鮭の始末 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高崎綏子

私の住む地域には食品を売る店がない。まさに高齢化社会の買い物難民だ。通っているスーパーでは一定金額以上買い物をすると、宅配してくれる。ある日、いろいろ買った中にシャケを二切れ買ったのだが、帰ってみるとない。電話して確かめるが、押問答の末、後で届けるという。そのあと、食卓と椅子の間にビニールに入った鮭があった。謝ったが、なんとも後味が悪い。店の人たちはよくあることなのか、「苦い思いを乗り越え、気持ちを切り替えて笑顔を届けて」くれる。

 

・スーパーの配達係は笑顔のいい小太りの若い女性。ある日、私の間違いから、この女性を怒らせたかもしれない出来事が起こる。でも、彼女は私を許す。ただ私は見てしまった。私を許すために、宙を睨んで深い息を一回だけ吐いたことを。なんと含蓄のあるエッセーだろう。配達係の密かなため息を忘れないでいよう・・・と作者は控えめに書くが、この作者の警告をしっかりと、わたしは受け止めた。

・本当に上手。セリフもきいている。

・短い随想の中に、配達する女性の動作や心理を推し量り、反省している。

・転んでもタダでは起きない(ちゃんと顛末をエッセーにする)

・ラストのペーパークラフトで世界観を広げている。

・おじさん、配達の人の許し。

・最後の「年齢を重ねても、学ぶことは沢山ある」という言葉が響いた。聞かせてあげたい人もいる。自分も気を付けなければと思う。

・きちんとした性格だから、鮭がないと電話し、あったらまた謝っても後悔するのだろう。私だったらどうしただろうか? まあ、いいや・・・と面倒くさいので電話しないかもしれない。

 

いま時の「癌」治療 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 古濱紘司

平成28年暮れ、右頚部に「びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫」という血液のガンが見つかった。すぐに入院と思ったら、緊急性がないということで、待たされる。そこでセカンドオピニオンを願い、紹介で国立医療センターに入院。食堂兼談話室では、ガン患者による、情報、考え方、生活の仕方など人生模様が見える。私は諦めず、希望を持って最後っまで生き抜こうと誓う。

 

・セカンドオピニオンにみてもらうことが、普通という時代になって本当に良かったなと、古濱さんの文を見ながら思う。一年間、よく闘われた。病人も自分の体を人任せにしていないで、よく知り、勉強し、あきらめず治療に向うことの大切さを、この文を読みあらためて知らされた。

・自分の病状を細かに書いている。

・生きることに懸命。勇者。

 

猫好きですか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 川下哲男

妻は相当な猫好きだ。結婚した当初、黒猫を飼っていて、老衰で死んだとき、妻は悲しんだが、私にはなんでこんなに悲しむのかわからなかった。ある日のこと、猫の死に遭遇した。通りすがりのオバちゃんが、買い物袋から缶詰を取り出し、開け、亡骸の近くに置いて合掌した。それを見て、心動かされた。その後、クロという猫を飼い、死ぬと、シロという外猫を飼った。シロが死んだときには、私は埋めてあげ、静かに黙祷した。

 

・犬も猫も心から家族としてはかわいがった覚えがないので、親が死んだ時より悲しいという人や、ペットレスの人の気持ちが、いまいちよく理解できない。ただ、いつの間にか、シロを家族として過ごしていたことに気が付く作者の静かな語りを通して、ペットの死を、家族の死と思える人は、ある意味、幸せな情の深い人なのだと思った。

・猫は人を振り回す、頭が良い。猫がいると夫婦仲がよくなる。

・「おばちゃん」は女性ではダメか?

・猫好きには尋常じゃない人もいる。

・野良猫は死ぬとき、姿を隠すと言われている。

・家族の一員のようにペットがいる。一緒にいれば、次第に愛情がわいてくる。

・猫にまつわるエピソードがどれも死がからんでいて、さびしく、しっとりとする。

・ペットが死んだときは、もう二度と飼うまいと思うが、どうしてまた飼ってしまうのだろうか。

 

いのち ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 若杉 妙

ある日、夫が気分が悪いという。血圧を測ると、低い。主治医に電話すると、ちょうど往診ですぐに帰るから、うちの病院に連れて行くようにと言う。病院で診てもらうと心筋梗塞を起こしかけているからと、記念病院に運ばれる。すぐに手術。長い時間がかかったが、危機一髪で助かった。夫の生命力と、すべての連携がうまくいったという運命に感謝した。

 

・大変な出来事でしたね。若杉さんらしく、そのままの状況をつづっているので、臨場感あふれる作品となった。タイトルもそのまま。主治医との会話をじょうずに使って、緊張感はあっても、ないんか人情味がある文章になっている。ご主人様の生還を心からお喜びします。

・命の大切さはわかっていても、日常は忘れて暮らしている。この文ではっとさせられた。

・臨場感があった。

・よくぞ助かったものだ。すべてが生きるためのタイミング。

・緊迫感があった。

・印象が残った。

・500ccのコーラを一気に飲み干した主治医に好感を持った。