高校生が主役のスポーツマンガではいつも接戦になってしまう事は、常にピークを求められる週刊連載での宿命ともいえる。
だがいつも9回裏サヨナラ満塁ホームランじゃあ、子供相手とはいえさすがに現実味がない。
それ故、現実とのバランスを配慮した舵取りは作品を構築する上で重要な作業となる。

スラムダンクの全試合スコアを見ると、接戦と現実味とのバランス具合を織り交ぜた巧みさがみてとれる。

SLAM DUNK
4088716116

<練習編>
湘北● 86-87  ○陵南            1点
湘北○ 75-74  ●緑風            1点

<全国高校総体神奈川県予選>
1回戦 湘北○ 114-51   ●三浦台       63点差
2回戦 湘北○ 160-24  ●角野        136点差
3回戦 湘北○ 103-59  ●高畑        44点差
4回戦 湘北○ 111-79  ●津久武       32点差
5回戦 湘北○ 62-60  ●翔陽         2点

<全国高校総体神奈川県予選(決勝リーグ)>
湘北● 88-90  ○海南大附属         2点
湘北○ 120-81  ●武里            39点差
湘北○ 70-66   ●陵南            4点差

<広島インターハイ>
1回戦 湘北○ 91-87  ●豊玉(大阪)    3点差
2回戦 湘北○ 79-78  ●山王工業(秋田)  1点
3回戦 湘北● ボロ負け  ○愛和学院(愛知)  スコア不明



内容的には接戦でも試合終了までをキッチリ描写せず、ラスト数分を相手に諦めさせる事により試合的には結果点差が開かせるなど、接戦を描きながら現実味を持たせている。大差の試合は簡略化されることもあるが、読み終わった時の印象よりかはこうして一覧でみるとだいぶ平均的な試合結果となっている。

今度は野球マンガであるROOKIESの公式戦でのスコアを調べてみた。

ROOKIES
4088725700


<全国大会予選>
一回戦 二子玉川◯ 10-0  ●用賀第一       10点差
二回戦 二子玉川◯ 11-0  ●東商業        11点差
三回戦 二子玉川◯ 7-5   ●笹崎          2点
四回戦 二子玉川◯ 5-4   ●目黒川        1点
五回戦 二子玉川● 1-12  ◯(不明)       11点差


いずれの作品も全国大会優勝をピークとしないところが類似しており、接戦が2つ続くと次に大敗させるなど、リアリティへの気遣いが見られる。作者側と読者の落しどころというのだろうか・・。

筋肉少女帯が再結成した際に、復活!だの、再始動!!など四の五の言わず「THE 仲直り」と銘打って活動を再開した往年のファンへ対してのキレイ事と本音で生じた妥協点とも似ているかもしれない。
今じゃあまり聞かなくなったが、90年代、杉本彩やSHIHOに見られた「学園祭クイーン」なる称号も、ホールを満員に出来ないタレントを気持ちよくやらせる為の偽りの称号ともいえるが、主催者側も学生もそれで盛り上がるのだから良い落としどこである。

そう、何事においてもシガラミが発生し、それに対する落しどころを探るのが世の常である。


先日の記事でマンガの最終回を書くのに、久々にいろんな最終巻を読み漁っていると、
あるページで思わず手が止まり我が目を疑った・・・

yamasitataro
KC21巻 山下たろーくん(集英社)

県立海空高校野球部員山下たろーくん
4834214818


<地区大会>
海空◯ 8-7   ●山沼          1点

<県大会>
一回戦 海空◯ 5-4  ●大潮商業     1点
二回戦 海空◯ 4-3  ●五洲       1点
三回戦 海空◯ 3-2  ●三下工業     1点
決勝  海空◯ 6-5  ●江河原      1点差 

<関東大会>
一回戦 不戦勝
二回戦 海空◯ 5-4  ●南浦      1点
三回戦 海空◯ 15-13 ●明陵      2点差 (*注)
決勝  海空◯ 7-6  ●山沼      1点

<甲子園>
一回戦 海空◯ 6-5  ●北沢東      1点
二回戦 海空◯ 5-4  ●紀伊國      1点
三回戦 海空◯ 6-5  ●大中央学園    1点
準決勝 海空◯ 6-5  ●あわもり     1点
決勝  海空◯ 5-4  ●山沼       1点


全試合 落しどころを知らぬ見事な接戦ぶり(笑)

(*注)唯一2点差となった『明陵戦』を少し補足しておくと、これは最も苦しめられた強敵だったという事だ。
なにせ2回の時点で【海空 1-9 明陵】とコールド寸前までもっていかれた相手なのだ。
その圧倒的な強さを読者に冒頭で印象づける代償として9回裏に6点も取らないとならない展開に追い込まれたのだ(笑)
最後は2塁打と思い夢中で走っていたら実はホームランだったとのオチで、この2点は前半のありえない点差の反動ともいえる。よって唯一の2点差は最も過酷な激戦だったということを補足しておく。


これが水泳なら間違いなく溺死している。この常にフルスロットルで描いていくそのブレない姿勢はもはや尊敬すべきではないだろうか。
人から見るとうとまれるような事も、貫き通すと大きな力を生むことがある。

アラフォーになった元おニャン子達の当時の不仲をも売りにしたトークを聞いていると、イヤ!とかキライ!じゃなくて『つらい』のだ。
同じく元シブがき隊のフッくんが当時のヒット曲「寿司くいねぇ!」に便乗して「ソバ食いねえ! 」をリリースする姿を見ると、キライとかイヤじゃなく『つらく』なるのだ。
その点、この日本蕎麦協会公認なる怪奇ソングの話題を終始無表情を貫くヤッくんこと薬丸さんが、「布川さんとは仲が悪いのですか?」と問われ、間髪いれず「はい!」と真っ直ぐな目で答えたあの揺ぎ無い姿にはブレがないのだ。以前も書いたが20年前スーパージョッキーの小学生の視聴者質問に「シブがき隊のみんなは普段どんな会話をしてるんですか?」の問いに、薬丸「無言です!」とつぶらな瞳で即答したあの日から20年全く変わってなかった(笑)
山下たろーくんが投げると捕球までの間に「寿司くいねぇ!」を一曲歌えるほどの時間軸を頂けるのに対して、薬丸さんのフッくんに対するコメントの速さは光すら通さぬ即答ぶりなのだ。ここに変なリップサービスを挟まず最小限な言葉で嫌悪をあらわすその姿はそろそろ評価されてもいい頃だ。

南極、北極に行けばカゼをひかないと同じで、ここまで突っ切るともう爽快感に包まれるのだ。
今後全ての試合を一点差にするマンガが出てくるとは思えない。

いろんなシガラミに臆することなく山下たろーくんを最高潮で維持して描き続けた作者"こせきこーじ"こそ、
真のスポ根魂の持ち主である!