松阪市民病院には、毎年、製薬会社などから治験費というお金が入っています。新薬を患者に投与したり検査に使ったりすることへの見返りのような不透明さのある財源ですが、市民病院の予算・決算上は「その他医業外収入」の中に収まる公金として扱われています。令和3年度で見ると、3000万円ほど収入があり、8100万円の貯金(同年度末現在)となっています。病院で新薬の効果を確認(治験)することで日本の医療水準の向上につながるというプラス面はあるのですが、市民病院ではプールした治験費収入の使い方のほうの基準が甘く、医師のリクエストでほとんど自由に支出されているのではないかと指摘せざるを得ない実態が見えてきました。


 市民病院には令和4年9月に名古屋地検特捜部が捜査に入り、呼吸器内科の職員の中から逮捕者が出ました。事件は、印刷製品の発注に絡むことと報道されています。どこから出たお金なのかが気になって調べ、治験費にたどり着きました。それを踏まえ、12月市議会の一般質問で取り上げました。

【治験費の支出(令和3年度)】
呼吸器内科(呼吸器センター) 1376万円
消化器内科 101万円
薬剤部    77万円
検査室    26万円
リウマチ科  16万円
看護部     9万円
泌尿器科    9万円
皮膚科      0.3万円
循環器内科   ゼロ
整形外科    ゼロ
歯科口腔外科  ゼロ
一般内科    ゼロ

 治験費とは、治験結果の論文掲載や学会発表などの経費に充てるために各診療科に配分されています。しかし、どのように使われるかということでは、本来の趣旨とは落差が大きなものがあります。
書籍やパソコン周辺の機器などの備品購入に多く充てられているのが実態ですが、圧倒的に多額の治験費を使っている呼吸器内科(呼吸器センター)では、病院事業外のイベントに多額が充てられています。


松阪市民病院呼吸器センターの治験費の使い道
●学会出席用スーツの仕立て 
 呼吸器センター医師5人分。「かなり多額」との議会答弁。
●FM三重「肺、おさむに聴け! Radioを聴いて らんらん」(毎週月曜日18時22分から4分間。番組スポンサー料 松阪市民病院呼吸器センター提供で数百万円支出。医療に関係のない話題が多い。
●呼吸器センターオリジナルグッズ製作費
協賛イベント等での参加者用の景品として使用したり、インスタグラム投稿者にプレゼントしている。主な製品は、COPDタオル(単価650円)、COPDエコバッグ(単価450円)、チャック付き保冷温バッグ、呼吸センターオリジナルパーカー、呼吸器センターパロディカレンダー、Do you know COPD ? ピンバッジ、ロゴ入りニューピンバッジ、呼吸器センター10thアニバーサリーボールペン、うちわ等がある。
●津競艇協賛
津ボート「そーや!松阪市民病院があるやんか」杯(令和4年6月27日〜7月2日)で30万円現物協賛。6000円分の呼吸器健診券を先着40人に。優勝選手への副賞に松阪肉商品券(1万円相当)ほか。
●松阪競輪協賛
「F1 COPD認知度向上カップ」(令和4年9月22日〜9月24日)協賛。金額は津競艇を下回る。
●津松菱「福袋」(肺HIプラチナセット、シルバーセット)販売(令和3年12月〜4年1月)
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さまざまなオリジナルグッズが目立ちます。
「呼吸器センター10thアニバーサリー」という文字の入ったボールペンや、「COPD」と書かれたタオルやエコバッグ、パーカーや「パロディカレンダー」等々。

どれだけの個数が作られているのか、病院事務部に聞いても、明確な答えは返ってこないのが実情です。これらにも治験費が充てられています。

学会に出席するためのスーツを少なくとも5人分仕立てたという事実には呆れました。
左胸のところに呼吸器センターの名前が入っているというものです。事務部では値段は答えず、「仕立てなのでかなり高額」と答弁しました。
津競艇や松阪競輪への協賛、FM番組のスポンサー料などもありますが、市民病院事務部は「目立ってナンボ。市民病院のPRになり、若手医師の確保や患者増につながっている」と議会で居直る始末。

津競艇「そーや!松阪市民病院があるやんか 杯」で、先着40人に1人6000円相当の「呼吸検診パック」が贈られ、これだけで24万円。6000円相当の病院での検査が無料で受けられるという金券が、先着というだけの理由で配られて良いものなのか? 私立のお金持ち病院ならともかく、収支状況の厳しい公立の市民病院のイベントとしては、あり得ないのではないかと思います。
市民病院の常識ではこれも「何も問題はない。呼吸器の健診につながっている」と答えています。
普通の会社や組織では業務に必要だなからと言っても認められるはずのない支出が、市民病院の呼吸器センターでは製品に名称さえ入っていれば「PRにつながる」などと認められる現状にただ驚くばかりです。

公金の使い道としては、市民的常識からかけ離れたものを容認するわけにはいきません。市民に限らず市民病院内の職員も、これはおかしいと思っている人がたくさん見えます。なぜこのようなことがまかり通っているのか、検証が必要です。