以前東京ドーム公演を達成した日本人アーティスト一覧(*1)を書いてその集客の難しさを述べたが、
その中でも異例とも言えたのが、「氣志團」ではないだろうか。
他のアーティーストと比べ唯一ミリオンヒットを持たずにドーム公演を行ったミュージシャンである。

何故、大ヒット曲のない彼らが東京ドームを満席に出来るほどの集客力を持つのか?
そこには綾小路 翔の緻密な計算が隠されている。

通称KISSES(キッシーズ)と呼ばれる10代、20代の若い女の子を中心とした固定のファン層
これはバンドをやっていればある程度つく、固定のファンとも言える。
他と違うのはヤンキー文化を取り入れる事によって得る特定のファン層
そして80年代の音楽シーンをふんだんに詰め込みパロディにする事で得る30代以上のファン層(*2)


私もコンサートに行った事があるがファン層は見事にこの3つにきれいに分かれていた。
他のアーティストでは得ることの無い特定のファン層を得る事によって、
ヒット曲を持たない彼らでもドームや氣志團万博などを行うほど信じられない集客力を持つのである。



あの時代で奇抜ながら緻密に計算されたアーティストと言われると、森高千里をあげたい。

非実力派宣言 / 森高千里
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森高が当時20歳であった1989年に出したこの「非実力派宣言」はある意味衝撃的であった。

自ら全て作詞を担当した森高は、自虐的とも思える歌詞を連発する。

はじめから私はこんなものよ」 「悪いけど私は歌が下手よ
実力は興味ないわ 実力がないわ

その他に収録されている曲もインパクト抜群な曲ばかりであった。
5.今度私どこか連れていって下さいよ
6.はだかにはならない 
7.私はおんち 


コミカルさばかりが目立つが、森高ファンの間ではアルバムとしての完成度でこのアルバムを一番に推す人は多い。

またビジュアル面も注目したい。
彼女は「17才」を歌っていた頃から、カメラ小僧と呼ばれる一部のコアな人達の間で彼女の美脚に注目が集まりだす。
普通ならそこで敬遠するものだが、森高はそれを逆手にとって、
自ら奇抜な衣装とミニスカで、より美脚をアピールする方法になる。

通常のアイドルが行う清純さを、自ら逆手にとった手法とも言える。
このアルバムのヒットにより彼女は、他に類を見ないアイドルとして世間に認知される。

その後、この系統を継承するコミカル路線
(例)「臭いものにはフタをしろ」「ロックンロール県庁所在地」「ハエ男」など

そして、作詞をしている事を全面にだし、アイドルとしては異例の女性層のファンを付けたのが大きかった。
(例)「雨」、「渡良瀬橋」、「私がオバさんになっても」「気分爽快」など

彼女は自らのアイドルという立場を皮肉った形で非実力派宣言をし、宅八郎に代表される忌み嫌われる事の多いオタクの人達を自ら誘い込んでいったのである。
そして「オタク好きなアイドル」で終わらぬ様に、渡良瀬橋などのバラードで女性層をファンをも得る事によって、彼女はアイドルからアーティストへと脱皮する事が出来たのです。


突拍子にないように見えた「非実力派宣言」には、緻密な計算と策略が隠されていたのです。


(*1)、音楽の聖地は何処へ? 
(*2)、氣志團 元ネタを検証