次の体験談です。
私はテントを持たずに野宿することの怖さを痛感し、以後は必ずテント持参で歩き遍路へ出ることにしました。
以前22番札所平等寺近くの善根宿へ泊った時のことですが、逆打ちをしている人と同宿しました。
その人も野宿派ですが寝袋だけでテントなしです。杖さえあれば怖くないと言っていました。
でも私は「誰かに(人とは限らない)上から見られている気がして怖い」と話したところテント派の人達は「みんなそういいますね」と返事が返ってきました。確かに誰かにジッと見られている感じがするのです。
それは決して友好的な眼差しではありません。

峠でテントを張る時はテントの廻りをお祓いします。
それは誰(霊的なもの)も入ってこれないようにバリアを作るということです。
万が一の時に備えて杖はテントの中にしまいます。
杖は御大師様なので、いざというとき杖を持ち鈴を鳴らすと悪霊は退散するというのです。
先人のブログに杖の記述があり、危険を感じたら私も見習うことにしています。
そして万一の時は戦うためです。

愛媛の山の上にある札所の山門の池の淵にテントを張ったときのことです、盛夏の頃。
(事前に副住職さんから火は使わないとを条件に許可は頂いています)
池の横に東屋があるのですがテントが張れないので、その東屋に隣接して張りました。
お祓いをし、杖をテントの中に入れ休みました。
お寺の山と言えども夜は昼間とは一変し、危険が差し迫っているような感じがあります。
深夜になると物音一つしません。周りは漆黒の闇です。
小便をしにテントから出ると、まるでこの世とは思えない異様な空気感に鳥肌が立ちました。
戻って来てもウトウトする意識とじっと耳を澄ませている意識とが交錯しています。
すると突然背後から何か鋭い声が聞こえました。「何?今のは何だ?」
人がいるはずもないし、池??…昼間、鯉が泳いでいたなぁ。
鯉が鳴いた?あれはほんとに鯉の声? 私は初めて聞く声に戸惑いました。
カエル程大きくはないにしても人間の耳には十分感知できる大きさの声でした。
聞いたことが無い声!! 心地よい音ではありません。
私は鯉の鳴き声!だと思い込むことで辛うじて冷静になれました。
漆黒の中の孤独は死の淵に居るのと同じで、悪いことしか考えられないからです。
現実的なことを考えよう…
昼間、まるで修験者のような出で立ちの人がここで通りかかった車に「乗っていきませんか?」と声を掛けられ乗って上がって行ったな…
あれは歩き遍路さんじゃなかったのかな?しかし変な人だったな、下から歩いて登って来て、ここから車に乗る?直ぐ上がお寺だというのに。 拘りがないというか、面白いというか…妙だよな。
昼からはずっと私の前を歩いていたのに。

その後、こちらの御住職と娘さんが私の張ったテントの横を通りかかって
「宿坊の夕飯時に上がっておいでなさい、18時頃ならお風呂が空いているから」…と言って下さいました、ご親切な声掛けは嬉しかったです。
以前もそうでした、…通夜堂に泊めて頂いた時も、…お盆の13日に宿坊にお世話になった時も、私のような歩き遍路をとても大切にもてなしてくださいました。感謝で一杯です・・・。
その節はありがとうございました。


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