IMG_1776救急車の受け入れや手術をする急性期病床を中心に10年連続黒字を出してきた松阪市民病院だが、急性期医療は近接する松阪中央病院や済生会松阪病院に役割を譲り、両病院を退院はしても家にはまだ帰れない回復期の患者や在宅からの一時入院が必要な患者らを受け入れる地域包括ケア病床主体の病院に転換すべきだとする方向性が、16日夜開かれた「第2次地域医療構想をふまえた松阪市民病院の在り方検討委員会」で、県医療保健部から示された。

市民病院院長や山路茂副市長、松阪地区医師会など出席した委員からは歓迎すべきとの声が相次いだ。しかし、急性期医療を支えてきた医師や看護師などの医療スタッフには余剰が生じるほか、収益は大幅にダウンするため市からの赤字補てん(一般会計からの繰入増)は避けられない等の課題がある。

在り方検討委員会委員長で三重大学付属病院長の伊佐地秀司氏は「おさまりのよいところにまとまった」と述べた。また、山路茂・松阪市副市長は「医師、看護師などの雇用と経営状態に課題は残すが、これで医療は支えられる。医師、看護師らは松阪地区から流出することなく、地区の他病院に移動して、松阪地区内にとどまってほしい」という趣旨の発言をした。

12月5日の市議会一般質問の答弁(市民病院事務部長)では否定した市民病院と中央、済生会の院長協議の開催は、11月20日に開催したことを明かしたうえで、県医療保健部が資料を使って説明した。

松阪区域3基幹病院長協議会というもので、3病院の院長ほか、武田裕樹・市民病院事務部長ら各事務部長、松阪地区医師会長、三重県病院協会理事ら8人が出席し、松阪市高町にある県松阪庁舎で開催した。県が呼び掛けた調整の場という位置づけで、会議の開催の有無について、開催前だけでなく開催後でさえ公表をしていなかった。

協議会では、最初に、急性期病院である3病院の中で地域包括ケア病床への機能転換を図る意向調査をおこなった。
県の配布資料によると、中央病院からは「今後も急性期医療に特化した病院を目指していく方針に変わりはない」、済生会松阪病院からも「高度急性期、急性期医療を今後も継続していく」との回答だった。
そこで、市民病院から「両院の方針をふまえると、松阪市民病院が地域包括ケア病床を中心とした病院に機能転換し、両院との関係性については両院からの急性期を経過した患者の受け入れ、連携といった役割を果たしていくことも考えられる」との発言があった。

松阪市民病院が急性期から機能転換を図った場合、現在、3病院で受け入れている二次救急医療や輪番制について中央・済生会とも「2病院で半々であれば対応できる」との回答があった。

まとめとして、市民病院が地域包括ケア病床を中心とした病院に機能転換し、中央、済生会の各病院から急性期をすぎた患者の受け入れといった役割を担うことが求められるとした。
二次救急医療及び輪番制は中央、済生会の2病院で対応していくとの方向性とした。

在り方検討委員会でこの説明に対する質問はなく、各委員から受け止め方を聞いたところ、「わたしも同じような考えを持っている。是非、市民病院は地域包括ケア病院になってほしい。ただし、経営面では大きな損失になる可能性はある。また、医師、看護師をとどめ置く工夫が必要」[(志田幸雄・県病院協会理事)などすべて賛成意見だった。

ただし、職員らの不安や住民感情もあるので時間をかける必要はあるとの認識が示された。