マラソン中継を観る度に思い出される事がある・・

私が中学2年生だった夏のある日、学校から帰ると4つ上の高校生だった兄が既に家に帰っていた。
私は制服のまま横になりテレビを観ていると、家の電話がけたたましく鳴った。
親は共働きなので私が電話に出ると、さきほどまで一緒に帰っていた揉め事好きなSくんからで

「XX町のゲーセンでちょと今ヤバい状況なんだけど、来れない?」

「えぇ?? 向こうは何人?」

「4人」

「いっ・・行くよ・・」!

30秒もない非常に情報量の少ない連絡だったが、彼が危機的状況なのは間違いない。
そしてその電話で最もテンパったのが、私だったのも間違いない。

何を思ったか玄関にある少年野球用のバットを取り出し、それをそのまま自転車の後ろに差し込み、猛スピードでこぎ出したのだ。

そのゲーセンにたどり着くまではバイバス通りのとても長い一本道で、どんなに飛ばしても30分はかかる遠距離だった。
だが、広い一本道ゆえに信号が無い分、トップスピードをずっと維持出来るのだ。

猛スピードーで息を切らしながらバイパス沿いを飛ばしていて10分ぐらい経過した時に、
なんというか・・

妙な違和感を感じた・・

まるでマラソン中継を見ている時に、並走するバカな観客に自然と目が行ってしまうこの感じ・・・


そう、これだけ全力で自転車で飛ばしているのに、車道を挟んで並走している自転車がいるのだ(笑)
それも気持ちちょっと後ろ目で・・・

このスピードで走るなんてそちら様もどれだけの急用なのかとその物体に目を向けると、その並走する自転車の人物は5段変速の自転車を競輪選手のように前のめりで乗りこなしながら即座に顔を反対にそらした。
ええ?と思いつつ目を凝らしてしばらく見ていても、このスピードでずっと顔を横に向けながら走るというさらなる不審者ぶりであった。

だが、私もかなりテンパっていたのでそれが何なのかを考える余裕もなく、その後振り返ることなく目的地に急いだ。
結局そのゲーセンには既に人はいなく事なきを得たのだが、その帰り道にあの異常物体は何だったんだろうという疑念で頭がいっぱいとなっていた。

自宅につき自転車をしまっていると、変則自転車が我が家に一台あったのを思い出した(笑)

家にいた何事もなかったような顔の兄に、「ねえ?もしかしてさっき居た?」と恐る恐る尋ねると
「知らない」と一言だけそっけなく答えた。

よくよく考えたら私は電話直後にすぐ家をでて初速度からMAXだったわけで、家の鍵をしめてからどこに行くかわからぬ弟を追跡できるわけもないと、疑わしくは罰せずの精神でその疑念を打ち消した。

それから15年経った昨年、兄の自宅にお邪魔した時にその時の奇妙な体験談をすると、時効が成立したと思ったのかあれはオレだったとあっさり認めた。遠目で見守ってくれていた感謝の気持ちよりも先に、その脚力すげーよ兄ちゃんと感心しました。

パンチ力のない話で申し訳ないのですが、全力で自転車を並走する兄の姿を思い出すと未だに笑ってしまうのです