AIの進展には、ポジティブとネガティブの両側面がある。単純労働がAIに代替され、近い将来、人は単純労働をやる必要がなくなり、もっと楽で生産的で付加価値が高い仕事に専念できるとの楽観的予測もある。事は、果たして、そんなに単純なのだろうか?確かに、AIがもたらすプラスの側面は多々あるのは周知のとおりだ。ただ、すべての人が生産的で付加価値が高い仕事にありつけると考えるのは、あまりに楽観的すぎるのではないか。AIが、今ある仕事のうち、かなりの部分を奪うのは確実だろう。であれば、 AIができないような、生産的で付加価値の高い仕事をするには、今まで以上に、知識/知恵/技術の習得と思考力を身につける必要があるし、やる気(Motivation)が求められるのではないだろうか。

   AIのマイナス面の代表例の一つは、戦争への際限なき利用だろう。未来の戦争は、AIによる戦争が、人間が行う戦争に確実に取って代わるだろう。今、人類にとって脅威でしかない悪徳国家やハッカー集団が多数、インターネットの闇社会で暗躍中だ。AIの進展は、そんな国家やテロリストに真っ先に悪用されるだろう。誰も望まないが、一歩間違えば、人類滅亡を引き起こす可能性もある。物事を楽観的に考えるタイプの人が予想さえしなかった悪夢に、我々は苛まれることになるかもしれない。これは、今、真剣に議論され始めている。

   AI
に限らず、すべての事に、楽観、現実的、最悪の各シナリオを想定しておく必要があると思う。いずれかのシナリオだけが起きるとは限らず、むしろ、複数のシナリオが同時並行的に起きる可能性の方が強いだろう。最悪のシナリオを考えることは、言うまでもなく、それを望むからではない。「悪いことを想像したり、言うと、悪いことが実現する!」は、古来からの言霊(ことだま)信仰だ。行き過ぎると、何も考えないほうが良いという思考停止状態を招きかねない。

 

  ところで、617日付けの日本経済新聞の記事で、政府は2019年度から、建設・農業・介護などの5分野で単純労働を含めた外国人労働者の受入拡大を閣議決定した。批判を避けるためか、「労働者」という表現で曖昧にしているが、ある識者は、実質的には、『移住者』を指すと言う。政府は、2025年度までに50万人を計画している。当初の50万人の職業人の受け入れは、将来増える家族を含めて、150250万人の規模に膨らむ可能性がある。これら単純労働の外国人受入れをどう見るかで、以下4人の識者の考えが紹介されている。

 

1.野村総合研究所顧問(増田寛也氏・元総務大臣)の意見は、「地方の人材不足解消につながる。家族の生活や日本語教育を支援する制度設計が課題だ。実行部隊を自治体とすべきだ」


2.慶応大学商学部教授(中島氏)の意見は、「高齢者や障がい者など国内の未活用労働力をまず生かすべきだ」「永住要件の緩和の是非など長期的なビジョンがない。将来への影響を慎重に検討すべきだ」


3.日本総合研究所主席研究員(山田氏)の意見は、「産業界を中心に外国人労働者のニーズは高い。条件を生産性が向上しても業種の存続が危うい場合に限り、自治体は共生に取り組む必要がある」


4.みずほ銀行チーフマーケットエコノミスト(唐鎌氏)の意見は、「外国人材受入で労働力人口を増やすことは、日本の潜在成長率を押し上げる。同一労働同一賃金にとどまらず、さらなる雇用改革をセットで進めるべきだ。

 

  私的には、2.の国内の未活用労働力をまず生かすべきという意見に、『優先順位の高さ』の尺度で、説得力を感じる。働く意思があり、社会に還元できる十分な知識経験を持っている人が、筆者の地域社会にも結構いる。働けば、年金が減らされる現行年金制度は、働く意欲を阻害する。労働力不足を主張するなら、大きな矛盾を抱えている。労動力の増大に逆効果しかもたらさない制度の一部分は、即刻、廃止したら、働く人はもっと増えるはずだ。ある調査によれば、自発的に働きたい退職後のシニアの国内人材は7~8割もいる。それに、政治や社会の力で、障害者や、労働意欲が薄い人達にも、もっと雇用機会を提供できるはず。未活用労働力をまずは最優先で活かすのに同意である。

 

  単純労働力が不足するから、それだけを確保したいというのは、虫の良い主張だろう。例えば、外国人技能実習生受入等も、本来の趣旨から外れた使われ方をしているケースが少なからずあると聞くし、運用面のチェックが行われていないと批判もされている。人はモノじゃないから、受入要件を緩和するには、長期的ビジョンが必要だろう。しかし、中島教授の指摘では、真剣に考えているのか疑問を呈している。

  尖閣諸島に不法侵入した中国船舶から仕掛けられた武力衝突事件で、事実を隠ぺいしたり、日本は、日本人のためだけにあるのではないと言った2人の元首相。外交や地政学の視点が欠如すると、国民の安全が脅かされることは、歴史が証明している。怖いよ。以降、日本組みしやすしと侮られ、領海侵犯が止まない。ビジネスや私事で外国人とさまざまな形で関わった経験がないと、国際関係の事を簡単に考える傾向がある。外国人に対する免疫力が少ないと、そこに含まれるリスクを適正に評価しにくいよね。

  企業は、成算もなく、人は増やさない。人が足りないと言っても、もし、売上を超える費用が、追加で増えるとわかったら、間違いなく、企業は人の採用は止める。外国人材の単純労働力がもたらすメリットと、それに伴うあらゆるコストとディメリットをきちんと検証したのだろうか。

  民主主義が根づいていない国からも移民が来るだろう。「郷に入れば、郷に従う」のは国際常識だが、自国の習慣と行動を強引に持ち込み、日本に溶け込まない場合は、様々なリスクが現実化しやすい。単純労働受入は、様々な潜在的な問題を含んでいるのは、欧州でも実証済みだ。国際政治学者の藤井厳喜氏等も警鐘を鳴らしている。シンガポールのように、高度な知的労働力を持った外国人材をこそ、更に受け入れる方向を進めるべきで、単純労働受入に舵を切るべきではないと思うのだが。リスクを承知で、単純労働を受け入れるなら、将来、想定外の事態が起きて、様々なリスクが頻発したら、何か有効な手を打つだけの政策を実行するだけの胆力を政治家に持って欲しいと願う。

 4.は、外国人材受入で労働力人口を増やすことは日本の潜在成長率を押し上げると言う。1.も3.も、この問題を経済だけで考えている。しかし、経済の議論だけで済ませるトピックスではないと思う。人を受け入れることは、生活と居住等すべて、最後まで面倒を見ることを意味する。そこまで腹をくくっているのだろうか。あまりに単純に物事を捉えていなければ幸いである。杞憂であることを祈る。あくまでも一つの意見を述べさせていただいた。謝々。