中国書画精華―日本人のまなざし―@東京国立博物館東洋館特別展「川合玉堂 ―四季・人々・自然―」@山種美術館

2017年10月29日

「あこがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~」静嘉堂文庫美術館

国内有数の中国・明清絵画コレクションを誇る静嘉堂文庫美術館で、「あこがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~」が開催されています。
10月28日に開催されたブロガー内覧会に参加しましたので、その様子をレポートします。
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深遠な山水から愛らしい猫まで多様な様相をみせる中国・明清時代(1368~1912)の絵画。静嘉堂文庫美術館での明清絵画の展覧会は実に12年ぶりだそうです。
李士達(りしたつ)、張瑞図(ちょうずいと)、王建章(おうけんしょう)といった著名な画家の山水画や、円山応挙や谷文晁をはじめ、日本の画家に大きな影響を与えた沈南蘋(しんなんぴん)の代表作など、同美術館の優品が初公開の作品も8点も含め一挙に公開されています。
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今回は、明清絵画とそれを模写した江戸時代の作品がともに展覧されていて、当時の日本の画家たちの想いも感じることができます。

絵画のほか王鐸(おうたく)、張瑞図(ちょうずいと)といった明末期から清初期の個性的な書跡の優品も併せて公開されています。
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中国の明清時代(1368~1912)の絵画は、江戸時代以降の日本で多くの画家たちの憧れの作品でした。日本の画家たちが模写した絵、絵とともに書かれた感想、賛辞等を述べた跋文(ばつぶん)から、そのことがわかります。

しかし、江戸時代の画家たちは、実際に中国に行くことはできなかったので、輸入された中国絵画の名品及びその模写を学ぶことで、絵画の技法を習得しました。

探幽の「探幽縮図」は有名ですが、贋作、模作も含めて、江戸時代の画家たちにとって中国絵画はまさに「あこがれ」だったのですね。

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会場風景 ※会場内の写真は主催者の特別の許可を得て撮影したものです。

今回サブタイトルが「若冲、応挙、谷文晁も、みんな夢中になった」となっていますが、文人画の谷文晁はもちろん、応挙も「写生雑録帖」の中に1771年から翌年にかけて見た中国絵画のことを記しており、その中に明時代の画家の仇英などの名前が記載されています。また応挙作と伝わる眼鏡絵には中国風景図が多く含まれており、輸入された中国絵画の影響を受けていると考えられています。

若冲については「若冲の明清絵画学習~各専門家による知見から~」というパネルが展覧会入口右側に展示されていて、とても参考になりますので、お見逃しなく。

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「牡丹図巻」 李日華 明 17世紀  呉派文人画水墨花卉図の系統の作品。花は濃淡の墨を使い、柔らかく描き、墨のグラデーションで牡丹の開花を表現しています。
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重要文化財 「百花図巻」(部分)余崧 清時代・乾隆60年(1795) 没骨彩色による花卉図。輪郭線を用いず、直接 彩色して対象を表現しており、絵の具が重なるようで重なっていない。全体が華やかで清潔な作品になっています。
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右「百雁図」 明16~17世紀 右下の群れの中に1羽白い雁がいます。室町時代の唐絵のような作品。
左「虎図」 明16世紀  とてもリアルな毛並みに注目。龍は雨を虎は風を呼ぶといわれ、背景に風の吹き荒れる様子が表現されています。
両方の作品とも表具にも注目。とても華やかで美しく、大名表具ともいわれるそうです。
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右「花鳥図」明 16世紀 作者不明ですが、明中期の呂紀の系統の画家の作品。狩野元信にもよく似た作品があります。
左「老圃秋容図」 沈南蘋 清時代・雍正9年(1731)沈南蘋が日本にいたのは約2年半で、日本にある沈南蘋の作品は弟子の作品が多いそうですが、これは来日時に持ってきたことがわかっている貴重な作品。日本でのプレゼンテーション用の作品だったのかも。
黄蜀葵は下から上に伸びますが、下は花、上の方は小さなつぼみで描かれ、花びらの表現には雲英がつかわれており、キラキラと光るのがわかります。右下の菊の花びらも一枚一枚丁寧に描かれています。猫の目はやや盛り上がって光るようにも見えます。この精緻な表現、ぜひ会場で確認してください。
谷文晁派の摸本(個人蔵)も今回併せて展示。全くの模倣でなく全体のポイントを押さえた模写です。今回は2つの違いを比較できる貴重な機会です。
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右 「李士達筆驟雨行客図摸本」高久靄崖 江戸天保6年(1835)谷文晁派の画家
左 重要文化財 「秋景山水図」 張瑞図 明・崇禎4年(1631) 柳沢淇園、池大雅の跋が付属していることから、日本の文人画家たちの間で早くから知られていた作品であることがわかります。濃い墨を用いて、夕暮れの雰囲気を出しています。
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右 重要文化財 「松山図」 張瑞図 明・崇禎4年(1631)滝からの風や風にそよぐ松の動きが感じ取れるような作品。応挙が写した絵がありますが、文字の方が絵より大きい。応挙が張瑞図を画家としてよりも書家として評価していたことがうかがわれます。会場では応挙の作品がパネル展示されています。浦上春琴にも手前の風景を写した作品があります。右側端の2つに割れているような岩は兎のようにも見え、泉屋博古館分館で中期展示の呉彬の作品にも似たような岩があるとの塚本先生のお話がありました。
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右  「米法山水図」 王建章 明天啓7年(1627) 明末清初には光り輝く素材を用いてその効果を追求する傾向があり、この作品もその一つ。底から光るような感じを会場でご確認ください。金箋は紙に金粉をまぶしてその上に墨で描く技法。墨がしみこまないため、墨のかすれが残り風雨にけぶる山の感じが表現されています。岩山は墨点を重ねていく「米法」で描かれています。
雨の中を訪ねてくる友人が下に小さく描かれています。
左 「秋景山水図」 倪元路 明17世紀 生糸を用いて繻子織 (しゅすおり) にして精練した絹織物である絖(ぬめ)を使った作品。光沢があり、下から見ると光るのがわかります。友人との別れの場面を描いた作品。手前の岩で見送るのは作者でしょうか。遠くに去っていく舟が二艘見えます。
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右 重要文化財「秋景山水図」 藍瑛 明・崇禎11年(1638)  元の王蒙に倣った作品。
藍瑛の作品は日本に多く伝来しており、江戸時代の文人画家は彼の作品を通して、中国絵画史を理解することができました。明朝が滅亡し、清朝へと変化する中で、藍瑛は杭州に工房を構え、大量の作品を市場に送り出し、長寿を全うします。
左 重要文化財「藍瑛筆秋景山水図摸本」 谷文晁 江戸18~19世紀 
谷文晁派において極めて重視された作品。並べると違いがよくわかります。文晁の方がややあっさりめ。下の部分を一部描かず、少し短くなっています。

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11月11日の塚本麿充東京大学東洋文化研究所准教授のお話では、模写には①保存②記録③財産の3つの目的があるそうです。そして、模写作品を目当てに画塾に弟子入りしする人もいることから、権力の源とも。

右  「蘭竹図」 陳曽則  清・順治4年(1647) 付属文書も併せて展示されています。これによると、江戸時代の文人、頼山陽所有のこの作品を市河米庵が所望し、譲ってくれなかったため、頼山陽の背中をポンとたたいたということです。
左 重要文化財 「川至日升図」 王建章 明17世紀
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手前から
重要文化財 「秋景山水図」 李士達 明・万暦47年(1619)李士達は、呉県(今の江蘇省)で活躍した画家で、山水画だけでなく人物がでも知られ、丸みを帯びた人物が特徴です。
「雪景山水図」趙左 明・17世紀 雲煙に包まれた空間に雪山がそびえる雄大な景色を描いています。
清の時代になっても乾隆帝が収集するまでは、民間にも古画が流れており、上記2点は、おそらく北宋郭煕、范寛などの影響を受けたと塚本先生の話がありました。
「五百羅漢図」 丁雲鵬 盛茂燁 明・万暦2年(1594)頃
今回初公開。江戸時代に日本に24幅1具で請来、その後散逸しますが、現在12幅の存在が確認されています。この作品は13幅目。日本では京都国立博物館、滋賀の観峰館にもあります。最近海外オークションにも出品され話題になりました。描かれている羅漢の顔の一部はパトロンともいわれています。
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右「菊花野兎図」徐霖 明・15~16世紀
左「荷花図」陸治 明・16世紀  呉派文人画の作品。夏の風にそよぐ蓮の清廉な空気感を出すため、全体を薄く彩色しています。
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「山水図」張翬 明・15世紀  入口にある作品。張翬は現存する作品がほとんどない画家。
狩野探幽の摸本が右側に併せて展示されています。全体の空気を含めてとても精緻に模写されており、墨の表現はやや柔らかくなっています。日本人的にはこの方が好みかもしれません。ほぼ同じ大きさというのは珍しいそうです。
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江戸時代の画家たちの重要な手本となった「芥子園画伝」などの手引書、画譜も展示されています。
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右「草書五言絶句」 米万鐘 明・16~17世紀  木の葉返しといわれる鋭い筆線が見どころ
中「草書五言律詩」 張瑞図 明・17世紀
左「草書五言律詩」 王鐸 清・順治6年(1649) 王義之「得信帖」を臨書したもの。王義之に学びつつ、自由な筆墨で書かれています。
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青磁の鉢や堆朱盆など工芸品の名品も展示。
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明清絵画の日本絵画へ与えた影響と日本の画家はそれをどのように受容したかを見比べながら知ることができる、とても貴重な機会です。江戸時代知識人たちの憧れ出会った作品を今回まとめて見ることができます。
中国美術ファンだけでなく、日本美術をより深く理解したい方にもぜひおすすめ!
泉屋博古館分館にて開催中の特別展「典雅と奇想―明末清初の中国名画展」との連携企画ですが、こちらは日本における明清絵画の受容に重点をおいた展覧会、泉屋博古館分館の方は、明清絵画の中国における展開に重点をおいた内容になっています。両方見ることで、より楽しめると思います。
展覧会をより深く知るためのイベントも以下のとおり予定されています。日程が合えばぜひ!


◎講演会

午前11時より地下講堂にて開催 定員120名様(当日午前10時より整理券配布 1名様につき1枚限定)

①11月4日(土)河野元昭(静嘉堂文庫美術館館長)「ネコ好き館長による猫の絵画史」
②11月19日(日)板倉聖哲氏(東京大学東洋文化研究所・情報学環教授)「豊かなる明末清初の絵画-倣古と奇想」
③11月25日(土)髙木聖雨氏(大東文化大学教授)・富田淳氏(東京国立博物館学芸企画部部長)対談「明末清初の書-連綿趣味の魅力を語る」

 

◎列品解説

展示内容・作品についてゲストと館長が解説します。(展示室にて)

午前11時から  11月11日(土)ゲスト:塚本麿充氏(東京大学東洋文化研究所准教授)
                      12月2日(土)  館長 河野元昭
午後2時から  12月7日(木)・12月14日(木)館長河野元昭

なお、ミュージアムショップでは、今回の展覧会の見どころをまとめたミニブック(350円)やクリアファイルを発売中。ぜひお立ち寄りください。

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あこがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~公式サイト
会期:2017年10月28日(土)~12月17日(日)
会場:静嘉堂文庫美術館
休館日:月曜日
開館時間:午前10時~午後4時30分(入場は午後4時まで) 入館料:一般1,000円、大高生700円、中学生以下無料
※団体割引は20名以上 ※リピーター割引:会期中に本展示の入館券をご提示いただけますと、2回目以降は200円引きとなります。

※本展は泉屋博古館分館にて開催の特別展「典雅と奇想―明末清初の中国名画展」(11月3日~12月10日)との連携企画です。泉屋博古館分館の展覧会招待券または使用済みチケットをご持参の方、200円引きいたします。(他の割引との併用不可)
※タクシー代200円キャッシュバックサービスが10/28(土)から始まりました!

タクシーを利用されてのご入場者に対する「領収書と引き換えに一台200円のキャッシュバックサービス」を開始致します。降車時に領収書をお求め頂き、入場料お支払い時に受付でお渡し下さい。(領収書はお返し致しません)

猫好きな館長さんの楽しいブログもぜひ参考にしてください。饒舌館長





























































































































































































































































































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