最終章と銘打ってはいますが、エピローグも含むと後一話続きます。



大丈夫、俺クウガだから。だから見てて下さい俺の・・・変身!(by五代雄介)


翌朝のマイラ。ヒューレンとランジュはなんとも気まずい雰囲気でアレス達を待っていた。
(早く来いってんだよバカップルが!王者の剣はとっくに受け取って準備万端だってえのに!)
苛々しながら朝食代わりに摘んでいた木の実の種を地面に落として踏み潰す。
「行儀悪い」
「悪かった」
ランジュの小言に返事を返しつつ、ヒューレンはようやく上空に渦巻くルーラの魔力を感じ取った。



「ったく、遅いんだよ。そんなに昨夜はお楽しみだったのか?」
「それならどんなによかったか・・・」
苦笑するアレスにヒューレンは無言で頭を小突いた。因みに真相は告白を終えたアリサがオーバーヒートして気絶してしまい、結局朝まで目を覚まさなかったというオチである。
「まあ、俺も人の事は言えないがな」
こっちは完全に自分のヘタレだったと自嘲しつつ、ヒューレンは受け取った王者の剣をアレスに渡した。
「じゃあ行こうか」
四人は笑みを交し合い、頷いた。




ゾーマ城の地下へと続く階段。その前でヒューレンの家族が待っていた。
「覚悟はいいな?」
「ああ、どっちに転んでもいいって位には」
シリウスの言葉にも短く返す。
「兄様なら大丈夫です、お爺様を・・・」
「任せろよ。お前は祝いの席を楽しみにしとけ」
ミーナの頭を撫でながら笑う。
「無事に戻って下さいね?」
「大丈夫・・・このパーティなら負けはないから安心してくれよ。母さん」
ヒューレンの言葉にリズが息を呑み、口元を覆った。
「さ、行くぜみんな!」





試練の迷宮は入り組んではいたが、今までの経験を生かせば特に苦労することもなく進めた。
「・・・!?止まれ!」
先頭を歩いていたヒューレンが手を挙げて止めた。
「まさかお前達が立ち塞がるとはな」
「無論だ。魔王の玉座は純血の魔族にこそ相応しい」
そう言って進み出たのはバラモスそっくりの魔物だった。しかしその魔力はバラモスの比ではない。
「お前等がそう言って取り入ろうとするからミーナは王位を継ぐのを嫌がったんじゃねえか。それから俺は今更そんな言いがかりで足を止める程ヤワじゃない」
そう言ってヒューレンがニルヴァーナを構える。
「待ってヒューレン」
リオンのページを捲りながらランジュが割って入った。
「ここはあたしが引き受けるわ。先に行ってて」
「・・・やれるか?」
《無論であろう?それがしとランジュが組めば負けはない》
リオンの力強い言葉に、ヒューレンは頷いた。
「分かった。先に行く・・・だから追いついて来い」
「うん!」
アレスと目配せし、三人は一気に走り出す。
「小娘が・・・!一対一なら負けぬとでも思ったか?」
バラモスブロスの背後から骨の魔物が現れる。
「弟が貴様を喰らい尽くしたいようだな」
「残念。あたしは心も体も予約済みなの」
《こやつ等にはそうだな・・・350ページを薦めるぞ》
骨だけとなったバラモスゾンビと余裕の顔を崩さないバラモスブロスを前に、ランジュはリオンの言う通りのページを開けた。
「コホン・・・放て、未来さえ置き去りにして心に刻まれし夢!その名は雷撃砲!!」
左手でリオンを持ち、右手から魔法を解き放つ。ランジュの手から放たれた光は青白い閃光となってバラモスゾンビを一瞬で焼き尽くした。
「なっ・・・一度倒されたとはいえ、一撃だと!?」
「確かにバラモスは強かったけど、魂はもうニルヴァーナが食べてるのよね。魂すら隷属していない抜け殻なんかにあたしは倒せない。倒されてなんかやらない」
ランジュはリオンのページを捲り、はっきりと言い放った。





ゾーマの間を目指し、アレス達は一気に駆け抜ける。新たな魔王を決めるものと指令が行き届いているのか、邪魔する魔物はさっきのバラモスもどきだけだった。
「・・・と思ってたら今度はお前か」
八岐大蛇とよく似た巨大な蛇。キングヒドラだった。
「今度は私が残る番みたいですね」
アリサがルビスの剣を抜き、正眼に構えた。
「アリサ!無茶だよ!」
何時かの逆のシチュエーションに、アリサは小さく微笑んだ。
「大丈夫ですよ。私は絶対死にません。必ず、貴方の傍へ戻ります」
「約束だからね」
アリサは肯定の返事を返す代わりに、ついと背伸びしてアレスの頬に口付けた。
「行くぞアレス!アリサやランジュの願いを無駄にするな!」
頷いて走り出すアレスとヒューレンを見送り、アリサは奥へと続く道を塞ぐように立ち塞がった。
「天より来る優しき羽衣、我が祈りに応えてその身を守らん・・・フバーハ!」
火炎から身を守る呪文を唱え、背中に背負っていた水鏡の盾を左手に装備する。
「キングヒドラ・・・仮にも王を名乗るのなら、僧侶の一人くらい容易く殺せますよね?」
答えるようにキングヒドラは咆哮を上げる。
「・・・まあ、殺される前に貴方を仕留めますが」
ルビスの剣の刀身が翠の光を帯びる。マホイミの輝きだ。
「さあ、かかってきなさい!私が相手です!」
まともに当たればアリサの華奢な体など紙を引き裂くよりも容易く破壊しそうな首が五つ一斉に襲い掛かる。その一つをカウンターで斬り捨て、アリサは反対側へと駆け抜けた。
「これなら・・・!」
ルビスの剣に埋め込まれた宝石が不思議な光を放ち始めた事に、アリサはまだ気づいていなかった。





アレスとヒューレンが走ったその先には、かつてバラモスの間への道を阻んでいた扉と同じものがあった。
「どう?」
「やっぱりアバカムは効かない。ついでに鍵穴もないから・・・完全に再現だな」
問題はメガンテのような呪文で吹き飛ばそうにも、どちらもそれを使えないという点だった。
「メガンテの石はまだ研究中で未完成だしな・・・」
「一度戻ってアリサ達の援護に行こうか?」
アレスが提案するが、ヒューレンは首を振った。
「それはあいつらを信頼していないという事にもなりかねない。先に進むぞ」
「どうやって・・・」
アレスが尋ねかけた時、ヒューレンはニルヴァーナを振りかぶった。
「来い・・・バラモス!」
槍から放たれた魔力がバラモスを形作る。
「さて・・・盛大にぶっ放して貰おうか!」
バラモスの背中に手を当て、ヒューレンが高らかに叫んだ。その瞬間バラモスは右手からメラゾーマ、左手でイオナズン、口から激しい炎を一斉に放った。
「なんとも派手だね・・・」
呆れた口調でアレスがぼやく。扉は完全に吹き飛ばされていた。
「さあ、伝説を作りに行くか」
「こっちは何時でも」
二人は拳をぶつけ合い、同時に扉を潜った。




「ヒューレン、そして勇者アレス。我が生贄の祭壇へよくぞ来た!」
ゾーマは大魔王に相応しい威風で二人を迎えた。
「何故理に背き生きるのか?死に逝く者こそ美しい、そうは思わぬか?」
「そこだけは十七年生きても共感出来ないな。命は生きてナンボだよ、やっぱ」
ヒューレンの表情は穏やかではあったが、口調はきっぱりとしていた。
「ゾーマ、貴方を倒す事は世の理に従う事なんだと思う。けど、そこからの歴史は僕達で書き換える!」
「よろしい。ならばかかって来るがよい!」
ゾーマの口から放たれた吹雪が最後の死闘の開幕を告げた。



「そらそらそらああ!」
バラモスブロスが連続でイオナズンを唱え、ランジュを責め立てていく。
「きゃあっ!少しは手加減しなさいよ全く!」
「貴様をなめてかかっては痛い目を見ると分かったのでな。本気でやらせて貰う!」
回避しきれずいくらか喰らってしまったランジュは息を弾ませながらリオンを撫でる。
《どうする?お主がここで負けるのはそれがしとしても望ましくないのだが》
「当たり前でしょ!そうそう負けられるもんか・・・!」
自分に言い聞かせるように呟き、ランジュはマホカンタを唱える。その瞬間に放たれたイオナズンは跳ね返したが、それを見たバラモスブロスは激しい炎で応戦してきた。
「所詮人は弱き者よ。仲間と群れなければこの程度だ」
《聞き捨てならんな。それがしを忘れないで貰いたいものだ》
心外そうにリオンがぼやき、それがランジュの心を落ち着かせる。
「そうよね・・・あたしは一人じゃない、まずリオンがいる。ママも待ってる、アレスやアリサもあたしを信じてくれた、何よりもヒューレンと約束したんだから!」
《よくぞ言った!ならばそれがしに記された666番目の魔法、今こそ解き放とうぞ!》
ランジュは頷き、最後のページを開いた。
「我が身を介する魔滅の咆哮、そは破壊の手。我が身を介する神滅の雷、そは破壊の顎。我が手を辿りて今こそ具現せよ!我は汝に怒りの場を与えん、来たれ!破壊神シドー!!!」
「させるかぁぁぁあああああああ!」
バラモスブロスが放った激しい炎が、一瞬早くランジュを直撃した。






キングヒドラの牙がアリサを掠め、肩に血がにじんだ。
「くぅっ・・・さすがに頭を二つも斬られれば本気になりますか」
自分の頭を三つ失ったキングヒドラは我を失う程に怒り狂っていた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
炎を纏った牙を剥き、残る三つつの頭で一気に噛み砕きにくる。それを横っ飛びにかわしながらもう一つの頭を斬った。
(光の玉は私が持ってる・・・急いでこの魔物を倒してアレス達のところへ・・・)
そんな事を考えた彼女に一瞬の隙が出来た。
「あああああああああ!」
逃げ道を塞ぐように振るわれた尾にしたたか打たれ、アリサは三度程床に叩きつけられて止まった。
(死ぬ・・・私が、死ぬ・・・?駄目、絶対にアレスともう一度会うまでは死ねない・・・!)
《アリサ、聞こえますか?》
剣の宝石が声を放った。
「ルビス様?」
ベホマは詠唱に時間がかかるため、その半分程の時間で構築できるベホイミで傷を癒しながらアリサは剣に目を向けた。
《貴女の覚悟は確かに見届けました。我が君が貴女を認めるとの事です》
「私を?」
《強き娘よ、我を御することは出来るかな?》
アリサの口元に笑みが浮かんだ。
「ええ、アレス達を助ける為なら貴方が神であろうとも使いこなしてみせますよ」
《面白い・・・!ならばこの戦いが終わるまで貴様の手足となってやろう!》
ルビスの剣が凄まじい咆哮をあげた。





「ぬんっ!」
ゾーマの指先から凍てつく波動が放たれ、ヒューレンが唱えたフバーハとバイキルトの効力が無効にされた。
「あのローブ、どうなってるのさ!?」
「闇の衣だ。全ての呪文を無効化し、本人の戦闘力も飛躍的に高める物でな。更に自己治癒能力もある」
「うわズル」
思わずアレスが呻くが、ヒューレンの表情は笑みを浮かべたままだ。
「それでも俺達はまだ倒れてない。やりようはあるぜ」
そう言ってヒューレンは眼帯を外す。その瞬間吹き荒れる魔力の奔流は炎となって彼を包み込んだ。
「それがお前本来の力か」
「ああ。ニルでもない、母さんから教わった力でもない・・・俺が生まれ持っている力だ!」
ニルヴァーナが炎に包まれ、赤く輝き始める。
《何をするつもりだ!?》
「決まってるだろ?闇の衣を・・・ぶち破る!」
そうはさせじとゾーマがマヒャドを唱える。
「ヒューレン!」
アレスが立ち塞がり、勇者の盾を掲げてそれを防いだ。
「助かる!来い・・・ボストロール!」
「オオオオオオオオオオ!」
ヒューレンが跳躍すると同時に現れたボストロールが棍棒をフルスイングで振るう。その勢いに乗ってヒューレンは矢となって空中を駆け抜けた。
「貫けえええええ!」
炎に包まれたニルヴァーナは狙い違わずゾーマの心臓を直撃した。
「駄目押しだ!八岐大蛇!!」
ボストロールに代わって呼び出された八岐大蛇が大きく息を吸い込みながら仰け反る。それに乗って激しい炎と共にヒューレンは突き刺さったニルヴァーナの柄をゾーマの更に奥深くへと蹴り込んだ。
「ぐわあっ!」
「さあ喰えニル!そのまま力の全てを奪い取れ!」
《おおおあああああああああああああ!》
流れ込む凄まじい力にニルヴァーナが歓喜の雄叫びを上げる。闇の衣が徐々に薄まり、ゾーマはふらつきながらもニルヴァーナを抜き取って投げ捨てた。
「ヒューレン、大丈夫?」
「お前こそな」
人の血が混じった身に魔族の力は体に大きな負担をかける。それを防ぐ為の眼帯を付け直してヒューレンはニルヴァーナを拾い上げた。
「僕は大丈夫。ヒューレンのお陰でベホマ唱える余裕があったしね」
「そいつはよかったな・・・っ!」
ニルヴァーナから噴出した闇がヒューレンを包み込む。
「どうしたの!?」
「心配ない。全部ではないが、奪い取った闇の衣が俺に合った形になるだけだ」
ゾーマの時はローブ状だった闇の衣はヒューレンを包み、漆黒の鎧・手甲・レガース・兜・マントとなって彼を守り始めた。
「ほう・・・光の玉なしで我が闇の衣をここまで剥ぎ取るとはな・・・」
流石にダメージが大きかったのか、ゾーマの息も少し荒い。
「これでこの勝負、五分にまでは持ち直したな」
「そうだね」
二人は武器を構え、気合を入れなおした時だった。
「あたしを忘れないでよね!」
轟音と共に壁を突き破り、四本の腕を持った巨大な怪物の肩に乗ったランジュが飛び込んできた。
「ランジュ!まさかそいつ・・・破壊神か!?」
《いかにも!それがしに記された最後の魔法である!》
自慢げにリオンが宣言するのと同時に黄金の龍が飛び込んでくる。その頭に乗っているのはアリサだった。
「てことは・・・そっちは神龍!?」
「はい!ルビス様の剣が繋いでくれたんです!」
アリサもランジュも、服が焦げてはいるものの大きな怪我はないらしい。その事にアレスとヒューレンは顔を見合わせて安堵の息をついた。
「ゾーマ、覚悟!」
アリサが光の玉を掲げ、残された闇の衣を全て消し去る。ゾーマはこの状況すら楽しむように目を細め、マヒャドを唱えた。
「やらせるか!」
ヒューレンがマントを翻すと、たちまちアレス達全員を包み込む程に大きく拡がる。最初アレス達が放った呪文を全て受け止めたように、ゾーマの呪文も無効化していた。
「なるほどな・・・こいつは便利だ」
満足げに頷き、ヒューレンはニルヴァーナを構えた。
《では参るか。我を失望させるなよ?マスター・ヒューレン》
「ああ、最後まで退屈はさせてやらねえよ!」
ヒューレンが走り出すのに遅れまいと、アレスも剣を構えた。
《アレス、頑張って下さいね》
「はい。僕は夢を叶えたい。そしてその喜びを皆と、アリサと分かち合いたい!」
ルビスはそっと微笑み、姿を消した。
《では参りましょう。私も貴方が築き上げる理想郷を見てみたいですから》
アリサも神龍の頭に乗ったまま身構える。
「行きましょう!これで全て終わらせ、そして始めます!」
《いいだろう。これもまた一興よ!》
ランジュはリオンの666ページで輝き続けるシドー召喚の詩をなぞりながら微笑んだ。
「遅れないでね?あたしと、あたしの仲間を傷つける全てを破壊してあんたの強さを見せ付けなさい!」
《心得た!共に駆けようぞ、主よ!》





アレスの剣が雷を溜め、白く輝き始める。
「全てを斬り裂け・・・!ギガブレイク!!!」
ヒューレンは再び眼帯を外して跳躍した。
「行くぜ!俺の必殺技・・・バーニングディバイド!!!」
アリサを乗せたまま神龍は駆け抜ける。
「これでチェックメイトです!撃ちなさい!!」
ランジュはシドーの後頭部に両手を当てて魔力を集中させた。
「照準よし・・・てぇぇぇーっ!!!」
雷を纏った斬撃が、炎を纏った浴びせ蹴りが、神龍の放つ火炎弾とそこから繋がる圧し掛かりが、シドーの全ての腕から放たれた紫の雷が一斉にゾーマを襲った。
騎乗していた相棒から飛び出し、アリサとランジュが同時に詠唱を始める。
「これは私の罪の証でもありますが、同時に誇りでもあります・・・!マホイミ!!!」
「我が手に集いし炎と氷、今こそ一つとなりて全ての原罪を浄化せよ・・・メドローア!!!」
全てを問答無用で破壊する二つの呪文の直撃を受け、ゾーマは遂に倒れ伏した。





神龍もシドーも役目を終えたのか、姿を消した。後に残されたのはアレス達四人とゾーマのみであった。
「ヒューレン、そして仲間達よ。よくぞわしを倒した」
敗北した魔王には存在した痕跡すら許されないのか、徐々に塵となって消え行くゾーマは笑みを浮かべて四人を見た。
「光ある限り闇もある・・・しかし、お前達ならばその二つを共存させる事も・・・」
「・・・必ず、成し遂げてみせます。それが俺の目指す王ですから」
眼帯を付け直し、ヒューレンがはっきりと宣言した。
「そう、か・・・ならば行くがよい・・・それ・・・が・・・の・・・ぞみ・・・な・・・ら・・・ば・・・」
全てが消滅し、そこにはアレス達四人だけが残された。
《まだ終わりではないぞ。次の仕事が残っている》
「ああ、分かってるさ・・・」
ニルヴァーナに発破をかけられ、ヒューレンはリレミトを唱えた。




地上に戻ったヒューレン達を、リズとシリウスを先頭に城に詰めている魔族達が迎えた。
「おお・・・先代が持っていた闇の衣を・・・」
「では新たな魔王が・・・」
ざわめく魔族の間を通り抜け、ヒューレンは玉座の前までやって来た。
「聞け!我が友よ、愛しき民よ!我が名はヒューレン、新たな大魔王である!」
魔族達は歓声をあげてヒューレンを迎えた。
「戴冠に際して宣言しておきたい事がある。我は人間との融和を宣言する!今この瞬間より、人間は我等にとって支配すべき家畜ではなく・・・愛すべき隣人であると心得よ!」
突然の事に唖然となる民を見つめ、ヒューレンは両手を拡げて宣言した。
「戦いは終わったのだ!我等の間には余りにも長い戦いの歴史があった。戦いを始めることが出来たのなら、終わらせることもまた出来るはずではないか?我は王として諸君らを戦いに駆り立て続ける強さよりも、手を取り合い平和に暮らす弱さを選びたい・・・もしこの宣言に不満がある者は今すぐここへ来い!我が全てを投げ打って挑戦に答えよう!」
一瞬か、或いは数分にも思える沈黙。次には歓声が爆発した。それは奇しくも、ヒューレンがアヴァロンで行った演説と同じようであった。






こうして、数千年に続く人間と魔族の争いは終わりを告げた。ラダトーム王・ラルス一世は、ヒューレンの宣言に感銘を受けて自ら退陣を表明。ラダトームの領土と国民を彼に預ける事を宣言した。
ヒューレンはこれを引き受け、アレフガルドに太陽を返還。魔族の中でも力に優れた者を復興支援の為に小隊を組ませて派遣する事などを決定した。
数ヶ月後には先代の大魔王ゾーマの力を失い、閉じてしまったギアガの大穴に代わる回廊の開発に成功。上の世界に存在する各国との同盟締結に乗り出すこととなる。
魔王が商人として生きていた頃からの親交を持つイシス、勇者に大恩を抱くジパング、ロマリア、サマンオサはこの同盟を歓迎した。魔族を打倒する勇者を輩出する国という名目で体裁を保っていたアリアハンは渋ったが、生還したオルテガとバラモスを倒した勇者であるアレスの進言に折れる形で同盟参加。ダーマもオーラーの号令一過参加を表明した。
最後まで突っぱね、参加国を「人間族の裏切り者」として戦争を仕掛けようとまでしていたエジンベアは、魔王ヒューレンによる「こちらの友好国を一歩でも土足で踏み荒らす真似をすれば、我が軍の全てを持って貴様等を殲滅する」という過激な恫喝と、同盟参加国による一斉貿易停止措置によって怯えきった国民を抑えきれなくなった為に(これは同盟参加国が亡命者を積極的に受け入れると表明したせいもある)やむなく参加。最もそれを決意する頃には見るも無残な程に国力が衰退しており、他国からの輸出に頼らねば国が成り立たないレベルにまで達していた。これにより、エジンベアは向こう数十年にわたって同盟会議内での発言力を失う事になるがそれは余談である。




人間側に魔族からのアプローチが成功した裏には、勇者アレスによる尽力があった。
「もしも魔族、人間どちらかに心無い者が現れた時・・・その時は私が心ある者達と共にそれを討とう!」
この宣言により、人間側の忌避感が消えた事が今回の同盟などの成功の鍵であると専門家は分析している。





次回に語るのは、新たな魔王の宣言から半年程過ぎた時の出来事である。





                       To Be Continued......



あとがき
遂にゾーマ倒しました!ここまで長かった・・・・!けどもう少し続きます。だってこのサイト勇者×僧侶サイトですし、ちゃんと二人の結末も書かないと。ではでは~。