベート版のものなんかも委託販売するなり、非売品のサンプルを置くなり、なぜしないのか?

 やっぱりお笑いは、ライブが一番ですけど、次は家でゆっくり楽しむこと。
 これだと家族や友人も楽しめる。
 「繁昌亭」は、そこわかってますから、「ライブ繁昌亭」をどんどん配信して、そのなかの一部をCDとDVDにしてお店やネットで買えるようになっています。あれ、ちゃんとビジネスになっていると思います。
 そこ『ワッハ上方』はわかっていない。やる気がない。
 来れば視聴できるよ、では集客に結びつかない。まあ、ドッと来てもあのスペースでは対応できんやろうけど。

 とにかく何をおいても、お笑いに関するグッズや情報がほしかったら『ワッハ上方』に行くなりネットで検索する、ということを常識とせんと。
 運営に関わっている人は大変でしょうが、それをやらないと、2、3年後にはほんまに廃館になる。寄せられた6万点の資料を、ともあく無駄に眠らせてはいかんのです。
 それと、小演芸場を借りていると9時30分撤収完了のこと、と大きな字で楽屋に張り出されて、ほんまに時間を過ぎると怒られます。
 これはお役所仕事。
 ライブは生きもの。伸びることだってある。来てくださったお客さんとも、ちょっとは話したりもする。もう少し臨機応変があっても、と思います。
 ワッハは役所やない。サービス機関なんやと思わな。
 それにオールナイト落語会「東の旅」とか、「オールナイト納涼怪談特集」とか、そんなことをやってもええん違います?

 どうも運営側の人たちの顔が見えてきません。
 府民、あるいは他府県の人たちとともに、お笑いを仕掛けまっせ、楽しんでくなはれ、という姿勢が見えないんですな。
 東京では大銀座落語祭なんていうのをやっています。ワッハには行く気がせんけど、あれには行きたいと思う。パワーがあるし、落語一色の銀座って、想像するだけで楽しい。出演メンバーがまたものすごいし。なんでお笑いは大阪や、とか言いながら大阪人はああいうことをやらんのやろうね。松竹も大阪撤退とか言うてるみたいやし。
 ワッハも吉本、松竹、各放送局、自治体、繁昌亭も巻き込んで、上方演芸祭り、いうて大阪の街をお笑い一色にする日を作るのもありなんと違います? そういうことができる力なり、政治力をもった人たちが、放送局から“天下り”しているはずです。
 ほな、やりなはれ。
 今のままでは、ほんまに天下りしてると、市民から思われてしまいます。

 とにかく「ワッハ上方」を維持しようとしたらあきません。
 積極的に打って出ましょう。
 それが広報にもなるんです。

 運営している方々、関係者の方々、市民に「ワッハは必要です」と呼びかける前に、まず動くことです。市民に「あれがなかったら寂しいなあ。おもろなくなるなあ」と言わせんとダメです。

 老婆心ながら失礼しました。
 これも「ワッハ上方」の存続を憂う声だと、ご理解ください。



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kaidanyawa at 01:17│Comments(6)

この記事へのコメント

1. Posted by FKJ   2010年01月23日 14:21
ワッハ上方は存続するだけましです。

国際児童文学館は閉館が決まりました。
http://www.iiclo.or.jp/

所蔵品は府立中央図書館へ移行するそうです。
紙芝居などの貴重なコレクションを集めていたのですが
このようなテーマを絞ったコレクションは
図書館では資料散逸しやすく残念です。
2. Posted by 中山市朗   2010年01月23日 20:44
国際児童文学館・・・。あそこに行ったという人の話を聞くと、あんまり集客しようという態度が見られなかったとのこと。ワッハの運営と同じです。
やっぱりこういう施設は、天下り的な人員配置が、赤字を招いているのでしょうか?

しかし、赤字だからといって、文化を切り捨てる橋下知事のセンスは、いただけません。
大阪府民の自覚も足りん。
文化をこれほど軽んじられる大都市は、世界でこの大阪だけでしょうな・・・。
3. Posted by 20話の男   2010年01月23日 22:31
 生命維持装置に繋がれた箱モノ、といった感じですね・・・。役人は基本的に、お笑いが苦手。というより嫌いなんじゃなかろうか? と勘ぐってしまいます。四角四面、杓子定規、融通が利かない、サービスを充実させる気が無い等など・・・。コレ全て、役所を言い表すには使い古された言葉。裏を返せば『笑い』と対極に位置していると言えます。
 補助金ばかりアテにするから自助努力をしない。しかも現状を憂いて誰かが働きかけても「余計なことするな」と妙なプライドを誇示。これでは「そんな充実感や達成感の無い金の稼ぎ方して、人生楽しいんやろか?」と思わざるを得ない。
 笑いが嫌いなオトナ、楽しみ方・楽しませ方が分からない役人。笑い話にすらならないんですが。

 ワッハ上方には同じ箱でも、世間から閉ざされた空間で役人が好き勝手に出来る囲いとしてでは無く、ノアの箱船みたく関西お笑い会の救世主となって欲しい。その為には、まずどうやったら皆が「来て良かった。また来よう」と思うかを真剣に考える必要があるでしょう。資料は人目につかない倉庫で朽ち果てる為に存在しているのでは無い。「見るモンが仰山あり過ぎて一日じゃ無理やわ!」コレが正しい姿では? 定時に帰るのも大事でしょうが、時間も忘れて打ち込めるモノが無い人生なんてツマラないですよ、役人さん。
 せめて「こんなオモロい企画ありまっせ!?」というコーディネーターが館内に一人でもいれば。
或いは「そらエェな。早速ネットで告知して、あとは・・・」というヤル気と権限のある広報がいれば、存続の可能性もグッと近付くと思うのですが、現状では無理なのでしょうか? それとも意識改革が先かも?

 集客率800%達成が、「実はワッハに勤務する職員のヤル気を出させる為のブラフでした♪」てなオチになっていることを期待したいものです。
4. Posted by 中山市朗   2010年01月24日 00:23
20話の男さん。

毎度熱きコメントありがとうございます。そうです。「見るモンが仰山あり過ぎて一日じゃムリやわ」はその通り。今のワッハは1時間おれと言われても、見るものはないし、遊べるモンもない。

ワッハの存続はせなあきませんが、今のままでは、府民に税金の無駄遣い言われて当然・・・。
5. Posted by FKJ   2010年01月24日 12:05
東京で言うと、事業仕分けの対象になった
日本科学未来館が同じようなものですね。
http://www.miraikan.jst.go.jp/

正直言って経済産業省(通産省、科学技術庁)が科学技術振興という名目で作った箱物です。国際漫画喫茶と揶揄されたメディア芸術センターは文化庁が同じことをやろうとしただけです。

かろうじて残ったのは、宇宙飛行士の毛利さんを館長に据えたことですね。
NASA仕込のミッション管理とプレゼン能力を持った人がTOPにいるおかげで、
かろうじて集客できているようです。

だからワッハ上方にしても児童文学館にしても
TOPに顔が見える人を据えて責任を持った活動を継続的にすることが必要だと思います。
役所は人事異動があるためにどうしても通り一遍のことしかできませんし、意欲のある役人がいても続かないのです。
6. Posted by 中山市朗   2010年01月24日 12:26
実は、運営スタッフには役所の人間でなく、実績のある凄い方々が名を連ねています。館長も、ABC元プロデューサー柏林利夫氏、YTV井上宏氏、YTV有川寛氏・・・。

有川氏は特に上方演芸の映像保存に尽力を尽くされた方です。
でも、そういう人たちの力が発揮できない状態なのか、それともやはり、天下り根性が働いてしまうのか・・・。
それはわかりません。

ともかくトップの顔が見えない、というのは大阪府民のみんなが思っていることでしょう。
内輪だけで動いている。なんかそういう感じがします。

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プロフィール
中山市朗 【なかやまいちろう】


作家、怪異蒐集家

兵庫県生まれ。


主な著書に「新耳袋」など。

作家、漫画家の育成機関「作劇塾」を主宰。


作劇塾

オフィスイチロウ


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