亀井英孝の「千年続く経営」ブログ

名南経営コンサルティング 亀井英孝 公式ブログ

亡くなったご主人の後を継いで社長になられた女性にお会いしました。
名刺交換させていただいた時から底抜けに明るく、そのような生い立ち
の方とは、とても信じられませんでした。

 

「こう見えても最初の内は落ち込んでたんですよ。でもいくら悲しんでも
何も変わらないことに気が付いて・・・」

 

「髪の毛も染め、ピアスも開け、ネイルもばっちり決めて、まず外面から
変えていったの」と大きく口を開けて笑いながら仰る。「まるで別人に
なったよう」との言葉に、相当の覚悟を持たれての自己革新だったのだと
感じました。

 

しかし自分の外見は変えることはできても、会社は何も変わっていない。
それどころか社員さんとは全く話が噛み合わず、何もかもが思ったように
進まない。社員さんは自分が正しいと思うことは全否定。文句ばかりで
何も行動を起こしてはくれない・・・

 

そんな時に取り組んだのが「理念作りだった」と仰います。

 

ご主人が日頃仰っていたこと、自分が大切だと思うこと、周囲の人たちから
大事だと教えられたことなどを書き出し、その中から「これだ!」と思える
ものを明確にされた。それからは、その「理念」の意義と価値を社員さんに
ことあるごとにお伝えになった。

 

最初の内はぶつかることも多かったそうですが、お互いの意見をぶつけ合い、
微修正を繰り返す中で、お互いが納得できるものができたのだとか。

 

「理念が明確になって、本当に楽になりました。だって「それは○○(理念の
キーワード)になってるの?」っていうだけで伝わっちゃうんだもの」

 

とても簡単におっしゃるのですが、そのプロセスでは大変なご苦労があった
ものと推察されます。

 

しかし「理念ができると楽になる」というのは確かだと思います。

 

理念とは「経営者の熱い思い」。これが浸透し、全社員が実践できるように
なれば、これほど強い会社はない。本当にそう思います。

 

私ども名南コンサルティングネットワークには“自利利他”という理念があり
ます。この理念を隅々まで浸透させ、現実のものとする。何よりも大切にして
いきたいと、改めて感じることができた出会いとなりました。

先日、ある社長から相談を受けました。3年前急逝された先代の後を継ぎ、
「この3
年間、脇目も振らずにやってきた」というAさんです。

 

「就任直後は周囲から不安視されていた」ものの、「実力の1.5倍の力
が出た」という言葉通り打つ手打つ手が成果を上げ、毎期増収増益を実現
されています。「責任は果たせたと思う」というその言葉には、3
年間の
苦労の重みをかじるものでした。

 

ところが今期に入り「急に不安になってきた」のだとか。

「この先数年間は業績的に何の不安もない」にも関わらず、漠然とした
不安に襲われ、その不安の渦から抜け出せないでいるとのことでした。

 

そこで私はAさんにいくつかの質問を投げ掛けました。

この3
年間取り組んできたこと、将来の方向性、先代から引き継いだこと、
これからの課題など、いろいろな切り口から社長の心の中に既にある答え
を引き出そうとしたのです。A
さんは包み隠さずお話してくださいました。

 

先代の遺志を継ぎ、先代の夢を叶え、内外の不安を払しょくし、より良い
会社にしていくために、全力投球されてこられたことがよくわかりました。
実際に周囲の期待を超える結果を残し、将来の業績にも目途を立てられた。
大変素晴らしいことです。

 

しかし短期間にそれほどの成果を出される陰には、「置き去り」にせざる
を得ないことが出てくるもの。Aさんにとってのそれは、幹部とのコミュ
ニケーションと育成がそれでした。

 

「社長を継いだばかりの頃は、ワンマン社長だった先代と違ったやり方で
結果を出したい、みんなと力を合わせ、意見を出し合いながら経営したい、
と思っていました。ところがそうはいかなかった。」

「一日も早く結果を出したい私と、現状を変えることを望まない幹部との
溝は深くて大きかった。」

 

「しかしそのリーダーシップには限界があったようです。やるべきことが
明確にあり、トップダウンで指示できているうちはよかったが、打つべき
手を打ち、特に指示すべきこともなくなってしまって、不安を感じるよう
になったんだと思います。」

 

「原点を忘れていた」とつぶやかれたAさん。

 

 「特効薬がもらえるものと密かに期待していたのですが、基本的なことを
私が置き去りにしていただけだったんですね。ちょっとがっかりしました。
でもとっても心安らかになりました!幹部とのコミュニケーションのあり方
を見直します」と言って、笑顔で帰って行かれました。

 

不安の原因というものは、大体において足元にあるものなのです。
何か置き去りにしてしまっている大切なことはないか、時には少し足元を
照らしてみる必要があると思います。

本日は「企業統治」について考えたいと思います。

 

ときに同族企業の統治機能の不具合が取り上げられます。
これは何も同族企業だけの問題ではありませんが、発生
しやすい体質にあることもまた事実です。老舗企業では、
その点に心砕いていたことが認められます。

 

代表例として西川屋(現西川リビング株式会社)中興の
祖と呼ばれる七代目・利助が手掛けた「別家制度の定法
目録」をあげておきましょう。

 

この制度は、「三代目から実施していた従業員に分家の
資格を与える別家制度を、「本家・親類・別家」三者の
共同責任と相互チェックに基づく運営を明確にして、
西川家のグループとしての体制強化を図る仕組みに発展
させたもの」(西川リビング株式会社ホームページより
抜粋)です。
http://www.nishikawa-living.co.jp/company/ayumi/ayumi04.html

 

要するに、本家のやることを親類・別家が監視し、道を
誤ることのないようする仕組みを、当主自らが作った、
ということです。そこに大いなる価値があると思います。

 

現代においても、その機能を果たしてくださる方々は
いらっしゃいます。

 

代表選手として金融機関が挙げられます。お金をお貸して
いただいていることへの説明責任を果たすことはもちろん
ですが、たとえば月一回、試算表・資金繰り予定表などを
持って支店長を訪ね、よりより経営を実現するためのアド
バイスを求める、そういう姿勢が大事です。

 

また税務署もこの機能を果たしてくれます。隠さなければ
ならないことがあるなら別ですが、思い当たる節がないの
であれば、これもまた教えを乞うつもりで調査を受けられる
ことをお勧めします。

 

それ以外にも、得意先様、仕入先様や協力業者様、経営者
仲間や地域コミュニティーの中で、特に箴言を厭わない方
のご意見を定期的にいただく姿勢は、同族企業にとってなく
てはならないものだと思います。

 

「煙たがられるぐらいの意見を言う人」を自ら求める。
同族企業のトップとして、とても大切な視点だと思います。

 

 

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