木村拓哉と堤真一のFM-VのCMを観る度に封印していたある忌わしい記憶がよみがえってきて、両手で頭を抱え込んでしまう。

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それは今から8年ほど前の出来事である。

休日で朝から引っ越しの荷降ろしをやっていたのだが、急遽仕事となりダンボールも未開封のまま出かけ、翌日の昼ごろまで対応に追われた。クタクタになりながらも布団だけは必要だと、帰り道のダイエーにスーツ姿のまま布団を買いに行った。

2階の布団売り場で布団を抱えながら抱き心地を吟味していると、自分の母親ぐらいの年齢のおばちゃんが私に近寄ってきて
「敷布団はどこにあるの?」
と聞いてきたのだ。

真昼間に若い男子がスーツ姿で、布団を持ち上げていたのだから、そこの店員と間違えられてしまったのだ。徹夜の仕事も相まって学校の先生をお母さんと呼んでしまった直後のような軽いトランス状態に陥り、何を思ったか

敷布団はあちらのコーナーにご用意しております」(なぜかお辞儀も)
店員になりきって案内してしまったのだ。

脚色なしの実話である(笑)

この言動に至るまで思考は一切働いてない。決してからかったわけでもない。とっさに出てしまったとしか言いようがない。
「僕、店員じゃないですけど・・」これが99.99・・%の人が答える回答である。あ~わからない。もうわからない。本当にわからない。


あわわわ・・・。何言ってるのオレ・・・
即座に我に戻ったが、さらなる地獄が待っていた。

10秒も経たないうちにおばちゃんが戻ってきて
「ねぇ! 敷布団の~(メーカーやら意味不明な言葉で説明しながら)は無いの?」

入店して5分も経たぬうちに私はいつの間にか断崖絶壁に立たされていた。


店員口調で丁寧に案内しておいて、「実はぼく店員じゃないんですよ・・」とどの顔で告白するのか・・・。これはどんな秘密をカミングアウトするよりもはるかに恥ずかしい!


かといって何も知らない私が、こんなピンポイントの質問に答えられるわけもない。仮に演じたとしたところでどんなモチベーションを持って演じ切ればよいのか・・。道化師にも限界がある。

結局どちらの道も地獄道!

なぜダイエーに布団を買いに来てこんな究極の二択を選ぶはめになっているのか・・。「ローマの休日」ではアン王女がその身分の偽り、「やまとなでしこ」では堤真一が魚屋なのに医者と偽り、、、、さて、私の偽りは何なんだろう? 目的がわからないのだ(笑)少なくともこのウソで恋は駆けだしてこないのは間違いない。


固まる私と熱視線を送るおばちゃまとの無言・・ 無言・・ MUGO・ん・・

MUGO・ん…いくじなしね~  MUGO・ん…いくじなしね~ 
オレも客だ!! そういう仲になりたいわ~
(でも)言えないのよ~  言えないのよ~


たまらずとっさに目に入ったきたかな~り奥に見えた(正規の)店員さんを指差し
「あちらのものが布団コーナーの担当となっておりますので・・・」
と、そちらを向いたおばちゃまを置き去りに、私は店を飛び出た。

全くFU-JI-TSU(不実)であった。これは罪名はわからないが立派な罪であろうことはよく自覚しているし、今思い出して頭を抱えてしまうのでどうか許してほしい。本当にとっさにでる行動というのは、本人すら想像もつかぬ事をしてしまうのだと学んだ。

奇しくも木村拓哉と堤真一のFUJITSU富士通)の「♪ゴワァ~ン!」という銅鑼(ドラ)の音と共に、忘れてた苦いFU-JI-TSU不実)の記憶がリフレインしてくるのです。

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