2020年03月20日

「【特別展】桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!―」山種美術館

3月14日、東京・靖国神社のソメイヨシノが開花し、1953年の観測開始以来、最も早い開花を記録。今年ののお花見はどこへ行こう? ・・と考えている方に、名所の桜を一気に観られる、とっておきのスポットをご紹介します。

それは、東京・広尾にある山種美術館。
桜を描いた近現代日本画の名画50点が並ぶ「【特別展】桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!―」展が5月10日まで開催中です。贅沢な「お花見」の後は、併設のカフェでおいしい和菓子もいただけます。
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|古くから日本の山野に自生していた桜。中世、近世では貴族、武家など上層階級を中心に鑑賞され、江戸時代には庶民も花見を楽しむようになりました。

本展では、日本人の美意識と深く結びついた桜に焦点をあて、所蔵の近代・現代日本画の中から約50点の作品が紹介されています。古くから知られている名所の桜、歴史、物語の題材の中で表される桜など、桜を描いた絵画を通して、日本人の美意識、日本文化を感じることができる展覧会です。
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展示室に足を踏み入れると、そこには桜、桜、桜!
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第1章 「桜とともに」では、人と桜の関わりに焦点を当てた作品が紹介されています。

色鮮やかな着物姿の女性とともに、優雅に咲く桜を描いた松岡映丘の《春光春衣》山種美術館
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この章では、桜を愛でる人々の姿とともに、美しい着物の柄にも注目してみてください。

満開の桜の下に女性たちが集う様子を描いた菱田春草《桜下美人図》山種美術館
右下の猫(?)もお見逃しなく!
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『太平記』の児島高徳の「忠義の桜」の逸話を題材とした橋本雅邦《児島高徳》山種美術館
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小林古径 《清姫》のうち「入相桜」 山種美術館
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安珍清姫で知られる紀州の道成寺伝説に取材したもので、院展出品時に高く評価されました。本図は 8 枚の 連作のうちの最後の場面。長らく画家の手元に置かれていました が、山種美術館創立者の山﨑種二氏が「美術館をつくられるならば」と購入を許された作品です。

頭に荷をのせて売り歩く京都の大原女を描いた土田麦僊 《大原女》山種美術館
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桜の表現には胡粉を用いて立体的に表現。足元は複数の線で表現され、独自のエ 夫が見受けられます。「骨身をけずる思い」で描いたという画家の自信作。

第2章「名所の桜」では、日本各地の名高い桜の名所を描いた作品が展示。嵐山、吉野、千鳥ヶ淵、奥入瀬…と、桜の名所を旅するように、名画を楽しめます。
なかでも、ひときわ印象的なのが、奥村土牛の《醍醐》山種美術館
京都・醍醐寺のしだれ桜を描いた、土牛の代表作のひとつです。
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見事に咲き誇る桜が、ぼうっと、春霞がかかったようなやわらかな空気感とともに表現されています。師である小林古径の7回忌の法要が奈良・薬師寺で営まれた際、その帰路で立ち寄った醍醐寺三宝院で、この桜を目にした土牛。「何時か制作したい」と考え、その出会いから10年近い年月を経た昭和47(1972)年、「今年こそ」と再び醍醐寺を訪れ、この作品を制作したそうです。

福島の名木「三春の滝桜」の華やかに咲き誇るさまを描いた橋本明治《朝陽桜》 山種美術館
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奥入瀬の新録の風景を主題とした奥田元宋《奥入瀬(春)》
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奥田元宋が75歳の時の大作。渓流が右から左へ流れる音が聞こえてくるような作品です。

 主に京都各所の風景を描いた森寛斎《京洛四季》山種美術館
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桜の景色から雪景まで、春夏秋冬の全8図が収録。清水寺や 三条大橋のように古くから知られる名所だけでなく、明治6年に東山に開業した吉水温泉の楼閣、鉄橋に かけ替えられたばかりの四条大橋など、明治以降の名所も描かれています。

第3章「桜を描く」では、花そのものにクローズアップした作品が並びます。ひと口に「桜」といっても、繊細な桜、妖艶な桜、かわいい桜、野趣あふれる桜と、画家によって描き方はさまざま。

渡辺 省亭 《月に千鳥・桜に雀・紅葉 に小鳥 のうち「桜に雀」》山種美術館
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3幅対の花鳥図のうち春を描いた図。濃淡やかすれを活かしながら枝の質感まで巧みに表現。中央の3羽の雀がアクセントになっています。

「花鳥画の芳文」、「桜の芳文」ともいわれた菊池芳文の《花島十二ヶ月》 山種美術館
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明治後期から大正期にかけて同門の竹内栖鳳らとともに京都画壇で活躍した芳文。本作品は四季折々の植物に虫や鳥を組み合わせて描かれた12面の画帖で、3月の図では咲き始めた桜とモンシロチョウが描かれています。ほかに梅に鶯、野達に雑、百合、菊などが収められ、 1年を通じて多彩な花鳥を楽しめる作品です。

横山大観《山桜》 山種美術館
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開花とともに葉をつけるヤマザクラ。日本では古くから自生し、数多くの絵画にも描かれてきました。葉の部分には、金泥が使われています。

第2展示室は、「夜桜」を描いた作品を一堂に展示。少し暗めの幻想的な空間の中で、夜桜の名画に囲まれる贅沢な時間が過ごせます。速水御舟《夜桜》ほか、加山又造、千住博ら、現代の日本画も展示。
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速水御舟 《夜桜》山種美術館
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鑑賞後は、1Fロビーの「Cafe 椿」へ。「Cafe 椿」は、山種美術館のコレクションの中でも人気の高い速水御舟《名樹散椿》(重要文化財)から名づけられました。
毎回、展覧会ごとに、青山の老舗菓匠「菊家」に特別オーダーしてつくられるオリジナルの和菓子は、今回は写真の5種類。小さなお菓子の中に表現された美しい色とデザイン、そして繊細な味わいは和菓子の素晴らしさを再認識させてくれます。
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例えば「ひとひら」は、今回展示されている奥村土牛 《醍醐》をイメージしてつくられたもの。花の醍醐寺を彩る桜をモチーフに、柚子あんを桜色の花びらの形で包んでいます。落ち着いた雰囲気の店内で、美術鑑賞のあとのゆったりとしたひとときをお過ごしください。
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また、ミュー ジアムショップでは、人気の《醍醐》や《朝暘桜》をモティーフにしたグッズのほか、出品作品をあしらったクリアファイル、ポストカード、一筆箋など、展覧会の記念となるミュージアムグッズが揃っています。鑑賞の記念にいかがでしょうか。贈り物にも喜ばれそうですね。
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 2020年春、桜の絵画で満開となった美術館で、描かれた桜によるお花見のひと時をお楽しみください。

「【特別展】桜 さくら SAKURA 2020―美術館でお花見!―」公式サイト
※状況により予定が変更する場合があるので、来館前に美術館HPをでご確認ください。
会期:開催中〜5月10日(日)
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
休館日:月曜日(5月4日(月)は開館)、5月7日(木)
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
入館料: 一般 1,300円(1,100円)、大高生 1,000円(900円)、中学生以下 無料
※( )内は20名以上の団体料金および前売料金
※障がい者手帳、被爆者健康手帳の所有者、およびその介助者1名は団体割引料金
※きもの割引:会期中、きもので来館すると団体割引料金
※リピーター割引:本展使用済入場券の提示により、会期中入館料が団体割引料金(1名1枚につき1回限り有効)
※複数割引併用不可
※関連のギャラリートークはすべて中止。

掲載した写真は、美術館の許可を得て撮影したものです。




kaisyuucom at 07:02|Permalinkアート | 山種美術館

2020年02月16日

永青文庫「古代中国・オリエントの美術」―国宝“細川ミラー”期間限定公開―

永青文庫で、令和元年度早春展 財団設立70周年記念 「古代中国・オリエントの美術―」が開催中です。
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2020年、永青文庫は財団設立70周年を迎えます。これを記念した展覧会第一弾として開催する本展では、“細川ミラー”の名で広く知られる「金銀錯狩猟文鏡(きんぎんさくしゅりょうもんきょう)」(国宝)をはじめとする古代中国の美術、これまでほとんど公開される機会のなかったオリエント美術、中国を題材にした近代洋画など、中国・オリエントをテーマに多彩な作品が展示されています。また大名細川家に伝来した高麗茶碗も紹介。
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様々な地域から日本にもたらされた、永青文庫所蔵の品々をまとめて見ることができる貴重な機会です。

本展の見どころをご紹介します。
【国宝“細川ミラー”期間限定公開―】
永青文庫財団設立70周年記念展の第一弾として、中国美術コレクションより国宝2点が期間限定公開されます。永青文庫の設立者・細川護立(もりたつ)(細川家16代・1883~1970)は、幼い頃から漢籍に親しみ、中国の文化に強い憧れを抱いていました。大正15年(1926)から約1年半かけてヨーロッパを巡り、金属器や陶磁器を購入。以降、本格的に中国美術のコレクションを始めます。

国宝「金銀錯狩猟文鏡」(細川ミラー) 中国 戦国時代(前4~前3世紀)
3月15日(日)まで限定公開 ※3月17日(火)からは国宝「金彩鳥獣雲文銅盤」が展示
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護立氏は、収集にあたって、専門家の意見を参考にしながら、最後は自身の決断で購入していました。昭和3年頃に河南省洛陽市金村で出土したと伝えられる細川ミラーは、当時類例が全く知られていなかったにも関わらず、護立氏は一目見るなり「これは実に驚くべきものだ」と直感し、独断即決で買ったのだそうです。

見る者を惹きつける渦巻文様は、先端が獣脚状となっており、本展を特集した「季刊永青文庫」早春号によると、龍文から発展したことを示しているそうです。渦巻き文様の間には、獣と対時する武者や、四肢を広げた獣、鳳凰が描かれています
本鏡が作られた戦国時代は、諸国がせめぎ合う戦いの時代でしたが、このような精緻な鏡も作られていたとは驚きです。

重要美術品 銅製馬車 中国 前漢~後漢時代(前2~後3世紀)
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馬を操る御者の後ろに2人の人物が乗っています。漢時代の馬車の様子がわかる貴重な作品です。

【中国をテーマにした近代洋画】
洋画家・梅原龍三郎と安井曾太郎は、永青文庫の設立者である細川護立氏と親しく交流し、同館には彼らが護立氏に宛てた書簡が多く所蔵されています。また護立氏のコレクションは、近代の画家たちにも画題を提供するなど影響を与えました。今回は、彼らが中国に赴いて描いた作品を、関連する書簡とあわせて展示されています。

「連雲の町」 安井曾太郎 昭和19年(1944)
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中国江蘇省の港町、連雲港を描いた作品。

久米民十郎「支那の踊り」大正9年(1920)

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日本のモダニズムの先駆者といわれる久米民十郎この作品は10数年前に永青文庫で発見されました。
他にも梅原龍三郎紫禁城」、安井曾太郎「承徳風景」などの絵画が展示されています。

【オリエント美術コレクションを一挙紹介】
護立氏の関心はオリエント美術にまで及び、イスラーム陶器やタイルの優品も収集しました。子の護貞氏は中近東の旅行記も著しています。
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会場風景

コレクションのなかには詳細が分からないものもあったそうですが、永青文庫では、専門家の協力を得て、オリエント美術コレクションの調査を行いました。その結果、作品の地域や時代が判明するとともに、エジプトの容器片、東地中海沿岸地域のガラス碗など大変貴重なものが含まれていることが明らかになりました。その成果をもとに、本展では、これまでほとんど展示する機会のなかった様々な地域の作品がまとめて紹介されています。

「木製シャブティ」 エジプト 新王国時代第18王朝 (前15~前14世紀頃)
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シャブティとは、ミイラの形をした副葬品の小像。両手には鋤と鍬を持っています。

「ゴールドバンドガラス碗」東地中海沿岸域 (前2~前1世紀)
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帯状の金箔をガラスに挟み込んだ高度な技術を用いた作品。現代でも再現が難しいそうです。

「白釉色絵人物文鉢」 イラン (12~13世紀)
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人物と孔雀が描かれたイスラム陶器。彩色も良く残っています。

右:「彩色草花鳥文壺 」ペルー (15~16世紀)
左:「彩色幾何学文壺 」ペルー (15~16世紀)
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現在のペルー、ボリビア、エクアドル付近で栄えたインカ帝国の土器。
右は花鳥、左は幾何学紋ですが、人の顔のようにも見えます。

「ヤギ文タイル」 イラン (17世紀)
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【大名細川家伝来の高麗茶碗も】
日本では、侘茶の流行とともに、朝鮮半島で焼かれた高麗茶碗が人気を集めました。代々茶の湯を愛好した細川家にも高麗茶碗が伝わり、永青文庫には約15点が所蔵されています。本展では、その中から選りすぐりの茶碗が展示されています。
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「熊川茶碗」 銘 米量 朝鮮(16~17世紀)
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「熊川」とは朝鮮半島南部の港町に由来する名称。釉なだれによって作られた景色が印象的な作品。

「御本雲鶴茶碗」 朝鮮(17世紀)
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青磁の素地に雲や鶴の文様が描かれています。

本展を特集した「季刊永青文庫」早春号では、出展作品の中から、各分野の代表的な作品を掲載しています。専門家による解説付き。
季刊永青文庫 2020早春号(税込み500円)
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2020年の大河ドラマ「餓麟が来る」で注目される明智光秀は、細川家ゆかりの人物です。次回展「新・明智光秀論 ―細川と明智 信長を支えた武将たち―」に先立ち、今回、明智光秀ゆかりの品々についてもパネルで紹介されています。
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時代も地域も異なる作品それぞれの魅力をぜひ会場でご堪能ください。

【開催概要】公式サイト
展覧会名:令和元年度早春展
財団設立70周年記念 古代中国・オリエントの美術―国宝“細川ミラー”期間限定公開―
会期:2020年2月15日(土)~4月15日(水) ※会期中、一部展示替えがあります
会場:永青文庫
開館時間:10:00~16:30 (入館は16:00まで)
休 館 日:月曜日(但し2/24は開館し、2/25は休館)
入 館 料:一般800円(700円)、シニア(70歳以上)600円(500円)、大学・高校生400円
※( )内は10名以上の団体料金
※中学生以下、障害者手帳をご提示の方およびその介助者(1名)は無料。

会場内の写真は美術館の許可を得て撮影



kaisyuucom at 11:50|Permalinkアート | 永青文庫

2020年02月15日

~さよなら42階~「FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展」

東京・新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館では、3月15日(日)まで「FACEE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展」が開催されています。
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損保ジャパン日本興亜美術財団の公益財団法人への移行を機に創設した本展は、新進作家の動向を反映する公募コンクールとして定着し、出品作家について美術館、画廊、コレクターからの照会のほか、海外コレクターからの問い合わせもあるそうです。
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第8回目の本展には、全国の 875名の新進作家からの出品があり、厳正な選考の結果、将来国際的にも通用する可能性を秘めた力作 71点を入選作品とし、その中から受賞作品が選ばれました。
「年齢・所属を問わ ない新進作家の登竜門」として、個人情報を伏せた作品本位の審査によって 選ばれた作家は、年齢や経歴もさまざまです。
油彩、アクリル、水彩、岩絵具、版画、染色、ミクストメディアなど技法や多岐にわたり、作品のテーマ、題材もさまざまですが、新しい感覚で描かれた表現意欲あふれる作品であることは共通しています。
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本展では、審査員による選考のほか「オーディエンス賞」もあります。審査員による審査は終わっていますが、それとは別に“観覧者による人気投票”をしようという企画です。入場の際に投票用紙を渡されますので、みなさんも、自分のお気に入りを探しながら、「私が選ぶ1点」をオーディエンス賞として投票してみてください。
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なお、館内撮影はフラッシュや三脚などを使わなければOKとなっています(収蔵品コーナーは撮影不可)。
いくつか作品をご紹介します。

人間の顔に見える石や木を黒写真にプリントして図鑑のように見せた作品。 各写真の上部に印字された英文と、モチーフの表情が照合しています。 104枚中1枚だけ自画像がネガ写真で混じっています。
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髙木 陽「世界は均衡を望む」

さまざまな有名な絵画、彫刻約120点をモノクロームで模写して見せ窓に配置した作品。どれだけ知っている作品を見つけられるでしょうか?
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木村 不二雄「崖屋美術館」

日本語で「告白」という意味の題が付けられた作品。真ん中の白い線が神の依り代のようにも見えます。
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三宅 哲平 「Confessions」

タイトルから震災をモチーフにした作品だと思われます。夕焼けの廃墟のように見える場所の上を飛ぶ船が印象的。
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森田 和昌 「3.11-ARK/失われた大地」

左上に麒麟、右下に黒牛が描かれ、日光陽明門彫刻を参考にしたという唐子が随所にちりばめられています。右上には戦闘服を着たような子供もいて、さまざまな解釈ができる作品。
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桃山 三 「麒麟よ」

作者は何と10歳!絵が好きで、毎日描いているそうです。ほっこり和める作品です。
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由芽 「ぼくつぶちゃん!!」

金銀を贅沢に使った力作。孔雀に立体感を出すため、様々な色を何層にも重ねて描いていることが近くで見るとよくわかります。
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坂本 英駿 「美麗」
私の「オーディエンス賞」は、迷いましたが、今年は坂本 英駿さんの 「美麗」としました。作家の今後に期待したいと思います。

なお、「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」は、隣接する新美術館棟へ移転し、2020年5月28日に「SOMPO美術館」として開館します。
日本初の高層階美術館として1976年に開館した同館ですが、本展が現在の42階で開催する最後の展覧会となります。美術館から見る新宿の風景も今回が最後です。
3月15日(日)までの開催ですので、お見逃しなく!
そして新進作家が「FACE展」を起点として世界へ羽ばたけるよう、ぜひ応援してください。
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美術館から見た夜景

「FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展」【美術館公式サイト
【会  期】 2020年2月15日(土)〜3月15日(日)
【会  場】 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
【休 館 日】 月曜日 (ただし2月24日は開館、翌25日も開館)
【開館時間】 午前10時−午後6時(入館は午後5時30分まで)
【観 覧 料】 一般600円、大学生以下無料
       ※20名以上の団体は100円引き
       さよなら42階お客様感謝企画 2月29日(土)、3月1日(日)は観覧料無料!


2020年02月06日

北斎と弟子の名勝負が楽しめる「北斎師弟対決!」すみだ北斎美術館

すみだ北斎美術館では、現在企画展「北斎師弟対決!」が開催中です。
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孫弟子も含めて200人にも及ぶ弟子がいたという北斎。浮世絵研究の先駆者、飯島虚心による北斎の伝記『葛飾北斎伝』には、北斎は弟子に自ら教えることは好まず、出版した絵手本で学習させることで、弟子の能力を引き出し、多くの名手を育てたようです。
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本展ではすみだ北斎美術館蔵品から、師・北斎と弟子20名の作品が、前後期あわせて約100点集結。北斎にどのような弟子がいたのかも詳しく紹介されています。

本展は「1章 人物」「2章 風景」「3章 動物」「4章 エトセトラ」の4つの章で構成され、北斎と弟子が同じテーマで描いた作品を対になるように展示し、どこの部分が北斎の影響を受けたのか、画題ごとに北斎と弟子の作品見比べながら見ることができます。
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会場入口のフォトスポット

 1 章 人物
北斎の描いた人物は多岐にわたり、描き方も繊細なものから コミカルなものまで多彩です。弟子たちは、北斎の描く人々の姿、ポーズなど、師の画風を学びながら、それぞれ独自の工夫もしています。
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北斎は90度に腰を曲げた女性をしばしば描いています。弟子の柳々居辰斎 の作品は同じような姿勢で描かれ、北斎の表現を学んだことが見てとれます。
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左:葛飾北斎「雪中二美人」
右:柳々居辰斎 「兎手柄噺 六 」

下はいずれも戦う武将を描いた作品。つりあがる眉や目、への字に引き結ばれた口などが共通しています。北鵞の武者は、目が血走り歯を食いしばるなど、より鬼気迫る表情で、模倣ではなく、自分なりの表現を追求したことがわかります。卍楼北鵞は葛飾風の描写を多く残し、北斎の弟子という伝承もありますが、北斎門人の抱亭五清の弟子という説もあります。
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左: 葛飾北斎「鎌倉の権五郎景政 鳥の海弥三郎保則」
右:卍楼北鵞 「椿説弓張月巻中略図 山雄(狼ノ名也)主のために蟒蛇を噛て山中に躯 を止む 」

北斎と、謎の弟子と言われている雪斎が描いた花魁と禿は、面差しがよく似ています。
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左:葛飾北斎「大黒酒宴図 」
右:雪斎 「門松と遊女」

北斎の娘、応為の作品『女重宝記』四「女ぼう香きく処」では、優美な指先の描写に注目。
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AURORA(常設展示室)では、北斎の弟子・露木為一が描いた「北斎仮宅之図」(国立国会図書館所蔵)を元につくられた「北斎のアトリエ」再現模型を常設展示しています。晩年の北斎と応為の制作の様子がうかがえます。

2 章 風景
北斎は、従来はあまり人気のなかった風景画というジャンルの人気を高め、定番化しました。弟子も風景を描いた作品を多く残しています。この章では北斎の作風に忠実な作品、一工夫加えた作品など、弟子が北斎の作品を学習しながらも、自身の表現を作り上げようとする様子をみてとることができます。
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いずれも両国橋の花火花火見物で賑わう両国橋の様子を描いた作品。 どちらも両国広小路に立ち並ぶ見世物小屋や屋台、 橋の上の見物客の様子などを細かくとらえていますが、構図が異なり、北斎の作品では、隅田川が奥行をもって表現されており、北寿の作品は両国橋の長さを強調した構図となっています。
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左:葛飾北斎「 新板浮絵両国喬夕涼花火見物之図」
右:昇亭北寿 「新板浮絵両国橋夕景色之図 」

北斎にならい、弟子魚屋北溪も勢いよく水が流れる様子を、直線を用いて表現しています。
魚屋北溪は、当初魚屋を営んで松平志摩守邸の御用をつとめましたが、のちに画業に専念。狩野養川院惟信に学んだ後、北斎の門人となりました。
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左:葛飾北斎 「諸国瀧廻り 美濃ノ国養老の滝」
右:魚屋北溪 「 養老の滝」

「冨嶽三十六景」も、弟子によって描かれています。春婦斎北妙(しゅんぷさい・ほくみょう)は、北斎の作品を忠実に再現しながら、ミニチュア版を制作。ミニチュアならではの北妙の個性が見て取れます。
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左:葛飾北斎 「冨嶽三十六景 隠田の水車」
右:春婦斎北妙「 冨嶽三十六景 隠田の水車」

3 章 動物
北斎は、たくさんの種類の動物を描いています。弟子たちは、想像上の生き物 だけではなく、スケッチができる動物を描く際にも、北斎の描写を丹念に学んでいます。
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北斎が『北斎漫画』二編で描いた、背中を丸めて、しっぽを前方に向けた猫は、 弟子の魚屋北溪や葛飾為斎の作品にもそっくりなポーズで登場。猫の背中や尻尾の様子などは似ているものの、模様は微妙に異なっています。
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左から、葛飾北斎 「北斎漫画」二編 ねこ
魚屋北溪「北里十二時」
葛飾為斎 「山水花鳥早引漫画」第二編 猫

『北斎漫画』二編右頁に描いた「てん」が、為斎の描いた絵手本に登場します。右前肢を左前肢より高く描くなど 細かな点まで共通していて、為斎は北斎のフォルムを踏襲したと考えられています。
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左:葛飾北斎 「北斎漫画」二編 てん
右:葛飾為斎 「山水花鳥早引漫画」第三編 てん 
為斎は、北斎の晩年に門人となり、師の画風を忠実に踏襲。北斎没後は、北斎が歌川派の絵師と合作した百人一首の版本のシリーズを引き継ぐなど、一時、後継者的な立場にありました。

北斎の画風に忠実に描いたカナリア。
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右:葛飾北斎 「小禽」
左:二代葛飾戴斗「花鳥画伝」初編 加奈阿利
二代葛飾戴斗の描いた『花鳥画伝』には、カナリアの他、おしどり、錦鶏、燕など、北斎の画風を忠実に再現した鳥の表現がみられます。
弟子たちが北斎の絵手本を良く学び、画技を受け継いでいたことがうかがえます。

4 章 エトセトラ
この章では、1章から3章のカテゴリーに入らないモティーフが描かれた作品が展示。
北斎は、読本挿絵の芸術性を飛躍的に高めましたが、弟子たちも多くの読本挿絵を手がけています。この章では、読本に登場する北斎の独創的な表現と、それを受け継ぐ弟子の工夫を見比べることができます。
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どちらも炎を描いた作品。モノ クロの挿絵ながら迫力のある表現で描かれています。
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右:葛飾北斎 「新編水滸画伝」十一編 五十五 時遷火を放て翠雲楼を焼
左:二代葛飾戴斗「絵本通俗三国志」五編 七 傅士仁糜芳吶て失火す

風の表現を見比べてみてください。
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右:葛飾北斎 「墨田川梅柳新書」四 天狗源吾們を劫して松稚をすくふ
左:蹄斎北馬 「柳の糸」三 平太郎九原に怪獣を斬る

閃光を描いたもの。放射状の線で光を表現しています。
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左:葛飾北斎 「椿説弓張月」続編 巻三 石櫃を破て曚雲出現す
右:二代葛飾戴斗「画本西遊全伝」四編 五 青竜山の妖怪三蔵を摂去

本展の内容をコンパクトにまとめたオリジナルリーフレット 『北斎師弟対決!』(税込 300 円) がミュージアムショップにて発売中!出展作品のほか、師弟の影響関係などについて、学芸員によるわかりやすい解説も掲載されています。

さまざまなイベントも予定されています。詳細は公式サイトでご確認ください。

これまであまり知られていなかった北斎と弟子との関係がわかる好企画。偉大な師匠のもとで奮闘する弟子たちの様子、ぜひ会場でごらんください。

「北斎師弟対決!」公式サイト
会期:[前期]2020年2月4日~3月8日、[後期]2020年3月10日~4月5日
※前期と後期で一部展示替えを実施。
会場:すみだ北斎美術館
住所:東京都墨田区亀沢2-7-2
電話番号:03-6658-8936 
開館時間:9:30~17:30 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(2月24日は開館)、2月25日 
料金:一般 1000円 / 65歳以上・大学・高校生 700円 / 中学生 300円 / 小学生以下無料 メルマガ割引など各種割引あり。詳細はこちら



kaisyuucom at 06:17|Permalinkアート | すみだ北斎美術館

2020年01月19日

中国・宋時代の名品の数々が一挙公開!曜変天目も!「磁州窯と宋のやきもの展」静嘉堂文庫美術館

静嘉堂文庫美術館では、現在「―「鉅鹿」発見100年― 磁州窯と宋のやきもの展」が開催されています。
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2020年は、宋磁蒐集の契機となった北宋の町「鉅鹿」 遺跡と磁州窯の陶器の再発見からおよそ100年にあたりますが、皆さんは「鉅鹿(きょろく)」という場所をご存知でしょうか?
鉅鹿とは中国・河北省南部にある町です。
北宋時代、河北省辺りを流れる大河が氾濫し、その流域にあった鉅鹿は土砂によって完全に埋め尽くされ、消滅してしまう出来事がありました。
1920年前後にに偶然遺跡が発見され、大規模な発掘が始まりますが、土砂に1000年近く埋もれていたにもかかわらず、磁州窯陶器をはじめとする大量の陶磁器や建築址などが完全に近い形で出土し、「東洋のポンペイ」と呼ばれるようになりました。
発掘で見つかった陶磁器のほとんどは当時、河北省一帯で大量に生産されていた「磁州窯」という作品です。
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中国宋代(960~1279)の陶磁器は「宋磁(そうじ)」と称され、中国の工芸文化のひとつのピークを示すものとして世界的に評価されています。
発見された陶磁器は人々が実際に使っていた日用品で、当時の人々の生活スタイルを知る資料としても大変貴重なものです。
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会場風景

当時「鉅鹿」で発掘された磁州窯の多くは日本にも持ち込まれ、現在も多くの作品が日本に遺されています。
本展は、これまでまとまって公開されることの少なかった静嘉堂蔵の磁州窯とその周辺の陶磁器(磁州窯系陶器)を一挙公開。あわせて国宝「曜変天目(稲葉天目)」をはじめとする宋磁の名品も見られるという贅沢な展覧会。

展覧会は3つのセクションで構成されています。
1 磁州窯の起源 白化粧の陶磁器
磁州窯は五代(10世紀)以降現代まで日用の器物を 大量に生産した民窯です。
中国で広く普及した磁州窯の作品が『磁器』という言葉のもとになっています。
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磁州窯系諸窯に共通するのが、泥状に溶いた白土を器の素地にかけて白い器面(白地)を作る「白化粧」の技術です。
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左:「白地黒掻落牡丹文如意頭形枕」 磁州窯 北宋時代(12世紀)
磁州窯の代名詞といえるのが本作に見られる「白地黒掻落し」の技法。
右:「黒釉線彫蓮唐草文瓶」磁州窯系 金~元時代
磁州窯系の陶器において白化粧と対をなす重要な技法が黒釉を用いた装飾。本作のように線彫りや掻落しによって色彩のコントラストを作り出す作品が知られています。

白化粧の技術自体は、古く漢の時代から彩色や釉薬の鮮明な発色 のための下地調整の技法として行われていました。
その後、唐~五代時代にかけて、時代の主役が貴族から都市に住む庶民へと変化し、陶磁器の 役割も変わり、磁州窯は前代からの白化粧の技術を基礎に日用の器をつくるための 「民窯」となっていきます。

2 磁州窯系陶器の世界
磁州窯の陶器を特徴づけるのは、泥状に溶いた白土を器の素地に掛けて白い器面(白地)を作る「白化粧」と多量の鉄分によって発色する黒釉や鉄絵具の技術、そして器面を彫り込んで化粧した表面と下地の色彩のコントラストによって文様を浮き立たせる掻落しや線彫りの装飾技法です。
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唐~宋時代、希少な白い磁器土を使う白磁は高級品だったので、磁州窯陶器は、鉄分が多く、焼くとグレーとなる粗悪な陶土から作られました。
そうした器に泥状の白土を掛けることで、独特の白い器面が完成します。高級な白磁の色味に近づけようと行われたのが白化粧の技法です。

さらにその上に黒く発色する鉄絵具で着彩する、あるいは器を鉄絵具で覆ってから、下の白地が浮き出るよう掻き落とすなど、独特の装飾技法を編みだされました。
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会場では、そうした繊細な技術で作られた、白黒のコントラストが美しい陶器が展示されています。

北宋時代に続く金時代には「白地黒掻落し」の技法が簡便化され、彫刻的技法によらず、筆に鉄絵具を含ませて白化粧の地に直接文様を描く技法に発展しました。
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上の写真のような陶製の枕は実際に寝るための枕として使用されていたそうです。痛くないのかな~。

黒釉陶器にも白地陶器と同様の器面装飾が応用されました。
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山西省出土と考えられる壺

肩の部分が削られているのものは、大きいかまどをかぶせて大量にまとめて焼くための工夫です。
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鉄絵や紅緑彩(赤絵)、三彩や翡翠釉などを用いた多種多彩で美しい陶器も展示されています。
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磁州窯で作られた白化粧と黒釉の陶器(白地陶器と黒釉陶器)は、生産コストの安さ、技術的模倣の容易さ、色彩のコントラストを強調した美しさなどから華北一帯へと広まっていったのです。
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また同様の製品を焼造する生産地は、河南・山西・山東・安徽・陝西といった華北地域一帯に広がり、またその技術は国境を越えて契丹(きったん)族の遼やタングート族の西夏にまで伝わっていきました。

3 宋磁の美
北宋・南宋の約 300 年にわたる宋代のやきもの、すなわち「宋磁」は、約8000年の歴史をもつ中国陶磁の最高峰と称されます。
その中で磁州窯は、くっきりとした色彩のコントラストをもつ器面装飾を最大のセールスポイントとして庶民の生活に浸透していきました。
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一方、青磁や白磁は、文人たちに愛され、器形や釉薬の美しさを第一としました。宋代の青磁や白磁、黒釉陶磁はいずれも緊張感のある端正な造形で、釉調の美しさを引き立たせるための精緻な彫刻や型押しの文様、花形や瓜形の器形といったデザインに工夫がみられます。
宋磁の洗練された美しさは、後世の陶工たちが追い求める規範となっていったのです。
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右から2番目は北宋時代に耀州窯で作られた「青磁刻花花喰鳥文枕」。
陝西省の耀州窯は、独特の透明感あるオリーブグリーンの青磁を生産した華北青磁窯の雄。彫り風の文様を密にあらわした本作は、耀州窯では稀な枕で、世界的に知られる名品。
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釣窯、建窯、吉州窯で作られた青磁の盤、椀や天目茶碗も展示。重要文化財の「油滴天目」も見ることができます。
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宮廷専用の陶磁器を焼く窯を官窯(かんよう)といいます。南宋時代、首都・杭州(浙江省)に置かれた官窯では青磁のみが焼かれ宮廷に納められました。青緑色の澄んだ釉色と複雑に入り組んだ釉薬のヒビ「貫入」が特徴。これはロビーに展示され、外光の中で見ることができます。
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「青磁鼎形香炉」南宋官窯 南宋時代(12~13世紀) 

国宝「曜変天目」もお見逃しなく!
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ガラスケース内が曜変天目。美しいきらめきをぜひ会場でご覧ください。

北宋時代の庶民が普通に使った日常品の中の「美」。実際に見て、その美しさに驚きました。これを見逃したらいつ公開されるかわかりません。
宋代に花開いたやきもの文化の精華、ぜひこの機会にご覧ください。

静嘉堂文庫美術館「―「鉅鹿」発見100年― 磁州窯と宋のやきもの展」公式サイト
会期:2020年1月18日(土)~3月15日(日)
開館時間:10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし2月24日(月)は開館)、2月25日(火)
会場:静嘉堂文庫美術館
住所:東京都世田谷区岡本2-23-1
入館料:一般 1,000円、大学生・高校生および障害者手帳所有者(同伴者1人含む) 700円、中学生以下 無料
※20人以上の団体は200円割引

会場内の写真は美術館の許可を得て撮影したものです。










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