2019年01月07日

怪談・見えないことを語る面白さ

中山市朗です。

昨夜の『中山市朗・怪チャンネル』、いかがだったでしょうか?



神仏に関するいろいろな怪異。

水木しげるさんは、『妖怪画談』(岩波新書)にこう書いています。
「霊と言う字を二つ書いて霊々【かみがみ】と読むわけだが、これは面白いと思う。
本来、神様も妖怪も幽霊さんも同じところの御出身なのだ。
神様と妖怪、あるいは幽霊と分けてしまうと、逆に本質を見失う。
神様も妖怪も幽霊もみな親族、すなわち霊的なもの、霊々【かみがみ】の世界、いわば目に見えない世界にいる方々である。
目に見えない世界というのは、誰にもしかと分かりかねる世界で、その中でも妖怪というのは特にわかりにくい。
では無いのかと思うと、いるらしいから不思議だ」
「すなわち、大部分の者には形がない。すなわちみることができない。すなわちそれは感じなのだ」

水木しげるが描いた妖怪たちは、その感じというものを、形として「僕が全部作った」ということなのです。

今回『怪チャンネル』でお話しした13話の神仏に関する怪異談で、何かの形を目撃したという体験は、三日月型の鎌を持った黒い頭巾に黒い僧服、頭巾の中は黒くてわからないが、ドクロを思わせる目、をした死神らしきものを見たという話しと、キラキラ光る敷居の神様、夢に出てきた阿修羅像、修行の褒美として出てきた小さな観音様以外は、形として認識したものでは無く、そう感じた、というものが多かったわけですが、、放送が終わって、そこが神仏の怪異だなあ、と思い改めたわけです。

ちなみに、これが阿修羅像↓

阿修羅
















こういう、目に見えないことを語って聞かす、というのが怪談の面白さの一つだと思います。

映画やお芝居、コミックやテレビ番組にすると、何やら形を出さなきゃならない。
でも、怪異に遭遇するということは、まさに、気配とか感じとか、得も知れぬものの息遣い、といったものを感じ取ることであり、何とも説明しにくいものであると思うのです。
その、説明しにくいものを、語って、相手にその感じを伝える、というのが怪談であろうと。
ですから、聞き手の方にも想像力、感じ取る能力が必要なわけで、これは、ちょっとだけ、高等な娯楽、なのかも知れません。

怪談は、幽霊が出るから怖いのではなく、幽霊が出る背景や雰囲気、気配が怖いのであり、それを感じ取ってしまったら、一体この奇妙な雰囲気、気配から逃れられるのであろうかと、不安になり、恐ろしいと思った瞬間に、怪談の肝が存在するのだと、私は思っています。
ですから『新耳袋』や『怪談狩り』には、具体的な幽霊の出てこない怪談がいっぱいあるわけです。

今回お話した怪異談は、その気配や感じが、神仏であっただろう、というものだったわけです。
ちょっとは、神仏をみなさんの身近に思っていただければ、今回の私の語りは成功だったと思います。
ま、普段不信心な私がいうのもなんですけど。

私は、怪談とオカルトは本来違うものである、と主張していますが、神仏を探求すると民俗学となり、民俗学を探求すると歴史の探求となり、その歴史は、いわゆる歴史学としての歴史ではなく、民俗学的歴史学、なるものに行き着きます。
それは、古来の人々が感じた神という未知の概念を既知に接続し、体系化しようとした人々の行為なのです。
行為とは、神話の再現であり、祭場や儀式であり、寺院であり、向けられた方向などであり、その中からシンボリックな形状やメッセージを探し出し、その奥義を解読していくと、これがオカルトとなるわけです。

怪談は語り、聞くもの。
オカルトは、普段は認知されない、目に見えないものを、形にしていく。そして、解読し、あるいは実践するものです。

私は怪異蒐集家として怪談、怪異談を扱い、語ったり書いたりしていますが、一方、誤解を受けてしまうのですがオカルト研究もしております。やっぱり怪談とオカルト一緒じゃん、て思われるでしょうが、これはまったくの偶然であります。ただ、奥では繋がっているのは確かでして、今年も怪談を語り、執筆しながら、神々の奥義をも追求していこうと思う次第です。




kaidanyawa at 10:38│Comments(1)

この記事へのコメント

1. Posted by ひろみつ   2019年01月08日 11:03
5 中山先生ごきげんようです

先日の「怪チャンネル」神仏関係の不思議な話の数々堪能いたしました。

阿修羅像の話、両足のない僧侶の蔦の話は前から大好きな話です。他にも「七福神」「本堂の灯り」も大好きな話で、また先生の語りで伺えたらと思っています。

怪談は僕もかねがね思っていることですが「出た〜〜!!」ではなく「出るぞ、出るぞ」というのが怪談ではないかと思っています。
見慣れた日常に感じる不可解な違和感、その違和感の正体が出るまでをどう語るか、どう描くかだと思います。

2月のプライベート怪談会楽しみにしてます。

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プロフィール
中山市朗 【なかやまいちろう】


作家、怪異蒐集家

兵庫県生まれ。


主な著書に「新耳袋」など。

作家、漫画家の育成機関「作劇塾」を主宰。


作劇塾

オフィスイチロウ


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