税理士 郭曙光の海外進出企業の税務の勘どころ

税理士法人名南経営 郭曙光 公式ブログ

実務上、送金等の問題で、日本の出張者の立替経費を「使用料」として中国子会社に請求するケースがあります。

このような場合、中国子会社は「使用料」から中国企業所得税を源泉徴収して日本の親会社に支払います。源泉徴収された中国企業所得税は日本の親会社において外国税額控除及びみなし外国税額控除を受けることが、一般的です。

しかし、このような役務の提供に係る中国企業所得税は、外国税額控除が認められない旨の指摘があります。

その業務内容にも拠りますが、出張者の立替経費は、一般的に日中租税条約12条の使用料の定義になじまず、役務の提供対価に該当すると思われます。役務の提供については、 “PEがなければ課税なし” という日中租税条約の課税原則に基づき、中国で課税されませんので、日本の親会社側でも外国税額控除の問題が生じないはずです。

中国(外国)に課税権がなく、課税されるべきでない所得に課税された中国企業所得税(外国税額)は日本の外国税額控除の対象外だというのは、税務署側の見解のようです。

明確な除外条文がないうえ、実際に支払ったにも関らず、外国税額控除が認められないことに違和感を覚えるかもしれませんが、外国税額控除制度の趣旨からやむをえないと思います。

支払った外国税額の損金算入は実務上可能のようですが、余計なトラブルがないように、このような国を跨る役務の提供業務について、予め国内外の課税関係を検討することをお勧めします。

  2016年5月2日 平成26年度税制改正により、国際課税原則は総合主義から帰属主義へ変更されました。平成28年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税から適用されることなります。  この改正は、主に日本に支店等を有する外国法人に対する内容となっていますが、内国法人の外国税額控除にも影響が及びます。
  外国税額控除の限度額の計算基礎となる「国外所得金額」の計算にあたっては、「国外源泉所得」の意義と範囲は極めて重要ですが、「国外源泉所得」の定義については、平成26年度税制改正において、従来の「国内源泉所得以外の所得」から、国外支店等帰属所得(内国法人の国外支店等がその内国法人から分離・独立した企業であると擬制した場合に、その国外支店等に帰せられるべき所得をいう。)を含む16種類の所得により構成されることとなりました。
  このため、「国外所得金額」の計算も、「国外支店等帰属所得の金額」と「その他の国外所得金額」に区分して計算する必要があります。この国外所得金額の区分計算は、例えば、3月決算の法人であれば、平成29年3月期からも必要となります。一般の内国法人に影響はほぼ無いと思われますが、国外に支店等を有する内国法人には大きな影響が出ます。外国税額控除の適用を受けようとする内国法人、特に国外に支店等を有している内国法人は、早めに国際税務を熟知している税理士等にご相談されることをお勧めします。

 平成27年10月に公表された「BEPS(Base Erosion and Profi t Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクト」の行動13「移動価格文書化の再検討」の最終報告を踏まえ、平成28年度税制改正大綱において、移転価格税制に係る新文書化制度が導入されることとなりました。
 移転価格税制に係る新文書化制度は、国別報告書(CBCレポート)、事業概況報告書(マスターファイル)、同時文書(ローカルファイル)の3層構造のアプローチとされています。対象企業は基本的に大企業であり、その主な内容は次のとおりです。

(1)国別報告書(CBCレポート)
 直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループの最終親事業体である内国法人等が、国別報告事項(多国籍企業グループが事業を行う国ごとの収入金額、税引前当期利益の額、納付税額その他必要な事項)を、最終親事業体の会計年度終了の日の翌日から1年を経過する日までに、税務署長に提供しなければなりません。
 国別報告書は多国籍企業グループの概略的な移転価格リスク評価の際に使用されます。基本的に租税条約に基づく自動的情報交換により、自動的に各国税務当局に渡されます。
(2)事業概況書(マスターファイル)
 直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループの構成事業体である内国法人等は、事業概況報告事項(多国籍企業グループの組織構造、事業概要、財務状況その他必要な事項)を最終親事業体の会計年度終了の日の翌日から1年を経過する日までに、税務署長に提供しなければなりません。
 事業概況報告書は、多国籍企業グループの重要な移転価格リスクの特定に使用されます。海外子会社を経由した情報共有方式により、情報共有を行います。
(3)同時文書(ローカルファイル)
 国外関連取引を行った法人は、同時文書(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)を確定申告書の提出期限までに作成し、原則として7年間保存しなければなりません。
 ただし、一の国外関連者との取引金額(受払合計)が50億未満であり、かつ、その一の国外関連者との無形資産取引金額(受払合計)が3億未満である場合は、その一の国外関連者とのその国外関連取引について、同時文書の作成・保存義務を免除します。
 また、同時文書化義務の有無に関らず、決められた期限内に同時文書又は同時文書に相当する資料等の提出等がなかったときは、推定課税のリスクがあることにご留意ください。
●適用期間
 上記(1)と(2)は平成28年4月1日以後に開始する最終親事業体の会計年度に係る国別報告事項又は事業概況報告事項について適用し、(3)は平成29年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用します。

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