2009年09月28日

[シベリア抑留」贈呈著書のお礼

  栗原俊雄記者様。

 新著「シベリア抑留」―未完の悲劇―をご恵贈下さいまして有難うございました。

 疋田桂一郎賞受賞記者に相応しいご労作に敬意を捧げると共に、未完の悲劇への深いご洞察に 我が意を得たり の感謝を申し述べる次第です。

 私は 逸見 じゅんさんの 「ラーゲリから来た遺書」 を読んだとき、心の底から“参った”と降参致しました。体験者にはとても書けない作品であったからです。奇妙な言い方でしょうがこれは優れた客観性によるものか、また余計な感情移入が制御されているせいか 残念ながら読者の胸を打つのは当事者よりも第三者のほうが上のようです。 贈られた本書もまさにそれでした。

 私は昨年の毎日夕刊シリーズを読んだとき、“あぁ惜しい、これではコインの片面だ“ と嘆いたことでした。この民族的悲劇は どうしておこったのか と、いったいそれはどのようであったか、そして これはどのように収まったのか? の三要素で出来ており、その前段は学者、研究家らの助力を得てほぼ解明され、次は2000冊に及ぶという「シベリアエレジー」で明らかなところ、締めくくりの部分だけが未完のままであることです。

 別の言い方では、私の場合シベリア相手の3年間と祖国相手が60年の戦いであったことです。この長いほうの愚直な戦いの報告なり記録が殆どされていないこと、これがその嘆きでした。北から南から帰還した310万の将兵が沈黙を守る中で独り「シベリア老兵」のみが不平を申し立てた事実、ここに光が当てられていない嘆きです。

 本書は連載シリーズを下敷きに書き下ろされ、この未開拓の分野にも才筆が踏み込んでいます。我々は「シベリアでの屈辱」もさることながら、今では弊履の如く捨て去って顧みない祖国の非情の方を憎みます。その辺りの心情を簡単ではあれ触れてあるのは嬉しい限りです。

 ようやく老兵たちの男の一分が果たせようとする今日、私は目の色の黒いうちに捨てられた司法から立法への転進の経緯を思いつくままに纏めておきたいと目下準備中です。これは素人にせよ腹を立てている当事者の仕事ではないかと思います。

 国民に対して愛国心を言う前に、愛される国、愛するに足る国であることを国にしかと言っておきたい、これが老いたる蟷螂の最後の言い分です。

 ご厚情を感謝するとともに、貴方ますますのご健筆を祈りつつ・・・・

敬具

 2009.9.29.


   追伸 千鳥が淵ではお忙しい中、いろいろお世話になりました。


kamakiriikeda at 22:43│Comments(1)TrackBack(0)clip!シベリア抑留 

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この記事へのコメント

1. Posted by 三浦昌子   2010年05月25日 20:13
5 シベリア抑留に関する情報は全て貴重です。逸見じゅんさんの著書「収容所からきた遺書」講談社ノンフィクション受賞、で語られた山本家のどなたか連絡先をお知らせください。私は、ご長女と高校で同級生でした。最近読みました、平凡社新書「検証シベリア抑留」について、山本様の3人の息子さん、一人の娘さんのご意見を伺いたく思います。
miura-shoko@umin.ac.jp

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