「一句選」 藤井正幸
天上の青かぎりなし原爆忌 青 (八月)
秋の草人の幅ほど刈られたり 青 (九月)
曽野綾子に『天上の青』という小説がある。主人公は、殺人犯・大久保清である。何人もの女性を殺めて、旅立った。殺戮、それは人間の熱情なのであろうか。地球がマグマを抱えているような。もし、秋草を人の幅ほど刈る心を持っていたらそのような出来事は起らないであろう。けれど人は・・・・・。深い闇を抱いているのもまた人間である。
家ごとに墓のある村柿若葉 研 (七月)
全国、いろいろと旅していると村落ごとに必ずお墓がある。しかし、今までに日本列島で死んだ人数分の墓があるのだろうか。「墓の社会学」もお面白い。もっと遡れば、人への分子生物学的トライもおもしろい。自然の営みに対して、科学の眼は、どんどん進んでいる。人は複雑化している。複雑化は、人に謙虚さを与えると私は思う。
ふるさとの祭や友の客の座に 修 (八月)
風に手が動くロボット案山子かな 修 (九月)
祭と案山子。ことしも私の産土の秋祭が終った。毎年、鳶職と同様の働きをしてくれるBさんは、病気療養中。しかし、若者たちが約八年かけて学習し、その役を背負ってくれた。神酒所(お旅所)を作り、御輿・山車等の飾付け、そして祭全般の下働き。すべて陰の役割である。Bさんから送られて来た稲穂は、御輿の鳳凰に咥えさせた。それはどこの町会より見事であった。新米への感謝と東北への鎮魂。ことしは祭の原点に帰ったようなよい祭であった。
百合の香ののちに風の香小雨の香 一 (八月)
草わたる大かまきりの草の色 一 (九月)
大かまきりもやがて枯色になるであろう。私の母の一周忌も済んだ。家の前の彼岸花は昨年と同じように一週間遅れに咲き出し始めた。米どころ新潟に住む広川さんの周りも、一気に秋が深まるだろう。ことしは、いろいろな出来事があった。一難去ってまた一難である。しかし、人はどんなことが起ろうとも生きてゆく。歩いてゆけば何かと出会う。そんな年だったと思う。
広島の八月六日その夜明 緑 (八月)
満月を入れて静かや小鳥籠 緑 (九月)
天災・人災は、人の思惑をはずしてやってくる。これを神の配慮だというのだろうか。しかし、その配慮は悲し過ぎる。受け入れられない日々が続く。が、やがて刻とともに静かにそれを受け入れる。その時、人ははるか遠方(かなた)にひかりをみているはずだ。ひとつ沈んだ深い傷を残して。
ひととせの長し短し秋草忌 正幸
以上
天上の青かぎりなし原爆忌 青 (八月)
秋の草人の幅ほど刈られたり 青 (九月)
曽野綾子に『天上の青』という小説がある。主人公は、殺人犯・大久保清である。何人もの女性を殺めて、旅立った。殺戮、それは人間の熱情なのであろうか。地球がマグマを抱えているような。もし、秋草を人の幅ほど刈る心を持っていたらそのような出来事は起らないであろう。けれど人は・・・・・。深い闇を抱いているのもまた人間である。
家ごとに墓のある村柿若葉 研 (七月)
全国、いろいろと旅していると村落ごとに必ずお墓がある。しかし、今までに日本列島で死んだ人数分の墓があるのだろうか。「墓の社会学」もお面白い。もっと遡れば、人への分子生物学的トライもおもしろい。自然の営みに対して、科学の眼は、どんどん進んでいる。人は複雑化している。複雑化は、人に謙虚さを与えると私は思う。
ふるさとの祭や友の客の座に 修 (八月)
風に手が動くロボット案山子かな 修 (九月)
祭と案山子。ことしも私の産土の秋祭が終った。毎年、鳶職と同様の働きをしてくれるBさんは、病気療養中。しかし、若者たちが約八年かけて学習し、その役を背負ってくれた。神酒所(お旅所)を作り、御輿・山車等の飾付け、そして祭全般の下働き。すべて陰の役割である。Bさんから送られて来た稲穂は、御輿の鳳凰に咥えさせた。それはどこの町会より見事であった。新米への感謝と東北への鎮魂。ことしは祭の原点に帰ったようなよい祭であった。
百合の香ののちに風の香小雨の香 一 (八月)
草わたる大かまきりの草の色 一 (九月)
大かまきりもやがて枯色になるであろう。私の母の一周忌も済んだ。家の前の彼岸花は昨年と同じように一週間遅れに咲き出し始めた。米どころ新潟に住む広川さんの周りも、一気に秋が深まるだろう。ことしは、いろいろな出来事があった。一難去ってまた一難である。しかし、人はどんなことが起ろうとも生きてゆく。歩いてゆけば何かと出会う。そんな年だったと思う。
広島の八月六日その夜明 緑 (八月)
満月を入れて静かや小鳥籠 緑 (九月)
天災・人災は、人の思惑をはずしてやってくる。これを神の配慮だというのだろうか。しかし、その配慮は悲し過ぎる。受け入れられない日々が続く。が、やがて刻とともに静かにそれを受け入れる。その時、人ははるか遠方(かなた)にひかりをみているはずだ。ひとつ沈んだ深い傷を残して。
ひととせの長し短し秋草忌 正幸
以上








○会場「すっぽん処ふじい」



