この時代・・ 
そして特定の地方でしか起きてなかったであろう、あるムーブメントがあった。

それは、変形学生ズボンである。


若き日の尾崎がピンボールのハイスコアを競っていた頃、私はズボンの太さ(細さ)を競うという、世紀末の狭間の悲しい時代に降り立っていたのです。



もうすっかり忘れてしまっているので、基本的な知識をおさらいしておきます。
学生ズボンは、

タック数 - ワタリ - スソ

のその数値で価値が決まると言っても良い。

誰もが入学式で着ている「標準型学生服認定基準」を満たした、通称「標準ズボン」は

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0(タック数)-33(ワタリ)-23 (スソ)

となる。 この数字が基本となるので覚えておいて欲しい。



<レベル1> ワンタックズボン

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まるで車の全く通らない車道での信号無視のような、校則違反と呼べるかどうかの微妙なラインである。標準学ランの裏ボタンだけを変えてみる同様、その後へと続く初歩的なステップとなる。その他標準ズボンとの違いは、後ろ中心のベルト通しがクロス( X )になっており、それだけで男心をくすぶるのだ。中学1年の夏頃から冬にかけて真面目な生徒も含んで広がる最初の遊び心ともいえる。


<レベル2> スソ細ズボン 

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キュッと締まる足元がこの時代の流行であった。スソが20をきるかどうかがポイントである。17をきるとはく時に足が通らず、これ以下の細さになるとチャックになっており、そのスソの細さが競われた。細身で足が長い人間がはくと標準ズボンの様に違和感なく、生活指導の先生も見逃す傾向があった。


<レベル3> ツータックズボン

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このレベルにくるとタックだけ入れてワタリ、スソが標準サイズと同じという訳にはいかない。進学校で校則の厳しかった私の中学校では、ワンタックで先生のご機嫌を伺うというのが最高のつっぱり方で、ツータックとなると超える境界線の意味合いが変わってくる。中学2年になると挑戦するつわものも現われたが、そんな日は学校中がざわめき、我々の間では「あっちの世界にいってしまった」と敬礼をしたものであった。色もパープルという摩訶不思議な色が混じってくるのもこのクラスからだった。


さて、ここからはその道の専門店でしか買うことが出来ず、「ブラックデビル」「雷神」「悪の華」などそれぞれ名前がついていた(笑)。たぶん皆さんの地域ごとに五感を刺激する名前があったと思います。


<レベルX> 名前つきズボン

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このクラスになるとワタリも3段階ほどの謎の数値を挟むようになる。忘れもしないこのズボンの名は「バラモン」であった。「お前らギルぞ!」 (注1)の名言を残したKが、学校にいる間は標準服を着て過ごし、放課後にトイレでこれに着替え、帰宅中だけ履いていたウソで体裁かざる鮮やかさが今でも忘れられない。


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通称ドカンと呼ばれるもので、長ラン同様、残念ながら私の時代ですらこれを実際に履いている人間を見たことがない。もう少し上の世代の先輩方のものであろう。劇場版 ビーバップハイスクールや金八先生第1シリーズのマッチの回でそれは観る事が出来る。




これらの変形ズボンを買う時は専門店でベンクーガー、ジョニーケイなどのメーカーのパンフレットを手にとり、そのズボンをはいた自分のイメージを膨らましていくのだ。どのメーカーのパンフレットも大体以下のようなイメージショットであった。

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これら偏った変形ズボンは抜群の足の長さがあって成り立つもので、自分のスタイルで着る事の悲劇を、誰もが学校に行ってから初めて知る事となるのです。


散々、そのズボンの太さを競い合ったものの、高校に入りブーツカット(0-32-28)なるズボンが流行り、チーマーファッションの浸透と同時にこの独自の文化が衰退していくのを、ちょうど見届ける最後の世代となってしまったのです。