紫綬褒章、人間国宝に加え、2009年には落語家として初の文化勲章を受章した上方落語界の至宝・桂 米朝さん。このたび読売テレビより、その文化勲章受章を記念したDVD-BOX『桂米朝 らくごの世界』が11月24日に発売される。
 本作は、戦後、埋もれていた多くのネタを復活させ、上方のみならず落語界に多大な貢献をした不世出の落語家・桂 米朝を、俳優・近藤正臣のナビゲーションで、多角的に分りやすく捉えた完全保存版DVD。
 その内容は、読売テレビの名物落語番組『平成紅梅亭』の中から十八番ともいえる珠玉の大ネタ6演目「算段の平兵衛」「持参金」「肝つぶし」「花筏」「はてなの茶碗」「らくだ」を収録。中でも「花筏」は、米朝落語初のDVD化となり、ファン待望の内容となっている。
 特典映像では、文化勲章受章を記念して作られた特別番組『平成紅梅亭 桂米朝文化勲章受章記念落語会』『千原ジュニア・桂 吉弥が語る 桂米朝 笑いの世界』を収録。米朝一門、友人や家族、落語を愛する著名人などが米朝落語の魅力に迫る。
 このDVD発売に先立ち、桂 米朝さんと弟子の桂 米團治さん、桂 吉弥さんが会見を行ない、今回のDVDについて、吉弥さんは「まず落語家は全員が見るべき素晴らしい出来で、すべての噺家のお手本になるような内容になっています。どれも10年以上前の落語ですが、まったく古くなってない。4時間あっという間に見ました。<持参金>など、僕自身“こうやるのか”と、非常に勉強になることばかりでした」と、実際に観た感想をコメント。
 一方、米團治さんは「米朝の商品は出尽くしていたと思っていたので、これを見せられて“うわぁ!”と思いましたね。こんな映像がまだあったのかと。私は<算段の平兵衛>をすでに10回見ました。このネタに関しては決して米朝の体調が万全な時のものではないのですが、色というか、心の機微が非常に克明に描かれていて、10回見ても飽きないんですよ」と絶賛。
 一方、会見に先立つ2日前に、夕食を食べながらDVDを見たという米朝さん。その時の様子について、息子でもある米團治さんは「4時間、熱心にずっと見ていましたね。ある意味、別人のように聞いてはりました。“平成の初めにこんな落語をしてる人がいてたんやなぁ”みたいに、客観視しているような。普段テレビで野球観戦するときは、普通にご飯を食べながら見ているんですけど、この時は完全に箸が止まって、食べるのも忘れて見入ってました」と明かしています。
 さらに米團治さんは「我々弟子は、米朝さんに稽古をつけてもらうとき、“テープで録ったらあかん! ナマでその瞬間を取れ!”と言われて稽古をつけてもらっていたので、こういうものを見て稽古するのは御法度なんです。でも、珠玉の名作がこれだけ並んでしまうと、弟子としては手の内見せるみたいで、“皆に見て欲しくない”“自分だけのものにしたい”という気持ちになりますね。これが出回るのはうれしいけど、弟子にとってはちょっとつらい気持ちもあります」と本音もちらり。
 また吉弥さんは「今まで50代の全集とか40代のLPの復刻版とか、40〜60代の米朝師匠は見てきました。その頃のほうが元気で体力があるからいいんだと思っていました。でもこのDVDを見ると、70歳で声も大きく張っているわけでもないし、間もじっくり取っているわけでもないのに、すっごくいいんですよね。本当にびっくりしました」と、その円熟の芸には感服しきりといった様子。
 さらに『平成紅梅亭』については、吉弥さんが「この<算段の平兵衛>は紅梅亭の第1回のもので、当時僕も一緒に出ていました。紅梅亭では普段の落語会と同じように事前にネタを決めず、楽屋でほかの人たちのネタを聞きながら“今日は<算段>やるわ”と、師匠自身が決めていた。師匠がその時にやりたい、その瞬間にかけたいと思った熱い高座がこのDVDには入っているんです」と、収録秘話も明かされる一幕も。
 また米團治も「こんな貴重な映像が残せたのも、『平成紅梅亭』という番組のおかげ。米朝は昔、テレビでやる落語をずっと嫌がっていたんです。“カメラアングルを切り替えるな!お客さんは同じ席に座って見ているのに、切り替えると落語が壊れるやないか”と。放送局も遠慮して撮らなくなってしまった。でも『紅梅亭』はそれでも撮り続け、米朝も“しゃあないな”と(笑)。最初からこういうものを残そうと思って撮っていたのかどうかは分かりませんが、映像も非常にきれいだし、カメラアングルのおかげもあると思います。この番組は深夜に放送されていたので、当時はゆっくり見たことがなかったのですが、ここまで映像化されるとは夢にも思っていませんでした」と番組を称えています。
 また、最近の米朝さんの様子について聞かれた米團治さんは「“これを喋ってくれ”と頼むと、絶対に喋らない天の邪鬼ぶりは変わりませんが(笑)、いい具合におじいさんになっておられます。昔はすぐに癇癪を起こしましたが、このごろは滅多に起こさないようになりました」、吉弥さんも「そういう意味では、特典映像の中で僕が司会をし、ざこば師匠ら一門も出演して、師匠に落語や稽古について喋っていただいてるところがあるんですが……。癇癪を起こしかねないテーマで聞いてるんですよね。『落語とは何か?』とか『笑いとは何か?』とか。ちょっと前には考えられなかったことだけに、貴重な映像になっていると思いますね」としみじみ。CDジャーナルから抜粋