事業部門トップになる前に読む会計ブログ

グローバル企業(日本法人)のCFO経験を持つ公認会計士池田正明によるブログ。世の中の色々な話題や問題について、経済・経営・会計・財務の視点を中心に鋭く切り込みます。これから事業部門のトップや役員になるような方にぜひ知っておいて欲しい会計や財務の本質について発信していきます。筆者運営サイト「経営者のための会計塾」はこちら→http://kaikeiseminar.jimdo.com

社外取締役に経営経験者が増えている

  日本経済新聞によると、上場企業の社外取締役に、他の企業で経営経験がある人材(CEO,COO,CFO等を含んでいて、CEOだけに限定していないことに注意)を登用する動きが広がっているという。2014年に2千人だった社外取締役数は、2015年の企業統治指針導入後の2016年には、3倍以上の6千人超に達している。ただ、新聞に掲載された図表で見る限り、学者や弁護士等の社外取締役の絶対数は全体の35%で、残りが経営経験者等である。2010年以降、占有比率はさほど変わっていないように見える。

 

 経営経験者を重視するようになった背景は、会社が実務に基づく助言を期待しているからで、その一例として、今後、海外事業を強化する会社が、海外企業のM&Aを主導してきた他社CFO経験者を、買収した海外事業会社の企業統治の整備や収益拡大に助言をもらいたいと、会社が社外取締役に期待する役割が具体的で明確であるところが従来にない特徴だ。その他の例では、財務や人材開発の知識を経営監督に生かすという。これも具体的で、漠然とした期待ではない。従来は、社外取締役に、会社はどういう役割を期待したのだろうかと疑問を抱かせる例が散見された。

 

 学者や弁護士等が社外取締役として適任ではないということでは決してない。が、学者の方は、兼業との関係で、企業経営/実務の経験がかなり制限されるのが通常だろうし、弁護士はどうしても法律の分野に限定される傾向がある。会社に、こういうニーズがある場合は、コンサルタントやアドバイザーとして契約すればよいわけで、取締役であるからには、やはり、実際の経営経験が豊富なことが望ましいのは、ある意味、当然でもあり、理解できる。本件で言及した社外取締役の選び方が、本来の社外取締役のあるべき選び方だろうと常々、思っていたので、やっと本来の選び方になってきたと思う。

 

 現に、投資家は、社外取締役に学者や弁護士が目立つ日本企業を問題視しており、社外取締役をどんな視点から選任したのか曖昧な会社が少なくないと指摘する。過去の新聞報報道によれば、1人で45社も社外取締役を引き受けた学者の方もいたほどで、若干疑問に思う。米系の著名人材紹介会社では、今年6月に総会が行われる3月末決算の企業から、社外取締役に社長やCFO(最高財務責任者)経験者を欲しいという問い合わせが増えている。実際に自分が陣頭指揮を執って業績を向上させた実績とか、達成した背景や根拠等が裏付けされることが必要だろう。その人の持つ強みを明確に把握して、利用することが必要で、会社の大きさや名前だけで、全体的に経営経験をしたというだけでは、なかなか的確なアドバイスをし、また、受けることが難しいかもしれないと愚考する。経営経験者というだけでは、その人の強みは特定できないからだ。

 

 会社の進む方向性とも深い関係があるが、経営経験者だけに限ると、また人材の多様性に欠けることにもなるから、一般論としては、多様な人材のバランスが求められるだろう。金融庁でも、取締役会の人材の多様性確保が課題として挙がっていると記事は紹介する。外資系の企業等では、特に即戦力を求める傾向が強い。今後は、日本企業の社外取締役も即戦力を求められると推測している。社外取締役候補になってから、「決算書とは?」などの初級レベルの研修を付け焼刃的に行う話が新聞でも、過去に記事に取り上げられていたが、これではあまりに遅すぎる。そんなことは経営者として、当然の前提だからだ。ただ、現実には経営数字に強い人ばかりではないから、こういう研修が必要になるのだろう。

  数字の読み方や判断力は、自分では、わかっているつもりでも、実際にやってみると、意外に思ったようには判断できないもの。五感を駆使して、自分で実際に何度も現場体験してみないと、深いところは、なかなか掴めないのも事実。そのためにも、楽器やスポーツと同じで、普段から訓練を少しづつでも継続しておくことが必要で、総合的・体系的に書かれた本に準拠して、基本に忠実に、我流に陥らない判断ができるようにしておくことが非常に重要だと思っている。

仮想通貨について

   有用な情報なので、以下、日本経済新聞から、表題に関連する関連記事を抜粋する。
仮想技術を使った資金調達(ICO)では、トークンと呼ぶディジタル権利証を発行し、対価としてビットコインなどの仮想通貨を受け取る。個人がビジネスを支援する新しい形態だと言う。ICOは、2016年に世界累計で4100億円に達した。米国では、インターネット企業のICO調達額が現金を上回る。スタートアップ企業は、資金調達に数年かかるIPO(新規株式公開)よりも、3か月程度で準備できるICOに注目していると言う。現に、決済サービスのOmise Holdingsは法定通貨や仮想通貨、ポイントをつなげるネットワーク開発のためにICOを実施し、目標の8倍の2億ドル(220億円)の応募があった。社長曰く「迅速に資金を集められるICOは時代に沿った資金調達手段だ。」

  しかし、有価証券とは異なるICOは、会計上の資本に計上する必要がなく、規制の枠を外れる。株式のような議決権もなく、情報開示ルールは存在しない。濡れ手に粟でマネーが集まるとみて詐欺まがいの例も出てきた。無法者が横行するワイルドキャピタリズムの状況にある。株式会社は長い歴史の中で幾多の失敗を繰り返しながらイノベーションを育む経済制度として定着してきた。18世紀の英南海泡沫事件(株式取引に絡む投機がバブルを生んだ)を教訓に会計監査制度が誕生。勅許会計士(公認会計士)が誕生した背景だ。19世紀に英米で会社法が成立し、近代資本主義の基礎ができた。粉飾などの不正は絶えず、エンロン事件を機に投資家保護の米企業改革法(SOX法)が整備された。
以上で抜粋終わり。

   2018.1.17
に、ビットコインの価格はわずか1日で4割下落。ここまで加熱して、マスコミで取り上げられるようになった事自体が、バブル時の典型的な現象の一つだったのではないか。過去のバブルは、すべて同じ現象を繰り返しているように見受けられる。仮想通貨は相当な数があり、ビットコインはその一つである。以下に、仮想通貨について、賛成派、様子見派、否定派の意見を最近の新聞記事とウェブ情報から、まとめてみた。

 

【否定派】

1.2018.1.12 の日経新聞によれば、ビットコイン先物を使った上場投資信託に対し、米国証券取引員会(SEC)が否定的な反応を示した。同先物の流動性や価格の妥当性について懸念していると言う。米国SECの影響力は大きい。

 

2.著名投資家ウォーレン・バフェット氏は、米国TVのインタビューで、「仮想通貨は、ほぼ確実に悪い結末が来る。金融派生商品で仮にプット(将来的に売る権利)が買えるなら、喜んで買う」と懐疑的な見方を示した。

 

3.中国や韓国は、仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)を禁止した。英国では「高リスクで投機的」とICOに警鐘を鳴らしている。

4. 『アフター・ビットコイン』の著者、中島氏は日銀国際局や国際決済銀行(BIS)出身の決済の専門家で、国際送金や電子マネーに詳しい。否定論を論理的に説明している。(2017.12.28 当ブログ記事参照)



【中立か、様子見】

1.金融庁は新たな規制をかけることには慎重だと言う。

 

2.TVで、女性経済評論家のK氏が「よくわからないものには、近寄らない方がよい」と発言していた。

 

【賛成派】

1.SBIホールディングス社長氏は、実用価値がないチューリップバブルに対し、仮想通貨はブロックチェーンという先端技術をベースにしており、様々に活用できると、バブルがはじけたとの見方を否定する。

①仮想通貨「XRP」は送金コストが低く、決済などの処理速度が速い。実用化が進めば、膨大な維持費用が掛かる銀行業界送金システムが不要になるだろうと言う。
②仮想通貨が決済手段としてより広く使われるようになるのは、価格変動がもっと小さくならないといけない。これには先物などの金融派生商品(デリバティブ)の普及(による流動性の拡大)が重要になる。個人投資家向けの仮想通貨先物を日本にも導入する方針であると言う。

2.2017年9に「ビットコインはチューリップバブルより酷い」と発言したJPモルガンチェイスのダイモンCEOはその発言を後悔していると言う。新聞では、転向の根拠には何も触れていない。金融界でも見方が定まっていないと新聞は結んでいる。

3.元IT企業経営者で、現在は評論家的な発言も多いH氏は、週刊誌で今年がビットコイン元年になると言う。

  
  上述の賛成派の1.①メリットは大きいだろうとは推測できる。ただ、その技術と仮想通貨との必然的関係が明確に説明されていない。②の仮想通貨は、そもそも建前上、決済手段として使われるために、考案されたものではないのだろうか?実際には、投機目的に使われており、価格のバブル化が懸念されていた。それが暴落した。決済手段になるためには、価格変動が小さくならないといけないと言う。それはそうだろうが、本末転倒であり、違和感がある。広く、決済手段として使われるためには、デリバティブの普及が重要というが、米国SECが否定的見解を表明した。今後、どうなるのだろうか。

  資金調達する側から見れば、速く資金調達できるICOのメリットが魅力的なのはわかる。しかし、4百年もかけて順次、整備してきた今の資本主義を支える制度に抵触するような致命的弱点を放置したままではまずい。整備しないといけない。そうでないと、現制度との比較で、Unfairな制度になる。現段階では、法整備を含めて未成熟だ。これを時間をかけて漸次、整備していくのか、最初から受け入れないと拒絶するのか、どちらかになるのだろう。

生産性を上げれば、人口減少を悲観する必要はない!

  人口減少が続く日本には、最近、悲観論が目につく。曰く、年金を受け取る人が増えるのに、支える人が少なくなる。消費や投資などの需要が減少し、経済規模が縮小する。家を建てる人も少なくなる。いろんな視点から、マイナス面が論じられている。人口が減少するから、経済も縮小し、日本の将来には希望が持てないと主張する若い人も少なくない。当ブログにも、そういうご意見をいただいたことがある。しかし、こういうときにこそ、逆転の発想が必要だし、有効だと思う。そのような通常の発想、常識の発想に「そうかな?」と疑問を持ち、逆のことも、ある意味正しいのではないかと敢えて考えてみることも、知的探求心を満たしてくれ、面白さなのだと思うことがある。例えば、人口減少問題はその一つだ。こんなに人口が多いから、狭い土地に人がひしめき合って住んでいるのだ。人口が少なくなれば、一人あたり土地面積は広くなるのではないか。そうすれば、もっとゆったりと過ごせるのではないか。それが正しい帰結になるかどうかは別として、物事を考える端緒にはなるはずだ。

  「人口減を逆手に生産性上昇をめざせ」の記事(日本経済新聞「経済教室」)は、今こそ必要且つ有用な思考ではないかと感じる。
科学的に分析・洞察しているので、参考になる。未読の方のために、下記に著者である学者の方の論旨を要約させていただく。但し、筆者の方法で要約したこと、筆者が感じた事も併せて付記させていただいた。

 

 GDPにより測定する経済全体の産出量を次の3つの要因に分解する。

人口 ②労働参加率(=労働力÷人口)③労働生産性(=産出量÷労働力)

上の①から③までの計3つの要因を掛け合わせると、GDP産出量になる。

GDP産出量   この式を微分すると、次の式を得る。これが有用である。

GDP産出量の増加率=①人口増加率+②労働参加率の上昇率+③労働生産性上昇率

 

つまり、GDP産出量の増加率(=GDP経済成長率)は、次の3つの要因に分解できることがわかる。

人口増加率:経済成長にとって、人口が大きい方が有利だと多くの人は思っているが、果たして、人口増加率は、厳密には、経済成長にとって、どの程度の貢献要因なのだろうか?それが知りたい。記事は、この要因は、経済成長率に、さほど寄与していないと言う。逆に言えば、人口減少率も、経済成長率には、一般で考えられているほどの大きなマイナス要因にはならないと考えられるということだ。

 

 記事では、終戦直後には、今とはまったく逆に、人口過剰問題が懸念されていたと言う。戦後、内地へ数百万人が復員し、加えて、第二次ベビーブームが起こった。当時、非合理的で無自覚な出産による人口増加をやっていて、全国民を食べさせていけるのか?という重大な懸念が新聞記事に載ったほどだと言う。同じ人口問題を扱うが、戦後すぐは過剰問題、今は、人口減少問題と真逆の受け止め方である。

 

労働参加率の上昇率:労働参加率とは、人口全体に占める就業者数の比率である。老齢者が増えると、働き手が少なくなり、上昇率は鈍り、むしろ、下落する(マイナスに作用する)。これを回避するために、引退年齢の引き上げで、老齢者にもっと社会に参加し、働いてもらう。女性の社会参加も非常に重要で、現在は増えている。年金受給の開始年齢を引き上げる等の施策も試みられている。しかし、この要因の貢献度も僅かであると言う。

 

労働生産性の上昇率:3つの要因のうち、最大の要因は、労働生産性の上昇率だと主張する。これを示すために、記事では、次の表が記載されている。

 

 年代   実質経済   人口   労働参加率   生産性

        成長率増加率%  上昇率%   上昇率%

1956-65        8.60           0.96                0.36                7.28

1966-75        7.45           1.30            0.24     6.39

1976-85        3.80           0.78                0.35                2.67

1986-95        2.98           0.37                0.75                1.86

1996-2005    1.13           0.17             0.20      1.14

2006-2015    1.06        0.11     0.03               1.16

 

  生産性上昇率が、実質経済成長率の最大の貢献要因であることが一目瞭然である。要は、生産性を上げれば、経済成長率を上げることができることが分かったわけだ。記事では、紙面の制約であろうが、生産性を上げるための方策については触れられていない。以上で、要約終わり。


  導入すれば、生産性を上げる以外にも、経済成長率が大幅にアップするだろうと考えられるサマータイム制導入を紹介したい。現在、週休2日制が広く普及し、国民の祝祭日の増加もあって、労働日数が戦後の時期に比べて、かなり減少している。多くの人が祝祭日という限られた特定日に旅行に余暇に出かけると、宿泊設備や交通システムの稼働率はフル操業にはなるが、その日だけの効果に終わる。祝祭日を増加させても、経済成長には、思ったほどの経済効果は期待できないと考えている。逆に、祝祭日を最低限に抑制して、全員が自由に有給休暇を完全消化できるように奨励したほうが、マクロ的には、余暇の価格が下がり、分散した休暇の日々に、もっと長期で宿泊施設や交通運輸設備の稼働率を上昇させられる。国民にとっても、安い価格で余暇を楽しめるメリットがある。こちらのほうが、経済成長にはより効果的だと考えられる。

  有給休暇の消化促進の普及は、生産性を上げるためにも役に立つ。労働時間は若干短縮するだろうが、身体と頭脳のリフレッシュによる生産性上昇を期待できる。短い労働時間になれば、必然的に無駄で効果がない仕事の取捨選択が進み、生産性が上がるからだ。このように、サマータイム制の導入は、経済成長には相当有効だと思うが、そのためにも、建前でなく、ホンネで議論できる国民文化が必須である。物事は結局はホンネでしか動かない。導入に障害が懸念される点は、導入がむしろ長時間労働につながるリスクがあることだ。ホンネの議論が必須と言うのは、その障害を完全に取り除くためである。その時の都合によって、建前を使い分けることが当然の文化が続く限り、問題は本当には解決しない。

  もし、サマータイム制を導入できれば、余暇時間が平日にも大幅に増え、モノ消費だけでなく、体験的なコト消費が必ず増える。日本では、夏は午前4時すぎにはもう日が昇り、明るくなる。午前9時就業開始では、
5時間の日照時間を完全に非生産的にしている。賃金をもっと上げて、生産性を上げ、今より5時間早く仕事を終わらせれば(労働時間は同じで変わらない)、毎日、5時間を家族との団欒や各自の自由余暇時間に使える。賃上げで、お金を今よりも、モノ・コトの両方の消費に回せるようになる。これで、相当な実質経済成長率上昇が期待できると思う。

  平日からもっと余暇時間が使えれば、相当な経済成長が可能だ。何しろ、手つかずの5時間が有効利用できる。日本が高度経済成長できたのは、皆が猛烈に働いたおかげだ。しかし、今は単線型の生き方から、多くの選択肢が広がる複線型で生きる事が可能な時代だ。サマータイム制の導入には、大義名分がある。やらない手はないと思う。本論とは関係ないが、東京オリンピックにも、サマータイム制の導入は有効ではないだろうか。

プロフィール

マーク池田

できる人の決算書の読み方
新版:企業価値を高めるFCFマネジメント
グローバル・ビジネスパーソンの「会計&ファイナンス」厳選27項
営業の基本理論が3日でマスターできる本
  • ライブドアブログ