講演会・本

2015年05月26日

労働法アルマでお世話になったんで、税法アルマを読んでみた。
税法に関しちゃ素人と変わらないので、素人並みの感想になるのだが。




税法を始めて学ぶ者にとっては定番の一冊なんだと思う。
・・・・・・が、本当に税法に初めて触る者にとっては、あまり良い本とは思わない。
まあ、目次が整理されてることぐらいかな。初学者に優しいのは。

選択科目アルマにはありがちな共著であり、

岡村→総論(第1章)、所得税(第2章)
渡辺→法人税(第3章)
高橋→租税と手続(第4章)

という振り分けになって居る。

まず、岡村先生の総論・所得税法は・・・可もなく不可もなく、すごくわかりやすいわけでは無いが、わかりにくいわけでもなく、必要なところは一応触れていると思う。アルマらしいといえばアルマらしい。
若干気になるのは、文章構成能力である。やや「しかし・・・。しかし・・・。しかし・・・。」と逆接で文を繋げていく癖があるが、そのせいで話の着地点が予測しにくくなってしまっている。そのぐらいの事で読めなくなったりはしないが、近藤先生の商法や島並他知財法を読んでしまっていると、どうしても「文章の上手さ」が気になるようになってしまう。

高橋先生の租税と手続は、行政法の勉強を通じて知っている部分が多く、内容的にも難しいところは無いのでサクサクよめた。

問題は、渡辺パート・法人税・・・
まあそもそも、法人税の方が所得税よりも難しいのではないかという気もするが、渡辺先生の筆の乗りっぷりがわかりにくさに拍車をかけている。これはヤバいだろ、日本語でおkと思ったのは、次の一文だ。

「…以下では、事業体レベルで課税を受けるエンティティと、いわゆる導管型エンティティを対比させながら、現行法における課税方法の差異について説明を行う。導管型エンティティでは、パススルー・エンティティ(組合型エンティティ)の他に、分配利益損金算入型エンティティについても触れる。

事業体、法人の事をわざわざ「エンティティ」と横文字にしているのは、まあいい。学者の中には、そういう病を発症している人が居ることは俺も理解している(某刑訴学者の「所謂、アジャンプロヴォカトゥール」とか・・・)。
「組合型エンティティ」も、何ページか前にその内容を説明しているから、まあ良い。

しかし、「導管型エンティティ」は、ここの一文でいきなり出てきた言葉である。これはひどい。こんないかにもなテクニカルタームを説明なしか。

一応、国語力をもって大体の意味を把握することはできる。
「事業体レベルで課税をうけるエンティティ」との「対比」をするものであって、パススルー・エンティティを含むものであるということから、きっと導管型エンティティとは「事業体レベルで課税を受けないエンティティ」に近い意味の言葉なんだろう。

だが、こんなテクニカルタームの「読解」をさせる様な本が、「入門書として最適」とは到底言い難い。この渡辺と言う人が、大学の講義でもこんなノリで初めて税法に触れる人に講義をしているのだとしたら、相当授業評価低いのではないか。渡辺と言う人が優秀かどうかはわからないが、とりあえず「初学者にわかりやすく教える」と言う能力は欠如していると言わざるを得ない。税法から離れた記述も多いしな・・・。



ところで、法律科目は、何であれその科目を理解する「ツボ」みたいのがある。
租税法にも、きっとあるはずだ。
それを最初に把握したうえで教科書なり基本書なりを読んだ方が圧倒的に効率が良い。


その点は、木山先生の超入門コンパクト租税法は良書である。
1章つかって「租税法の勉強の仕方」を説明し、何を意識して勉強すればよいか教えてくれる。

超入門 コンパクト租税法
木山 泰嗣
中央経済社
2015-02-28



もっとも、この本自体は何度も読み込むような本ではあるまい。
超入門と言うだけあって、内容的にはかなり薄い。
そのため、わざわざ買うほどの本かと言うと微妙である。
したがって、図書館とかで借りて読むというのが最も賢いだろう。

コンパクト租税法を読んだら、木山先生の他の本にステップアップしていくのもありなのかな。


佐藤スタンは絶対攻略したいのだけれど、法人税法はいつでるんだよぅ

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2014年12月31日

事例で学ぶ民法演習
松久 三四彦
成文堂
2014-04


全42問。ゼミで2か月ほどかけてコツコツやった。

問題文は旧司法試験ぐらいの長さであり、1問旧司の問題も入っている(あの伝説の「冷蔵庫問題」)。ただ、問題が単元ごとであり、かつ、小問が細かく分けられているので、横断的な理解を問うような問題は無い。

この問題集は、共著のせいもあるのか、一面的には語れない性格を持って居る。

まず一つには、典型問題の処理パターンを復習する問題集だと言える。例えば「債権の一生」の処理パターンを学ぶ問題があったり、不当利得の処理パターンを学ぶ問題があったり。所謂L2の問題集として使える。

L2の問題集において重要なことは網羅性である。(家族法からの出題は無いが、)総則・財産法の網羅性はかなり高い…と思いきや、契約各論、例えば請負の問題は一問もない。その代わり、法定代位や法定地上権等の様に、メジャーではあるがあまり論文問題としては見かけない分野も収録している。うむ、逆説を使いすぎて良く分からない文章になってしまったが、実際そういう一言では言い表しにくい問題集なのだ。
有名だけど論文としてはマイナーな(それ故、知ってるけど書きにくい)分野をおさえ、総じてみれば論点網羅率も高めである本書は、何か他の基本的問題集(例えば伊藤塾の問題研究)をやった後に、スキマを埋めるためにやってみると良いかもしれない。

本書の持つもう一つの顔は、「小技(こわざ)」が沢山出てくるという面である。
答案で書くとしても長くないし、難しい事でもないが、「技」としてストックしておかないとなかなか現場では書けない様な小技が沢山出てくる。民法商法はこういった小技のストック量がものを言う科目でもあるから、コレで小技の使い方を学べたのは個人的に良かった。


さて、気になる解説だが、悪くない。
(問題意識は良いが解説のせいで有害図書指定されてしまう)事演民訴と違い、解説を読めば基本的には答案の正解筋が見えるようになる。特に、抽象論を述べた後に「本問では~だから、~ということになる」というあてはめを解説でしっかりしてくれているのが良い。この点は工藤北斗も書評で書いていた気がするな。まあ、問題文が短いから、あてはめと言っても大したことは無いけれども。
ただ、解説の抽象論の部分では、問題を解くためには不要な部分も多い。それは恐らく、教育的配慮、親切心からなのであろう。それを良しとする人も居るだろうが、他方で、邪魔だと感じる人も居るかもしれない。

作問者によるのかも知れないが、問題の作りこみが甘いと思うところがある。
善意解釈してあげないと問題が成り立たないものや、解説を読んでみて初めて題意がわかる問題が少しある気がする。俺の力不足なのかも知れないが・・・。

これと事例から民法を考える



は、住み分けができている。
すなわち、事例から民法を考えるは現場思考で悩ませる問題が多いが、民法演習はそんなことは無い。L2を固めるのに使う感じかな。ステップとしては旧司法試験⇒民法演習⇒事民考と進んでいくのが黄金ルートになろう。ロー入試までに民法演習までこなしておけば、ひとまず地力十分か。今後はロープラクティスよりこっちの方が使われるようになっていったりするんですかね。






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2014年11月04日




行政法の個別法規の「読み方」を指南する本。
サクハシ、判例ノートと併せて「王国民三種の神器」 「国王三部作」と呼ばれている(大嘘)。

「頭の働かせ方」という言葉が本文中何度も出てくることからもわかる通り、行政法の知識を入れるためのものではなく(知識的な説明は、皆無と言って良い)、現場思考の仕方を伝える本である。

個別法規の読み解き方を、理論的に説明していく本は珍しく、行政法に限らず他の科目の参考書を見渡してみても、あまり類書が無い。

行政法が得意な人とかであっても、読み解き方を人に説明することが出来る人はあまり居ないのではないかと思う。難しいのだ。「思考の仕方」を人に説明するのは。
「思考」は説明することが出来る。「この問題は、ここの着目して、こうやってこうやってこう考える」という、自分の思考を説明することは、優秀者であればできる(というか、それが司法試験で求められている)。

しかし、「どうしてそこに着目できるんだ」「どうしてそういう頭の働かせ方が出来るんだ」という点については、なかなか説明が難しいものがある。聞けば、大抵「それは経験の蓄積」という答えが返ってくる。結局、我々は試行錯誤しながら、上手い人の「思考」を見様見真似して、考え方を身に着けていく。

解釈基礎は、この言葉にしがたい「思考の仕方」について言語化を試みた本だと言える。さらっと書かれている一文も、結構苦労して書かれたんじゃないかなーと思う。いや、陛下先生なら余裕なのかな?

自分が持って居なかった頭の働かせ方が載って居れば参考になるのは勿論、自分がなんとなくやっていた思考の仕方が、上手く言語化されているのも見ると気持ちが良くなる。考え方の本だから、内容を修得してしまえば二度と読まなくて良いが、それまでは何度も読みたい良い本だと思う。

構成は大きく分けて二部構成となっており、思考方法の総論を示した後、司法試験過去問+事例研究行政法1問を総論で示した思考方法を用いつつ解説していく。解説は、「前に示した〇〇を使って考えてみましょう」みたいな形式をとるので、解説だけつまみ読みしてもあまり良さはわからないのではないか。

昨今の教科書一般に言えることだが、コラムも結構役に立つことを言っている。




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2014年09月08日

やってみた。



明らかに、司法試験対策を意識して書かれた本。
憲法の演習書も世の中には何冊かあるが、一番司法試験的なのはこの本ではないか?

この本には、網羅性を求めても駄目である。
各人権ごとに問題が割り振られているというわけではなく、問題演習を通じて判例を読み込んでいくという目的で作られたというわけでも(おそらく)無い。また、答案の型を示すものでもない。

そういう意味では、L2段階が終了した、L3を求める人向けの本といえる。

*L1、L2、L3
論文対策を3つのステップに分ける考え。3大予備校は、言い方は違えど、どこも論文対策を3段階に分けている。L1は、基礎知識習得段階。L2は、典型論点を問題文から抽出し、書けるという段階(旧司法試験、法科大学院入試、予備試験レベル)。L3は、長文の問題を読み、事案の特殊性を考慮し、回答できる段階。


では、この本で鍛えられる力は何か?

それは、①使える判例を想起し②原告と被告の主張を組立て、噛み合わせる力である。

この本の解説は、殆どこの力を養うために用意されていると言って良い。
一つの問題に対して、色々な判例の「一部抜粋」が提示され、それがどうして本問で使えるのか、原告はどうつかうのか、被告はどう使うのかが検討されている。

ここで引用されている判例の読み方についてまだ押さえられていなかったり(知らない判例が出てきたというのは論外。まあ、流石にそんなことは無いと思う。引用判例は、超有名判例のみだから。)、或いは抜粋されたのが判例のどの部分かわからなかったりする段階だと、知識がバラバラに分断されて良くわからないと感じるかも知れない。そのように感じられるのであれば、まだ判例の読み込みが不十分なので、この本をやるのは時期尚早ということになる。

ある程度判例を読み込んできた人であれば、この本の解説の「判例のはしごの仕方」は結構痛快に感じるのではないか。①設問の対立軸を探り②似た対立軸の判例を想起し③想起した判例を、事案に合わせて使いこなすというのを解説で実演してくれるが、この①②③の思考は、司法試験の問題で、憲法が得意な人がやっている思考だろう。「憲法の流儀」における伊藤たけるの思考や、「憲法ガール」において「僕(最終形態)」やトウコによって示された思考も、①②③という思考だったからだ。


この本は、読んで何かをインプットするという本ではない。仮にこの本に載っていることを「知識」としてインプットしても、使える場面は非常に限定的だろう(財産権などは、はしごする判例のバリエーションが少ないため覚えて使うという戦略もあるかもしれないが)。ただ、ものの考え方は参考になる。考え方を訓練するという点では、やはりL3向けの本なんだろう。

考え方がわかれば良いので、判例のはしごの仕方や主張の戦わせ方がわかっている人は読まなくて良いのかもしれない。また、考え方がわかってしまえば、もうあまり読み返す必要もない本であるともいえる。そういう意味では、買うよりも図書館とかで一読する(そして、何周もしたいと思えば買う)のがちょうど良いのではないか。






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