2017年02月

「週刊読書人」第3175号

「文芸同人誌案内」掲示板より
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http://www.geocities.jp/hiwaki1/doujin/douindexF.htm

抜粋します・・・・・・・・・・・・・・・

「週刊読書人」第3175号(2017年02月03日)「文芸同人誌評」白川正芳氏筆により、若杉妙「私の岩下俊作像」(「海峡派」138号)が、紹介されました。

「西日本文学展望」2017年01月31日

「西日本新聞」2017年01月31日(火)朝刊「西日本文学展望」に、長野秀樹氏筆により、「海峡派」138号、笹田輝子さんの追悼特集若窪美恵「まいど、鰻(うなぎ)屋です」坂本梧郎「ラスト-ストラグル」最終回が紹介されました。

「海峡派」138号 ④(4)小説・俳句

艶やかに ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 横山令子

夢香は夫が亡くなって二年、「古文書読む会」やシニアコーラスにとようやく自分の生活リズムを取り戻している。ある日、コスモスを見に行こうと出かけたとき、ふとしたことから男性と知り合った。その男性は松田といい、映画館で再会。お茶を飲み話すと、松田は定年を機に、学生の頃から住んできた東京を離れ、妻や息子たちとも離れ、一人で戻ってきた。夢香は松田を親しく思うと同時に、自分の息子は自分のために戻ってくることはないだろうと寂しくも思った。

 

・父が付けた《夢香》の名前が芸者の名前というところ、なかなか時代的でおもしろかった。

・書き出しと終わりが自然でよかった。

・《古文書読む会》は、地元民を入れない・・・本当

・恋心、ういういしさ、ぎこちなさが出ていた。

・独り身の立場と母としての立場で夢香の気持ちが違うのがよく出ていた。

・夢香が夫亡きあと、自分なりの生き方をしている。松田の出現は今後どうなっていくのか・・・

〈作者の言葉〉続きを書くつもり

 

メダル・ソルジャーズ(5)・・・・・ 大空裕子

前回までの戦いでは、メダル・ソルジャーズが、カルサイトに負けた。カルサイトはニタニタ笑いで、残りのメダル・ソルジャーズを葬り去り、あらゆるメタモンを自由に操ろうと企む。負けた礼佳たちメダル・ソルジャーズの間では「メタモン界のこと・・・私達人間がでしゃばることではないんじゃないかしら?」との思いもよぎる。だが、みんなが帰ったあと、カルサイトは不敵な笑みを浮かべていた。
 

・カルサイトとは鉱物の名前。そういうこともカルサイトがどんな容姿なのか、想像するヒントになるが、もう少し描写、情報を書き込んでほしい。

・イメージを創造しながら読んでいく。

・戦いはまだまだ続くようだ。悪を倒すということは、平和につながる。負けた時の退廃的なムードがよく出ている。

 

永鞆中学校 ・・・・・・・・・・・・・・ 中北潤之介

僕の、故郷の永鞆中学校の物語。ヤンキー気取りの僕は、柔道部に入っている。顧問の賀鬼先生からよくビンタをくらう。2年になって、「〇〇ちゃんと付き合って」と言われるが、付き合うという意味がわからない。また、ジンエという矢沢に熱狂していた同級生や、W里香、そしてもう一人、釣りマニアのKの存在は、僕に大きな影響を与えた。3年になってMさんとの恋が、僕の永鞆中学校での独りよがりな尻の青い自伝を自由な世界へと広げてくれた。
 

・長い小説。最初とラストを比較すると、変化が大きい。

・書き方が気になる。もっと推敲を。

・書きたいことをバッと書いていく。ある意味、うらやましい。

・ポルノ的な部分、特に中学生なのに・・・読めない。

 

サプライズ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 犬童架津代

幸子の息子、一郎はひでみと結婚する。式はハワイでする予定だったが、ひでみが妊娠しているため、幸子、夫信也、ひでみの両親と4人でハワイ観光。その時に幸子は足をくじいた。帰国し、披露宴。ウエルカムボードはひでみの母の手作り。受付は一郎の友人。あたたかく幸せそうな息子夫婦の披露宴だった。
 

・式をしないで披露宴・・・友人たちが式をしてくれた。貴重な経験。

P224下、後ろっから6行目「ぜひ息子と・・・」のセリフは誰が言ったのか。友人の言葉に直し、すぐにわかるように。

・披露宴などの状況はどこもさほど変わりはないのかもしれないが、結婚しないと思っていた息子がひでみの父に迫られ、結婚を決意する様子や、ひでみの妊娠でハワイ行きが若者抜きのそれぞれの親同士が4人で行くなど、面白かった。

 

俳句 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・髙﨑綏子

漂着の鯨渚に星明かり

たぷたぷと鯨の骸岸壁に

ふり向くな寂しい鯨が自爆する

鯨埋めて不在の岸を波洗う

図書館を居場所と決めて冬に入る

図書館の黙に匂える冬林檎

「海峡派」138号 ④(3)小説

逃避行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 都 満州美

兄は母が亡くなり実家に一人暮らし。実家は散らかり放題。三歳上の姉は結婚し、子どもや孫もいて、私に実家で暮らし、兄の面倒を見てほしい様子。私は兄と暮らす決心をする。兄に認知症の兆しが表れ、好きなダンスもやめた。私は近所に住む兄を車でショッピングモールに連れ出し、散歩させるのが日課になっている。次第に兄と一緒にいると窒息しそうに思え、逃避行のためのマンションを借り、兄の目をかすめてはやってくるようになった。部屋を観葉植物でいっぱいにした。

 

・背負い込んでしまう人の運命というものがある。

・認知症はいろいろな症状があり、性格も変える。誰もが直面する可能性がある。

・兄をショッピングモールに連れていく・・・などリアル。

・逃避願望からか、一人になる部屋を借りるが、そこは異常な部屋。メンタルをやられている。深層まで入り込んで書いている。

・兄弟とはいえ、離れていた者同士が一緒に暮らすのはとても大変なこと。私の気持ちがとてもよく表現されていたし、よく伝わってきた。兄と母との相互依存の関係が崩れたことで、実家があれていく様子が現実的で自分の実家のことと重なった。

 

対馬海峡・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 木村和彦

昭和50年のこと。新井先生は、市内の由枝の小学校で合唱を指導している。新井先生の提案で、韓国に演奏旅行に行くことになった。韓国は1945年、日本が戦争に負け自由の国になった。その後三八度線という境界で北と南に分かれて行き来ができないという状況にあった。春休み、ようやく韓国へ。ソウルへの列車の中でちょっとしたトラブルになり、新井先生が韓国語ができることがわかった。ソウルで、由枝たち日本人が合唱した後、新井先生が黒い服を着た男性二人に連行された。男らは特務員ではないかと他の先生たちは言ったが、定かではない。結局、新井先生を欠いたまま、帰国した。

 

・韓国は反日、台湾は親日という感じ。台湾は唯一植民地として成功した?

1919年(P143 )、日本の植民地になった。

・歓迎の挨拶、創作だと思うが、反日的でひどい内容。本当のよう・・・

・とても興味深かった。こういうことが本当にあったのではないか・・・

・小学生とは思えない、非常に聡く賢い由枝だと思う。

・p153上段の「あとは時間が運んでくれる・・・甲板に出た」までは、大人の目線。

・続きはあるのか。続きを読みたい。

 

ちょっと変・本能寺の変 ・・・・・・・ 伊藤幸雄

軽口、悪口は本人に知れるとまずいことになるが、歴史上の人物の悪口なら誰も文句は言わない。

飲んで帰り、寝る前、どこからか『それでは、お前、俺と代わってくれるか』と声がし、『勿論、俺が信長なら、あんな馬鹿はしないなあ』と言ったら、起きた時に、本能寺の変の日だった。目の前には森蘭丸が「トノ、お覚悟を」。

 

・本能寺の変には、秀吉がやったなど、いろんな説がある。

・夢ではなく、タイムスリップ。ちょっとわかりにくい。

・ちょっとした世間話のつもりが、後で本人に知れ大変なことになるという話だが、前振りの江戸時代の儒学者の言葉や、焼き鳥屋での会話など、本筋に引き込むための布石がうまい。

・『信長協奏曲』という信長と入れ替わる現代の若者が、歴史を参考にうまく事を処理していく映画があったが、この小説では入れ替わったのは暗殺される当日。笑える。

 

酔って候 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 山之内一次

職場での30人ほどのわれわれのチームが受け持った仕事が順調で、結果も残すことができた。山陰の入船亭という料亭で一席をと、部長から持ち掛けられた田中は、酒の席で過去、屈辱的なことがあったのを思い出す。しかし、逆にその事件があってから部長は飲みごとの席では田中に目をかけるようになった。魚料理に皆、舌鼓を打った。帰り際、5歳くらいの少年が、悲痛な声で「伝家の宝刀が盗まれた」と叫んでいた。主人も、今日のお客はあなた方だけだから、子どもの言う宝刀が戻るまでは帰すわけにはいかないという。酒に酔った前川と野田が、刀を持ち出したのだった。その刀は本物だった。

 

・ひと昔前の会社の宴会風景という感じが伝わってくる。

・少年が遊んでいた刀が本物だったこと、それを冗談のつもりで取り上げた前川と野田の酒癖の悪さが大きなことになっていく。本物と気付き、警察沙汰になる前に返すことができてよかった。
・ラストの月に照らされている男たちの姿が目に浮かぶ 

「海峡派」138号 ④(2)小説

あしたは 晴れている(連載第十一回) 
                ・・・・・・・・・・ はた けいすけ

正太がセルロイドの筆箱を馬島に取られ、からかわれているのを兄の直太が見た。そのことで母丈子と直太は万引きかも・・・と思うが、正太を問いただし、若奥さんからもらったことを知る。ある祭りの夜のこと。アセチレン・ランプの灯りの元、バナナの叩き売り、飴屋の前を通り過ぎ、雑踏の中、聞きなれた声が・・・。お面屋のところに座った一人の女の子を見たとたん、正太は胸の鼓動が止まるほど驚いた。なんと、サトちゃんだった。しかも目が見えない。元活動弁士の父親がお面を売っている。正太は、ドブ川の土手でまじないの一銭銅貨を拾ったせい(そんなことしよったら、眼が潰れてしまう)だと思い込む。だが目が見えないふりしているとお面がよく売れるという。ただ、朝鮮に行ったはずのサトちゃん親子がなぜお面を売っているのかは、謎。また、正太親子で肉飯屋に行ったのだが、そこで若奥さんに再会した。
 

・一回ごとに完結しているので読みやすい。

・セルロイドの筆入れ事件が、効いている。

・物語の展開のさせかたがとてもうまい。

・アセチレン・ランプに照らされた懐かしいサトちゃんを見たときの正太の驚き、しかも目が見えなくなっている・・・この回は、たっぷりと昭和初期の下町を活写して、人間関係のもつれもその喧騒に巻き込んで動きがある。

 

雨に咲く花 ・・・・・・・・・・・・・・古濱紘司

睦男と妻弘子、その娘時枝の物語。睦男が出て行ったまま帰らず、警察に保護されていて、引き取りに行った。認知症の疑いがあるということで、病院に。昔のことは覚えているが、最近のことは覚えていない睦男。検査の結果、アルツハイマー型認知症と診断され、妻の弘子が娘の援助を受けながら、地域の隣組に病気を公開し、協力を頼む。隣家の大久保さんも町内会長さんもよく話してくれたと、「カラオケ教室」に誘ってくれたり、ドライブに連れ出してくれたりした。
 

・恥ずかしかっただろうが、正しい対処だ。作者は、よく女の気持ちを表現できるなあと感じた。

・認知症の介護問題、世間に恥を忍んで助けを求める。役に立つ情報がたくさんあった。解決策の一つを提示してくれた。

・元会計士が簡単な引き算もできなくなる。

・認知症確認から一年後、庭の紫陽花が声援を送ってくれているようというラスト、うまくまとめている。

 

ラスト‐ストラグル(連載最終回)
           ・・・・・・・・・・・・・ 坂本梧朗

ついに最終回。カーツンは退職を迎え、今日が最後の授業の日。これまでを振り返り、進学理系の二クラスはカーツンに教える喜びを与えてくれたことを思う。そのクラスの最後の授業で、最後にアンケートを書いてもらった。アンケートの内容は感謝の言葉であふれ、カーツンを幸福にしてくれた。一方、離任式で考えていた挨拶は代表の挨拶のみとなったことや、離任式に担任が来てなかったこと、離任式後に学習会の監督があることなど、ちょっとしたことがカーツンをイライラさせた。離任式後の生徒とのふれあいはとても嬉しいものだった。卒業生もやってきた。後日、ムーサンの車でサンバーと一緒に来て、荷物を運び出し、学校を出るとき、記念写真を撮ってもらった。そこで終わればよかったのだが、学習会の監督があった。離任式で別れた後に生徒に会うのは気恥ずかしかった。やっと終わったとき、菊丸という若くて気軽に話せた国語科教員に「お疲れさまでした」とにこやかに声をかけられたのに、別れ際、〈先生、お体大切にね〉という言葉をかけられなかったのか。菊丸を追いかけようとして、一度は足を止めたのに。

 

・坂本さんの描く教師像は直球。対して中北さんは変化球。書き方はいろいろ、どんなふうに書いてもいいのだと思った。

・学校を去る場面、細かい描写。最後までストラグル。

・教師集団のさまざまな葛藤の中で、ああ思い、こう思いして、揺れ続ける一人の気弱な、まじめな、人間らしい、普通の人を最後まで描いて、ハッピーエンドなどどこにもないと思い知らす作者の意図を、複雑な思いで受け止めた。

・最後の授業「一字題、一行詩」の授業風景は心が温まった。そのあとの生徒の感想文に感激するカーツンの人の好さに、おかしみを覚え、この膨大なつらいことばかりだったような小説を救っていると感じた。

・連載最後は退職の時のこと。生徒たちに色紙をもらったり、写真を一緒に撮ったりと、それなりに教師生活の最後を迎えられてほっとした。だが、私立校の人手不足ゆえか、離任式後も仕事があり、それがラストの「やはり学習会の監督はカーツンを躓かせる罠」だと感じさせた。なかなか大変な教員生活だったようだが、お疲れ様でした。生きる、生活費を稼ぐというのは本当になかなかに大変なものですね。

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