73日の夜明けは、日本が世界ランキング3位の「赤い悪魔」ベルギーを相手に、ベスト8の切符をほぼ確実に手中にしかけていた夢が潰えた瞬間だった。その僅か30分前には、日本の絵に描いたようなシュートが2本も決まって、ベルギーはまだ無得点。こんな展開を誰が予想したであろうか。いい意味で、期待を裏切る大活躍をしてくれた。そこまでは、最高の展開で、理想的だった。国民の皆が狂喜したし、自分もそうだった。幸せを感じた瞬間だった。

  あと
30分だけ頑張ればいいのだ。しかも2点差だ。サッカーのその差は、野球の5点差以上はあるかもしれない。普通のチームなら、安全圏内だ。が、今回のベルギーは世界1になる可能性もあるチームだ。守備力から考えると、速攻やカウンター攻撃に弱い日本。逆転の可能性も、ふと頭をよぎった。その恐怖心が、ほどなく、現実になった。悔しさが込み上げてくる。でも、自分たちよりも、ピッチの選手や監督の方が悔しさはもっと大きいはずだ。

  今回のワールドカップは、世界レベルで通用するレベル(人)の識別が、よりはっきりと認識できる大会だったように思う。戦前の大方の予想に反して、決勝トーナメントに進めたこと自体、日本が本来持っている実力を出す機会に恵まれた試合展開になった。監督がチームの雰囲気をそうさせたことも忘れてはならないと思う。西野監督の采配は、グループリーグを突破した今までの歴代の代表監督よりも、試合マネジメントの多くの点で、一日の長があったのではないかと個人的には感じている。


  ただ、監督は、ポーランド戦とベルギー戦の自身のベンチワークには大いに後悔しているとも語った。それが、今後の日本の財産になるとも。その点は同じように感じた。結果論だが、ベルギーとの試合での監督の采配が異なっていれば、ベスト8に行けたかもしれないと思う。個々人の能力の更なる底上げと、監督の試合マネジメント能力の更なる向上がベスト8になるための必要条件になると再認識した。日本に先行されてからのベルギー監督の采配は、ピタッと的中し、素晴らしかったと思う。今回のメンバーには、次の2022年に参加するであろう人も結構残っている。この経験を糧にして、更に上に行ってくれると期待している。

  ベルギーの決勝点について、当のベルギーのサッカー解説者も言う。「日本は、CKを蹴る前に、レフェリーに残り時間を確認すべきだったと」「日本は、残り時間を考えれば、ショートコーナーでリスクマネジメントすべきだった」と。合理的に考えれば、全くその通りだ。まだ、22の同点で、負けている訳ではない。1秒を焦って、GKを除く全員が相手PA内に前がかりで攻め入るシーンではまったくない。リスクマネジメントを考えているのかな?とすぐに不安になった。ベルギーは超速攻のカウンター攻撃を常に狙っているチームという戦前の分析結果どおりだった。これは批判ではなく、分析の再確認である。日本の監督の試合後のインタビューを聞いたが、監督は、その一瞬、リスクマネジメントをまったく忘れ去っていたと言う。まさか、そんなことは起きるはずがないと。これが怖いのだと、改めて感じさせられた次第である。監督自身がこの反省が財産というように、この反省が次回に活きれば、今回の悔しさも将来の発展に役立つバネになると思う。

 


  柴崎の見事な縦パス1本が、原口の素晴らしい得点に結びついた。香川の絶妙のヒールパスが、乾の素晴らしい無回転シュートを呼び込んだ。逆に、相手の手数をかけない縦へのパス1本、PAでの技術1本でいとも簡単に日本の守備陣が崩されるのをこれまで何度も見させられてきた。今回だけは、ヒヤリでは終わらず、一縷の望みまで絶たれた。守備の安定度を上げるため、やるべき改善の余地は大きい。GKは、いい意味でも、悪い意味でも、試合を決定づける影響力を持つという当たり前のことを今回ほど認識させられたワールドカップはなかった。個人的には中村を一度でも使って欲しかった。植田なども、今回、試合に一度も出られなかった。次回を考えれば、今後のチームの中核になるべき人材に、貴重な経験を積ませたかったなあ。

 

  全体として見れば、日本は、現時点で、持っている力を出し切った最高レベルの戦いをしたと思う。つかの間だが、夢も見させてもらった。お疲れさま!と言いたい。日本の試合は終わった。日本の試合の大半は、サッカーの持つエンターテインメント性がフルに楽しめたゲーム展開だった。この後も、サッカーの楽しさを味わい続けたい。ありがとう、サムライブルー!