2007年10月11日
□玉くしげ

玉くしげ - 美しい国のための提言 [現代語訳 本居宣長選集]
- 本居宣長、山口志義夫
- 多摩通信社
- 1260円
livedoor BOOKS
書評/社会・政治


正直なところ、今までいただいた本に比べて、すらすらと・・・とは読めなかった。なぜならば、古典だから・・・というのは本当の理由ではない。その内容に、あれれれれ、と思ってしまって、ところどころで引っ掛かって先に進みづらいものがあったからだ。
本居宣長と言えば、歴史の教科書では「もののあはれ」を唱えたとか、国学の人などと書いてあったように思うが、その国学なるものが、戦前の国粋主義に多大な影響を与えたという話までは知っていたが、その先がいまひとつ分からなかったのだ。
言われて見れば、なるほど〜というのはある。例えば、確かに紆余曲折はあったものの、曲がりなりにも同じ王朝がず〜っと続いている国というのは稀有との事。だから、天皇家の世継ぎが生まれないことに対して、識者や政治家の結構な数の人たちが慌てふためくのかと思う。
が、一方で、徳治主義というのか、天下は血筋正しき高貴な方がおさめ、下々はそれにしたがっていれば良いという論。これは自己主張なぞせず、悩まなくて済む訳だから、本当に徳のある人がトップにいたらこんなに楽なことはないと思うが、実際は全然そうじゃないのは、記憶に新しいところでは「天皇陛下の赤子」と言って、国民を死に追いやった愚かな歴史が物語っている通り。
また、封建時代で、うっかりした言動によって命の危険にさらされた事を思えば仕方ないとは言え、紀州の殿様へのご進講の内容が、「他の国では」とか「神君家康公(もっと難しい表現で、家康を神様とあがめているが)」等、徳川家に対する過度な配慮、対して天皇家をないがしろにしたという北条家や足利家の悪党呼ばわりには、う〜むという感じ。
さらに現代語訳ではシナとなっており、帯にも元祖嫌中と書いてはあるが、古代中国の聖人とはすなわち覇者であり悪党である、と断じてる事にはすこぶる違和感を感じる。確かに、覇者は時としてかなりあくどいことをしているのだが、それを言うのなら、日本の天皇家だって長屋王を滅ぼしたり、聖徳太子の子孫を滅ぼしたり、臣下の謀略と言いつつ、色々とやって生き延びて来たのだが、そのあたりは天照大神等の神々もしかるべき時には沢山人を殺しても正しい方向に・・・となってしまって、思わず突っ込みを入れたくなる。戦後の教育を受けた身には非常に違和感があるのだ。
私の年代は、それより上の世代のように教科書に墨を塗って書き換えることもなかったが、戦前の軍国主義に対する反発が最も激しい年代であり、地域性もあるだろうが、教師は堂々と天皇制反対を唱え、戦前のありようの殆ど全てが全否定されていた世代であり、一方で、社会主義国に対する過度な期待や理想化もあったので、自分の見方にも偏りがあるのは認めるが、でも、やはり他国を悪し様に、かつ日本よりずっと劣ったように言うのにはどうしても違和感があった。
その点と、下々は分に応じた暮らしをしという身分の固定(幕藩体制下で格差はなくては困る時代だったのではあるが)化を良しとし、前例主義が出来るだけよろしいという部分を除くと、実は今の時代にも通じる事も多々書かれていて、歴史は繰り返す(便利なものが出たら、皆、そちらがほしくなってしまうとか、倹約は良いが、けち臭くならないように使うべきところは使わねば等など)ものだなぁと、感心もする。
要は思想書として読まず、歴史書として読めば、なかなか面白い本であるが、またこの主張を丸々受け入れて、愚かな歴史を繰り返すのだけは困るので、そこは留意して読んで欲しい本であるし、誰か「尊い人」「高貴な人」を神格化し担ぎ上げた上で、人々を悲劇に陥れるような輩には読んで欲しくない本でもある。
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言われて見れば、なるほど〜というのはある。例えば、確かに紆余曲折はあったものの、曲がりなりにも同じ王朝がず〜っと続いている国というのは稀有との事。だから、天皇家の世継ぎが生まれないことに対して、識者や政治家の結構な数の人たちが慌てふためくのかと思う。
が、一方で、徳治主義というのか、天下は血筋正しき高貴な方がおさめ、下々はそれにしたがっていれば良いという論。これは自己主張なぞせず、悩まなくて済む訳だから、本当に徳のある人がトップにいたらこんなに楽なことはないと思うが、実際は全然そうじゃないのは、記憶に新しいところでは「天皇陛下の赤子」と言って、国民を死に追いやった愚かな歴史が物語っている通り。
また、封建時代で、うっかりした言動によって命の危険にさらされた事を思えば仕方ないとは言え、紀州の殿様へのご進講の内容が、「他の国では」とか「神君家康公(もっと難しい表現で、家康を神様とあがめているが)」等、徳川家に対する過度な配慮、対して天皇家をないがしろにしたという北条家や足利家の悪党呼ばわりには、う〜むという感じ。
さらに現代語訳ではシナとなっており、帯にも元祖嫌中と書いてはあるが、古代中国の聖人とはすなわち覇者であり悪党である、と断じてる事にはすこぶる違和感を感じる。確かに、覇者は時としてかなりあくどいことをしているのだが、それを言うのなら、日本の天皇家だって長屋王を滅ぼしたり、聖徳太子の子孫を滅ぼしたり、臣下の謀略と言いつつ、色々とやって生き延びて来たのだが、そのあたりは天照大神等の神々もしかるべき時には沢山人を殺しても正しい方向に・・・となってしまって、思わず突っ込みを入れたくなる。戦後の教育を受けた身には非常に違和感があるのだ。
私の年代は、それより上の世代のように教科書に墨を塗って書き換えることもなかったが、戦前の軍国主義に対する反発が最も激しい年代であり、地域性もあるだろうが、教師は堂々と天皇制反対を唱え、戦前のありようの殆ど全てが全否定されていた世代であり、一方で、社会主義国に対する過度な期待や理想化もあったので、自分の見方にも偏りがあるのは認めるが、でも、やはり他国を悪し様に、かつ日本よりずっと劣ったように言うのにはどうしても違和感があった。
その点と、下々は分に応じた暮らしをしという身分の固定(幕藩体制下で格差はなくては困る時代だったのではあるが)化を良しとし、前例主義が出来るだけよろしいという部分を除くと、実は今の時代にも通じる事も多々書かれていて、歴史は繰り返す(便利なものが出たら、皆、そちらがほしくなってしまうとか、倹約は良いが、けち臭くならないように使うべきところは使わねば等など)ものだなぁと、感心もする。
要は思想書として読まず、歴史書として読めば、なかなか面白い本であるが、またこの主張を丸々受け入れて、愚かな歴史を繰り返すのだけは困るので、そこは留意して読んで欲しい本であるし、誰か「尊い人」「高貴な人」を神格化し担ぎ上げた上で、人々を悲劇に陥れるような輩には読んで欲しくない本でもある。
この記事へのコメント
1. Posted by 鎌倉おやじ 2007年10月18日 18:10
同じ本を読んだのですが。。。
恐れ入りました。
週末にでも書評かきます。
筆が進まなさそう(笑)
恐れ入りました。
週末にでも書評かきます。
筆が進まなさそう(笑)
2. Posted by 甲斐小泉 2007年10月18日 21:04
鎌倉おやじさま、こんばんは。
コメントありがとうございます。
文学的な要素の強い本かと思っていた無知な私でした。
でも、自分では通り過ぎてしまうタイプの本なので、本が好き!で献本していただいてよかったと思います。
格調高い書評を楽しみにしております。
コメントありがとうございます。
文学的な要素の強い本かと思っていた無知な私でした。
でも、自分では通り過ぎてしまうタイプの本なので、本が好き!で献本していただいてよかったと思います。
格調高い書評を楽しみにしております。





