2011年12月17日
2011年06月26日
カラスがあまりに近くで鳴くので目が覚めてしまった。
こちらで鳴けばあちらでもそれに応えて鳴く声がする。
するとそれにまた応じてこちらの奴が鳴く。
なかなかきりがないやりとりである。
いったい何を「かあ、かあ」やっているのか。
さっさと飛んでいって確かめてくればいいものを。
と、こちらまでその「かあ、かあ」に巻き込まれそうになる。
鏡もなしにカラスはいかにして他人ならぬ他鴉と己が同族なるを知るか。
薄壁のこちらがわで時ならぬ目覚めのせいで余計な考えに苦しみ始めたのを
どこ吹く風であざ笑うかのようにまた「かあ」。
そしてこちらがすっかり眠り直すのを諦めた頃になって
どこかに餌でもあさりに行ったか、ピタリと鳴き声は止んだ。
自在なること天狗の如し。
あのかあ公のように全て「かあ」の一言で片付けば余計な考えに悩まずに済むものを。
突如窓辺に現れて
「nevermore」
などと脅すほどの高等な奴は
この近辺ではお目にかからない。
あくまで爽やか一辺倒の、体育会系な奴ばかりである。
こちらで鳴けばあちらでもそれに応えて鳴く声がする。
するとそれにまた応じてこちらの奴が鳴く。
なかなかきりがないやりとりである。
いったい何を「かあ、かあ」やっているのか。
さっさと飛んでいって確かめてくればいいものを。
と、こちらまでその「かあ、かあ」に巻き込まれそうになる。
鏡もなしにカラスはいかにして他人ならぬ他鴉と己が同族なるを知るか。
薄壁のこちらがわで時ならぬ目覚めのせいで余計な考えに苦しみ始めたのを
どこ吹く風であざ笑うかのようにまた「かあ」。
そしてこちらがすっかり眠り直すのを諦めた頃になって
どこかに餌でもあさりに行ったか、ピタリと鳴き声は止んだ。
自在なること天狗の如し。
あのかあ公のように全て「かあ」の一言で片付けば余計な考えに悩まずに済むものを。
突如窓辺に現れて
「nevermore」
などと脅すほどの高等な奴は
この近辺ではお目にかからない。
あくまで爽やか一辺倒の、体育会系な奴ばかりである。
(06:24)
2011年06月21日
おらの父ちゃん石運んで死んだべな
くる日もくる日もでっかい石運んで
王さまの墓作るんだと
おらと同じくれえな齢の王さまだと
今までにみたこともねえようなでっかい三角の墓だと
言ってたべな
おらの父ちゃん石運んで
くる日もくる日も暑いのにでっかい石運んで
砂の上にぶったおれたまま放って置かれただよ
王さまの墓はまだできてねかっただよ
父ちゃんはおらが穴ほって埋めただ
からからに干からびて軽くなってたから
持ち上げるのもわけなかったよ
王さまも墓が出来るか出来ねえかで死んだってな
まだ若えのに殺されでもしたかって噂もあったな
おらはナイルっつう海みてえな河のほとりに来ただよ
金で買われて来ただよ
母ちゃんは新しい男つくったからおらが邪魔になったべな
人がわんさかいるでっかい街だ
いつも人の声やら足音でわんわんいってるだ
墓みてえな暗え部屋んなかで聞いてるだよ
おらくる日もくる日も男の相手して
やがて死ぬべな
くる日もくる日もでっかい石運んで
王さまの墓作るんだと
おらと同じくれえな齢の王さまだと
今までにみたこともねえようなでっかい三角の墓だと
言ってたべな
おらの父ちゃん石運んで
くる日もくる日も暑いのにでっかい石運んで
砂の上にぶったおれたまま放って置かれただよ
王さまの墓はまだできてねかっただよ
父ちゃんはおらが穴ほって埋めただ
からからに干からびて軽くなってたから
持ち上げるのもわけなかったよ
王さまも墓が出来るか出来ねえかで死んだってな
まだ若えのに殺されでもしたかって噂もあったな
おらはナイルっつう海みてえな河のほとりに来ただよ
金で買われて来ただよ
母ちゃんは新しい男つくったからおらが邪魔になったべな
人がわんさかいるでっかい街だ
いつも人の声やら足音でわんわんいってるだ
墓みてえな暗え部屋んなかで聞いてるだよ
おらくる日もくる日も男の相手して
やがて死ぬべな
(10:42)
2011年06月14日
あきらかに有るということを隠すために
無いということがあきらかなものを有ると言う
またあきらかに無いということを隠すために
有るということがあきらかなものを無いと言う
それはかつて持っていたものを失うことを怖れる者たちの
初めから持たざる者としてある者たちへの牽制であるだろう
しかし生まれながらにして失うべき物を携えているのではない
失わせまいとする示し合わせのなかに生まれ落ちて来たために
失うことへの怖れに感染し
持たざるものとして生まれて来たことなど忘れ果ててしまっただけだ
かつて持っていたもの
かつて持っていたという自負
これほどあきらかでないものを礎にして築いてきた建造物
持たざるものにとっては無いも同然な大伽藍
だがそこに住まう者には永遠に堅牢な栖として映り
そこに住まう者たちからの施しに頼るしかない者たちは
彼らの信じるものを信じることでしか
あきらかな倒壊の危険から目を逸らすことができない
無いということがあきらかなものを有ると言う
またあきらかに無いということを隠すために
有るということがあきらかなものを無いと言う
それはかつて持っていたものを失うことを怖れる者たちの
初めから持たざる者としてある者たちへの牽制であるだろう
しかし生まれながらにして失うべき物を携えているのではない
失わせまいとする示し合わせのなかに生まれ落ちて来たために
失うことへの怖れに感染し
持たざるものとして生まれて来たことなど忘れ果ててしまっただけだ
かつて持っていたもの
かつて持っていたという自負
これほどあきらかでないものを礎にして築いてきた建造物
持たざるものにとっては無いも同然な大伽藍
だがそこに住まう者には永遠に堅牢な栖として映り
そこに住まう者たちからの施しに頼るしかない者たちは
彼らの信じるものを信じることでしか
あきらかな倒壊の危険から目を逸らすことができない
(08:04)
2011年06月11日
機械技師はある日散歩をしていて
あるいかがわしい店の店頭で
美しい女性の型のロボットが美しい声で歌っているのを見つけた
少し戸惑いながらも彼が挨拶するとロボットも歌いながら挨拶を返す
不思議に思い
間近に近寄りあれこれと角度を変え眺め回してみた時
なぜだか顔が火照り動悸がした
ついには少し大胆に居直ってあちこち触ってみたが
どうにもその仕組みがわからないままだった
ロボットは歌いながらそんな機械技師の行動を不思議がるように見つめ返していた
店の奥から見るからにいかがわしい店主らしき男が出てきて声をかけた
どうです?今日入ったばかりの品(コ)ですよ
いかがわしい猫なで声である
機械技師は職業的で偏執的な好奇心に苛まれ
いかがわしい店主がふっかける値段を値切って
とはいえ安くはない値段でロボットを買い
作業場でもある家に持ち帰った
店主はいかがわしい笑顔でその後ろ姿を見送った
機械技師はロボットを抱きかかえたり背負ったりしながら
やっとの思いで家に帰り着くと
ロボットを部屋の中央に立たせ
しばらくぼんやりと歌声を聴きつつ向き合っていた
そのままそうしているだけでも良い気もしたが
職業的偏執的情熱を奮い起こし
おもむろに工具を手にすると
職業的な細心さで丁寧にロボットを分解し始めた
腕の部品や脚の部品を外し胴体を開いて様々な部品を外した
ロボットはそうされてもいやな顔一つせずただ歌っていた
最後に
その美しい顔をした頭部の部品を外すとき
ポンッと気泡の割れるような音がして
急に歌声が止んだ
静まり返った作業場に部品が整然と並んでいた
部品の一つ一つはどれもありきたりなもので彼は何だかがっかりした
そして一つ一つの部品の位置を確かめながら元の通りに組み立て直し始めた
組立には分解する時よりも余計にとても長い時間がかかったが
あれこれ苦労しながらついにはすっかり元通りに組立て終えた
しかしロボットは歌いもしないし挨拶もしない
ただの置物のようにそこに突っ立っているばかりだ
どうしていいか分からなくなりロボットの手を引っ張ってみたり頬を強く叩いてみたりした
ロボットは無反応だった
機械技師は哀願するような目でロボットの目をのぞき込んだ
すると
そのつやつやした瞳には年老いてやせ細った老人となった自分が写っていた
機械技師のアッという驚きの声が作業場に谺した
ロボットの冷ややかな眼差しに見つめられて
機械技師はその場に崩折れ
すでに息をしていなかった
あるいかがわしい店の店頭で
美しい女性の型のロボットが美しい声で歌っているのを見つけた
少し戸惑いながらも彼が挨拶するとロボットも歌いながら挨拶を返す
不思議に思い
間近に近寄りあれこれと角度を変え眺め回してみた時
なぜだか顔が火照り動悸がした
ついには少し大胆に居直ってあちこち触ってみたが
どうにもその仕組みがわからないままだった
ロボットは歌いながらそんな機械技師の行動を不思議がるように見つめ返していた
店の奥から見るからにいかがわしい店主らしき男が出てきて声をかけた
どうです?今日入ったばかりの品(コ)ですよ
いかがわしい猫なで声である
機械技師は職業的で偏執的な好奇心に苛まれ
いかがわしい店主がふっかける値段を値切って
とはいえ安くはない値段でロボットを買い
作業場でもある家に持ち帰った
店主はいかがわしい笑顔でその後ろ姿を見送った
機械技師はロボットを抱きかかえたり背負ったりしながら
やっとの思いで家に帰り着くと
ロボットを部屋の中央に立たせ
しばらくぼんやりと歌声を聴きつつ向き合っていた
そのままそうしているだけでも良い気もしたが
職業的偏執的情熱を奮い起こし
おもむろに工具を手にすると
職業的な細心さで丁寧にロボットを分解し始めた
腕の部品や脚の部品を外し胴体を開いて様々な部品を外した
ロボットはそうされてもいやな顔一つせずただ歌っていた
最後に
その美しい顔をした頭部の部品を外すとき
ポンッと気泡の割れるような音がして
急に歌声が止んだ
静まり返った作業場に部品が整然と並んでいた
部品の一つ一つはどれもありきたりなもので彼は何だかがっかりした
そして一つ一つの部品の位置を確かめながら元の通りに組み立て直し始めた
組立には分解する時よりも余計にとても長い時間がかかったが
あれこれ苦労しながらついにはすっかり元通りに組立て終えた
しかしロボットは歌いもしないし挨拶もしない
ただの置物のようにそこに突っ立っているばかりだ
どうしていいか分からなくなりロボットの手を引っ張ってみたり頬を強く叩いてみたりした
ロボットは無反応だった
機械技師は哀願するような目でロボットの目をのぞき込んだ
すると
そのつやつやした瞳には年老いてやせ細った老人となった自分が写っていた
機械技師のアッという驚きの声が作業場に谺した
ロボットの冷ややかな眼差しに見つめられて
機械技師はその場に崩折れ
すでに息をしていなかった
(15:19)