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2020年01月19日

中国・宋時代の名品の数々が一挙公開!曜変天目も!「磁州窯と宋のやきもの展」静嘉堂文庫美術館

静嘉堂文庫美術館では、現在「―「鉅鹿」発見100年― 磁州窯と宋のやきもの展」が開催されています。
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2020年は、宋磁蒐集の契機となった北宋の町「鉅鹿」 遺跡と磁州窯の陶器の再発見からおよそ100年にあたりますが、皆さんは「鉅鹿(きょろく)」という場所をご存知でしょうか?
鉅鹿とは中国・河北省南部にある町です。
北宋時代、河北省辺りを流れる大河が氾濫し、その流域にあった鉅鹿は土砂によって完全に埋め尽くされ、消滅してしまう出来事がありました。
1920年前後にに偶然遺跡が発見され、大規模な発掘が始まりますが、土砂に1000年近く埋もれていたにもかかわらず、磁州窯陶器をはじめとする大量の陶磁器や建築址などが完全に近い形で出土し、「東洋のポンペイ」と呼ばれるようになりました。
発掘で見つかった陶磁器のほとんどは当時、河北省一帯で大量に生産されていた「磁州窯」という作品です。
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中国宋代(960~1279)の陶磁器は「宋磁(そうじ)」と称され、中国の工芸文化のひとつのピークを示すものとして世界的に評価されています。
発見された陶磁器は人々が実際に使っていた日用品で、当時の人々の生活スタイルを知る資料としても大変貴重なものです。
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会場風景

当時「鉅鹿」で発掘された磁州窯の多くは日本にも持ち込まれ、現在も多くの作品が日本に遺されています。
本展は、これまでまとまって公開されることの少なかった静嘉堂蔵の磁州窯とその周辺の陶磁器(磁州窯系陶器)を一挙公開。あわせて国宝「曜変天目(稲葉天目)」をはじめとする宋磁の名品も見られるという贅沢な展覧会。

展覧会は3つのセクションで構成されています。
1 磁州窯の起源 白化粧の陶磁器
磁州窯は五代(10世紀)以降現代まで日用の器物を 大量に生産した民窯です。
中国で広く普及した磁州窯の作品が『磁器』という言葉のもとになっています。
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磁州窯系諸窯に共通するのが、泥状に溶いた白土を器の素地にかけて白い器面(白地)を作る「白化粧」の技術です。
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左:「白地黒掻落牡丹文如意頭形枕」 磁州窯 北宋時代(12世紀)
磁州窯の代名詞といえるのが本作に見られる「白地黒掻落し」の技法。
右:「黒釉線彫蓮唐草文瓶」磁州窯系 金~元時代
磁州窯系の陶器において白化粧と対をなす重要な技法が黒釉を用いた装飾。本作のように線彫りや掻落しによって色彩のコントラストを作り出す作品が知られています。

白化粧の技術自体は、古く漢の時代から彩色や釉薬の鮮明な発色 のための下地調整の技法として行われていました。
その後、唐~五代時代にかけて、時代の主役が貴族から都市に住む庶民へと変化し、陶磁器の 役割も変わり、磁州窯は前代からの白化粧の技術を基礎に日用の器をつくるための 「民窯」となっていきます。

2 磁州窯系陶器の世界
磁州窯の陶器を特徴づけるのは、泥状に溶いた白土を器の素地に掛けて白い器面(白地)を作る「白化粧」と多量の鉄分によって発色する黒釉や鉄絵具の技術、そして器面を彫り込んで化粧した表面と下地の色彩のコントラストによって文様を浮き立たせる掻落しや線彫りの装飾技法です。
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唐~宋時代、希少な白い磁器土を使う白磁は高級品だったので、磁州窯陶器は、鉄分が多く、焼くとグレーとなる粗悪な陶土から作られました。
そうした器に泥状の白土を掛けることで、独特の白い器面が完成します。高級な白磁の色味に近づけようと行われたのが白化粧の技法です。

さらにその上に黒く発色する鉄絵具で着彩する、あるいは器を鉄絵具で覆ってから、下の白地が浮き出るよう掻き落とすなど、独特の装飾技法を編みだされました。
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会場では、そうした繊細な技術で作られた、白黒のコントラストが美しい陶器が展示されています。

北宋時代に続く金時代には「白地黒掻落し」の技法が簡便化され、彫刻的技法によらず、筆に鉄絵具を含ませて白化粧の地に直接文様を描く技法に発展しました。
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上の写真のような陶製の枕は実際に寝るための枕として使用されていたそうです。痛くないのかな~。

黒釉陶器にも白地陶器と同様の器面装飾が応用されました。
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山西省出土と考えられる壺

肩の部分が削られているのものは、大きいかまどをかぶせて大量にまとめて焼くための工夫です。
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鉄絵や紅緑彩(赤絵)、三彩や翡翠釉などを用いた多種多彩で美しい陶器も展示されています。
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磁州窯で作られた白化粧と黒釉の陶器(白地陶器と黒釉陶器)は、生産コストの安さ、技術的模倣の容易さ、色彩のコントラストを強調した美しさなどから華北一帯へと広まっていったのです。
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また同様の製品を焼造する生産地は、河南・山西・山東・安徽・陝西といった華北地域一帯に広がり、またその技術は国境を越えて契丹(きったん)族の遼やタングート族の西夏にまで伝わっていきました。

3 宋磁の美
北宋・南宋の約 300 年にわたる宋代のやきもの、すなわち「宋磁」は、約8000年の歴史をもつ中国陶磁の最高峰と称されます。
その中で磁州窯は、くっきりとした色彩のコントラストをもつ器面装飾を最大のセールスポイントとして庶民の生活に浸透していきました。
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一方、青磁や白磁は、文人たちに愛され、器形や釉薬の美しさを第一としました。宋代の青磁や白磁、黒釉陶磁はいずれも緊張感のある端正な造形で、釉調の美しさを引き立たせるための精緻な彫刻や型押しの文様、花形や瓜形の器形といったデザインに工夫がみられます。
宋磁の洗練された美しさは、後世の陶工たちが追い求める規範となっていったのです。
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右から2番目は北宋時代に耀州窯で作られた「青磁刻花花喰鳥文枕」。
陝西省の耀州窯は、独特の透明感あるオリーブグリーンの青磁を生産した華北青磁窯の雄。彫り風の文様を密にあらわした本作は、耀州窯では稀な枕で、世界的に知られる名品。
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釣窯、建窯、吉州窯で作られた青磁の盤、椀や天目茶碗も展示。重要文化財の「油滴天目」も見ることができます。
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宮廷専用の陶磁器を焼く窯を官窯(かんよう)といいます。南宋時代、首都・杭州(浙江省)に置かれた官窯では青磁のみが焼かれ宮廷に納められました。青緑色の澄んだ釉色と複雑に入り組んだ釉薬のヒビ「貫入」が特徴。これはロビーに展示され、外光の中で見ることができます。
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「青磁鼎形香炉」南宋官窯 南宋時代(12~13世紀) 

国宝「曜変天目」もお見逃しなく!
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ガラスケース内が曜変天目。美しいきらめきをぜひ会場でご覧ください。

北宋時代の庶民が普通に使った日常品の中の「美」。実際に見て、その美しさに驚きました。これを見逃したらいつ公開されるかわかりません。
宋代に花開いたやきもの文化の精華、ぜひこの機会にご覧ください。

静嘉堂文庫美術館「―「鉅鹿」発見100年― 磁州窯と宋のやきもの展」公式サイト
会期:2020年1月18日(土)~3月15日(日)
開館時間:10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし2月24日(月)は開館)、2月25日(火)
会場:静嘉堂文庫美術館
住所:東京都世田谷区岡本2-23-1
入館料:一般 1,000円、大学生・高校生および障害者手帳所有者(同伴者1人含む) 700円、中学生以下 無料
※20人以上の団体は200円割引

会場内の写真は美術館の許可を得て撮影したものです。










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