2013年02月13日

因果関係とは、原因‐結果の間にある関係性のことを言う。

法学徒は、一般的な意味での因果関係(=自然的因果関係)と法的な因果関係を分けて考える。
そして、「自然的因果関係は認められて当たり前」と思っている節がある。

しかし、自然的因果関係というのは現実には証明が難しいものだ。
自然科学者にとっては、この自然的因果関係の解明が研究の主戦場である。

今日は、自然的因果関係とはどういうものか見ていくことにしよう。


  ◆      ◆      ◆

因果関係がある、と言うためには、4つの要素を証明する必要がある。それは、

①時間的先後関係
②相関性
③非擬似相関性
④メカニズム


である。これについて説明を加えていこう。

①時間的先行性とは、必ず原因が結果に先行しているということである。
当たり前じゃないか、と思うかもしれないが、これを逆に考えてしまうことはありうる。
意外にも、これを見抜くのが難しい場面があるのだ。

例えば、「海面が上昇している」という事実と、「氷河が溶けている」という事実があるとき、「海面が上昇すると、氷河が溶ける」と考える人がいるかもしれない。アメリカの状況から、「警官が重装備をするほど、治安が悪くなる」という因果の流れを推測する人が居るかもしれない。

概念としては「原因は結果に先行する」というのは誰でもわかると思うが、新聞記事なんかでもこの因果の流れを逆に認定しているものは少なくない。

「二次元萌えだからモテない」と考える人と、「モテないから二次元萌えになった」と考える人がいるのは、時間的先行性の認定が難しいからである。ややこしいのは、実際A→BとB→Aが両方成立しているスパイラル構造もあり得るということである。この場合、どちらの現象も原因であり結果となる。


②相関性とは、同じ原因が生じれば、必ず同じ結果が生じるということである
仮に、当該原因が生じても、その結果が生じるときと生じないときがあるのであれば、そもそもそれは科学的因果関係は無い。別の要因によって結果が発生している可能性が高く、因果関係があると言い切ることはできない。

ここまでは、小学生でも、自然と身につけられる感覚である。
だが、因果関係を認定するためにはこれだけでは不十分である。

正しく因果関係を認定するには、③非擬似相関性を証明する必要がある。


③非擬似相関性とは、2で証明された相関性は、別の要因によって連動して生じているわけでは無い、ということである(C→A・B)。


例えば、以下の記事を見て欲しい。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121114-00000301-dime-soci&pos=5

結論を言うと、「FBで友達数が多いと、就活で成功する」という記事である。

これは、FBで友達が多い(原因)と就活に成功する(結果)に時間的戦後関係はある。
統計上信頼に足る量の調査もあるから、相関性も認めて良いだろう。
しかし、何ら非擬似相関性の証明がなされていない。

例えば、「別の要因」として「社交性」を挙げることができる。
社交性の高さが、「友達の多さ」「就活の成功」という二つの結果を生じさせているのであって、「友達の多さ」「就活の成功」のあいだには全く因果関係がない可能性がある。そうだとすると、社交性がない人がとりあえず友達を(FB上で)増やしたとしても、就活は成功しないことになる。

この他、「朝食を食べない子供はキレやすい。だから、朝食は脳の発育に影響が大きい」という記事もあった。
これも、非擬似相関の可能性になんら言及していない。

もしかしたら、「母親の面倒見の良さ」が原因であり、「朝食を食べること」「切れやすい」ことは共に結果かもしれない。母親の面倒見が良いから、毎朝ごはんを食べる生活習慣がつき、面倒見が良いから、精神面での健全な成長があるのかもしれない。


ここにあげた二つの例は、すぐに「お粗末な記事」とわかる。
明らかに非擬似相関性を考慮していない事例である。

しかし、この非擬似相関性の立証はものすごい大変で、100%の立証はほぼ不可能である。
見ての通り、非擬似相関性の立証は、擬似相関では「無い」ことの証明である。
無いことの証明は所謂「悪魔の証明」であって、我々の持つ「論理」という思考方法では立証不可能である。

というわけで、「因果関係がある」ことの証明は厳密には非常に困難である。
少なくとも、擬似相関を疑う姿勢は常に持っておくべきだと考える。

④のメカニズム構造というのは、因果関係を立証したと言えるためには、ダイナミックな「流れ」を説明できなければならないということである。

例えば、
「風が吹く」→「桶屋が儲かる」といった場合、一応原因‐結果関係は立証できている。しかし、科学的に因果関係を立証する場合には、

風が吹く→ホコリが人の目に入る→盲目の人が増える→琵琶法師が増える→三味線の需要アップ→猫が減る→ねずみが増える→桶がかじられる→桶が減る→桶を買う人が増える→桶屋が儲かるといった、ダイナミックなメカニズムを説明しなければならないのである。

実際、大陸移動説を唱えたウェゲナーはこのメカニズム構造の立証に失敗して学会追放にあったわけだし。




このように、因果関係を認定するには、結構緻密な立証が必要である。
新聞記事なんかではテキトーな因果関係を認定しているものがたくさんあるが、そういったものを安易に信用せず、自分の頭で考えるようにしたい。



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この記事へのコメント

1. Posted by 山口由美子   2014年09月16日 21:07
因果関係を検索したらでてきたのがこのページでした。個人的に因果関係があるかどうか相談したいことがあるのですが。可能ならメール頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
評価の仕方はわかりませんが因果関係の説明にはすごいような気がしました。
2. Posted by あのこら   2020年02月05日 00:15
5 因果関係の証明(自然科学)と立証(法学)
https://www.anocora.com/Slime/19_01_14_1.html
ページで、記事の要約を使わせて頂きたく、ご許可をお願いいたします。
要約に不備がありましたら、
cyclemainte@anocora.com
まで、ご連絡を頂ければ幸いです。

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