みなさま
暑い夏でしたね。お元気でしょうか?
はや8月も終わり・・・もうすぐ137号がお手元に届くと思います。
大変遅くなりました。お待たせしました。 「海峡派」136号の感想を順次アップしていきます。まずは、小説から。

ミステリー旅行 ・・・・・・・・若杉 妙

目的地が杖立温泉というだけで、参加人数もスケジュールもわからないまま、誘われた旅行に夫婦で参加した。一億円のトイレや「筑前町大刀洗平和祈念館」に寄り、朝倉で昼食。杖立温泉の旅館で、参加した六夫婦のことが少しずつわかってくる。また、何ともユニークなのは、温泉・夕食後に座布団を抱えて出かけた芝居。何と小国町町長や旅館の主人や郵便局長や駐在さんなどが演じている。少々がっかりしたが、観ると、面白く、とても上手。大いに満足した旅行だった。

612人の珍道中。楽しみの夕食が、宿の女将の手作りで、少しがっかりするが、板前さんが杖立伝承芝居の女形だと知り、許す。同業者の人間関係や宿のもてなし、行ずりのレストランやそこであった人々の様子が、手にとるようにわかり、12日の旅にしては盛りだくさんの楽しい旅だったろうなと思う。

・作者が好奇心に満ちた明るい性格の持ち主だと思う。

・旅紀行の分野か。

・文章が流れるようで読みやすい。描写もいきいきとしていたし、内容もとてもさわやかで、読後感もいい。それぞれの夫婦のありようもよく描かれていた。

・筆に力がある。

・どんどん入ってくる。「見える」のはいい作品。

・「ミステリー」なので何があるのかと思ったら、当たり前すぎる。だが、作者は人との出会いも含めて興味深く、ミステリーと考えているのだろう。

・作者にとってのミステリーだが、タイトルが大きすぎたかも。

 

輪廻 ・・・・・・・・・田原明子
陽子は五回目の、早死にという人生を選び、今また突然の死を迎え、魂になった。解脱するか、それともまた輪廻して徳を積むか。ひとまず、魂のまま前世の家に戻ってみると、夫は20歳も年下の女性と結婚する、しかも女性のお腹には赤ん坊もいるという。夫にだまされていたのだ。しかし、陽子はその赤ん坊に転生する道を選んだ。かつて夫だった男を父とし、夫の浮気相手を母と選び、再び生まれる。

45歳で突然死した陽子は、死後42日で解脱か輪廻の岐路にたち、門番といろいろ問答し、輪廻を選ぶ。夫の愛人のお腹にいる赤ん坊の魂と入れ替わり、無事にこの世に転生する。とてもうまくて、文章は洗練われているので、引き込まれてしまう。

・読後感は気持ちが落ち着かない。「赤ん坊になって、夫の腕に抱かれ、すべてを忘れるのだ」・・・夫への不実、女への恨みなど・・・そして母となった魔性の女がすすり泣いている。それを恨みを超えて愛しく思う陽子・・・と書かれているが、実際にはこうはいかないので、小説仕立てにしたのだろう。

・どこかで読んだような気がする内容ではあるが、その文章力はとても優れている。そのため、輪廻の仕組みもああそうなのかと思わず納得させられる。どういう状況での人生であれ、生まれてきてよかったと思えるのだろうという収まりのいいラストだった。

・よかった。仏教用語なども使い、ユニーク

・輪廻の精神がじんわりと入ってくる。楽しく読めた。

・死んだらどうなるのかというテーマをやわらかく描いている。

・P17上段〈いろいろ〉を3回使っている。

(本人談)チベットかどこかのビデオを見た。その内容が残っていて、こんな物語を作ってみた。

 

一枚の写真から
    ―明治初のミス日本騒動異聞 ・・・・・
有馬和子

聡子は蕎麦屋の壁に貼ってある一枚の写真を見て、女子大生の頃、末永スミ子について調べたことを思い出した。スミ子は明治初のミス日本に選ばれた女性だ。スミ子は学習院女子中等部時代、アメリカでカメラの修行をしてきた義兄が勝手に応募した写真が、みごと一位をとったのだ。景品は高級呉服やダイヤの指輪、タンスなど豪華なもので、二部屋二十畳がうまるほど。しかし、級友たちの冷たい視線や、何より学習院院長・乃木希典の逆鱗にふれ、退学に。義兄も事の重大さに気づくが後の祭り。その後、乃木院長から縁談話が・・・

・明治41年のミス日本一に輝いたスミ子の物語。タキは侍女として、彼女のき方をずっと見守っていた人。そのタキを取材するうちに聡子は、スミ子が女教師になりたいと思っていたことなどを知るが、結局、侯爵の息子の嫁になる道を選んだことがわかる。
・最後の「あなた方のお陰で、今の私たち女性の自立があるのですよね」というのは言い過ぎか。
・スミ子の人生を傍で見てきた侍女、タキから聞いたという設定が功を奏し、タキと聡子の会話もリアル感があった。スミ子の義兄に寄せる思いもしっかり描けていて、内容に厚みが出ていた。文章も滑らか。時代の持つ女性観がよくわかり、興味深く読んだ。
・小倉織は当時は男子の袴に使っていた。

・三層構造の書き方。わかりにくさもあったが、手が込んでいた。

・ラスト、大げさ。スミ子の生き方と今の女性の地位と結びつけるには少し無理がある。

 

上級生 ・・・・・・・・川下哲男

小学3年のミチコの家は崖のヘリにある。崖の下では、トンネル工事が始まり、近くに工事作業員の宿泊所が建てられた。そこに越してきたのが、5年のルミ。ミチコとルミは毎日一緒に通学し、下校後も遊ぶ。ひと月後、子共対抗リレーがあり、予選でルミとサヨが一位争いになるが、いつも一位になっているサヨが選手になった。だが、大会当日、サヨは仮病をつかい、ルミが出ることになり優勝する。夏休みに、ミチコとサヨが赤痢にかかる。サヨはまもなく良くなり、ルミと一緒に遊び場になっている「お地蔵さん」の所に行き、ミチコが早くよくなるように祈る。ミチコは夢の中でお地蔵さんの所に行くが、「行っちゃだめ。戻ってきたら、教えてあげる」という声を聞く。退院後、ルミは父親のトンネル工事が終わり転校していた。ミチコ宛ての手紙には、またトンネル工事が始まれば戻ってくる、その時には、ブランコから飛び降りたり・・・教えてあげると書いてあった。

・崖のへりと、崖の下のトンネル工事、年上の転校生、そしてよく遊んでいる「お地蔵さん」などの設定がぴったりはまっている。時代的には昭和の中ごろぐらいのようだが、ミチコ、ルミ、サヨのほのかな友情には時代に関係なく温かく感じられるものがある。文章もとてもうまく、一気に読めた。

・美少女ルミちゃん、優しく、かけっこも速く、すてき。

・絵本に書いてあげたいような「見えた」作品。

・おもしろかった。おとなのための童話。

・「親の顔が見たい」「先客がいた」などは子どもの言葉としてどうか?

・町内運動会の様子がいきいきと描かれていて、とても面白い。謎の少女、ルミ・・・

・メルヘンチック、ラストが切ない。

・いい小説。サヨ、さりげなく見てて、ルミを選手にさせる手段など思いつく・・・よく表している。

・―いる ―る が多い。タイトルが平凡

・テーマが作品に出ている。

(本人談)妻の体験を聞いた印象で書いてみた。

ハーレーズー ・・・・・中北潤之助

北九州のバイク野郎として名を知られる中野剛と妻しず子は、カフェ「ハーレーズー」を開いている。公園で出会った4歳のひとみを、歳とった養父からもらいうけ、以来、夫婦は人生の大きな転機を迎える。

・クレージーなまでの擬人化した形容詞で、門司港海岸が描写され、荒っぽい喧嘩言葉がいきかう。しかし、独創的な小説で、思わず読みふける。

・パンクは苦手な楽曲だが、ちゃんと歌詞がかかれていると、なるほど・・・と引き込まれる。

・初めて出会う文体なので、面食らっているが、次が楽しみ。

・とても読みやすかったし、ストーリー性もあり、また、得意の訳詩(セックス・ピストル)のもうまい具合に自然に文中に入れられていた。とてもいいと思う。

・ひとみを養女にするくだりで、もう1行でも困難だった経過など(たとえば、弁護士に相談して、とか、ひとみの本当の親や親類を訪ねてみる、とか)あれば、より説得力あるかも?

・ルート66がバイク乗りにとってどういうものなのか、最初に出てきたときに、1行でも説明という か、会話の中ででもあれば、(たとえば、「3キロ超えの一本道、バイク乗りのロマンス街道だ」とか)読者にスッと入ると思うが?

 

あしたは 晴れている ・・・・・ はたけいすけ

正太は全校朝礼で校長から、支那による日本人大虐殺は許されないと、『政府の戦争拡大・断固暴虐し合を應懲する声明』について説明され、最後に「海 行かば・・・」を合唱。やっと校長になれた彼を悩ましているのは長男。教育者一家に生まれたのに、勝手に東京のレコード会社に就職した。息子は新しいレコードと一緒に父や戦争を批判するような手紙を送ってくる。正太はというと、朝礼後、馬糞の前で座り込んでいる。聞くと、「子之八じいちゃんが・・・大将の乗る馬は、一番偉い馬・・・だからババも沢山できれい」のだと言う。正太は校長の新米女先生である娘、恵美子と以前会っている。恵美子は教師になったら支那に渡ると父・校長に話す。それを聞いていた正太は、「支那の鉄砲で、撃ち殺されてしまう」とむきになるが、恵美子は「鉄砲は胸の奥に持っていて、撃ち方も知っている」と正太に笑ってみせる。

・校長と、息子・娘の考え方の対比が鮮やかに描かれている。正太は大人も顔負けの子供らしい発想で、巨大なものと自分たちのような小さく弱いものを暴く。頭の良い子。子之八の影響がそこここで出ている。当時の庶民の様子が、典型的な人物像を動かすことによってうまく再現されていると思う。

・高岡校長の長男と長女を語ることによって、激動する戦争前夜の時代に、庶民の生き方を考えさせている。

・馬糞でも大将の馬糞はきれいで臭くなく仰山すると、子之八じいちゃんから聞かされていた正太が、懸命に馬糞を運ぶ姿が活写されている。

・群が教育に深く干渉し、戦々恐々とする校長らの様子も、リアリティがある。

・文章は子どもの目線だが、背景の歴史的事件をうまく記している。

・触れてはいないが、残虐なことがたくさんあった。

・校長の娘や息子が、父とまったく違う生き方をし、時代と絡めていく書き方。うまい・

・教育の分野に軍部がかなり入っていたのがわかる。

ラスト・ストラグル(連載第四回)・・・ 坂本梧朗

ワラシが死んだ。その前後や火葬も、詳しく書かれている。身内の死よりも切実に哀しみ、カティアとツムジの反応も納得がいくように、丁寧に描かれている。両親(サンジイ、サンバア)のますます進行している痴呆症状に、振り回される。とくにムーサンは、実の両親が夫には見せたくないような「へんなこと」をすると、やりきれない。ムーサンとサンバアの口汚いやり取りも、カーツンとサンバアが繰り広げる食べ物を巡ってのバトルも、よくあることだが・・・。

・スーパーリアリズムに文学性があるか・・・評価はわからないが、犬の死にあれだけの思いを持つ人が、人生を終わろうとする人にどう向き合うか、今後の展開が楽しみ。

・ワラシの目は、ドライアイのため、接着・・・ムーサンは自分のせいだと責める、切なさ。

・最後、甘えさせてあげることができ、ほっとした。

・サンジ―、サンバー夫婦の会話、すごい。また、ムーサンとサンバーの会話もすごい。

・自宅介護の描写が切実。介護には共感する人が多いはず。

・サンジ―、サンバーの性に関するところ、一緒に住んでいて恥ずかしいところも赤裸々に描いている。考え方で違うだろう。

黄昏の街 ・・・・・・・・・・・古濱紘司

徹は損保会社に勤務。課長として単身赴任した北九州でのこと。宿舎に戻っていたら、片山から呼び出しがあり、事故対応に同行することに。事故はおかしいところがいくつもあった。契約者の女性が軽自動車で狭い商店街を運転中、後方で「トン」と音がした。何もなかったと帰ると、その女性の車に当たってケガをしたと言ってきた男がいた。調べると、男はブロック片で自分の腕を叩きつけ、ケガを工作したことがわかった。


・全体にメリハリがない。

・自作自演のニセ事件。ケチな犯罪と、保険詐欺が横行するうすら寒さがジワリと身にこたえる。

・慣れぬ土地で遭遇した出来事に疲れている徹の実情がよくあらわされていた。

・土地柄というには厳しい当時の底辺の暮らしぶりもラストで書かれていることで、全体が引き締まったと思う。

・一昔前のこととはいえ、地元の暗部について小説仕立てでえぐり出そうとしている。この小説から学ぶこともあるだろう。変わったことと、変わってないこと・・・考えさせられ
る。


昼下がりの喫茶店
 ・・・・・・・・ 伊藤幸雄

昼休み、喫茶店でコーヒーを飲んでいる宏は、今日も営業成績が上がらず、会社に戻りたくない。上司はネチネチと疎ましい。時間だ・・・と思っていたら、隣から「邪魔者は消すしかない・・・」とドスの利いた殺気を忍ばせた声が聞こえた。気付かれた宏は、とっさに傍のデンドロビウムという花びらを摘まんでいた。男たちは今話していたのは、今度売り出す小説のことだと大笑いで宏の誤解を解こうとする。なるほどそうかと思った宏。翌朝、ビルの谷間の路上に叩きつけられた男が一人。手には花びらが一枚。

・人の話に首を突っ込んでいたら、ついに殺されることに。

・殺人計画を聞いたとしても、まさか自分のことだとは思わないだろう。

・なぜ宏が殺されなくてはならなかったのか?深読みすればおかしなことも出てくるが、すっと読むとなるほどと思ってしまう。

・オチのあるショートショートはとても難しいが、今後も新作をどんどん出してほしい。

・情景描写、悲哀なサラリーマンを描くのは伊藤さんの得意とするところだ。

  

日光行き その二 ・・・・・・・・ 犬童架津代
幾代は日光行きの途中、娘のところに寄り、孫たちと触れ合う。そして、彼らと別れ、再び日光を目指す。鬼怒川公園近くの旅館が詩の仲間との会合場所だ。一足先に着く。幾代のペンネーム「舞」の詩を批評される。横田すずの「横田商店」の詩も紹介。詩の会のあとは、皆と日光の観光。


・非日常を大事にすることで、日常を頑張れる。その非日常は、詩の世界で、作者が家族とも離れ、一人になり、自分自身をさらけ出せる場所。そのことが今回の小説でよくわかった。旅行も観光に行くだけではやはり物足りないが、詩の会と合わせることで、充実した日程になっただろう。

・好きな趣味のことを大事にしているのが伝わってくる。

・紀行文のように平板に陥りやすい。物の感じ方などをもう少し詳しく。

・P15の友人の詩は、もっといい詩がなかったか?

・幾代が高田先生に会った時のことをもっと詳しく書いてほしい。

・「旅疲れからくる解放感」はおかしいのでは?

・感心した人の詩を紹介しているが、紹介した詩はうまいとはいえない。ほかにあったのでは?


苦節川(九)・・・・・・・・・・・ 山之内士山を背景にする工場で働いている浩一。ある日、警戒警報が構内に流れ、頭上には敵機が低空飛行で旋回していたことがあった
。職場の中には沼津市内の空爆の犠牲者になった人もいた。そんな折、青年士官が一通の封書を持ってきた。母の体調が悪いとの知らせだった。浩一は母の元へと帰る。水戸駅から額田駅へ。母・慶子と妹たち三人が出迎えてくれた。その後、時は過ぎ、ラジオから日本の敗戦を告げる天皇陛下の玉音放送が流れてきた。


・戦争の中、ただならぬ様子が浩一の家族の消息を通して描かれる。浩一は母・慶子のことが気が気ではない。敵機からの攻撃の状況を考えれば、日本の負けは目に見えているが、気をもむしかない。玉音放送は、敗戦という残念な報告ではあったが、ようやく敵機に恐れながら眠る日々に終わりを告げるほっとする気持ちもなかっただろうか?

・すっと終戦までいってしまった。もう少し、戦争への思いなどを掘り下げてほしい。

・天皇のために死んだ人たち、天皇のために死んでしまった大人たち、言えない部分が大事だが、まじめな浩一は言えない。天皇に命を捧げると本気で思っていた。

・「鼓膜が痛くなるほどの静けさ」

・この時代の人々は、肉親を大切にし、引き裂かれれば、何としても会いたいと思う。今、ものは足り、余り、捨てる時代に、この浩一が母を気遣い、弟を気遣う情の深さを思う。

・天皇陛下のために死んだ人々は、それが親、兄弟を救うためと信じて、特攻も辞さなかった。浩一も上の言うことに逆らわないで生きてきたが、どうしても帰りたくて嘘をつく。

メダル・ソルジャーズ(3)川口編 ・・ 大空裕子

川口由美がメダル・ソルジャーズの一員になる前の話。由美の叔父が屋てきて、「メタモン界に異変が起きている」と告げる。そして、由美に一緒に来るように言う。その頃、一人の男が邪悪なメタモンを復活させようとたくらんでいた。かつてのカルサイトだった。由美は、メダル・ソルジャーズの一員になって、その男たちと闘うことになるのだ。

・まだあらすじのようなので、もう少し書き込んでほしいところだ。また、できることなら、なるべく細切れでなく、まとまった枚数で発表してほしい。

・由美がメダル・ソルジャーズになる必然性を描いたようだが、叔父もメダル・ソルジャーズの一員なのか、その説明がほしかった。どんどん話をおもしろくしていってほしい。楽しみだ。

・ライトブックスという分野は初めて知った。


慰霊碑 ・・・・・・・・・・・ 都 満州美

雄一は養豚場で下っ端として働いていたが、四十歳で多額の借金をして、延岡の外れの養豚場を引き継いだ。家から車で一時間もかかり、途中に豚の慰霊碑がある。慰霊碑は雄一の慰めでもあった。雇っている洋一はベテランだが、雄一の母親・繫子はまったくの素人だ。豚は高価なものを食べるので、エサ代だけでもお金がかかる。桂子という妻と二人暮らし。繫子は一緒に住もうと誘うが、話に乗らない。豚舎で働かせることを申し訳なく思うが仕方がない。生まれた子ブタは半年で出荷するが、それまでの飼育は並大抵ではない。弱い子ブタは死ぬ。初めて豚を出荷する日のことを雄一は忘れない。


・豚の飼育について、エサの調合から掃除、出産のことなど詳しく書かれてある。匂いまで漂ってきそうだ。家畜の飼育は根気と愛情がなくては続かない。割に合わない仕事だと思う。大事に育てたからこそ、おいしい肉になってくれよと言えるのだと思う。

・雄一は魚釣りが好きで、サーフィンもやっていた。豚の世話に追われる彼は、一日も休んだことがなく、今では商売人の顔になっている。死んだ子豚を抱いて泣いている母親を見て、自分も声を放って泣く優しい男。
・今までの作品とガラッと違っている。読んだことのない世界。

・豚を送るとき辛い。むごい世界。

・スーパーで何でも買えて恵まれているが、生産者のご苦労は並大抵のものじゃない。

・タイトルにもなっている慰霊碑というのが作品中でうまく位置づけられていない。誰が何のために?由来なども必要。

・力強い筆力。

・息子と母親の情感が出ていて、ラストがよかった。

・体験と見まがうほどの緻密な創作力だ。取材の力だと思う。

・苦労が伝わってくるが、まだ弱い。葛藤を赤裸々に描いてほしかった。