2007年01月10日

委員長の経済論(2)クール・ジャパン

GNCという言葉を皆さんはご存じでしょうか。

よく、経済指標の1つにGNPという言葉があります。
「グロス・ナショナル・プロダクト(Gross National Product)」…いわゆる国民総生産の略語ですな。

それに対して、GNCとは「グロス・ナショナル・クール(Gross National Cool)」の略語であり、これは2002年、アメリカの経済誌「フォーン・ポリシー」において、アメリカ人ジャーナリストのダグラス・マグレイ氏が初めて公に登場させた言葉なのだそうです。

ダグラス氏は、その国の国力を経済力で示すのではなく「どのくらいクールであるのか」というモノサシで測ろうとしたわけです。

「Cool」という英単語は、そのままの意味ですと、あたたか〜いつめた〜いの中間(なぜ自動販売機語?)

あるいは、人間の感情の温度差になぞらえて、情熱的でもなく、冷淡でもない、中間的な意味合いとして使われております。

しかし、現在の英語辞典で調べると、これらの意味の他に「格好良い」「イケてる」「はんぱじゃない」「心得ている」等の意味でも用いられており、これらは元来のクールの意味を凌駕して、世界中の若者たちの間で認知される言葉となりました。

その「クール=格好良さ」がどれだけその国にあるのかというGNCにおいて、日本は極めてGNCが高い国と、ダグラス氏は評価しているのでございます。



一時代前の外国人、とりわけ欧米諸国の人から見た日本のイメージはというと、「フジヤマ・ゲイシャ・テンプラ」といった偏見的なものが多数でした。

しかし、今や日本は世界から熱い注目を集めるカルチャー先進国へと発展しているのです。

その中心となるのは、日本の若者世代を中心としたポップカルチャー。

ファッション、J-POPS、アニメ・漫画、ゲーム、文学、食べ物、プリクラなどなど、様々な文化ソフトコンテンツが世界各地に輸出され、熱狂的な日本ファンを今現在においても増殖させ続けております。

その顕著な例として、週刊雑誌「BRUTUS」が今週合併号において、クールジャパンを特集していたので、その中から幾つかの記事をピックアップしてみます。

昨年、ドイツのオフィシャルシングルヒットチャートに、着物姿を着た4人組の日本人ユニット「シャナドゥー」が15位にランクイン。
彼女たちは日本語でパラパラを唄って踊り、そこにドイツ語の字幕がテロップとして流れるという異色モノ。
ドイツでは、ポップスや映画などに日本を題材にしたものが近年増加しており、日本を取り入れることが流行になっているとか。

イギリスではBBC放送が日本の文化を特集した「ジャパノラマ」という番組が、異例の好視聴率をマークしているそうです。
この番組は、イギリス人の独断的偏見で日本人を見た視点で構成されているそうですが、氷川きよしがオープニングで歌を唄い、パパイヤ鈴木がタイトルコールを喋るという、日本でもまず見ることができない濃ゆい内容になっているそうです(笑)
メイド喫茶やレイザーラモン、ロボット、コスプレアイドルなどを特集したのが好評で、現在第3シーズンの製作に着手しているとか。

また、ロンドンの地下鉄では日本人アーティストの描く作品が駅構内で展示されたり、ヒースロー空港やガトウィック空港では、日本のカプセルホテルを意識したコンパクト設計の日本式ホテルが今年春にオープンするそうです。

フランスは日本アニメを最初に欧州で放映した国とあってか、アニメ・漫画の熱狂的なファンが年々増加傾向にあり、映画「NANA」や北野作品の上映や、日本スタイルのファッションショー、日本アニメやマンガを展示するエキスポジャパンに6万人が動員されるなど、「ジャパニズム文化」は若者を中心に大々的な支持を集めてます。
そして今注目を集めている漫画は「きょうの猫村さん」とのこと(笑)

他にもイタリアでは「盆栽」や「禅」が空前の大ブーム。
ミラノには曹洞宗の寺院まであり、5人のイタリア人僧侶がお経を唱え、修行などを行っているそうです。

情熱の国スペインでは、シューズメーカー大手のカンペールが和食に注目し、おにぎりを中心としたヘルシーなファーストフードチェーン店を展開。

視点を他の地域にも目を向けてみると、たとえばアフリカのケニアでは、日本のコロッケ「コロちゃんコロッケ」が首都ナイロビに進出。
ブラジルのリオ・デ・ジャネイロの海水浴状では「SHIATSU(指圧)」が空前の大ブーム。
イランでは、TOTOのウォシュレット付水洗トイレをつけるのが市民のステータスになっているとのこと。
韓国では、日本のラーメン屋に長い行列ができ、ガンダム専用ショップには熱狂的なファンが集う…などなど、世界各地で日本ブームはとどまるところを知りません。

とりわけ、大きなうねりとなってクールなジャパンを受け入れているのは、世界の大国アメリカとロシア。

昨年、ニューヨークのSOHOにおいて「ユニクロ」が店鋪をオープンさせたり、日本を題材としたハリウッド映画の増加傾向、日本の焼肉屋「牛角」が進出したり、日本人バンドが市民から支持を受けるなど、アメリカ社会に日本の文化は静かに、しかし情熱的に浸透しつつあります。

近年、経済危機を乗り越えたロシアでは、経済がバブル状態になっており、モスクワでも富裕層が増加傾向にあるとか。
それによって、質の良い日本製品を求める消費者が増え、結果的に日本の文化も同時進行的に流入し、ブームとなっているようです。

日本でも流行語大賞になった「萌え」に代表される、いわゆるアニメ・漫画文化は、私たち日本人が想像している以上に、諸外国に受け入れられております。
つい先日も、麻生ローゼン閣下(笑)が外務省職員に、アニメなどのソフトコンテンツを勉強するよう支持したように、日本発祥文化なのに、肝心の日本人がそれを知らないという事態に陥っているのです。

たとえば、アキバに代表されるメイド喫茶。
今ではアメリカ、カナダ、ロシア、韓国、中国、台湾、タイ、欧州などにもあるのを御存じでしょうか。

日本のアニメでは、たとえばセーラームーン、ドラえもん、ポケモンなど、世界で100カ国以上で放映されているのです。

日本では「ヲタク文化」というレッテルを貼られがちなこれらカルチャーも、世界の人々から見ればクールなのです。

アニメや漫画の他にも、文学作品では村上春樹の作品が、世界を席巻しております。
最近では、ロシアや中国、韓国などで大ブームを引き起こしており、村上作品を皮きりに吉本ばななや京極夏彦といった、日本人作家の作品も続々と翻訳されつつあります。

あるいは、今や標準語となりつつある「和食」
寿司を例にとってみれば、世界中で寿司を食べる人が増えたおかげで、マグロの漁獲量が厳しく制限されたというニュースは記憶に新しいかと思います。

トヨタのプリウス、任天堂のゲーム機、数独…などなど、取り上げていけば枚挙に暇がないほどにメイド・イン・ジャパンの魅力は数限りなくあるのです。

そう、世界は日本を認めているのです。

ゆえに、将来、経済力では後発先進国に太刀打ちできなくなる日本にとって、持続的に世界をリードさせるカギを握るのは、この「クール・ジャパン」における、有形・無形の財産なのです。

資本主義の成熟後には「情緒産業」が台頭してくるというのが私の持論でもあります。
産業の発展段階は、幾つかのグループによって分けられます。
第1次産業は農林水産業、第2次産業は製造業や工業・建築業、第3次産業は金融・商業・サービス業…といった具合に、学校では習ったかと思います。

今世界をリードしているのは、第4次産業である通信業。
これは、グローバル化社会とブロードバンドによって構築されたインターネット間を決済される新たな業種です。
クールな日本というイメージは、このインターネットによって爆発的に世界へ知られました。

その後にやってくる産業、すなわちそれが「情緒産業」なのではないかと。
今の私の既成観念やイメージでは、具体的にどんな産業なのか、文章として書く事は難しいのですが、単なるエンターテイメントに終止するのではなく、双方向性があり、かつ個人間における新たな産業形態、人間の感情や欲求に直リンクさせるような業種、そういった未知の業種形態が出現してくるだろうと思ってます。

それは、今のクールな日本像を世界に発信している、私たちロストジェネレーションの世代が、大きなキーワードを握っているのではないかと。

団塊の世代、昭和30〜40年世代の人間は、いくら考えや価値観を若者に近付けようとしても、我々の世代の人間との感度は、水と油のような決定的な温度差があります。
つまり保守的概念に縛られているので、今後の安定生活の方に視線は無意識のうちに向いてしまう。

逆に我々よりも若い世代。
彼等は私たちにはないフレッシュな考えを持っておりますが、激動の時代を辿ってきた私たちよりは、遥かに温室的な環境にいた為に、やはり、安定生活の方に視線は向いているのではないかと思うのです。

ここまで書くと過剰的と見られるかもしれませんが、従来の社会観に絶望し、既成の観念を取り払える眼力を持った私たち世代には、他の世代にはない「何か」があるように思えます。

日本の経済は、緩やかな成長と衰退を今後も繰り返すでしょう。
しかし、ここにきて新たな価値観が芽生えつつあるということに、留意してもらいたいのです。この小さな芽が、日本の経済にとって大きなうねりになるような予感がするのです。

結論的にいうと、日本の経済形態は団塊の世代が大量退職をする今年から来年にかけて、大きな転換点を迎えつつあるということ。その先には情緒産業という形態が出現するのではないかということ。ロストジェネレーションの世代が日本経済の中心に台頭してくるということ。

これらの3要素が折り重なって、将来私の年金が無事にもらえればいいなと思う私は腹黒いですか?(真っ黒だな)

ここまで全部読んでくれたあなたに乾杯♪(笑)
Posted by kaikatsu at 01:03│ 時事問題