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「ハッピーフライト」を観てきた。

監督の矢口史靖の作品は「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の2作品を観た。
両作とも私のお気に入りです。

「スウィングガールズ」のパンフレットだったか、監督が「カタルシスを感じさせるサービス精神」みたいなことを言っていたと記憶している。
要するに映画を観終わった時に、「劇場に観に来てよかったなぁ」と感じる充実感を観客に与える義務を映画監督は持っている、と言うのだ。

その言葉を裏切らず、例えば「ウォーターボーイズ」では妻夫木聡、玉木宏、金子貴俊が演じる男子水泳部によるシンクロナイズドスイミングの見事な演技、「スウィングガールズ」では上野樹里らが鼻を真っ赤にして駆けつけた演奏会でのビッグバンドの演奏のシーン。
そのシーンの充実ぶりは監督の言っていた「監督の義務」を十分に果たしていたと思う。
だからこそ今回の「ハッピーフライト」もサービス精神溢れる矢口史靖監督の提供するカタルシスを期待して劇場に赴いたという訳だ。

しかし前二作で取り上げたテーマ、「男子シンクロシンクロナイズドスイミング」、「スウィングガールズ&ア・ボーイの往年のジャズの名曲の演奏」というどちらかと言うと
マイナーな世界にスポットライトを当てるというスタイル、よって矢口監督もその「男子シンクロシンクロナイズドスイミング」や「往年のジャズの名曲の演奏」に関しては観客同様完全にアウェーなのだ。

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しかし今回は誰でも一度は載ったことがあるであろう飛行機。
上記の前2作品程のアウェーな立ち位置は存在しない。

しかしそれでも、その「アウェーな立ち位置は存在しない」分野にでも「ホーム」を創り出してしまうというこの矢口監督のいい意味でののめり込み度、微に入り細を穿つ表現によって非常に作品に魅入られる。

あと矢口監督は非常に絵が上手くて有名だ。

絵が上手い監督といえば彼の黒澤明が有名だが、黒澤明は若い頃画家になろうか映画監督になろうか悩んだほどの腕前で、映画監督になった後も絵コンテ等にその腕を存分に発揮し、例えば「七人の侍」のクライマックス、豪雨のなか村を襲う野ぶせりに果敢に立ち向かう菊千代の壮絶なイメージの構築等にも活かされていたのだと思う。
その「雨」を印象付けるために前に使用する水に墨汁を混ぜてより視覚的な印象を高める、という発想も黒澤監督の絵心からきているのではないのだろうか。

一方矢口監督の絵は黒澤監督の水墨画のようなタッチとは違って、漫画のような可愛らしい絵なのだ。
その漫画ちっくな監督の絵のイメージがそのまま映画の中に投影されているような描写がいくつか思い出される。

「ウォーターボーイズ」で学校での小火騒ぎに自転車を漕ぎ駆けつける妻夫木聡の脇で「火事よ、火事よ、火事なのよっ!」と何故か踊る2人の少女、
「スウィングガールズ」で音楽の演奏にの楽しさに目覚めた矢先に吹奏楽部の面々が食中毒から復帰し、それまでの練習場所であった音楽室が使えなくなり仕方がなく公園で練習をする上野樹里達の余りにも下手で聞くに堪えない演奏に鉢植えを投げつける少女・・・。

得意に前者などは思いっきりB級映画の空気を醸していた。

今回の「ハッピーフライト」でも、同じような子供を使った、少し荒唐無稽で漫画ちっくなシーンがある。
上記のような矢口監督の漫画ちっくなセンスに注目をしていた私はそのシーンを観て「ニヤっ」としてしまった。

そして矢口監督がかねてより主張していた「カタルシス」も十分に満喫できた!
「飛行機、しかもジャンボジェット機を使ったサスペンス・パニック映画」はハリウッドの専売特許ではないということをまざまざと見せ付けられてくれました。

素晴らしい映画でした。

・綾瀬はるか・・・「ICHI」よりもコッチの役柄がやっぱりしっくり来るね。
・寺島しのぶ・・・怖い…濃い…、テレビドラマだったら戸田恵子あたりになるのだろうか?(←ショムニか!)
・竹中直人・・・前2作品で重要な役どころを演じた。今回もやっぱり出てた。


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蛇足:
ジャンボジェット機を題材にした作品といえば山崎豊子の「沈まぬ太陽」が有名だ。
「白い巨塔」、「華麗なる一族」等、映像化された作品の多い中この「沈まぬ太陽」の映像化は過去に何度も出てきては立ち消えている。
その理由付けとして「ジャンボジェットの飛行の描写が困難な為」というものが公式なステイトメントとなっている。
しかし今回の「ハッピーフライト」によってその論拠は否定されてしまうと思う。
やはり当時の労働組合側に偏向しすぎた構成によって特に日航等の航空会社の協力が得られない、というのが本当のところではないか。
飽くまでも地元新聞社の立場から事故を追った横山秀夫の「クライマーズ・ハイ」と根本的に異なっている点だろう。

アメリカや韓国って政府に肯定・批判に立場を問わず、公的機関は映画の撮影に協力しなければならないという法律?があるそうだ。
日本航空がイコール「公的機関」か?という問題はあるが、もし「沈まぬ太陽」の映像化を阻害する要素が私の想像のようなことであったら日本の映画界は思いっきり世界の後塵を拝することになるだろう。