亀井英孝の「千年続く経営」ブログ

名南経営コンサルティング 亀井英孝 公式ブログ

2018年03月

本日は、“接客”について考えてみたいと思います。

以前テレビで紹介されていた、ある温泉宿の事例を
ご紹介します。詳しくは忘れてしまったのですが、
老舗旅館の何代目かの若当主が、傾きかけた実家
の宿を立て直された経緯が紹介されていました。

その若当主が朝礼の場で社員さんに仰っていたのが、
次のような内容です。


「目の前の一人ひとりのお客様は、私たちにとっては、
何人かのお客様のうちの一人です。しかしお客様に
とっては一生に一度しかない、大切な一日を私たちに
委ねてくださっています。決してそのことを忘れては
いけません。

幸いにも私たちは、全国的にも名が通った温泉地で
商いをさせていただいています。多くの方が「一生に
一度は行ってみたい」と思っていただけるところです。
だから、それほど努力をしなくても、お客様は私どもに
足を運んでいただけているのです。

しかし私たちは、ついついそのことを忘れ、忙しさに
かまけて、ともすると傲慢な態度を取ってしまったこと
もありました。私たちの過去の衰退は、そこが原因
だったと私は断言します。私たちはもう二度とその
過ちを繰り返してはいけません。


一生に一度、そんな思いで来ていただいているお客様
に、最高の満足を感じていただく。私たち一人一人が
その満足の提供者となれるよう、最大の努力をして
いきましょう。」


話の内容はこのようなものでした。そしてその宿で働く
社員さんが、イキイキと、キビキビと、楽しそうに働いて
いる姿が、今でも思い出されます。


もし、社員さん全員がこのような気持ちでお客様に
接することができたならば、間違いなくとても素晴らしい
会社になることでしょう。


目の前のお客様お一人おひとりに対して「一期一会」の
精神で接することが、“接客”の原点だと思います。
この事例を通じて、お客様との向かい方の基本を感じて
いただければ幸いです。

本日は、“工数”について考えてみたいと思います。

このところ、生産性向上に関する相談を受けることが
多くなってきました。市場は縮小、でもやるべきことは
増え、人件費負担は増え続ける。さらには「働き方改革」
が声高に叫ばれていますが、これは「働きたくても働け
なくなる改革」との認識が必要です。このような状況の中、
できる限り少ない時間で、より多くの成果を得られる体質
にしようという姿勢は、今の時代に絶対必要条件ともいえ
ます。

その中でも悩みの種といわれるのが、「時間をどう管理
するか」という問題です。確かに「日報を導入しようとして
いるが、社員の抵抗にあってうまくいっていない」という
話はよく耳にします。特に「すべての時間を正確に捉え
よう」とすることへの抵抗は大きいようです。例えば朝8時
に出社して夜8時に退社するまでの間、何時何分から
何時何分まで何をやったかを詳細に捉えようとすること
への抵抗です。

確かにこの方法であれば、細かい問題まで明らかにでき
るのかもしれません。しかし、日報を付ける立場になれば
わかると思いますが、この方法は、疲弊と不満が生まれ
やすいものです。また、管理する立場においても、細かく
すればするほど管理のための工数は増える傾向にあり
ます。これまで不要だった管理の工数が余分にかかる、
という本末転倒な結果になりかねません。

このように、すべての時間を把握しようとする方法を「時間
管理」といいます。一方、私がお勧めしているのは「工数
管理」です。

“工数”とは作業量を時間で表す概念です。「この仕事って、
どれくらいのボリューム?」という問いに対して「大体3時間
くらいです」と回答することがありますが、この3時間が“工数”
です。よって、人がどんな時間の使い方をしているかに着目
する時間管理とは異なり、どの作業にどれだけの人と時間
が投入されているかに着目するものです。時間管理では
個々人の時間の使い方が問題視されますが、工数管理では
作業一つ一つの投入工数の妥当性が問われます。


よく考えてみれば、どれだけ細かく把握をしても、結局「なぜ
そんなに時間が掛かっているのか?」は、聴いてみないと
わかりません。日報をラフにつけても精緻につけても、結局は
聴くしかない。だったら「ここに問題がありそうだ」とわかる程度
の把握でよいと思います。


また、時間が掛り過ぎているという現状を、人の能力ややる気
の問題と捉えることは簡単です。しかし誰がやっても効率的に
仕事ができる環境なり方法なりを模索していくのが経営者の
仕事です。メスを入れたい業務をピックアップし、その業務に
どれだけの工数が投入されているのかを把握する、まずは
その環境を作ることが何より大切です。そしてこの現状が認識
できたとき、社員さんの心の中に改善の灯をともすことができ
ます。


適切な工数管理で無駄な時間を削減し、作り出した時間で
次代を生き抜く飯の種を産み出していく。そういう姿勢が必要
なのだと思います。

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