2016年05月11日

2016年05月11日

不思議の国の洗濯板

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洗濯板がいまだにゆっくり売れている。10年程前、当時私が輸入していたイタリアの洗剤会社に行ったときのこと。弊社の小さなカタログを見て、ふと木製洗濯板に目を留めた輸出担当者。なかば呆れつつ笑いながら「こんなものまだ売ってるの?売れるの?」と尋ねた。

ええ、そうですとも。爆発的には売れないけどさ、ぽつぽつと売れるのよ?お宅だっていまだにフレークせっけん(固形せっけんを盥で使い易いように削ったもの)を売っているけど、自覚ないの?と内心思いつつ。

そもそもスローフードの国、イタリアに敬意を込めて輸入を始めたのは彼らのフレーク状せっけんがきっかけだった。いまだにこんなもの作ってるなんて、きっと小さな家内工業だろうなと思い込んだ私。実情はヨーロッパでも1,2を争うでかい会社だった。

イタリアのアパートは外身は古い。だが、その17世紀の建物の中はリノベートされて見事に最新の機器の並ぶキッチンだったりする。古いものに誇りも愛もあるが、最新ってのにも魅力を感じるらしく、リノベーションが大好きらしい。

その工場も酵素を配合した研究の成果などを発表しつつ、スポンと抜け落ちたように大昔みたいな物も作り続けている。食に関しては少しづつ美味が「便利」に席巻されつつあるらしいけれど、その速度は緩やかだし、美味探求は依然として健在だ。

あちらも不思議の国だが、日本もそれ以上に不思議の国だ。洗剤不要の洗濯機が発売になったかと思えば意外に普及せず、性能のいい洗濯機やら、シミに良いという洗剤などいろいろある。けれど、わずかな割合の人々は手洗いの良さを知っているわけ。

そう、部分汚れをきちんと落とすには洗濯板が最高にいいのだ。全体を洗う必要はなくその部分だけを洗う。その方が生地が傷みにくい。木製が手にも生地にも一番優しいし
汚れもしっかり落ちる。刻んだ溝の中に濃いせっけん液が溜って汚れを落とす。プラスチック製だと手が負けちゃう。

だからこのレトロな風貌の木製洗濯板を製造販売しつづけているわけ。
そもそも日本ってあれこれ不思議らしい。いつぞや勉強したのは陶芸のこと。技術の進化と共に古いものは衰退し、なくなってしまうのが普通のところ、日本では各時代の陶芸材料、技術が今もそれぞれ作られているという。

確かにヨーロッパではボーンチャイナ以外はアンティークマーケットでしかお目にかからない。もちろん日本でも量産は進化系が主流になる。しかし作家達は好きな素材であらゆる技術の中から自分にふさわしいものを選んで作る。

しかもそれがごくマイナーというわけでもなく、買う側も趣味の合うものを探す。
ゆとりがあると言えばそれまでだけれど、わずかな暮らしの隙間にも、そんな嗜好を生かす「数奇者」の素質を庶民が持っているように思う。人生を楽しむコツを既に知ってるんだ。ここ、低成長の今こそ伸ばしたいところだなぁ。

※洗濯板各サイズ、ネットショップでお買い求めいただけます。
 

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プロフィール

kimuramidore

Kalokalohouseの代表。
仕事は新しい誰かと繋がるため。素敵なおばあちゃん修行中。
ここ数年はリウマチと仲良くつきあっていて、車椅子ユーザーでもあります。