『TK MUSIC CLAMP』は1995年~96年に小室哲哉がゲストを招いて、その人の内側を引き出す深夜番組である。

イエスマンである自らのファミリーを多くゲストに迎える一方、普段メディアに露出しないアーティストもまれに出演していた。
中でも、岡村靖幸松山千春、吉田拓郎の回はホスト側が受け手となる完全アウェイな内容であった

岡村靖幸は以前紹介したので、番組史上、最も血が飛び交った吉田拓郎の放送の回を紹介する。
もはやこれはフォーク世代という類(たぐい)からの刺客ではなく、モノノケの類であり、確実にホストを仕留めにやってきていた。

VOL115_tktakurou
 <1995/07/26 fujiTV OA>


・まず95年はTK全盛期であり、趣旨としてはフォーク世代との小室サウンドとの世代間の音楽対談を予定。
・小室側が吉田拓郎に憧れを持っており、熱烈オファーの結果実現した点。
・この当時、吉田拓郎はほぼメディアに露出していない時期。

以上を踏まえて15年前に戻って読んで欲しい。

小室 「今夜のゲストの方は大御所です。小学校の頃から聴いていた吉田 拓郎さんをお呼びしています」
吉田 「どうも」
小室 「ここに(TK  MUSIC CLAMP)は坂本龍一さんや飛鳥さんやら僕からお願いして来てくださる方もいる訳ですが、拓郎さんもその一人で、、、僕も含めて今の音楽ってどう見えてますかね?
吉田 「え? どういう意味ですか?

小室 「今の音楽の傾向ですかね。ヒットチャートとか」
吉田 「ヒットチャート? もうさっぱりわからない。小室君がいろいろヒット曲つくるじゃないですか?僕、さっぱりわかりませんよ。本当に。でも、この間のダウンタウンの浜田君への歌はすげぇいい曲だなってシビれたんだけどね。」
小室 「ありがとうございます」
吉田 「中にはシビレないのもあって
小室 「ええ、当然ですね」

小室 「話してると「あ、結構ぼくのも聴いてもらってんだな」と率直に思いますけど」
吉田 「聴いてますよ。 だって本当にうるさい。」
小室 「・・・・うるさいですか?」

吉田 「前のチームみたいなのあったじゃないですか?3人の(TMN)。あれと較べたら本質はやっぱりひとりでやってる方が?」
小室 「本質は世話好きだからひとりも嫌ですけど、、、一人でやるそういう、ズルい、、」
吉田 「(ひとりで抜け駆けする)タイプだよね? でもね、絶対いるんだ。そういう困った奴が
小室 「え? 拓郎さんの時代もいました? 小室等(フォークシンガー)さんじゃないですよね? 最近までよく間違えられてたんです」
吉田 「ずいぶん違うタイプですね。同じ小室でも。近所なんですか?」
小室 「僕は住まいが三軒茶屋なんですが、等さんは郡山の方じゃないかな、、」
吉田 「それでわりあい近くのここで(収録)やってるの? それも随分だよね。ワガママな奴だな
小室 「生まれがですか?」
吉田 「生まれは関係ないけど、でも、絶対にかなりワガママでしょ?」

吉田 「俺たちの時代はワガママが過ぎるとね、ツマハジキみたいなもんがあったんですよ」
小室 「自分でわがまま言ってないつもりが、わがままなんですかね?」
吉田 「いや、(わがまま)言ってるよ。言ってる、言ってる。 言ってないつもりでいる訳? キミ相当だよ
小室 「相当ですか? 自分で言わないのが一番わがままですね」
吉田 「自分でわかってないでしょ?それ、相当だっていうことだと思うな。小室さん、相当な男ですよ。いや普段見てても思うけど」
小室 「そうですか?」
吉田 「誰かの横に出てくるんだからね。それがたまらないんだな。その人をなんとなく立たせておいて、自分は横へスーッって行ってさ、それで「みんなが自由にやってるから楽しいんだ」みたいな事言って。ほくそ笑んでるのがね、伝わってくるとね「相当わがままなんだろうな」と思うんですよ。家に帰ってニタニタしてない?もう年中ニタニタしてるんでしょ?」
小室 「深いところをえぐられますね・・・」

吉田 「小室 さんみたいなタイプは割とテレビでばれちゃうタイプだよね」
小室 「かたくなに(この番組出演を)嫌がってる人もいますよ」
吉田 「どうすんの、それに対しては?」
小室 「そうするといい気なもんでそっち側(出演拒否側)に立っちゃうんですよ。僕はまぁそっちの気持ちも本当にわかるんで」
吉田 「いい加減な男だね
小室 「いや、本当にわかっちゃうんですよ。本当に」
吉田 「わかっちゃうの?」
小室 「どうしたもんですかね?」
吉田 「いや、どうする気もないでしょ?自分では全然」
小室 「ええ、どうする気もないです」
吉田 「口からデマカセ言ってるだけでしょ? すげぇいい加減だね
小室 「でも、困っちゃうんですよ。そのときは本当にそう思っちゃうんで。じゃあ、拓郎さん的解釈でいくと、僕なんてテレビを嫌じゃないんでしょうね?」
吉田 「本来的には好きなはずなんですがね」
小室 「そうでしょうね」
吉田 「ポーズとしては嫌なんですよ」



吉田 「何言ってるだろうね。君と結婚すると不幸になるね
小室 「独身ですけどね」
吉田 「唐突な話だけどね。大変だと思うな。きみと一緒に生活するのは」
小室 「拓郎さんは?」
吉田 「僕はほら、家が好きだから。あちこち行かないから、大事にしてあげるんだけど。あなたはダメでしょ?そのへんは」
小室 「ダメでしょうね。あ、でも、初めてですね。こういうトークは。本当に」
吉田 「あ、そうですか?」
小室 「この、えぐられた感じは初めてですよ」
吉田 「そういう番組じゃないよね?」
小室 「きっと僕がホストとしては、ぜんぜんつまらない進行をしているだと思うんですけどね」
吉田 「きみはそう言っちゃてさ。 そう言えば最高だよね!
小室 「最高ですか? 本当にそう思うんですよ」
吉田 「そう思ってるんでしょ?」
小室 「本当に思ってます」
吉田 「思ってるんだと思うけど、それは伝わらないと思うな」
小室 「伝わらないですね」
吉田 「それ、知ってるでしょ?伝わらないの
小室 「最近わかってきました、、」
吉田 「知ってるんだ? ズルいよ。ズルい。君は本当にずるいよ
小室 「どうしたもんかって、、」
吉田 「どうする気もないでしょ?
小室 「もう何言ってもムダですね・・・

吉田 「いや、小室 さんがよく見えましたよ。今日」
小室 「どういうやつだと思いました?」
吉田 「まあ、見た通り。そいう人だと思ったんですよ。大体、単身でロンドンへ行ったりするタイプがね、もう信用できないヤツだもん
小室 「そうですね、わかるんです、それは。バンドのメンバー(宇都宮、木根)も一緒に歩んでるはずだと」
吉田 「共に同じ青春を歩んでると思ってるの?
小室 「鳩が豆鉄砲くらってる感じですか?」
吉田 「そうでしょうね
小室 「そういうのを何回も味あわせちゃってるんでしょうね。」
吉田 「そうでしょうね
小室 「それは「味合わせちゃってるんでしょうね」じゃなくて、「味合わせてるんですよ」それはちゃんとわかってるんですけどね」
吉田 「それをわかってくれないと、困るもんね
小室 「そうですよね」
吉田 「そんな事自慢してるの?
小室 「いや、それでね、ここまで来ちゃってるですよね」
吉田 「それって開き直りじゃない?
小室 「そうでしょうね」
吉田 「最初から、あまり考えてないな・・
小室 「そうですかね?」
吉田 「うん、かなりいろんなヤツが迷惑してるんだけど、あんまり気にしてないよね?
小室 「してないです」
吉田 「悪いとか思ってないでしょ?
小室 「それは悪いと思ってないですね」


吉田 「映画に出るとか?」
小室 「も、ないですね。」
吉田 「役者やるとか?」
小室 「もう、いっさいないですね」
吉田 「うん。やめた方がいいみたい」
小室 「もう、何回も断ってるんですよ、もう、そういうのは」
吉田 「あ、それ、君、絶対そのオファーあると思うけど、やめた方がいい。その性格がね、場を壊すね
小室 「もうそれは、自分でもわかってるというか、やってないですね」
吉田 「みんな気を使うだろうしね、かえってそれがまた、チームワークを壊してね、ろくな映画できないと思うな」
小室 「そりゃあ、もう、なんとなくわかってますね」
吉田 「だから、ドラマとかもやめた方がいいですよね」


吉田 「僕なんてすごく頑固だから。頑固と不器用の両方がいるからね。この中に。だから、自分が正しいと思ってずっと生きてるもんだから、ちょっと正しくないって思うキッカケになったものを理解するんは時間がかかるんですよ」
小室 「そのきっかけって僕じゃないですよね?」
吉田 「君です。君ですよ。君以外にいないでしょ!、今は。だからここへ来たの。確認しに」
小室 「ああ、それは光栄ですね」

吉田 「なに言ったて大丈夫よ。今は」
小室 「どれぐらいで痛い目に遭うんですかね?」
吉田 「十年後じゃない。十年経ったらまた会おうね」
小室 「そんなに会ってもらえないんですか・・・」

<小室 哲哉 音楽対論Vol3 より引用>


実際この12年後に、ご存知のように小室氏はかなり痛い目に合う事となった。
通常、強気一辺倒で来る相手には自分の弱点をあえて吐き出すことで会話の活路を見出すものだが、「(弱音に対し)そうでしょうね」「(反省の弁)開き直ってるでしょ?」「(過ちを自覚)そんな事を自慢してるの?」と一切手を緩めない。いろんな交渉術は世にあれど、金もモノも使わずこの討論を潤滑に運ぶ方法などあるのだろうか? 

何度読み返しても正直キレてるポイントが全くわからない(笑) もう「コイツ気に入らない」という先入観の汽車が最初から走り出しており、全てが腹黒く見えてたとしか思えない。松山千春出演時は、同じく辛辣な言葉を浴びせられながらもキチンと会話は成立していた点が大きく異なる。

かつて二中のリョウが型にハマらぬその自らの破天荒ぶりを「いわゆる新人類ちゅうやつですわ」と表現したが、音楽の話は一切させず押しても引いてもブレることのない一貫した人格攻撃はまさに「荒れ果てた荒野に、太いホースで水をまく」の拓郎のキャッチフレーズが如く、最後までその使命を果たした。