ビー・バップ・ハイスクール のデブキャラ

大前 均太郎 (きんたろう

通称:キン 

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映画 「高校与太郎狂騒曲」 (1987年)より

を覚えているだろうか?


20年にも渡って長期連載される舞台となった愛徳高校の主要登場人物での一人である。いや、あったが正しい表記だ。後輩ながら腕っ節の強さでヒロシ・トオルの危機を幾度も救ってきた。
しかしこの均太郎(きんたろう) は初期の頃からの中心メンバーでありながら、中途で信じられないほどの鬼畜へと変貌し、突如退学処分となってこの漫画から消えていったのだ。それも前フリ・伏線なしのたった一話で変貌する、異例すぎる解任劇だった
もう忘れた方の為にこの時の話を簡単に説明すると、キンは他校の生徒をかつあげしそれが学校にバレる。停学を免れるため先輩のノブオが土下座し一時は処分を免れるが、反省もなくまた同じ相手にかつあげを繰り返し、結局退学処分が決定した。ノブオの顔をつぶした事をトオル達に攻められると悪態をつきながら、去り際に「気つけてください。俺みたいなヤツがヤクザになりますから・・」と信じられない捨てセリフをはき、全員をドン引きさせ、このマンガから消えていったのだ。

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 (コミック15巻 「小悪党放薄物語」より) 

その悪ぶりも派手さもなければ、伏線も裏事情もない。
読者になんともいえぬ後味の悪さのみ残して本当に消えていったのだ。
派手なストーリーありきの青年誌とは思えぬ、異例の展開だったのだ。

一体何があったのか?

この当時ささやかれていたウワサは、ビー・バップ・ハイスクールの主要登場人物は、作者のきうちかずひろ氏の身近にいる実在する知人がモデルだと本人も公言している。そしてこの均太郎のモデルとなった知人が、プライベートできうち氏に信じられない裏切り行為を働き、それに激怒したきうち氏が、突如、均太郎を外道キャラに変え、絶縁の意味をこめてこの話を書いたのだという。これは、あくまでもウワサだ。

この本当の理由をきうち氏自らインタビューで語っており、この均太郎の解任劇の真実を知ることが、このマンガの本質を知ることに繋がるのだ。


----ジュンやシンペーと比べ、均太郎は登場回数が少なかったですね?

きうち氏 「ジュンとシンペーといえば、ミニ、ヒロシ&トオルなんですよ。そうすると均太郎がどういうキャラかわからなくなる。わからないから、どんな話にもいまいち絡みずらい。じゃあ特別好きなキャラじゃないから消してしまおうと(笑)」

ーそれで退学に?

「ええ、派手な事件を起こしてとか、みんなに憎まれながらじゃなくて、現実にありえるイヤ~な消え方っていうのをやってみようと思ったんですよ。その結果がことさらセコい事を繰り返して退学になるあのエピソードだったんですよ。
実際問題として現実にはいるんですよ。ああいうタチの悪い不良というのが。そうしたダークサイドに触れてみようと。ただ、「BE-BOP~」のキャラはしょせんみんなに愛されてなんぼのキャラだから、そこまで悪質な一面をみせたらもう排除するしかないんですよ。もう世界観が違うわけですから」

(引用元 「俺たちの好きなBE-BOP-HIGHSCHOOL」(宝島社)より)



このマンガのすごいところはここにつきる。
ガキの頃からの付き合いの長い友達でも思春期の過程で、どうしようもない腐りきった小悪党になるものが、一人ぐらい出てくるものである。半ズボン姿の昔の無邪気な顔を知っているだけに、知らぬ間に手の届かぬ外道へと変わったことへの後味の悪さはずっと残り、誰もが大人になる過程でで経験する道なのだ。このリアルさの追求がこのマンガの魅力といえると思う。


その他にも「BE-BOP~」には名前だけ出てきて、最後まで登場しなかった人物が何人もいるのがまた興味深い。通常のマンガでは前フリをしておいて登場させないなんてありえない。しかし、皆さんの昔を思い出してもらえば○○中学の○○と派手なウワサと共に名前を聞くも、現在に至るまでお目にかかっていない人物はいないだろうか? この年頃の話は、誇張しながら伝わっていくもので、実在するのも怪しいこともある。

そしてこのマンガの最大の謎だった高校が通称:ヤクザ養成所の戸塚水産高校である。かなり初期から登場してくる学校だが、ネコ次ヘビ次の登場のみで、結局最後まで戸塚No1の岸直樹はほとんど登場しなかった。これについても興味深いインタビューがあった。



ーあまり出てこなかったキャラクターや学校がありますが、なにか理由があるんですか?戸塚水産とか。

「簡単に言うとすべてを明らかにしたくなかったんですよね。実際、僕の地元にも水産高校あったんだけど、そこにはいろんな高校を退学したヤツの集まりとウワサだった。でも実際はほとんど見た事なくて、ずっとなんとなく怖いというイメージだけがあった。戸塚水産もなんとなくヤバイという雰囲気を漂わせておきたかった。




田舎にとって駅をひとつ超えるとそこは別世界なのである。
城東工業高校を「与太高」、立花商業を「寺小屋」と呼んでいたように、勝手なイメージでその学校の愛称をつけ、結局そのウワサ通りの学校だったかは知ることなく、学生生活は終わるのです。

すべてを明らかにせず、ボカす部分をあえてつくるとは他の不良マンガにない独自のものだと思う。実際このマンガの主要メンバーの家族構成は、50巻も出ながら全く不明である。喧嘩だって全面戦争になる前にスカして終わることが多い。暴走族は一切出てこない。ヒロシ、トオルは最強のキャラではない。

こういった不必要な部分を排除し、盛り上がらなくとも無理のない現実的な設定がよりリアルに繋がり、このマンガが長年愛読されてきた理由にも繋がっているのです。


まぁでも、均太郎が消された理由は、モデルとなった知人への個人的な仕返しも、実は半分はあったんじゃないかと思っています。
この作者の人間臭さも、これまたリアルという事で(笑)