赤いマッチ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・有馬多賀子

桜子は高校生の息子と、外国に単身赴任の夫がいる。隣家の弘子に誘われ、自分たちで芝居を選び、運営する「市民劇場」に入る。桜子も若い頃、東京の劇団に入っていたことがある。今回の芝居は『無法松の一生』で、千秋楽後、劇団員たちとの懇親会がある。そこで、吉岡大尉役の加藤清という30半ばの役者と、〈凡〉という役者のたまり場の喫茶店の赤いマッチをが縁で、話が弾む。その後、清に誘われ、上京し、しばらく楽しく過ごしていたが、清にしつこく付きまとったために捨てられた。帰ってきたら、事情を察していた弘子にたしなめられる。

桜子の庭がすさんでくるのを、隣人の弘子は観察し続ける。東京に男がいると推理し、嫉妬する。そして東京の恋に破れたらしい桜子を優しい言葉で戒める。桜子は自分がまいた種だと反省し、ナツズイセンの根元の汚れをていねいに取り去る。自分の汚泥を取り去るかのように。

桜子の視点と弘子の視点が並立して描かれていく中で、桜子の恋の惨めな顛末が浮かび上がる。苦い後味ですが、最後にしゃんとしたナツズイセンが立ち上がるところで桜子が立ち直る様を想像させる。ゴミ袋を踏みしだく時、もう桜子はおのれの過ちを痛いほど呪い、したたかに立ち直っている。上手いなあ、と思いました。12、13ページで「狂ったように」が二回使われているのが気になった。 

・なんと素直な桜子。

・タイトルが効いている。

・今までで一番いい作品だと思う。

・目線が、桜子と弘子の二人に分けているところ、じょうずに変えてあって、参考になった。読者の反感を別の人から見ることで、うまく切り抜けた。

・弘子の嫉妬、親切ごかしなどじょうずに書けている。

・「場当たり」・・・じょうずに使っている。

・P12、P13下 「狂ったように」同じ表現。

・途中から段落が多いのが気になる。

・清をもう少し書きこんだほうがいい。「娼婦のように扱った」など、書き込まないとわからない。

P10下段~P11上段にかけて、弘子の視点で物語が動く。短編ではあるが、厚みが出ていいと思った。

・東京での清との場面、やり取りが数行でまとめられていて、どんなふうに楽しかったのか、つきまとったのかわからず、残念だった。

 

紫陽花 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田原明子

リリー(百合)はイギリス人の父を持つハーフ。栗色の髪と青い目は亡き父のプレゼントだという。リリーは大学生で、夏休みに「遊び塾」でアルバイトをしている。将来は教師になりたいと思っている。塾の創始者は貴子さんという元教師。20年務めたが、子供たち一人ひとりの事情や立場を考えて常に理解を示したことが、教師全体のバランスを壊してダメだったのだという。貴子の幼馴染の裕也の甥っ子の大介が「おじさんが、貴子さんはいつも紫陽花の花を咲かせている」と言ったことで、胸のアザを見せることに。このアザが嫌だったが、子供の頃、プールの時、裕也の「すっげー、紫陽花だ!」の一言で、みんなから受け入れられた。なんともなくなった。リリーの青い目も、母から父のプレゼントだと言われて気にならなくなった。見え方は様々で良くも悪くもなる。


短い中に百合、貴子さん、良太君、渚、大介、背景のエピソードには裕也、百合の両親も登場し、下手をすると、あらすじを読むようなことになってしまうなと思いきや、不思議に生き生きと、それぞれの個性が立ち上がってくる。これは会話を多用し、なるべく地の文で説明しないよう工夫されているからだろうと思った。

・貴子先生に心酔する渚を通して、その人柄を無理なく語らせている。

・現在の保育、教育の問題を捉えている。

・貴子が紫陽花というタイトルから、主人公だろう。

・もう少し整理がほしい。貴子さん、貴子 など統一

・差別問題などもからめている。裕也さん、あったかい視線、好感を持って読んだ。

・イギリスはあまりアジサイを好きでないらしい(移り気とか、メデューサの首)。

・挿し木が普通だが、送るとので、種もあり。

・渚の手紙の、「拝啓」「敬具」はちょっと固いかなあ。その手紙で明かされる、裕也が北海道で獣医をしていること、北海道に行くとき「紫陽花を毎日見たい」と言ったプロポーズをわからずに、アジサイの苗を贈ったことなど、とても面白く読めた。

・こんな「遊び塾」のような場所があちこちにあればいいと思う。

 

視えない街(上) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 西村亘敏

地方都市の高校3年の僕らは、試験が終ったので繁華街に繰り出し、映画を見ることにした。僕は牧田。三村は用があるからと別れた。ところが、映画を見て帰る道で三村に会う。そして三村の行きつけの喫茶店で話すことに。三村が学校の勉強より未来のために何かやらなくてはいけないことがある・・・ような思わせぶりなことを言うのだが、僕にはよく理解できない。白鳥京子と付き合っていることも知った。三日後、人生の深淵をのぞきこんで身震いしたくなるような冬のある日、三村と京子が東京に駆け落ちした。学校や親たちは二人の居所を聞くが、僕には心当たりがない。僕はどうしても二人を見つけ出したいと思った。


大人になりそうでなっていない男子高校生の視点で描かれている。失踪した三村と白鳥。視えない街の話をした三村は何かを言い足そうとしたがやめた。三村の早熟さが痛々しくていい感じ。後編が楽しみ。

 「僕」、「僕たち」、「僕ら」、という人称が多く使われ、「僕」の感じたことを言う場合にも混在しているような気がした。 

・「僕らが唐突にふらっと見知らぬ街に生きたいと思うことがあるだろ。・・・略・・・たとえその街が視えないにしても、心に溢れる郷愁は断ち難い。そしてそうやって、街を求め続けることこそが唯一、過ごせなかった街に生きることだと」・・・たぶん、この視えない街がキーワードだろうと思うが、読者には禅問答のように謎めく。

・駆け落ちした二人の禅問答のように求め続けていることがテーマか?

・三村の思わせぶりなセリフもいい。

・P28 上 三村の優しさ、生きて行く力強い。

・頭のよい学生。文章が一つ一つ、とてもきれい。

・タイトルがいい。街の喧騒や、若者たちの不安感を暗示しているよう。

T大を目指している僕や仲間たちの日常、とても興味深く読んだ。前号に引き続き、青春群像。三村の話が哲学的でもあり、高校生特有の夢見がちでもある感じを懐かしく思いだした。

・白鳥京子の名は、少し古いが、昭和のお嬢様感がよく出ている。

・続きがとても読みたい。

 

艶やかに(二) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 横山令子

三年前夫を亡くした夢香。母の介護で東京から戻ってきている松田という男性と知り合う。二人とも60代。夢香は水泳教室に通うことにした。水泳帰りのある日のこと、松田と偶然に会い、送ってもらう。一人暮らしの女性のところに出入りして噂になると申し訳ないという松田に、夢香は、「代々この土地で生きている人たちの中で気にしているのは松田さんのほうでしょう」と言う。松田は、妻に東京のマンションを渡し、母の介護を続けることに。88歳になるという山本老女は、誰の目を気にすることなく、独自の化粧をして独居老人のところに居場所を求める。食材の支払いは江口さんのお財布から手慣れた様子で支払っている。この老女は江口さんが施設に入って行くところがなくなったとぼやいていたが、すぐに次の人を見つけた。老いの入り口は一つでないことを確信する夢香は、おひとり様を満喫している。


37ページ上段、夢香が久しぶりに夫の部屋に入った時の描写が切なく、良いなあと思いました。日々が単調に過ぎていく中、松田と再会。40ページ下段、「あなたさえよかったら、私は怖いものは何もない生き方をしていますから」という夢香の言葉が、少し強く響き過ぎる感じがしました。

 山本老女は面白いキャラクターでリアルにイメージ出来ました。

最後の方で「人間万事塞翁が馬」と故事成語が出てくるのは、筆者が顔を出して、まとめに入っているようで、少し違和感がありました。 

・夢香もきらりとした艶やかさを残して生きたいと思っている。

・少し丁寧に推敲したほうがいい。

・老いの入り口は一つでない・・・悟り

・喜怒哀楽が率直に書かれている。

・夫に先立たれた物悲しさ。

88歳の老女がとてもよく表現されている。『ガラケーのようにバタンと腰が曲がっている』

・異性の友が次々できる人は気が若くていい。続編ほしい。

・松田とはどうなるかと思っていたが、大人のお付き合いに収まったようだ。気の合う同士でも、異性だと友情というのは難しいだろう。

・おもしろいのは、山本老女。居場所とボランティアと実益を兼ねて独居老人のところへ通う。それぞれ、やはりみな寂しさを抱えているのだろう。

 

あしたは晴れている(十四) ・・・・・・・・・・・・ はた けいすけ

5年生の大島から、胸に頭突きをくらって池に落とされれ、びしょぬれで帰ってきた正太は、母丈子に怒られる。高熱を出し、犬のようなうめき声をあげ、苦しむ。賢くて要領のいい兄の直太と正太を比べてしまう丈子。金の母ちゃんが聞きとがめ、丈子に言いつけに来る。また、30円入った書留を朝鮮から送ってきた山村ツルのことだが、丈子の産みの母だと、武市に告げられた。

 

・長屋の凝縮した場面、うまい。

・会話のうまさが、すばらしいところ。惹きつけられる。

・いつ読んでも会話に迫力がある。

・読ませる。

・丈子が自分の生みの母のことを知らず、武市が知っていることに驚くところなど、臨場感があった。

・今回とくべつに、長尾のおじさん、おばさんなど、人情が支えていたと思う。

 

ホームアゲイン(後編) ・・・・・・・・・・・・・・・・ 武 ひとし

美穂は夫の純を亡くし、純恵(幼稚園)と実家に戻っていた。ある日、美術館に50歳ぐらいの女性が「先日買ったが北崎画伯の絵に似ている」と絵を持ってきた。佐野順二という画家の絵だ。美穂はその絵を見て亡夫の純の絵そのものだと驚いた。佐野は大病で死んだのだが、なぜか生き返り、記憶喪失になり、両親と耳の不自由な春子と暮らしている。縁が絡み合い、春子と北崎の弟雅司は付き合うようになった。しかも兄の順二が祈ると春子の耳が聞えるようになった。天界のホーソンソンの力だった。

また、北崎画伯と佐野の龍王峡の絵がまったく同じだということ、心臓病の主治医の話、純恵が佐野をパパと呼ぶことなど、すべてが佐野が純の生き写しだった。ある日、佐野は意識を失い、目覚めた時にすべてを思い出した。佐野ははやり死に、なぜか同時刻に事故にあった北崎の魂が入って来たのだ。

佐野は北崎家、佐野家、皆の前でホーソンソンを呼び(姿は見えない)、魂が入れ替わったいきさつを説明させた。そして2つ目の願いとして、北崎の、美穂との暮らしをうまく取り計らってほしいという声を聞かせてくれた。佐野は美穂と再婚し、やっと美穂と純恵との家に戻ることができた。

 

・前編後編と長編だったが、とても読みやすかった。

・縁が複雑に絡み合って、エピソードを生み、たとえそれが常識を超えていたとしても、それぞれが破綻なくうまく回収されていく。作者はとても頭のいい人だと思った。

・魂がすり替わるところや、魂がまったく同一人物だと証明できるものとして、絵を選んだのだろう。そして、登場人物を画家として動かした。こうすればうまくいくのでは・・・という思考が見えた気がしてとても楽しく読めた。

・すべてが温かく、ハッピーエンドで終わる。読後感の気持ちよさ、感謝。

 

※作者の 武 ひとし氏は、13日、ガンのためお亡くなりになりました。「海峡派」同人一同、心よりご冥福をお祈りいたします。

 

小布施の旅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 犬童架津代

巡美は、詩の会のT氏らの呼びかけで、長野の小布施に行こうとの誘いがあり、羽田まで飛行機で行き、それからバスで4時間かけて行った。参加者11人の一人、佐藤さんが小布施に嫁いでいる縁でここに決まった。旅館での合評会には、ペンネームの「夢 みなと」で『息子の手』という詩を発表した。昨年いろいろあった末に結婚し、子どもも生まれた息子のことがとても気にかかっている。その息子の結婚式で巡美を紹介され、息子と手をつないだということを書いた詩だ。

 

・冒頭のゴッホ。ゴッホの激しさ、動き、勢い、情熱をラストにも活かしたかったのだろうが、全体の流れのイメージに差がある。葛飾北斎の絵に対する執念みたいなものと、ゴッホが似ていると言いたいのなら、最初の「激しく燃えて」を活かしたいものだ。

・息子と娘の家族の、見送りを比べてしまうのはどうか。小説とはいっても、どんなことでも身内が読むかもしれない。モデルと思われる息子の嫁さんがかわいそう。

・若い頃から入っている詩の会をだいじにおもっていることが伝わってくる。

・『息子の手』という挿入された詩も、なかなか味わい深い。母親にとっては何歳になっても息子は心配なものだとよくわかる。

・たくさん書きたいことがあるようだが、あちこちにとぶのでもう少し整理したほうがいい。

 

メダル・ソルジャーズ(8) ・・・・・・・・・・・・・ 大空裕子

和雪は伯母が魔女だと告げられ、魔女の住む森に出かけた。相手が魔女だからと、幸一と礼佳も一緒に行く。叔母の家は木の上にあり、2DKぐらいだ。和雪だけ、縄梯子で登る。伯母は、来るのがわかっていたと言い、その声は男性の声に変わった。伯母はその男、ピケロというやつに乗っ取られたのだという。その時、下で二人の怒号がした。

 

・和雪は大丈夫か・・・と心配になるほど、ちゃんと読者になっている。

・魔女の描写は、木の上の2DKなどアニメ的でイメージしやすい。

・展開が目まぐるしい。が、次にどうなるか、読者におどろきをもたらす。

・和雪は魔女の甥っ子にあたる。魔女になったのは、乗っ取られたから。

・伯母が魔女だという展開から、魔女が実はピケロという男で、叔母が乗っ取られていたという。どんどん筋が変って行くが、そのペースが速い気がする。もう少しゆっくりな展開でもいいのでは?

・ピケロの顔形の描写がほしいところだ。

・続きが気になる。

 

コスモス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 山田キノ

家族で毎年、行っていた近所のコスモス祭り。満開のコスモスを背景に、家族写真を撮るのが恒例行事。わたしも満面の笑み。だが、この記念写真が遺影に。わたしはこの3日後、事故にあって死んだ。泣いている母、食べない父、ぼうっとしている弟を見ながら、もう消えなければいけない。

 

・亡くなった人と残されて人の命のことを書いていて、優しい気持ちになった。

・満開、笑顔 がマッチしている。

・明るい遺影、後ろ、幽体離脱か。

・コスモスにも白や黄色があるが、ピンクのイメージ。

・死んでいるのだが、意識がまだあるように家族を俯瞰している。

 

記憶の整理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 山田キノ

頭の中に記憶したものがどんどんたまり、記憶力が弱ってきたので、頭のネジを外してフォルダーの中のものをゴミ箱に移す。だが、それでも記憶力が弱い。病院に行ったら、加齢のせいだという。そうなると、ゴミのようなものでさえ、捨てるのが惜しくなってきた。

 

・とてもおもしろかった。

・不要な思い出は定期的に空にすべきだとは、なかなか示唆にとんでいる。書かれている人間はどうやらロボットみたいだが、記憶収納装置が劣化して、ゴミとして捨てた記憶が惜しくなるとは、なんたること。

 

ルーツ(二) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 山之内一次

伸也の父、喜久雄は、上京後、結婚、3人の子どもがいる。喜久雄は自分の生い立ちがとてもつらかったので、子どもにも聞かせていない。九州に足を踏み入れたが、再婚した母親の消息が知りたい。息子の伸也を日田市に行かせるのだが、伸也はその家にいた老人の姿をちらっと見たりしたのだが、何も聞き出せずむなしく北九州に帰るのだった。

 

・喜久雄の気持ちを知りながら、伸也がどうしても聞き出せなかった祖母(喜久雄の母)のこと。どうしても忘れ去ることはできない後悔となっているのだろう。

・続きは、話を聞こうと待ちわびている喜久雄に、伸也がどう切り出すか。わからなかった、会えなかったと告げるときの落胆が目に浮かぶようだ。

・続きが読みたい。

 

みちのく紀行(二) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 伊藤幸雄

靖之は九十七才の兄、俊樹に会いに仙台に行った。兄は脚が不自由なものの、青春時代を過ごした台湾での話など記憶も確かだ。1945年、台湾北北部の羅東というところで、玉音放送を聞いた。これでグラマンの機銃掃射やボーイングB17などの爆弾を浴びずに済むと、正直ほっとした。敗戦と同時に、養父が亡くなって以来、養父の遺産で食いつないでいく生活だった。そんな生活はいずれ行き詰るので、おでん屋を開いた。意外と繁盛し、顔見知りの登見城弘子15才を雇った。

 

・韓国と台湾では、引揚者の感じ方、現地の人の今の日本に対する感じ方がぜんぜん違う。なぜか。

・当時、作者は16才。

・引き揚げのとき、現金も決まっていて、金、銀、宝石など持ち帰ってはいけない。引っかかったら全員、足止め。きっちり守っていたが、かえってうまくやった人もいる。

・みちのくの旅から、台湾で過ごした思い出をうまく入れている。おもしろい。

・引揚者が持ち出せる金額が一万円と決まっていたからと、では使ってしまえと消費意欲が旺盛だったというのが、したたかだなあと思った。

・台湾時代の思い出が色あせずにあるのだなあと思った。

 

遥子と翔平 (三) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 松本義秀

二、麦畑・・・翔平と遥子のメールのやり取りは続いている。翔平の、調子に乗りすぎたり言いすぎたり、深入りした言葉のあと、冗談のように付け足す言葉も、遥子に指摘される。二人はメールで愛を深め、旅行の場所などを相談する。

三、山口・・・いよいよ二人で山口旅行。遥子は白いセーターにゆったりとした紺のジャケットを羽織って、同じデニム地で紺の長めのスカート。丸い濃紺のキャスケットをかぶっていた。翔平の出で立ちは、ライトグレーのズボンに同じヘリンボーン柄のジャケットにアイボリーの薄手のハイネック。翔平は車で来た。遥子の好きな音楽も入れている。肩を脱臼していたのに、お姫様抱っこするなど、かなり優しい。遥子は翔平がなぜ財務省を辞めたのか聞きたかったが、聞けない。二泊の旅はあっという間で、またそれぞれ東と西に別れる。

 

・新山口で会った二人はなんのためらいもなく、手を取り合い、入念に企画されたお決まりの恋の形を忠実にたどる。勢い余って、急に文体が変る(p186下15行~21行)は、再考した方がいいと覆う。甘く、蜜のような至福の時を過ごしている二人の様子は十分、読む方を辛抱させているのだから。

・20ページはメールの記録でバーチャルの恋はこれ以上ないほど燃え上がり、いよいよ実体験になる。準備期間は十分だろう。

・三でようやくバーチャルから事実になった。こんなにうまくいったら、すごいなあ。

・P186の男女のからみ、がっかりする。

・自分が一番楽しんで書かれたと思う。

・理想の女性と男性。

・P169上段「何も実体がない」・・・深い、掘り下げている。最後に独りぼっちのラストがいいかも。

・P172遥子〈くみこ〉・・・コマーシャル

・メールがかなり長すぎる、饒舌。内容が確かに違うのだが、それでも他愛ないことなので、短くしてもいいのでは?

・3の山口で、ようやく二人のデートが実現する。そこでも現実とメールの仮想世界とのギャップもなく、落胆はない。よかったと思う。が、まだ二泊してもこれからのことを決めかねている。先がどうなるのか?

 

百日紅の花 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 都 満州美

弟憲一の見立てで買った中古の家は、庭も弟の趣味によるもの。泰子自身は庭の趣味はなかったが、朝起きると庭掃除から。その後、憲一は車庫と土手の間にフェンスを造り、門に続くフェンスも造った。庭は憲一の思うとおりになっていく。テーブルや椅子を置いたかと思うと、灯篭や石仏まで置いた。落ち葉をなんとかしてくれと隣家から言われると剪定もしないといけない。剪定も弟がしてくれる。泰子が庭で一番気に入っている木は、百日紅だ。

泰子の弟、憲一は、泰子の家の庭を自分の庭のように思ってくれて、何かと世話を焼いてくれる。なつめの木を剪定していた憲一が、木から落ちてケガをする。やむなく庭師を雇うが、夫婦で来て、重機で、手あたり次第に切りまくる。真っ二つに切られた大木は無残な姿をむき出しにしている。結局、泰子の庭は百日紅が一番ということになる。

 

・時系列がわかりにくい。百日紅は8月9月に咲き続ける花木だが、泰子の家の百日紅は6月に咲いたのか?

・泰子の年齢、職業、弟の家の距離など情報を最初に入れてほしい。

・夏の百日紅、季節感を入れてほしい。焦点がぶれる。

・梅干しの実・・・梅の実

・風やヘビ、猫、つくばいなど、いつも細かい描写だった。ウシガエルももっと細かい描写があればよかった。

・弟が泰子の庭を自分の趣味でいろいろと仕上げていくのはいいが、蜘蛛の巣など掃除の点検もしているようで、気になる。

・どうでもよかった庭のことが、次第に愛情をもってくる。その泰子の気持ちの変化がよく表れている。

・一軒家をもつとなかなか大変だと思った。