December 08, 2014

ヴィン・サントとの新たな"出会い”

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「食後はこれを味わってもらいたくて。ここはフィレンツェ。トスカーナ州ですからね、やっぱりこれなのよ。ご存じかしら?」
昔むかし、はじめてデメオ家の夕食に招いていただいた時です。食後に出てきたのは、琥珀色の液体が入ったボトルと、アーモンドが入ったビスケットでした。ビスケットは知っていたし、食べたこともありました。でもまだまだその頃はイタリア通い初心者だった私は、この琥珀色の正体は知らなかったし、この2つの関係!も知らなかったのです。
「このグラスに入れるわね」とマルチェラさん。いたづらっぽい笑みを浮かべて横から、「ひといきに飲むのが作法なんだよイッコ」とご主人のジョルジョさん。「ジョルジョ!」とご主人をたしなめてから、二人で説明してくれたのは、これがヴィン・サントというワインの一種で、デザートワインなのだということ、ビスコッティをこのワインに浸してから食べるのがトスカーナ流、ということでした。お二人は食事の最初に、キアンティの赤ワインを用意してくださっていたのですが、このヴィン・サントも同じキアンティの伝統ワインのひとつなのだ、と、ボトルの文字を見せてくれました。
 これが私とヴィン・サントの出会い。ビスコッティをつけると、強い香りがたちのぼり、鮮やかでシャープな甘味がビスコッティにアクセントを与えてくれて・・確かにこうして食べるべき!と思える味で、すぐに好きになりました。
 収穫後ゆっくり、棚に並べて干して乾燥させること、糖分が高くなった果汁をゆっくり発酵させ、そして熟成させることで生まれる甘味と味わい。ビスコッティは作り方を教わり、自分でもよく作るようになりましたがヴィン・サントは作れない! というわけでヴィン・サントは、トスカーナで買って持ち帰ったり、日本でも手に入れば買って、家に置いておくようになりました。トスカーナを訪れるとイタリア人の友人宅をあちこち訪ねることにもなるのですが、ヴィン・サントが登場することも多いのです。もちろんビスコッティがない時でも。ほんのひと口、飲むことで気持ちがほぐれるのです。
 こんなふうに、ヴィン・サントとは長いおつきあいなのですが、ヴィン・サントを8種類もテイスティングしたのは、ついこの間がはじめてでした。キアンティワイン協会主催の、ヴィン・サントワインセミナーです。イタリアン・プロフェッショナル・ソムリエでイタリアワインの生き字引でいらっしゃる林茂先生のレクチャーとテイスティング。ひとりひとりの席にワイングラスが8脚、きれいに並ぶさまは普通のワインのテイスティングと同じですが、注がれるのは、琥珀色の液体。
 甘味が強く酸味をあまり感じないタイプから、フレッシュ感が強く酸味もほどよいもの、酸味はあるが甘味のまろやかさがすばらしいもの、酸味とスパイシー感がある辛口のもの。もちろん色も明るい黄色に近いものから、濃いアンバー、薄めの琥珀色・・・1種類だけ飲んでいる時にはわからなかったバラエティ豊かな世界が驚きでした。
同じキアンティのものでもいわゆる「キアンティワイン」(サンジョヴェーゼ種主体の赤ワイン)は、いろいろなワイナリーのものを飲み比べ、自分なりに好きなものもあるのですが、ヴィン・サントにこれほどの違いがあるとは、豊かな味と香りの世界が広がっているとは! それもそのはずで、1本1本、使われている葡萄の種類、比率も違えば、熟成に使われる樽の種類、瓶内熟成の年数も違うのでした。
 ヴィン・サントと合わせた前菜「フォアグラと三笠奈良漬けのマルブレ模様 真紅のポルト酒風味」、そしてビスコッティに白ワインジュレやフロマージュクリームをあしらったドルチェも新鮮でした。拙著「和イタリアンのレシピノート」等、日頃から和の食材を使ったイタリアンのレシピもたくさん作っている私なので、ヴィンサントに合う前菜も、早速考えて、作ってみたいと心が躍ります。
 まずはとにかく、美味しいヴィン・サントを改めてじっくり調べて買い求め、家でゆっくり味わって飲むしかありません。考えてみれば、マルチェラさんご夫婦と一緒に初めてヴィン・サントを飲んだ時は、時間はゆっくり流れ、ゆっくり食後のお喋りを楽しんだのでした。二十年経ち、85歳になったマルチェラさんのお宅へは、今もフィレンツェに行くたびに訪れお喋りに花を咲かせます。マルチェラさんのお宅のイタリアらしい天井の高さやお部屋の広さには遠く遠く及ばなくても、気持ちはゆったりと、ヴィンサントを楽しむひとときを、大事にしたいと思うのです。
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初めて訪れた時と変わらぬたたずまいの、マルチェラさん宅

Posted by kaitanicolumn at 12:34│Comments(0)TrackBack(0)clip!

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